講義名 アメリカ経済論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火4
単位数 4

担当教員
氏名
加藤 一誠

学習目標(到達目標) 次の3つの点の理解を目標とします。1)アメリカ経済の特徴,2)マクロ経済学の理論と実践,3)1990年代以降のアメリカ経済の変化。
授業概要(教育目的) 本講義では,政府部門の経済への関与という視点から,さまざまな領域のエピソードをまじえながらアメリカ経済を講述します。講義は3部から構成され,第1部「アメリカ経済を理解するための基礎知識」,第2部「政府部門の大きさからみたアメリカ経済と経済政策」(以上,前期),第3部「1980年代以降のアメリカ経済」(後期)です。
授業計画表
 
項目内容
第1回はじめに~アメリカ経済を学ぶために(1)講義の進め方,評価方法などを説明します。
(2)アメリカを学ぶための基本概念を解説します。第1回目は,アーバンとルーラル,アファーマティブアクションなどがキーワードとなります。
第2回三権の役割,連邦制アメリカを学ぶための基本概念を解説する第2回目の講義です。check and balances,議会の上院・下院,大統領制および連邦制などの概念を説明します。
【準備学習】第1回目の講義の復習も兼ね,教科書15ページまでを読むこと。
第3回地方税,アメリカの高齢者とモビリティ,地域の発展と衰退アメリカを学ぶための基本概念を解説する第3回目の講義です。地方税の根幹である財産税の考え方やそれが高齢者の流出につながるという分析,季節的な州間移動の習慣,地域の発展と衰退の歴史を紹介します。
【準備学習】教科書16-25ページを読むこと。
第4回20世紀前半までの政府の役割とアメリカにおける「政府」この講義の主要な視点である「政府の大きさ」や「政府の役割」を解説します。キーワードは連邦制と州権,反トラスト法,間接規制,独立行政委員会といったアメリカ独特の制度を解説します。
【準備学習】参考書7.1章を読むこと。
第5回第一次大戦後のアメリカ~好況と「高貴な実験」アメリカ史のなかでも取り上げられることの多い1920年代。経済や社会を中心に解説しますので,受講生は経済原則が歴史のなかでも生きていることを理解してください。所得上昇と自家用車の普及や都市化の関係,法でお酒を禁じたらどのようなことが起こったか,がトピックです。
【準備学習】教科書第2章を読むこと。
第6回大不況とマクロ経済学複雑な大不況の原因,ルーズベルトはケインズ経済学を知っていたか,ニューディール政策だけではアメリカ経済は立ち直れなかった,といったトピックを取り上げます。
【準備学習】教科書49-57ページを読むこと。
第7回ニューディール~農業調整・地域開発・社会保障代表的な所得再分配政策を,産業,地域,垂直的な平等の観点から解説します。
【準備学習】教科書58-69ページを読むこと。
第8回第二次大戦と経済政策第二次大戦前後に生じた経済の供給面の変化とその影響を解説します。この時代,特に既婚女性の労働力率は上昇しましたし,交通技術は発展し,インフラの整備が進みました。
【準備学習】教科書第4章を読むこと。
第9回50 年代の経済と経済政策1950年代は「ゆたかなアメリカ」と言われました。46年に雇用法が成立し,連邦政府の役割は拡大します。しかし,それとは一線を画すアイゼンハワーの経済政策のもとで実現した「ゆたかさ」とは何だったのか。影ともいえる「島の貧困」も含め「ゆたかなアメリカ」を取り上げます。
【準備学習】教科書第5章を読むこと。
第10回ケネディ・ジョンソンの経済政策~大きな政府2回にわたって1960年代のアメリカを取り上げます。まず,「ニューフロンティア」や「ニューエコノミクス」の概念を説明します。同時にドル流出が深刻になり,ドル防衛策がとられましたので,その意味を説明します。
【準備学習】教科書102-108ページを読むこと。
第11回「偉大な社会」と「貧困戦争」1960年代の経済政策を学ぶ2回目の講義です。経済機会法や公民権法を学び,政府の役割の大きさを実感してもらいます。そして,貧困地域アパラチアの開発計画をとは?その成果は?
【準備学習】教科書108-114ページを読むこと。
第12回ニクソンの新経済政策とスタグフレーション1968年に就任したニクソンは71年に金=ドル交換停止や所得政策を中心とする「新経済政策」を発表します。ニクソンは再選を果たしたものの,経済はスタグフレーションに陥ります。ニクソン政権の経済政策を解説します。
【準備学習】教科書114-118ページを読むこと。
第13回経済の混乱と2人の大統領~フォードとカーターウォーターゲート事件によって大統領の信任は失墜しました。その後の2人の大統領の考え方や時代背景を説明します。同時に経済政策を解説し,国際収支の概念を説明して,1980年代の準備とします。
【準備学習】教科書118-126ページを読むこと。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ
第15回中間のまとめまとめ
第16回後期の講義をはじめるにあたって前期に実施した小テストと前期の講義内容のポイントを解説します。
第17回レーガノミクス1980年代の経済政策に関する第1回目の講義です。ここでは,様々なデータから当時の経済状況を理解して,レーガノミクスの背景や狙い(シナリオ)を説明します。
