講義名 日本経済論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 木4
単位数 4

担当教員
氏名
佐久間 隆

学習目標(到達目標) 現代日本は、グローバル化や高齢化社会への対応を始め様々な経済的課題に直面しています。日本における企業のあり方、経済成長と生産性の動向を経済理論とデータに基づいて分析する方法を修得することによって、日本経済が直面している諸課題を経済学的視点から説明する力を身につけ、企業の経営戦略や政府の経済政策を適切に評価することができるようになります。
授業概要(教育目的) 本講義では、まず、日本経済の現状と広く一般に認められている経済的諸課題を確認します。次に、それらを適切に分析して今後の経営戦略や経済政策の方向を探るのに必要となる経済理論や経済統計の基礎知識について解説した上で、実際のマクロ経済や産業・企業のデータを使用した分析の実例を提示します。特に、効率化を促進する観点から、企業の行動に焦点を当てるとともに、政府の役割についても考察を加えます。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンスシラバス等を配布して講義の進め方と評価方法について説明します。
本講義では、特に会社(企業)に焦点を当てますが、それがなぜなのかを解説します。(テキスト序章)
第2回戦後日本の経済成長 (1)戦後の混乱期から高度成長期までを振り返ります。高い成長率が実現したり、日本型の経営システムが成立したりした背景を概観します。(テキスト第14章)
第3回戦後日本の経済成長 (2)石油ショック、バブルの発生とその後の低迷から現在にいたる日本経済の状況について振り返ります。(テキスト第15章)
第4回現代日本経済の諸課題 (1)長い間、低い経済成長率が続いている状況を見た上で、そこから抜け出す必要について考えます。(第12章1)
第5回現代日本経済の諸課題 (2)少子高齢化が進む状況とそれが経済に与える影響を社会保障制度をめぐる課題について考察します。(第12章2)
第6回現代日本経済の諸課題 (3)政府の財政状況が悪化している状況みた上で、財政の持続可能性と経済成長の関係について考察します。(第12章3)
第7回会社とはなにかまず、市場経済一般における法人・会社の起源、会社の特徴と諸形態をみたあとで、日本における会社の発展と現状について議論します。(テキスト第1章)
第8回会社はだれのものか企業の所有に関して2つの企業観を紹介した上で、東京スタイルと村上ファンドの対立という実例を通じて、この2つの企業観を対比して考察します。(テキスト第2章)
第9回日本的経営 (1)日本的経営システムの基本的構成要素である終身雇用、年功序列、企業内組合が高度成長期に持っていた経済合理性とバブル崩壊後に変革を迫られている状況について議論します。(第3章1)
第10回日本的経営 (2)前回に続き、株式の持ち合い、現場主義、メインバンクシステムについて議論し、まとめとして日本的経営システムの評価を試みます。(第3章2~5)
第11回企業統治経営者の規律付けの仕組みとしての企業統治が働きにくいことが日本的経営の弱点であることをみた上で、いくつかの問題例をケーススターディとして取り上げます。(テキスト第4章)
第12回日本企業の収益構造近年、日本企業の株式保有構造や資本構造が変化してきていること、国際的にみて収益率が低いことを踏まえて、日本企業の経営にみられる二極化傾向について議論します。(テキスト第5章)
第13回市場の失敗ミクロ経済学で学んだ市場の失敗の基本的概念を再確認した上で、市場がどのような状況にあるかによって望ましい企業のあり方が影響を受けることについて議論します。(テキスト第6章)
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ
第15回中間のまとめまとめ
第16回マクロ経済の統計‐GDP (1)マクロ経済の基本的統計であるGDP統計の概要について解説します。(テキスト第7章1)
第17回マクロ経済の統計‐GDP (2)GDP統計を用いて支出・生産・分配の三面から日本経済の特徴について学習したのち、GDPが大きいことが必ずしも経済厚生が高いことを意味しないことについて議論します。(テキスト第7章2、コラム)
第18回景気循環 (1)景気循環とその要因を考察したあと、1990年代、2000年代の日本の景気循環の特徴、景気動向指数について学習します。(テキスト第8章1~3)
第19回景気循環 (2)景気循環の下で、物価と失業がどのような関係を示しつつ変動するか学習します。(テキスト第8章4)
第20回経済成長の諸要因 (1)長年にわたる経済成長が人々の経済的豊かさをいかに高めるかをみます。(テキスト第9章1)
第21回経済成長の諸要因 (2)経済成長を労働と資本という生産要素の投入で説明するソロー型成長モデルの基本的な枠組みを解説します。(テキスト第9章2)
第22回経済成長の諸要因 (3) 経済成長の要因を分解して全要素生産性(TFP)を求めるための成長会計の方法について学習します。(テキスト第9章3)
第23回生産性の規定要因 (1)全要素生産性計測(TFP)が技術進歩以外の要因からも影響を受けるという計測上の問題があることに留意しながら、産業別に成長会計を適用した結果に基づいてⅡッ本の産業のどこに主な課題があるか議論します。(テキスト第10章1~2)
第24回生産性の規定要因 (2)内生的成長論の立場から生産性上昇に研究開発が果たす役割の重要性について学習します。(テキスト第10章3)
第25回成長の制約持続可能な発展、資源とエネルギー問題、地球環境問題等について議論します。(テキスト第11章)
第26回経済成長と政府の役割 (1)この回と次の回を通して、政府が果たす市場環境の整備による経済成長促進の役割について考えます。まず、金融の発展が経済成長を高める可能性について議論します。(テキスト第13章1~2)
第27回経済成長と政府の役割 (2)前回に続き、経済の国際化が生産性を高める可能性、競争の状況が企業の生産性向上努力に与える影響について議論します。(テキスト第13章3~4)
第28回制度と政治経済成長が生産技術だけでなく制度にも依存すること、選挙を通じて政党がどのように経済政策を選択するか、近年の日本政治が経済の足をひっぱり不信を招いたことについて議論します。(テキスト第16章)
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ
第30回まとめまとめ
授業形式 テキストとプロジェクターで表示する図表などを用いて授業を進めます。必要に応じて板書で補います。授業計画に示したようにテキストの章立ての順序通りではなく、むしろ結論を先取りしてそこに至る論理を追っていくというスタイルをとります。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
50% 25% 25% 0% 0% 100%
評価の特記事項 前期に小テストを実施し、夏休み明けにレポートを提出します。両者ともウェイトは小さくないので必ず受験し、提出すること。
テキスト 稲葉陽二・乾友彦・伊ケ崎大理著『日本経済論』弘文堂,2200円.
参考文献 古沢泰治・塩路悦朗著『ベーシック経済学:次につながる基礎固め』有斐閣アルマ,2500円.
梅田雅信・宇都宮浄人著『経済統計の活用と論点(第3版)』東洋経済新報社,3200円.
オフィスアワー(授業相談) 本授業のある木曜日の第5限授業終了後20分程度、本館2階講師室で対応します。ガイダンス時に伝えるアドレスに連絡してください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 様々な経済統計や経済学の知識を使って具体の経済を分析するので応用力が身に付きます。みなさんの実生活面では、就職活動の際には企業をみる目を養ったり、社会に出てからは長期的な視点での企画力の下地を形成することになると思っています。