講義名 租税法 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水5
単位数 4

担当教員
氏名
立川 正三郎

学習目標(到達目標) 1 租税の意義、種類、体系を修得する。
2 法人税、所得税、相続税・贈与税、消費税、等の主な税目について計算方法、課税方法、申告・納付方法の概要を修得する。
3 そのような方法がとられた理由としての基本的な考えを修得する。
授業概要(教育目的)  租税法は,経済社会のあらゆる分野に影響を与えている。社会人になったとき,どのような分野に行ったとしても租税法の基本的な知識とその原理を知っていれば大きな力となると考える。
 このような租税法の有用性,実用性を踏まえ,前期では,個人における所得税を中心に相続税・贈与税も,後期では法人税を中心に消費税も、できる限り分かりやすく理論的,体系的に解説する。
 さらに、ここ数年の税制改正の流れを踏まえた上で,今後の我が国経済の動向・経済政策のあり方も説明する。
授業計画表
 
項目内容
第1回租税とは   租税の基本概念と主な租税について、①租税の意義 ②租税の体系 ③租税の法源 ④租税法律主義 ⑤租税公平主義 ⑥租税の種類、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第2回所得税の仕組み(所得税①)   所得税の基本構造について、①所得概念 ②課税単位 ③納税義務者 ④所得分類、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
[準備学習]
 前回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
 (次回以降も同じ)
第3回事業をしたとき(所得税②)   事業所得について、①事業所得の計算方法 ②同一生計親族への対価 ③家事費、等を説明する。
 特に、個人と家族との関係を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第4回不動産を貸しつけたとき(所得税③)   不動産所得(貸付け)について、①不動産所得の区分 ②不動産所得の計算方法、等を説明する。
 特に、事業的区分と業務的規模との差異を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第5回不動産や山林を売却したとき(所得税④) 譲渡所得(不動産)、山林所得について、①不動産の譲渡所得の区分と計算方法 ②自家用住宅の譲渡所得の区分と計算方法、③山林所得の計算方法、等を説明する。
 特に、資産の種類による譲渡所得の課税方法の差異とみなし譲渡の内容を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第6回金融資産を運用したとき(所得税⑤) 利子所得、配当所得、譲渡所得(株式)について、①利子 ②配当 ③有価証券の譲渡所得 ④先物取引の所得、の区分と計算方法を説明する。
 特に、NISAを含めた株式に係る課税方法を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第7回サラリーマンになったとき(所得税⑥) 給与所得、退職所得について、①給与所得の計算方法 ②給与所得控除 ③退職所得の計算方法 ④ストックオプションの課税方法、等を説明する。
 特に、サラリーマンが受ける給与に係る課税範囲を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第8回アルバイト収入や年金や宝くじ当籤金を得たとき、
所得金額が赤字になったとき
(所得税⑦)
①一時所得、雑所得(含、年金)について、の内容と課税方法を説明する。
②個別の所得または全体の所得が赤字になったときの課税の平準化措置としての損益通算、繰越控除、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第9回確定申告書を作成するとき(所得税⑧) 確定申告に必要な仕組みについて、①所得控除 ②税率 ③税額控除 ④申告・納付、等を説明する。
 その説明を受けて現物の確定申告書に実際に記入する。
 