【準備学習】教科書126-137ページを読むこと。
第18回強いアメリカとドル高政策,双子の赤字の顕在化1980年代の第2回目の講義として,「ケインズ的」だったレーガノミクスを解説します。双子の赤字(財政赤字と貿易赤字)のメカニズムを中心に解説します。
【準備学習】教科書137-141ページを読むこと。
第19回再分配政策の効果とその評価基準経済を観るための道具であるフィリップス曲線とジニ係数を解説します。時間があれば,数値例を用いて計算をしてもらいます。
【準備学習】教科書56-57,164-167ページを読むこと。
第20回資本流入が支える経済レーガン時代の国際経済を解説します。ISバランスといった概念から,貿易赤字,貿易依存度の上昇と赤字内容の変化をはじめ,データを読み方も学んでもらいます。
【準備学習】教科書142-148ページを読むこと。
第21回アメリカ経済と日米関係(1)~プラザ合意と日本経済への影響第20回目の講義を日米関係という視点から見直します。わが国からアメリカ経済を眺めることによって経済の相互依存関係を理解してもらいたいと思います。
【準備学習】教科書142-148ページを読むこと。
第22回アメリカ経済と日米関係(2)~経済外交の歴史と1990年代への架橋まず,戦後の日米摩擦や経済外交を概説します。そして,日米関係が転機を迎えた1990年代のキーワードは『Noと言える日本』,嫌米,Revisionalismおよび自動車メーカーの現地生産です。
【準備学習】教科書148-150ページを読むこと。
第23回財政再建へ~連邦財政の赤字から黒字への転換,そして再び赤字へレーガノミクスの副産物である財政赤字に焦点をあて,それを減らすための努力を予算制度とともに解説します。連邦財政は黒字に転じるのですが,21世紀には再び
赤字になっています。アメリカに何が起こったのでしょうか。
【準備学習】参考書第9章を読むこと。
第24回交通インフラ整備制度の改革(1)~政府間移転,「荒廃するアメリカ」,アセットマネジメントの思想連邦財政の赤字は,アメリカの道路整備にどのような影響を及ぼしたでしょうか。まず,道路を例に連邦制における財政の政府間移転の制度を解説します。そして,「荒廃するアメリカ」から立ち直るためにとられた政策を解説します。ここからは,現在のわが国の姿がダブって見えるはずです。
【準備学習】参考書第5章を読むこと。
第25回交通インフラ整備制度の改革(2)~「インターモーダリズム」というイズム,道路予算の地域間配分,公共選択論まず,カネのないアメリカにうまれた交通政策(イズム)を紹介します。そして,道路予算の地域間配分の推移を示し,州権の強化を理解してもらいます。そして,政治が道路予算に及ぼす分析結果を紹介します(関心をもった人には専門のテキストも紹介します)。
【準備学習】教科書167-173ページを読むこと。
第26回「ニューエコノミー」の評価1990年代の経済と経済政策を解説します。ポイントは(1)何が「ニュー」なのか,(2)90年代の持続的経済成長のエンジンは何だったのか,です。キーワードは,成長会計,労働生産性で,90年代の生産性のパラドクスやITバブルとその崩壊もデータを用いて説明します。
【準備学習】教科書151-157ページを読むこと。
第27回ブッシュ時代のアメリカ~9.11テロ後の経済政策2000年の大統領選挙はブッシュが制し,翌年に9.11テロが発生しました。ここでは戦時を迎えたアメリカの経済政策を鳥瞰します。キーワードは金融緩和と超低金利,オーナーシップ社会です。
【準備学習】第9章のデータを把握しておくこと。
第28回金融危機なぜ,オーナーシップ社会を迎えることができたのか。そこには査定の甘いローンがありました。まず,ローンの仕組みやローンが浸透した理由を説明し,リーマンショック前後のアメリカ経済の混乱とオバマ政権の経済政策までを解説します。

【準備学習】第9章を読むこと。
第29回金融危機後のアメリカ保険制度や無保険者問題を概説したのち,オバマ政権の政策とその結果を解説します。そして,今後のアメリカ経済を観る視点を提案します。
【準備学習】PPTを配布しますので,それを読んでおいてください。
第30回まとめ16回以降の要点のまとめ
授業形式 1)講義は基本的には板書形式。
2)プリントを配布しますので,メモを取りながら聴いてください。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
80% 0% 20% 0% 0% 100%
テキスト 榊原胖夫・加藤一誠『アメリカ経済の歩み』文眞堂,2011年,2200円.
参考文献 村山裕三・地主敏樹・加藤一誠編著『現代アメリカ経済論』ミネルヴァ書房,2011年.
オフィスアワー(授業相談) 火曜日13時半~14時半。必ず事前にメイル(学部HPに掲載)で予約すること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 1)経済だけではなく,アメリカじたいに関心をもってもらうことを希望します。
2)アメリカや日米関係にかかわる新聞記事をできるかぎりフォローしてください。
3)私語には厳正な態度でのぞみますので,ご注意ください。