講義名 歴史学 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月2
単位数 4

担当教員
氏名
佐藤 真一

学習目標(到達目標) 1.歴史家の生涯と歴史書を学ぶことにより、歴史の探求とはどのようなものであるかを知ることができるようになる。
2.人物とその著作を時代との関連で理解できるようになる。
3.ヨーロッパの歴史の大きな流れを捉えられるようになる。
4.歴史を学ぶ喜びを味わえるようになる。
授業概要(教育目的) 「歴史」と訳されている英語のhistoryはその語源を辿っていくと、古代ギリシアの「ヒストリエー」「ヒストリア」に行き着く。その意味は、「探求によって得られた知識」であった。そこで、古代ギリシア以降20世紀まで、ヨーロッパの歴史家たちが、どのような時代のなかで、いかなる経験をし、どのような問題関心から歴史を書くにいたったかを辿り、歴史的なものの考え方や歴史学とはどのような学問であるかを考えていく。それによって、歴史を学ぶ大切さを知ってもらいたい。経済学の勉強にも参考になることが大いにあるはずである。
授業計画表
 
項目内容
第1回歴史を学ぶ喜び 講義の内容やすすめ方について説明したあと、スクリーンにドイツの歴史的な諸都市を映し出しながら、「ドイツをめぐる旅」をしてみたい。
第2回イオニア文化とヘロドトス 紀元前5世紀を生きた「歴史の父」ヘロドトスの歴史的思想的背景を理解し、さらに彼の生涯を辿る。青年期の現実政治の体験、オリエント世界およびギリシア本土への大旅行について述べる。。【準備学習】教科書、佐藤真一著『ヨーロッパ史学史』4-12ページを読んでおくこと。
第3回ヘロドトス『歴史』の執筆意図 『歴史』の序文に見られる執筆意図と探求の精神、ペルシア戦争の背景について考察する。「クロイソスの没落」や「クロイソスとソロンの対話」のエピソードにもふれる。【準備学習】教科書、12-18ページを読んでおくこと。
第4回ヘロドトスとペルシア戦争 東西の大決戦であるペルシア戦争をどのように把握しているか。第1回から第3回にいたるペルシア軍のギリシア遠征とその経過を『歴史』においてヘロドトスがどのように叙述しているかを具体的に見ていく。【準備学習】教科書、18-26ページを読んでおくこと。
第5回ヘロドトスの叙述の特徴 ヘロドトスは執筆にあたり、伝承をどのように受けとめているか、またどのような吟味をしているかを考察する。彼は、いかなる意味で「歴史の父」と呼ばれるにふさわしいかを考える。【準備学習】教科書、26-31ページを読んでおくこと。
第6回ツキディデスとアテナイ民主政 ヘロドトスよりいっそう厳密な歴史を書いたツキディデス。その青年期は、アテナイ民主政治の繁栄期であった。そこに登場する雄弁術の教師ソフィストの活動とツキディデスへの影響を検討する。【準備学習】教科書、32-36ページを読んでおくこと。
第7回ツキディデスとペロポネソス戦争 ギリシア世界を二分して戦われたペロポネソス戦争が勃発すると、これが大戦になると予測して戦争の記述を始め、また将軍として戦争に参加したツキディデスの歩みを辿る。【準備学習】教科書、36-43ページを読んでおくこと。
第8回ツキディデスの批判的歴史叙述 ツキディデスはペロポネソス戦争をどのような姿勢で描いているか。この点をヘロドトスと比較しながら考察し、ツキディデスの批判的叙述の特徴を浮き彫りにする。【準備学習】教科書、43-51ページを読んでおくこと。
第9回ポリュビオスとローマの対外発展 ポリュビオスの生きた時代は、共和政ローマが輝かしい対外発展をとげた紀元前2世紀であった。この時代の地中海世界の姿を確認し、若き日にアカイア同盟の将軍として生きた彼の生涯と関心を見ていく。【準備学習】教科書、52-57ページを読んでおくこと。
第10回ポリュビオスの『歴史』 『歴史』の執筆意図と構成を確認し、ポリュビオスがローマの対外発展をどのように描いているかを『歴史』のうちに辿る。ハンニバルのアルプス越えやカルタゴの滅亡にも触れる。【準備学習】教科書、57-61ページを読んでおくこと。
第11回ポリュビオスと「ローマの混合政体」 ローマの輝かしい対外発展の原因はどこにあるのか。ポリュビオスの見出した主な理由は、「ローマの混合政体」にあった。カルタゴやスパルタとも比較しながら、ローマの政体の強さを彼がどのようにとらえているかを考察する。【準備学習】教科書、61-71ページを読んでおくこと。
第12回キリスト教の歴史観とルカ ギリシア文化と並んでヨーロッパ精神を支えるキリスト教は、歴史に対しても独自の理解をもっている。イエスの誕生をもって前後に分けていく西暦の数え方にもそれは示されている。こうしたキリスト教の歴史理解を、ルカをとおして考えてみる。【準備学習】教科書、74-91ページを読んでおくこと。
第13回歴史家ルカと救済史 「ルカによる福音書」と「使徒言行録」を手がかりにその独自の歴史把握を検討する。ルカは歴史家であるとともに、イエスの十字架による救いに注目する救済史家でもあった。この点を考察する。【準備学習】教科書、91-96ページを読んでおくこと。
第14回アウグスティヌスと『神の国』 ゲルマン民族の大移動の波にもまれる古代末期のヨーロッパにあって、キリスト教の立場を擁護したアウグスティヌス。キリスト教的な歴史把握の古典である。彼の『神の国について』に見られる歴史のとらえ方を検討する。【準備学習】教科書、97-126ページを読んでおくこと。
第15回中間のまとめ まとめ
