講義名 人事労務管理論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 土2
単位数 4

担当教員
氏名
岩出 博

学習目標(到達目標) 日本企業における人事労務管理(人的資源管理)の理論と実践の基礎的理解を確実なものにし,将来的に自らの労働生活を考えていくことができる問題解決力を身につける。
授業概要(教育目的) 人事労務管理とは,企業における労働者(労働力)の調達・活用・処遇に関わる管理活動のことである。今日,人間は企業競争力の源泉であるという考え方が強くなっており,そのため人的資源管理という呼称も一般化してきている。本講義は,主として激変する今日の日本企業の人事労務管理に焦点を当て,人事労務管理の基本的な理論的内容とともに,現下日本企業における人事労務管理の実践的な姿を映像資料を参照しながら概説していく。
授業計画表
 
項目内容
第1回講義設計と講義の進め方人事労務管理の講義を進めるに当たり,具体的な講義テーマ設定の背景にある問題意識を解説する。
第2回現代の労働と人事労務管理組織に雇われて働く雇用労働が一般的である今日,雇用労働の内実に人事労務管理はどう関わっているかを述べる。
第3回人事労務管理における労働者観の変遷人事労務管理における労働者観の変遷を科学的管理法,人間関係論,行動科学にもとづき説明する。
第4回成熟社会の人事労務管理(1):従業員欲求の高度化経済発展の結果,先進諸国では人々の欲求は多様化・高度化している。こうした時代における人事労務管理はどうあるべきかを概説する。
第5回成熟社会の人事労務管理(2):グローバル化と労働CSR経済のグローバル化が進む今日,企業は国内のみならず,進出国における雇用労働にも社会的責任(CSR)を負わねばならない。労働CSRが強調される今日的な人事労務管理事情を概説する。
第6回企業経営における人事労務管理の役割と組織人事労務管理はどのような貢献を企業に対して行っているのか。企業の利潤追求という枠組の中で,人事労務管理の役割と組織を論じる。
第7回人事労務管理の制度内容人事労務管理は多様な制度や手続きで構成される総合的管理制度である。なぜそうした制度内容を必要とするのか。その理由を理論的に概説する。
第8回戦後日本の経済復興と日本型人事労務管理戦後日本の経済復興をたどり,高度経済成長を支えてきた日本型人事労務管理体制の特徴を概説する。
第9回終身雇用慣行とその変化終身雇用慣行の経営的な意義を説明するともに,バブル経済崩壊以後のその変化のあり方を概説する。
第10回年功序列慣行とその変化日本企業の組織・賃金・人事秩序の基軸となっていた年功序列慣行の意義と,バブル経済崩壊以降の変化を概説する。
第11回企業別労働組合とその変化戦後日本の企業発展を支えてきた労使協調的な企業別労働組合の強みと弱みとともに,今日的な労働組合運動が抱える問題を概説する。
第12回企業社会における女性社員(1)男女雇用機会均等法高度経済成長期に主流になる核家族化の中の専業主婦。男は仕事,女は家庭といった価値観の広がりの中で,伝統的な職場社会における女性社員の位置づけとその改善のための法制度を概説する。
第13回企業社会における女性社員(2)ワーク・ライフ・バランス根強い性別役割分業意識の中,日本女性の特徴的な就労パターンを説明し,その克服をめざす世界的な潮流としてのワーク・ライフ・バランス運動の日本における展開を概説する。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ
第15回中間のまとめまとめ
第16回今日の企業の雇用政策日本企業の人事労務管理の制度的な各論を説明していく上で前提となるバブル経済崩壊以降の企業の雇用政策の変化を概説する。
第17回従業員の採用(1)新卒採用の実際雇用管理の第一の役割は,企業が必要とする労働力の調達である。日本企業における労働力の外部調達の中心的な手続きとなる新卒採用の実際を概説する。
第18回従業員の採用(2)雇用のミスマッチ新卒採用に関連し若年者の早期離職が増大している。この背景には雇用のミスマッチがあるといわれている。雇用のミスマッチの内実を説明するとともに,その削減の取り組みを論じる。
第19回従業員の離・退職管理(1)定年退職制度終身雇用と定年退職制度が一体化し,安定的に機能してきた定年退職制度は,少子・高齢社会の到来により雇用の流動化と雇用の継続という相反する2つの要請のはざまにある。その具体的な事情を概説する。
第20回従業員の離・退職管理(2)従業員の雇用調整雇用管理の影の部分として雇用調整がある。企業活動上,必要とする従業員の質と量の適正な維持を達成するために必要な活動の内実を説明する。またグローバルな企業競争の激化の中,雇用調整の新たな動きも論じる。
第21回従業員の配置と育成(1)配置と異動従業員の配置と育成とは,私たちが採用されたあとのキャリア形成と職務能力蓄積のための活動である。ここでは職務履歴となるキャリア形成の手続きを概説する。
第22回従業員の配置と育成(2)教育訓練・能力開発従業員の配置と育成とは,私たちが採用されたあとのキャリア形成と職務能力蓄積のための活動である。ここでは直接的に従業員の能力的育成のための制度的な内容を概説する。
第23回従業員能力の発揮と活用(1)従業員業績のAMO理論従業員の仕事上の業績はどのように働かせれば向上するのか。そのメカニズムを理論的に説明する。
第24回従業員能力の発揮と活用(2)職場管理者のリーダーシップ人事労務管理の公式の制度とは異なる職場管理者の人事労務管理責任をはたす中心的な施策がリーダーシップのあり方である。職場管理者の人間技能としてのリーダーシップを理論的に説明する。
第25回従業員能力の発揮と活用(3)組織の環境従業員の業績向上に影響をあたえる物理的・制度的環境について,従業員心理に即した施策展開を論じる。
第26回従業員の働きぶりの評価と処遇(1)人事評価制度従業員の人事的・金銭的処遇を行う前提にある人事評価制度の全体像と今日的な課題を説明する。
第27回従業員の働きぶりの評価と処遇(2)賃金処遇と成果主義化従業員処遇の最大に関心事である経済的処遇としての賃金問題を考える。とくに成果主義処遇化が進む今日,その問題点を論じる。
第28回従業員の働きぶりの評価と処遇(3)企業内福利厚生従業員の経済生活を補完する企業内福利厚生の歴史的な展開と,処遇の成果主義化が進む今日,その変化と課題について論じる。
第29回理解度の確認16回以降のまとめ
第30回まとめまとめ
授業形式 テキストに準拠しつつ,新たな内容を加えた講義用のレジュメを毎回配付する。また,各回講義のテーマに適切なVTRを組み込み,視聴覚的な理解を促す。講義は,基本的にテキストに沿ったかたちで進めるが,レジュメにはテキストに盛られていない内容が載せられている。テキストが刊行された時期以降の新たな動きも情報提供するためである。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
45% 0% 45% 10% 0% 100%
評価の特記事項 小テストは定期試験と同じウェイトをもつ。出欠確認で欠席した場合のマイナス点はもうけない。ただし出席加点はある。
テキスト 岩出博『新・これからの人事労務』(改訂重版)泉文堂,2011年,2800円.
オフィスアワー(授業相談) 金曜3時限(13:00~14:00)研究室
なお,相談者は前日までにEメールでその旨連絡してほしい。
(iwade.hiroshi@nihon-u.ac.jp)
事前学習の内容など,学生へのメッセージ ①授業で使用するレジュメは,ECOLINKから各自ダウンロード,プリントアウトし持参すること。その週の月曜日ないし火曜日にはアップする。
②レジュメに記載されているテキストの該当ページを読み,自らレジュメの空欄を埋める努力をしてほしい。