講義名 経済特殊講義Ⅱ(農と暮らしを支えるコミュニティ経済論)) ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 木5
単位数 4

担当教員
氏名
吉村 秀清

学習目標(到達目標) わが国のコミュニティが経済の発展とともにその機能を失いつつあり、社会生活の維持に支障をきたしていることから、その回復が求められている。本講義では、人々が暮らしているコミニュティが単に経済原則だけで動いているのではなく、置かれた地理、環境、歴史、人間生活など多面的な要素が有機的に関連していることを学ぶ。コミュニティ機能喪失問題は、都市においてより深刻であるが、農山村地域では失われてきたとはいえ一部残っており、農山村地域の実態を分析しコミュニティの持つ多様な機能を理解することによりこれからの地域活力を高める取り組みに寄与できる力を修得する。
授業概要(教育目的) コミュニティ問題を、前期には多面的な視点から分析する手法を学びながら、福島県本宮市を事例にしながら公的統計や地域の情報を利用した実践的分析手法を修得できるような講義内容とする。後期には地域コミュニティと1次産業との係りのなかでその有機的な関係性の重要性を学びながら、更にこれから求められるコミュニティビジネスの基礎から取組まで学ぶことができる講義内容とする。また、地域を分析する用語として必要な用語について随時解説を加えた実践的授業とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回総論
本講義の全体を概観しながら、本講義の狙いを解説する。
第2回地域に発生している諸現象
過疎化、高齢化、農林水産業の衰退と地域維持への影響を解説する。
第3回今、なぜ「ふるさとづくり」か
「ふるさと」の価値を再認識し、「ふるさとづくり」の意義について学ぶ
第4回「ふるさとづくり」と施策解説
「ふるさとづくり」に関する施策を5つの類型に整理し、事例を交えながら総合的に解説する。
第5回地域を知る手法(1)
事実の発掘(歴史、自然、地形、各種等)の方法を解説する。
第6回地域を知る手法(2)
フィールドサーベイによる地域資源・課題の発掘の方法を解説する。
第7回地域を知る手法(3)
調査結果の定量分析手法と合意形成に向けての考え方を解説する。
第8回地域分析に使える小地域統計(1)
わが国の公的統計体系と小地域統計の種類を説明し、その利用方法を解説する。
第9回地域分析に使える小地域統計(2)
国勢調査、経済センサス等の見方、使い方を解説し、それらの統計から何が分かるかを解説する。
第10回地域分析に使える小地域統計(3)
農林業センサスを初めとした農林統計を概観し、主に農業構造の分析方法を解説する。また、農業集落データの見方・使い方を解説し、集落分析の方法を学ぶ。
第11回本宮市ってどんなとこ(1)
福島県の県内区分によりそれぞれの特性を概観することにより本宮市の地域構造としての特徴を浮き彫りにする。
第12回本宮市ってどんなとこ(2)
本宮市のの歴史と地理、人口の推移等を見ることにより、本宮の動向を解説する。
第13回本宮市ってどんなとこ(3)
経済センサスを使い本宮市の産業構造を解説する。
第14回本宮市ってどんなとこ(4)
農林業センサスを使い本宮市の農業構造を分析し、本宮市農業の特徴を解説する。また、本宮市の集落分析を通じて、農業集落の変遷を学ぶ。
第15回中間のまとめ
まとめ
第16回くらしとと地域
まつり、行事、イベントと地域を維持する関わりを解説し、その重要性を学ぶ。
第17回地域社会の構造
現代コミュニティ論を概観することにより、コミュニティ基礎の解説し、その重層性や関係性を理解する。
第18回経済発展と地域社会
経済発展がコミュニティに与えた影響とこれからの地域のあり方を解説する。
第19回人口減少とコミュニティ経済
人口減少時代の社会特性とそれを支えるコミュニティ経済のあり方を解説する。
第20回農業と地域社会(1)
農業の衰退と農村地域への影響を解説しながら、これからの農業再興に向けての農村集落の必要性を学ぶ。
第21回農業と地域社会(2)
土地利用の変化と耕作放棄地の発生メカニズムを解説する。
第22回林業と地域社会(1)
林業経済の基礎構造を概観し、林業の衰退が山村地域に与えた影響を解説する。
第23回林業と地域社会(2)
入会林野、里山、草原と地域社会との関わりを概観し、その復活の必要性を解説する。
第24回漁業と地域社会
漁業経済の基礎を概観し、漁業経済の構造的変化のなかでの漁業集落の役割を解説する。
第25回持続可能な地域社会づくり(1)
持続可能な社会の基盤となる「コミュニティ」の役割を整理し、その実現のためのコミュニティビジネスの可能性を探る。
第26回持続可能な地域社会づくり(2)
コミュニティビジネスの機能や効果を踏まえて、どのような協働の可能性があるのか、課題は何かを学ぶ。
第27回持続可能な地域社会づくり(3)
行政サービスと民間ビジネスとの共通点、相違点を整理しながら、コミュニティビジネスの特殊性を解説し、それを牽引する企業家の役割を解説する。
第28回持続可能な地域社会づくり(4)
多様なコミュニティビジネスを整理し、コミュニティビジネスの経営課題を事例を見ながら考える。
第29回持続可能な地域社会づくり(5)
まとめとして、コミュニティビジネスが切り開く新しいまちづくり事業について解説する。
第30回まとめ
まとめ
授業形式 講義形式ですが、私と学生の間でコミュニケーションをとるために発言を求めますので積極的に回答するようにしてください。また、講義以外に、夏休み期間中に本学部と交流協定を結んでいる福島県本宮市を訪問し(2泊3日の予定),現地調査、地域住民との交流、農業体験を通じて肌で本講義の課題を習得する農村調査を計画します(受け入れ等の関係から20名程度の限定となります)。なお本宮調査は必須ではありません。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
60% 0% 40% 0% 0% 100%
評価の特記事項 出席は毎時間とります.受講生には,2/3以上の出席を求めます.2/3の出席は,小テスト(前期の授業時に行う),定期試験の欠格条件をみるために使用します.
テキスト 特定のテキストは使わず、随時、講義内容、資料のプリントを配布します。
参考文献 ・広井良典(2010)『コミュニティを問いなおす』筑摩書房,903円
・生源寺眞一(2013)『農業と人間』岩波書店,2205円
・藻谷浩介他(2013)『里山資本主義』株式会社KADOKAWA,820円
・野田公夫他(2011)『里山・遊休農地生かす』農村漁村文化協会,2730円
・風見正三他(2012)『コミュニティビジネス入門』学芸出版社,2415円
オフィスアワー(授業相談) 木曜日5限後とします.事前のアポをお願いします