第10回申告を間違えたとき,滞納したとき 国税通則法について、①租税債務の確定 ②除斥期間 ③加算税 ④延滞税 ⑤申告・更正の請求手続、等を説明する。
 特に、無申告、過少申告であった場合に課税される加算税を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第11回外国に赴任すると   個人の国際課税について、①居住者と非居住者の区分 ②国内源泉所得の区分 ③租税条約 ④非居住者の課税方法、等を説明する。
 特に、サラリーマンが海外に転勤した場合を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第12回相続をしたとき 相続税について、①納税義務者 ②課税財産 ③財産評価 ④税額計算 ⑤申告・納付、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第13回贈与を受けたとき   贈与税について、①納税義務者 ②課税財産 ③税額計算 ④申告・納付 ⑤親からの贈与 ⑥農地・取引相場のない株式の贈与 ⑦相続時精算課税、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第14回中間時の質疑応答 中間時の質疑応答を受け、受講者に対して十分に補足説明を行う。
 具体的事例があれば、税法の適用について説明し、議論を行う。
第15回中間のまとめ  まとめ
第16回法人税が課税される事業主体とはー法人税Ⅰ
(法人税①)
 法人税の基本的な考え方として、①課税根拠 ②法人とは ③多様な事業体―組合、LLP/LLC、信託 ④収益事業 ⑤個人との二重課税、等を説明する。
 特に、法人、組合、信託の差異を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第17回法人税の課税所得とはー法人税Ⅱ(法人税②)
 法人税の基本的な考え方として、①企業利益と課税所得 ②益金・損金 ③資本等取引 ④公正処理基準 ⑤確定決算基準、等を説明する。
特に、無償譲渡に説明する。
 また、簿記を履修していない受講生に対して極めて簡単な腹式簿記の原理を説明し、その説明を受けて具体的な事例で考える。
第18回収益を計上するには(法人税③)
 法人税の収益・利益の益金算入の時期と計算について、①権利確定基準 ②棚卸資産の譲渡収益 ③有価証券の譲渡収益 ④特殊な販売収益 ⑤受取配当、等を説明する。
 特に、みなし配当を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第19回費用を計上するには Ⅰ(法人税④)
 法人税の費用・損失の損金算入の時期と計算について、①費用収益対応原則 ②棚卸資産の譲渡原価 ③有価証券の譲渡原価 ④デリバティブ取引 ⑤減価償却、等を説明する。
 特に、固定資産の減価償却の計算方法を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第20回費用を計上するには Ⅱ(法人税⑤)
 法人税の費用・損失の損金算入の時期と計算について、①繰延資産の償却 ②固定資産の圧縮記帳 ③債務確定基準 ④前期損益修正 ⑤リース取引、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第21回費用を計上するには Ⅲ(法人税⑥)
 法人税の費用・損失の損金算入の時期と計算について、①役員給与 ②寄附金 ③交際費 ④損害賠償金、等を説明する。
 特に、役員給与、寄附金、交際費、等の区分を基本的な考え方に基づき説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第22回費用を計上するには Ⅳ(法人税⑦)
 法人税の費用・損失の損金算入の時期と計算について、①特別な評価損 ②貸倒損失 ③引当金・準備金 ④海外渡航費 ⑤借地権、等を説明する。
特に、評価損、貸倒損失を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第23回欠損金を利用するには
税率、税額計算は
申告・納付は (法人税⑧)
 法人税における、①欠損金の繰越し・繰戻し還付 ②税率・税額計算 ③税額控除 ④同族会社の行為・計算の否認、等を説明する。
特に、欠損金の繰越しを説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第24回グループ法人税制とは(法人税⑨)
完全支配関係にある法人間の取引を特別に取り扱う100%グループ法人税制について、①完全支配関係 ②グループ内の資産の譲渡 ③グループ内の寄附金・贈与 ④グループ内の現物分配 ⑤グループ内の発行会社への株式譲渡 ⑥欠損金の引継ぎ、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第25回企業組織再編税制とは(法人税⑩)
近年資本の移転が急速化することにより広く行われている組織再編成について、①合併 ②分割 ③現物出資 ④株式交換 ⑤株式移転 ⑥適格要件と税務処理、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第26回連結納税とは(法人税⑪)
 企業会計の連結財務諸表とは大きく異なる連結納税について、①連結対象 ②開始手続 ③連結事業年度 ④開始・加入時の時価評価 ⑤投資価額修正 ⑥連結欠損金 ⑦所得計算 ⑧申告・納付、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第27回法人の国際課税には(法人税⑫)
グローバル化した企業に対する国際課税について、①BEPS(課税浸食と所得移転)②移転価格税制 ③外国子会社合算制度 ④過少資本税制 ⑤過大支払い利子税制、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。

第28回消費税とは(法人税⑬)
税率引上げが予定されている消費税について、①消費概念 ②納税義務者 ③連結事業年度 ④課税・不課税・非課税 ⑤仕入税額控除 ⑥簡易課税 ⑦申告・納付、等を説明する。
 その説明を受けて具体的な事例で考える。
第29回最終の質疑応答 最終の質疑応答を受け、受講者に対して十分に補足説明を行う。
 具体的事例があれば、税法の適用について説明し、議論を行う。
第30回まとめ まとめ
授業形式 講義形式で行う。
 講義を行った後に,毎回,その日の講義内容を確認して理解を深めてもらうための小テストを行う。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
0% 0% 80% 20% 0% 100%
評価の特記事項 小テストでは講義にどの程度真剣に取り組んだかどうかを重点に評価する。次回授業前に配布される解答により必ず前回小テストの内容を確認して下さい。
テキスト 毎回プリント配布する(前回時に次回の要約版を配布)。
参考文献 立川正三郎『法人税法の基礎と理論』法令出版
オフィスアワー(授業相談) 水曜日 10:30~11:30 (事前登録をして下さい)
    14:40~15:40 (事前登録をして下さい)
事前学習の内容など,学生へのメッセージ  基本的な知識の習得は不可欠ですが,租税法の丸暗記をめざしているわけではありません。租税法がなぜこのような規定となっているのかについてその背景となる課税の考え方,経済取引の実態,日本経済の状況等との関係を,理解してもらえればよいと思っています。
 講義は連続しており出席しないと分からなくなってしまいますので,長期に欠席しないことを希望します。