講義名 都市・農村システム論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 木3
単位数 4

担当教員
氏名
宮地 忠幸

学習目標(到達目標) 1.第二次世界大戦後の日本における都市・農村の地域問題を経済地理学的視点からとらえることができる。
2.都市・農村問題の形成要因を説明できる。
3.都市・農村問題の多様性と関連性を説明できる。
4.地域問題の克服へ向けた地域における主体的な対応の意義を説明できる。
5.日本の地域構造の特質について説明できる。

授業概要(教育目的) 本講義は,主として日本における地域構造,地域システムの特質を理解するとともに,日本の構造的特質の下における地域の主体性の意義を考察する。前期は,地域のシステム化のなかで生じてきた地域問題の諸相を歴史的・社会的に理解しながら考えていきたい。後期は,地域のシステム化の進展の実態と新たに登場し始めている「地域再生」へ向けた取り組みを多角的に取り上げながら,その可能性や方向性について考察していく。その上で,最後に日本の都市・農村システムの方向性について考察する。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンスグローバル化の下における地域の多様性を学び,認めることの意義を考える。
第2回日本社会の構造的特質を学ぶ(1)
 -戦後復興の社会的背景と都市・農村システムの再構築-
戦後復興期における日本社会の変化と都市・農村システムの新たな動向を明らかにする。
第3回日本社会の構造的特質を学ぶ(2)
 -「戦後」とは何か?を再考する-
沖縄、ハワイにみる「戦後」と日本社会の構図を明らかにする。
第4回日本社会の構造的特質を学ぶ(3)
 -高度経済成長の社会背景と都市・農村システムの再構築-
高度経済成長の社会的背景と高度成長にともなう都市・農村システムの特徴を明らかにする。
第5回日本社会の構造的特質を学ぶ(4)
 -高度経済成長の背後で生じていた地域問題-
水俣にみる「成長の犠牲」の構図を明らかにする。
第6回日本社会の構造的特質を学ぶ(5)
 -低成長期における都市・農村システムの再構築-
経済の低成長への移行要因と「地方の時代」の社会的背景を明らかにする。
第7回日本社会の構造的特質を学ぶ(6)
 -「発展なき成長」論を学ぶ-
1980年代の海外直接投資の進展と「地方の成長」の(歴史的)限界を明らかにする。
第8回日本社会の構造的特質を学ぶ(7)
 -東京一極集中とバブル経済の成長の背景を探る-
東京一極集中の要因とバブル経済の成長要因を明らかにする。
第9回日本社会の構造的特質を学ぶ(8)
 -デフレ不況下の日本の地域構造の変化を学ぶ-
1990年代以降における日本経済の動向と日本の地域構造の変化を明らかにする。
第10回企業立地の特性からみた日本の地域システム本社,支店等の立地動向を踏まえて,日本の地域システムの特質を明らかにする。
第11回都市における中心性の再構築都市再開発の実態とその背景を明らかにするとともに,都市における「過密」の新局面を明らかにする。
第12回アグリフードシステムの展開と食料安全保障問題「食」のグローバル化がどのような時代背景のなかで進展し,その結果としてどのような地域的問題が懸念されるようになったのかを理解する.
第13回農産物貿易の拡大が農業地域に与えた影響日本の農産物市場の開放の歴史を把握しながら,農産物貿易の拡大が農業地域にどのような影響を与えたのかについて明らかにする。
第14回過疎問題の形成要因と問題の現局面「過疎」問題の形成時期,その要因,問題の特質を明らかにする。
第15回中山間地域問題の形成背景と振興課題中山間地域問題の形成要因,特質を踏まえて,中山間地域の社会的意義を理解し,その振興課題を明らかにする。
第16回「システム化」された社会の下で「ローカル」の価値を考える(後期のガイダンスを兼ねて)都市・農村の関係がシステム化されるなかで,個々の地域の価値を学び,認めることの重要性を考える。
第17回農業基本法の下で展開した農業政策の特徴と都市・農村システムの再構築農業基本法の目的,登場の社会的背景,農基法農政の特徴を明らかにするとともに,農業基本法が日本経済・社会に果たした役割を明らかにする。
第18回日本の地域システム化の下で生じた農村工業化企業内地域間分業の実態を把握することで,日本の地域システム化の下で,地方(農村)がどのように位置づけられたのかを明らかにする。
第19回リゾート開発にみる都市・農村システムの「限界」リゾート開発の登場背景と開発の実態を踏まえながら,当初の目論み通り進展しなかった要因を明らかにする。
第20回日本の地域システム化の下で生じた農村における土木・建設業の成長地域振興立法の登場とその下で土木・建設業が成長した要因を明らかにする。
第21回市町村合併の進展と新たな都市農村のシステム化2000年代に急速に進展した市町村合併の実態と合併に伴う都市農村の新たなシステム化の問題を明らかにする。
第22回「国土の長期展望」に示された都市・農村の将来像国土交通省が示した「国土の長期展望」で指摘している都市・農村の将来像と,そうした将来像が示された背景を明らかにする。
第23回都市農村交流が目指す日本社会の方向性グリーンツーリズム,アグリツーリズム,エコツーリズムなど,「ツーリズム」が登場した社会的背景と交流が目指す日本社会の方向性を考察する。
第24回産業間連携が求める新たな地域経済像農商工連携,6次産業化の目指す地域経済像を考察する。
第25回流域を単位とした地域間連携の可能性水源税,環境税など,河川の流域を単位として構築されるようになってきた新たな地域間連携の可能性を探る。
第26回文化的遺産としての景観の保全の意義景観保全(とくにここでは文化的景観の保全)の現代的意義を考察する。
第27回都市における景観保全とその商品化都市景観を商品価値として活用する事例から,景観保全の意義や可能性を考察する。
第28回農村における景観保全とその商品化農村景観を商品価値として活用する事例から,景観保全の意義や可能性を考察する。
第29回再考・日本の地域構造,地域システムと地域振興の方向性改めて日本の地域構造や地域システムの特質を確認し,各地域ですすめられている地域振興の方向性やその意義を考察する。
第30回日本の地域構造,地域システムの特質と新たな社会像の模索ロハス,地産地消,CSAの今日的意義,地方分権化や道州制導入の意義や問題点を考察する。
授業形式 本講義は,講義形式を中心としますが,受講生に自らの問題として講義内容を学んでもらえるよう工夫したいと考えています。講義では,具体的な現象から問題の本質や解決へ向けた方策を考えたいと思いますので,適宜,視聴覚教材を活用して講じていきます。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
70% 0% 30% 0% 0% 100%
評価の特記事項 前期は2回,後期は1回「小テスト」を行う予定です。なお評点には含めませんが,出席を毎時間とります。受講生には,2/3以上の出席を求めます。2/3の出席は,定期試験の欠格条件をみるために使用します。
テキスト 特定のテキストは使用しません。
参考文献 ・岡田知弘・川瀬光義・鈴木誠・富樫幸一(2007)『国際化時代の地域経済学 第3版』有斐閣アルマ,2100円.
・中俣均編(2004)『国土空間と地域社会』朝倉書店,3990円.
・松原宏 (2006)『経済地理学』東京大学出版会,4800円.
・高柳長直(2006)『フードシステムの空間構造論』筑波書房,3500円.
・小田切徳美編(2013)『農山村再生に挑む』岩波書店,2700円.
オフィスアワー(授業相談) 木曜日昼休み,4限の時間帯とします。ただし,受講生の要望に応じて,適宜対応します。メールアドレスを公開しますので,メールでの問い合わせにも対応したいと思います。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 木曜日・5時限目の「経済地理学」とあわせて履修することが望ましい。