皆さんは,
J.M.ケインズ
という経済学者を知っていますか。
そう,高校の世界史や政治経済の教科書に載っているあの人です。ご存じのように,1930年代の大不況を救った偉大な人物です。彼は,30年代の不況を克服するために,ケンブリッジ大学でこれまで学んだ経済学を放棄し,全く新しい考え方を展開しました。それが,1936年に出版された『雇用・利子および貨幣の一般理論』です。
彼は,当時の慢性的大量失業の原因について,『一般理論』の中で「人々が月を欲するために失業が生じる」という名言を残しました。簡単に説明しますと,それは,人々が「月すなわち貨幣」を需要するために利子率が上昇し投資が妨げられたり,あるいは消費需要が減少したりして有効需要が少なくなり失業が生じる,ということです。
また彼は,こんな言葉も残しています。「貨幣は本質的かつ独特の仕方で経済機構の中に入り込む」と。ここに,ケインズの「貨幣観」が現れているように思います。
貨幣というものは,単に世の中を流通しているだけではなく,その流通量が変化することによって,ときにはインフレーションをもたらしたり失業を起こしたりするのです。
『一般理論』はマクロ経済を分析した書物ですが,しかし今日,貨幣の研究はマクロ経済学からのアプローチだけではなく,ミクロ的なアプローチ(マクロ経済学のミクロ的基礎)も盛んに行われています。
「貨幣」を人体にたとえると,それは生き物にとって最も大切な「血液」だと言えるでしょう。血液の流れが悪くなると,様々な病気を起こします。血液それ自体の研究だけではなく,血液の循環についての研究も重要だと思います。
「貨幣経済論」って,こんな学問だと言えるのではないでしょうか。