回 | 項目 | 内容 |
第1回 | イントロダクション | 授業内容の概略を述べる。また,成績を取得するうえでの注意事項を述べる。
【準備学習】シラバスをよく読んでおくこと。
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第2回 | 日本人の死生観(1):仏教
| 「死後の生は可能か」という問いと心身問題(心の存在と身体の存在はどんな関係なのか)は密接に関連している。「死後の生」についての日本人の考え方(死生観)には4つの源泉がある。まず,仏教(輪廻と往生)をとりあげる。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「日本人の死生観(1):仏教」を読んでおくこと。 |
第3回 | 日本人の死生観(2):盆という習俗 | 盆は仏教行事としておこなわれているが,その習俗には仏教以前の死生観(「近くの山の上から先祖が子孫を見守っている」という考え方)が現れている。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「日本人の死生観(2):盆という習俗」を読んでおくこと。 |
第4回 | 日本人の死生観(3):儒教 | 儒教には「生命の連続としての家」という死生観がある。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「日本人の死生観(3):儒教」を読んでおくこと。 |
第5回 | 日本人の死生観(4):キリスト教 | キリスト教の死生観は,「歴史も人生も1回限り」という点に最大の特徴がある。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「日本人の死生観(4):キリスト教」を読んでおくこと。 |
第6回 | 日本人の死生観(5):4つの考え方の比較 | 日本人の死生観の4つの源泉を「因果応報」(「善い行為には良い報いが生じ,悪い行為には悪い報いが生じる」という考え方)および,「死者と生者の関わり」,「死者の個別性」という3つの観点から比較する。
受講者自身の死生観はこれら4つの死生観がどのように混ざったものであるか自分で考えてみよう。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「日本人の死生観(5):4つの考え方の比較」を読んでおくこと。 |
第7回 | 心身問題(1):物心二元論と物質一元論の対立 | 心身問題(心の存在と身体の存在はどんな関係なのか)への主な解答は4つある。それらのうちで特に有力な「物心二元論」(宗教的自然観)と「物質一元論」(自然科学的自然観)を比較する。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(1):物心二元論と物質一元論の対立」を読んでおくこと。 |
第8回 | 心身問題(2):物心二元論のデカルトによる論証 | デカルト(16~17世紀)は物心二元論の論証をおこなった。その論証は「方法的懐疑→考える我→神の存在証明→物質の存在」というように進む。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(2):物心二元論のデカルトによる論証」を読んでおくこと。 |
第9回 | 心身問題(3):物質一元論①心脳同一説 | 物質一元論のひとつである心脳同一説は「心の正体は脳である」と主張する。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(3):物質一元論①心脳同一説」を読んでおくこと。 |
第10回 | 心身問題(4):物心二元論の弱点 | 物心二元論の最大の弱点は,「血液中のアルコール濃度が上昇する(=飲酒する)と,気分が陽気になる」というようなありふれた現象(身体から心への作用)をうまく説明できないことである。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(4):物心二元論の弱点」を読んでおくこと。 |
第11回 | 心身問題(5):物質一元論の弱点 | 物質一元論の最大の弱点は,「単なる物質が意識を持つ」という事実(たとえば,「色センサーに色は見えていないのに対し,人間には色が見えている」という事実)をうまく説明できないこと(クオリア問題)である。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(5):物質一元論の弱点」を読んでおくこと。 |
第12回 | 心身問題(6):物質一元論②機能主義
| 物質一元論には,心脳同一説(①)の他に,「心とは脳の機能である」と主張する機能主義(②)がある。①と②は「ロボットが心を持つことは可能か」に関して異なる主張をする。(①は「不可能だ」,②は「可能だ」と主張する。)
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(6):物質一元論②機能主義」を読んでおくこと。 |
第13回 | 心身問題(7):精神一元論
| 精神一元論は「すべては夢のようなもの」と主張する。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(7):精神一元論」を読んでおくこと。 |
第14回 | 心身問題(8):中性一元論
| 中性一元論は「世界は物質でも精神でもない実体からできている」と主張する。
【準備学習】プリント「哲学資料」の「心身問題(8):中性一元論」を読んでおくこと。 |
第15回 | 中間のまとめ
| まとめ |
第16回 | イントロダクション | 後期の授業内容の概略を述べる。
【準備学習】シラバスをよく読んでおくこと。
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第17回 | 古代ギリシア哲学における「価値」の問題(1):ソクラテスの問答法 | ソクラテス(前5~4世紀)は当時流行していた相対主義への反発から哲学活動を始めた。相対主義を徹底すると価値が消滅し道徳が崩壊するからである。このように古代ギリシア哲学では「価値」が主要問題であった。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.16-19「ソクラテス」を読んでおくこと。
