回 | 項目 | 内容 |
第1回 | 社会政策とは何か:市場メカニズムを侵害し、歪めるものか、補足し、正すものか? | 社会政策を捉える代表的なふたつの立場を説明し、本講の立場や問題意識を明らかにする。
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第2回 | 資本主義社会とは何か:市民の自由が尊重される社会か、侵害される社会か? | 資本制社会についての代表的なふたつの立場から説明を行い、それぞれにコメントする。この問題の検討からは今日の社会は資本主義社会なのか?という新たな問題が提起されることになる。
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第3回 | 福祉国家とは何か:ポスト資本主義か、修正資本主義か? | 福祉国家は、工場の労資対立に代表される資本主義社会を終焉させ、労資の階級対立の無い社会を生み出したのか?あるいはまた、福祉国家は、資本主義の相対的安定期に現れた一時的な現象であり、グローバル経済の発展の中で、後退・崩壊に向かっているのだろうか?
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第4回 | Esping-Andersen『福祉資本主義の3つの世界』:Esping-Andersenは、先進資本主義国を自由主義、保守主義、社会民主主義を3つの類型に分けた | 自由主義は市場を、保守主義は家族を、社会民主主義は国家を重視すると言われているが、本来は、脱階層化と脱商品化とういふたつの基準に照らして、社会政策がこれを促進しているのか、あるいは逆方向を向いているのか、により区分している。
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第5回 | 日本は福祉社会と言えるのか?:日本の社会政策はどこを向いているのか? | 社会保障給付費の国民所得比が非常に小さいあり方を日本型福祉社会と持ち上げる議論がある。しかし、脱階層化のためにも、脱商品化のためにも、積極的な政策をとることなく家族の機能や企業の機能に頼ることで、これらに福祉国家の機能を代替させてきたと言える。 |
第6回 | まとめと小テスト
| 5回までの要点のまとめ |
第7回 | ブラック企業は何故蔓延るのか? | 市場メカニズムが働けば、労働者はまともな企業に移動するので、ブラック企業は淘汰されるはずだ。それなら社会政策の必要も無い。なぜ、ブラック企業が社会問題になる程蔓延ってしまったのだろうか?
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第8回 | サービス残業をなくすには、どうしたらよいか? | 36協定(時間外労働時間についての労使協定)の労働時間を実態に合わせて延長すれば、未払い賃金は発生しない。しかし、これでは、社会政策により、ブラック企業の拡大を奨励しているようなものではないか?
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第9回 | 最低賃金をひきあげるべきか?
| 最低賃金の引き上げには、強力な反対論がある。最低賃金を引き上げると非正規雇用労働者の労働コストを高めるため、非正規労働者の雇用を減少させ、かえって非正規労働者のためにならない、というのである。この議論は正しいか、間違っているか? |
第10回 | 有期雇用は是か非か? 改正労働契約法は悪法か?
| 2013年4月1日に施行された改正労働契約法は、有期契約労働者に無期契約転換権を付与した。ところが、改正法施行後、5年雇い止めが横行する事態となった。何故、このようなことになったのか? |
第11回 | まとめと小テスト | 10回までの要点
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第12回 | 年功賃金は是か非か
| 三種の神器ともてはやされた日本的経営の柱の是非を問う。年功賃金は、競争心を削ぐ? 労働者のやる気を鼓舞する? |
第13回 | 終身雇用は是か非か
| 終身雇用は、労働者の緊張感を削ぐ? 労働者の忠誠心を抱かせる? |
第14回 | 企業別組合は是か非か | 企業別組合は、企業の生産性上昇に役にたっており、日本の競争力の強さを支えている? 企業別組合は、時間外労働を容認し、引き換えに利潤の分け前を受けとることにより、企業外の労働者全体と敵対しているのではないか? |
第15回 | 中間まとめ
| まとめ 14回までの要点と課題についての論述 |
第16回 | 生活賃金の擁護論と反対論 | マルクス派とフェミニストの対立 |
第17回 | 価格賃金の擁護論と反対論
| 生活賃金か、価格賃金か? |
第18回 | 差別賃金の反対論と擁護論
| 何が差別なのか?差別賃金はいけないのか? |
第19回 | 労働者階級の分裂から対立へ
| 日本の労働者階級は、ライフスタイルの異なる諸階層に分裂してきたが、今日においては、剰余価値の分け前を受け取る特権的労働者と生活を維持することも困難なワーキングプア―が生じている。両者の階級的利害は対立しているのではないか? |
第20回 | まとめと小テスト | 19回までの要点 |
第21回 | 医療保険・介護保険をどう改革すべきか
| 市民の医療・介護のニードを保障する方法には、大きく一般税源で賄う方法と社会保険で賄う方法がある。それぞれどんな特徴があるのだろうか?どちらが正しい方法なのだろうか? |
第22回 | 年金保険・生活保護制度をどう改革すべきか | 年金制度が不十分であれば、生活保護制度は肥大化する。生活保護制度が肥大化すれば、年金制度から脱退しようとするものも拡大し、両制度が崩壊しかねない。だとすれば、年金制度を抜本的に充実するしか、事態を打開する方法は無いのではないか?
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第23回 | 社会ファンドの拡充か縮減か? | 社会保障制度を拡充するには、社会ファンドを増やさなければならない。しかし、社会ファンドを拡充するためには、利潤や賃金に賦課する必要がある。そこから、小さな福祉国家の要求が発生してくる。社会ファンドは拡充すべきなのだろうか、縮減すべきなのか?
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第24回 | まとめと小テスト | 23回までの要点 |
第25回 | 企業別組合か、産別労働運動か? | 労働組合は、労働者の利益を守る組織と言われているが、企業別組合と産別・職種別・地域別労働組合は、根本的に性格が異なる。労働者の利益を守る労働運動はどちらだろうか? |
第26回 | 有期雇用労働者の一律雇い止め問題と産別・職種別労働組合運動 | 改正労働契約法の施行を契機とする有期雇用労働者の一律雇い止めの動きに抵抗しているのは、産別職種別地域別の労働組合運動である。一律雇い止めをやめさせるどのような方法があるのだろうか? |
第27回 | アメリカ労働運動の転換と社会運動ユニオニズム:ビジネスユニオニズムか社会運動ユニオニズムか? | アメリカの労働組合は、産別組合であるが、1990年代以降、歴史的な転換を遂げた。それ以前の組合員の利益だけを守り、組合員の利益拡大により、組織を維持する、ビジネスユニオニズムから、社会政策の確立や充実を重視し、市民の権利の実現をめざす社会運動ユニオニズムへ向けて変化したのである。 |
第28回 | 日本の労働運動の復興と社会運動ユニオニズム | 社会運動ユニオニズムの展開により、日本の労働運動の復興が可能なのではないか? |
第29回 | 福祉国家確立の展望:社会政策の今後の展開方向について | 日本社会の課題は、企業社会からの脱出である。そのためには、脱商品化の社会政策を展開するべきではないか? また、脱階層化の社会政策を展開するべきではないか? |
第30回 | まとめ | |