第16回マキアヴェッリとイタリアの情勢 まず、後期のねらいと概要を説明する。そのあと、近世初頭のイタリア、とくにルネサンスの花開いたフィレンツェの政治状況、マキアヴェッリの『君主論』と政治的現実の冷徹な把握を考察する。【準備学習】教科書、128-139ページを読んでおくこと。
第17回マキアヴェッリの歴史叙述 『ディスコルシ』の検討を通じて、マキアヴェッリにおける君主政と共和政についてふれ、さらに歴史叙述の世俗化とルネサンスの歴史叙述の特徴について述べる。
【準備学習】教科書、139-155ページを読んでおくこと。
第18回宗派時代の歴史叙述とフラキウス ルターの宗教改革により、ヨーロッパは宗派対立の時代を迎える。その時期を反映し、歴史叙述の面ではルター派とカトリック陣営から、それぞれの立場に立った教会史叙述が生まれる。まず、フラキウスの編纂した『マクデブルク諸世紀教会史』を考察する。【準備学習】教科書、156-173ページを読んでおくこと。
第19回バロニウスとカトリック教会史 反宗教改革の担い手のひとつであったオラトリオ会に属するバロニウスの生涯とその著作『教会年代記』を取り上げ、カトリックの教会史叙述を検討し、両教会の教会史の宗派性とともに、教理や教会制度に関する考察という新しい面を開拓したことを確認する。【準備学習】教科書、173-181ページを読んでおくこと。
第20回マビヨンとサン・モール会の学問 「博識の時代」と呼ばれる17世紀後半は、史料の収集と批判的吟味が深められた時代であり、近代歴史学が成立する基礎を築いた時期でもあった。この時期の代表的な学者としてのマビヨンの生涯を考察する。【準備学習】教科書、182-187ページを読んでおくこと。
第21回マビヨンにおける史料 マビヨンの編纂・著作活動、フランス各地、ドイツやイタリアへの史料収集の旅に触れ、さらに史料の批判的吟味を示した彼の画期的な書物『古文書学』を手がかりに、彼の史料批判の具体的な姿を検討する。【準備学習】教科書、188-202ページを読んでおくこと。
第22回ヴォルテールと啓蒙主義 啓蒙主義の代表的知識人であったヴォルテールは、フランス社会に見られた不寛容と闘うとともに、『ルイ14世の世紀』を描くことによって歴史叙述に新しい局面を開くことになった。その具体的な叙述を検討する。
【準備学習】教科書、203-213ページを読んでおくこと。
第23回ヴォルテールと救済史観の批判 伝統的な救済史観を排し、古代中国をはじめとする東洋にまで視野を広げた世界史の立場を築いたヴォルテールの『風俗試論』を検討し、啓蒙主義歴史学の特徴について述べる。【準備学習】教科書、213-220ページを読んでおくこと。
第24回ランケと古典文献学 「近代歴史学の父」と呼ばれるランケは初めから歴史家を志していたわけではなかった。ライプツィヒ大学時代は神学と古典文献学を専攻していた。その時代状況と、彼の学生時代までの歩みを辿る。【準備学習】教科書、221-225ページを読んでおくこと。
第25回ランケの歴史家への道 ランケが歴史家となる決意を固めたのは、フランクフルト・アン・デア・オーダーのギムナジウムの教員時代(1818-1825)であり、とくにそのきっかけとなったのは、「古代文学史」という題目の講義準備であった。その際、歴史学と文学、神学との違いも意識された。この点について述べる。【準備学習】教科書、225-234ページを読んでおくこと。
第26回ランケと近代歴史学の成立 最初の著作『ロマン・ゲルマン諸民族の歴史』および『近世歴史家批判』が高く評価されることによってベルリン大学に招かれたランケはそれ以後、半世紀以上にわたって、歴史学の世界に大きな足跡を残す。ランケにおける近代歴史学の成立について考察する。【準備学習】教科書、234-240ページを読んでおくこと。
第27回マイネッケと第一次世界大戦 第一次世界大戦はヨーロッパの歴史学に大きな転機をもたらした。大戦中に併合論や国粋主義が高まるのを経験したマイネッケは、大戦後、『近代史における国家理性の理念』を公けにすることによって、近代国家の影の面に光をあてた。彼の学問について述べる。【準備学習】教科書、242-268ページを読んでおくこと。
第28回ブロックと「アナール学派」の成立 20世紀初頭、フランスの学問には、伝統的な歴史学に対するさまざまな挑戦が生じていた。それらに刺激を受けとめながら、いわゆる「アナール学派」の歴史学を開拓したのが、ブロックであった。彼の学問の歩みをストラスブール時代まで辿る。【準備学習】教科書、269-276ページまでを読んでおくこと。
第29回ブロックと心性史 ブロックの主著のひとつであり、心性史の古典とされる『病を癒す国王』の内容を検討する。題名からして斬新なこの歴史書の問題関心の新鮮さ、史料研究の広がり、論述と鋭さを味わってみよう。【準備学習】教科書、276-302ページを読んでおくこと。
第30回まとめ まとめ
授業形式 教科書に沿いながら、できるかぎり関連する都市や地方の写真、肖像、絵などをスクリーンで紹介しながら講義を進める。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
80% 20% 0% 0% 0% 100%
評価の特記事項 講義への出席は大前提である。
テキスト 佐藤真一著『ヨーロッパ史学史』知泉書館,3800円+税.毎回必ず持参すること。
参考文献 毎回、関連する文献を教室で回覧する。是非、歴史書そのものを図書館などで読んでみてほしい。
オフィスアワー(授業相談) 質問のある場合は、授業後、遠慮なく来ていただきたい。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 各回の【準備学習】のところを見て、教科書をあらかじめ読んおいてほしい。