講義名 現代産業論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金3
単位数 4

担当教員
氏名
小林 世治

学習目標(到達目標) 産業分析・研究の力を養い,各種の「業界分析」や「産業レポート」を読みこなし,社会人として必要な「業際コミュニケーション」ができるようにします。「産業」は経済学でいうミクロとマクロの「間」にあり,個別産業の具体的な構造・動態(ダイナミズム)を知ることによって、それらの経済学分野への関心が高まり、学習が促されます。ここでは,「実体経済」の中心である製造業,中でも機械工業をとりあげます。多段階で複雑な構造をもった企業内外の分業・協業のシステム,そして背後にある技術の発展と,労働の結合つまり組織の構築など,「経営学」の基本的な考え方にも接することができるでしょう。
授業概要(教育目的) 本講義のテーマは「サプライヤーの世界」です。自動車とIT家電に代表される今日の耐久消費財は,これまで各国経済の発展を引っ張ってきました。最終製品は機械であり,それを作る手段も機械です。「現代産業」の一大部分は,こうした機械を製造する部門=機械工業です。そして家電で2000点,自動車で20000点といわれる大量多種類の部品から構成される機械は,多くの部品供給者=サプライヤーなしには成立しません。前期では,機械工業のうち自動車と電子機器という2大分野をとりあげ,比較検討します。後期には,今日,重要性が高まったサプライヤーの,ミクロとマクロに関する4つのトピックをとりあげ,産業分析を行います。
授業計画表
 
項目内容
第1回第1回 
はじめに:産業比較の面白さ
産業分類および本講に関係する基礎概念を説明します。
第2回第2回 Ⅰ 機械工業の世界
(1)日本の経験
日本における大衆消費社会の形成(高度成長)と成熟(現在)を概観します。
第3回第3回 Ⅰ
(2)サプライヤーの位置づけ
アセンブラーとの関わりからアプローチします。
第4回第4回 Ⅰ
(3)道具から機械へ
機械および機械工業の歴史的形成を学びます。
第5回第5回 Ⅱ ME革命
(1)「神経系」
「現代産業」の技術的基礎を整理します。
第6回第6回 Ⅱ
(2)フレキシビリティ
現代の「生産システム」の特徴を探ります。
第7回第7回 Ⅱ
(3)「産業融合」
「情報化」がもたらす「産業システム」の変化について考えます。
第8回第8回 補足:取引コストと企業境界の理論「産業システム」を考える理論枠組みを紹介します。
第9回第9回 Ⅲ 自動車
(1)規模の経済
自動車工業の一般的特徴と,「大量生産」の意義を学びます。
第10回第10回 Ⅲ
(2)トヨタ・システム
「日本型生産システム」の特徴を探ります。
第11回第11回 Ⅲ
(3)電子化
電気自動車になる前に起こった,カー・エレクトロニクスの現状を概観します。
第12回第12回 Ⅳ 電子機器
(1)経験効果?
電子機器工業の発展ダイナミズムを探ります。
第13回第13回 Ⅳ
(2)セル生産方式
LCA(安上がりの自動化)が普及した,日本の電子機器・部品組み立てを見てみます。
第14回第14回 Ⅳ
(3)オープン化
「互換性」原理から標準化,そしてオープン化への流れを追っていきます。
第15回第15回 中間のまとめ(小テスト)前期(14回)のまとめを行います。
第16回第16回 Ⅴ サプライヤー・システム    (1)自動車・電機の比較「サプライヤー・システム」など基礎概念のより進んだ定義をします。
第17回第17回 Ⅴ
(2)系列と下請
日本型「サプライヤー・システム」について概観します。
第18回第18回 Ⅴ
(3)独立サプライヤー
独立性が目立つのは,全てのサプライヤーではありませんが,「1次下請」に限りません。
第19回第19回 Ⅵ モジュール化
(1)アーキテクチャ論
「モジュール化」の意味を理論的に明らかにします。
第20回第20回 Ⅵ
(2)自動車の場合
自動車工業におけるモジュール化の「実際」を見てみます。
第21回第21回 Ⅵ
(3)系列崩壊?
日本においてもオープン化=「市場化」は進んでいるのでしょうか。
第22回第22回 補足:国際産業の世界グローバル化が進む「現代産業」と国民経済・地域の関係を概括します。
第23回第23回 Ⅶ アウトソーシング
(1)スマイルカーブ
「企業境界」の最近の動向を考えます。
第24回第24回 Ⅶ
(2)EMS
世界的な台湾のEMS企業(鴻海)をとりあげます。
第25回第25回 Ⅶ
(3)中国式!
参考文献(丸川著)の内容を要約します。
第26回第26回 Ⅷ 産業集積
(1)産業集積とは
経済地理学の議論を紹介し,「企業城下町」型の盛衰(電機:旧松下)を概観します。
第27回第27回 Ⅷ
(2)バーミンガム
最後のイギリス量産車メーカー・ローバーの消滅から,「特化型」産業集積の脆弱さを確認します。
第28回第28回 Ⅷ
(3)広東省
今日の中国・珠江デルタ産業集積がもつ複合性と,転換のダイナミズムを紹介します。
第29回第29回 
おわりに:21世紀産業の展望
「危険社会」と原発問題を考えます。
第30回第30回
まとめ(小テスト)
後期(16回以降)のまとめを行います。
授業形式 あらかじめEcoLinkから「講義レジュメ」をダウンロードし,予習をしていることを前提とします。PPTを用いて説明しますが,質問にはその都度対応します。内容の理解度を確認するため,適宜「小テスト」(「中間のまとめ」「まとめ」の回も)を行います。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
60% 10% 20% 10% 0% 100%
評価の特記事項 4年生については「就活」による出席不足を考慮しますが,2・3年生はその他理由も含め(病気は別)斟酌しません。
テキスト 特定のテキストはありません。毎回レジュメをEcoLinkに掲載しますので,必ずダウンロードし印刷すること。できるだけ原資料(多くがWeb公開)にあたり,予習しておいてください。
参考文献 丸川知雄『現代中国の産業』,中公新書,780円+税.
藤本隆宏『能力構築競争』,中公新書,960円+税.
オフィスアワー(授業相談) 随時、以下のアドレスにて質問等、受け付けます。
kobayashi.seiji@nihon-u.ac.jp
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 私語厳禁です。学友の正常な受講を妨げる「権利」はありません。
インターネットなどで各種の「産業レポート」を読んでください。
関連科目としては,「工業経済論」「中小企業論」があります。