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第18回 | 古代ギリシア哲学における「価値」の問題(2):プラトンのイデア論 | ソクラテスの「~とは何か」(「善とは何か」「美とは何か」)という問いに弟子プラトン(前5~4世紀)はイデア論によって答えた。イデア論とは,数学や言葉の意味に関する議論を価値に関する議論へ転用する試みであった。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.20-23「プラトン」を読んでおくこと。
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第19回 | 古代ギリシア哲学における「価値」の問題(3):プラトンの国家論 | プラトンは「正義」を魂の3つの部分(理性・気概・欲望)の間の調和として捉えた。そして,この「正義」概念を国家における正義にもあてはめた。
【準備学習】前回の授業で自分が取ったノートを読み返しておくこと。また,貫成人『図説・標準 哲学史』pp.20-23「プラトン」を再読しておくこと。
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第20回 | 古代ギリシア哲学における「価値」の問題(4):アリストテレスのプラトン・ソクラテス批判 | プラトンの弟子アリストテレス(前4世紀)はプラトンのイデア論に対し「実践的場面は多様であるから,ひとつしかないイデアを知っても役に立たない」と批判し,ソクラテスに対し「蓋然性で満足すべき実践的知識に対して必然性を求めるという間違いを犯した」と批判した。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.24-29「アリストテレス」を読んでおくこと。
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第21回 | 古代ギリシア哲学における「価値」の問題(5):アリストテレスの倫理学 | アリストテレスは「善(=人が求めるべきもの)は幸福(=人が実際に求めているもの)と一致する。それは卓越性である。卓越性とは,過剰でも不足でもない中庸である」と主張した。
【準備学習】前回のノートを読み返しておくこと。また,貫成人『図説・標準 哲学史』pp.24-29「アリストテレス」を再読しておくこと。
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第22回 | 古代ギリシア哲学のまとめ | ソクラテスの「~とは何か」という問い→プラトンによるイデア論という答え→アリストテレスによるプラトン・ソクラテスへの批判,という古代ギリシア哲学の流れをまとめる。
【準備学習】第17回~第21回のノートとテキストの該当箇所を読み返しておくこと。 |
第23回 | 中世スコラ哲学における「神」の問題(1):アウグスティヌス | アウグスティヌス(4~5世紀)は西洋の哲学に「無」と「永遠」という新しい概念を持ち込んだ。アウグスティヌスによれば,時間は神によって創造された。世界が時間のうちにあるのに対し,神は時間の外,すなわち永遠のうちにある。こうして,アウグスティヌスは神と世界をするどく対比した。このように中世スコラ哲学では「神」が主要問題であった。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.38-39「アウグスティヌス」を読んでおくこと。
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第24回 | 中世スコラ哲学における「神」の問題(2):トマス・アクィナス | トマス・アクィナス(13世紀)は,「神の存在は理性によって証明できるが,受肉(イエスが神であって同時に人間であること)は啓示によってしか知りえない」と主張した。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.44-47「トマス・アクィナス」を読んでおくこと。
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第25回 | 近代哲学における「理性」の問題(1):デカルトの「我思う故に我あり」 | デカルト(16~17世紀)は理性だけを頼りに絶対確実な知識を求めた。そして,デカルト哲学の根本原理として,「考える私」という存在を見出した。このように,近代哲学においては,中世の「神」に代わって,「理性」がよりどころとなった。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.64-71「デカルト」およびプリント「哲学資料」の「デカルトの言葉」を読んでおくこと。
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第26回 | 近代哲学における「理性」の問題(2):パスカルの「宇宙の沈黙と賭けとしての信仰」 | 数学者であり宗教家でもあったパスカル(17世紀)は「神が存在することは不可解であり,神が存在しないことも不可解である」,「神を経験するのは,心情であって,理性ではない」と主張した。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.72-73「パスカル」およびプリント「哲学資料」の「パスカルの言葉」を読んでおくこと。 |
第27回 | 近代哲学における「理性」の問題(3):カントの理性批判 | カント(18~19世紀)は人間の心(理性)そのものを探究した。そして,「時間・空間・因果関係などは,世界の側の性質ではなく,人間の心の持つ形式である」と主張した。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.96-105「カント」を読んでおくこと。 |
第28回 | 現代哲学における「言語」の問題:ウィトゲンシュタインの言語批判 | ウィトゲンシュタイン(19~20世紀)は,言語と生活が複雑にからみあった「言語ゲーム」に人間の本質を見た。そして,「言語ゲームに根拠はない。それは理性的ではなく,非理性的でもない」と主張した。このように,現代哲学は近代哲学のよりどころであった「理性」に疑いの目を向けた。
【準備学習】貫成人『図説・標準 哲学史』pp.154-157「ウィトゲンシュタイン」を読んでおくこと。
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第29回 | 中世哲学・近代哲学・現代哲学のまとめ | 中世哲学においては神が理性よりも優位であった。近代哲学においては人間の理性がすべてのよりどころであった。現代哲学は理性へ疑いの目を向けた。
【準備学習】第23回~第28回のノートとテキストの該当箇所を読み返しておくこと。 |
第30回 | まとめ
| 全体のまとめ |