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先生からのおすすめ本

私のおすすめ本

行武憲史 准教授
(計量経済学)


(1)統計学が最強の学問である
 ビックデータという言葉を頻繁に目にするようになり,インターネットの発展と共に,データ活用は飛躍的発展段階にはいっています。それとともに,データ分析に必要な統計学的な手法は,アカデミックな世界だけでなく,実際の個別市場の需要予測,スポーツ・娯楽等の分野,政策決定から回転ずし,ネットショッピングまで,ありとあらゆる局面で活用されています。本書の冒頭の一説でも,「今,私たちは読み書きと同じレベルで,統計学的な思考方法を求められている」と述べられているように,統計学に基づいて判断を求められる場面はこれからますます増えていくでしょう。
 こうした中,ひとつ統計学でも勉強してみようかと,興味関心を抱いた皆さんが,統計学の入門書を手にすると,多くの場合,最初からたくさんの数式に出迎えられます。数式にアレルギーがある人はここで挫折し,結局統計学のおもしろさに気づけないままになってしまうかもしれません。本書は,そういった人にも優しい新しいタイプの入門書です。本書は,ほとんど数式を使わずに構成されており,前半部で統計学の概念,つまり統計学で何ができるのかについてわかりやすく説明したのち,中盤では,統計学が最強である根拠となる,ランダム化実験を通じて様々な場面における原因と結果をはっきり示せることについてまとめられます。後半部は,様々な学問分野における統計学の位置づけが紹介されておりその対比が面白いのです。
 もちろん,この一冊を読んでも,アカデミックな論文やデータサイエンティストが使う統計分析ができるようにはなりませんが,そこまでの知識が必要ない人にとっても,いいかげんなデータに騙されない統計リテラシーを身に着けるためには必読の書です。
 もうちょっとだけ使える統計知識が必要という人には,同じ著者の続編である「統計学が最強の学問である[実践編]」,「統計学が最強の学問である[ビジネス編]」もお薦めです。
西内啓著 ダイヤモンド社 2013 ISBN:9784478022214

(2)ファスト&スロー 上下巻
 皆さんが現在勉強している標準的な経済学モデルでは,合理的経済人の仮定,すなわち経済主体は安定して一貫した選好を持ち,それに基づいて合理的な意思決定をする,という仮定が置かれています。これに対して,合理的経済人の仮定だけでは説明不能な現象について解明しよう,というのが行動経済学と呼ばれる分野です。本書は,認知心理学者にしてノーベル経済学賞(2004年)を受賞したダニエル・カーネマンが,行動経済学における長年の研究成果,人々が合理的な判断エラーに陥るパターンや理由を,一般の読者のためにわかりやすくまとめたものです。
 皆さんが現在勉強している標準的な経済学モデルでは,合理的経済人の仮定,すなわち経済主体は安定して一貫した選好を持ち,それに基づいて合理的な意思決定をする,という仮定が置かれています。これに対して,合理的経済人の仮定だけでは説明不能な現象について解明しよう,というのが行動経済学と呼ばれる分野です。本書は,認知心理学者にしてノーベル経済学賞(2004年)を受賞したダニエル・カーネマンが,行動経済学における長年の研究成果,人々が合理的な判断エラーに陥るパターンや理由を,一般の読者のためにわかりやすくまとめたものです。
 カーネマンは,判断と選択の際に働く2つのシステムについて導入しています。それが,本書のタイトルにもなっている「ファスト&スロー」です。ファストは,システム1と呼ばれるもので自動的かつ直観的な速い思考を担当します。一方で,スローの方は,システム2と呼ばれ,努力を要し意識的にゆっくり考えるシステムです。努力を要する分,システム2は怠けがちになります。システム2だけだと,速度が遅く非常に疲れてしまいますが,一方でシステム1だけだと慎重で複雑な行為は行えなくなるため,人は2つのシステムの両方を使って意思決定を行います。ただ,そのシステムが完璧でないことが,様々な系統的な認知バイアスを生みます。
 本書では,様々なケースにおける系統的なエラーとそのエラーに対する対処法が紹介されています。人生はあらゆる場面で,意思決定を迫られるものです。そうした時,本書の内容をちょっと思い出すと,非合理的なエラーに陥らずに済むかもしれません。
ダニエル・カーネマン著 村井章子訳 ハヤカワ文庫 2014年 ISBN:9784150504106;9784150504113

(3)関東大震災
 本書は,1923年9月1日正午前に起きた関東大震災について,1973年に出版されたノンフィクション作品です。関東大震災という1つの出来事を通じて,大都市における地震リスクやそれに付随するパニックについて考えさせられる一冊です。
 本書は,地震での建物の倒壊や火災などによる直接的な被害の状況から,地震後の混乱の様子,復興と大きく3つのパートに分けられます。特に印象に強く残るのが,3万8000人もの犠牲者を出した被服廠跡での惨事です。公園や学校用地として空き地になっていた陸軍省被服廠跡は,地震後多くの人々が家財道具を持ち出して避難していました。しかし,次第に火事が迫り,人々が持つ家財道具に引火し,避難所全体が火の地獄と化しました。
 また,震災後は,富士山の噴火や津波の襲来など,さまざまな流言やデマが広まりました。なかでも朝鮮人襲撃に関する流言に対する人々の反応は凄まじく,朝鮮人や朝鮮人と間違われた日本人が,民衆が結成した自警団の犠牲となりました。
 江戸時代には,逃げるときに家財道具を持ち出す行為は,逃げ道を塞ぎ犠牲を大きくするため,これを禁止する布告がありました。吉村氏は,大惨事になった要因として,こうした過去の地震への教訓が生かされなかったことが犠牲を大きくしたと指摘しています。こうした教訓は現在にも通じます。時折読み返して,こうした教訓を思い出すためにも良い本だと思います。
吉村昭著 文春文庫 2004年 ISBN:9784167169411

 

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