講義名 金融論 ≪昼夜共通≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月5
単位数 4

担当教員
氏名
宮川 大介

学習目標(到達目標) 金融論とは,金融システム論,銀行論,企業金融論,投資理論(資産価格決定理論),マクロ金融理論といった多様な研究分野を総称したものであり,その正確な理解には,ミクロ・マクロ経済学のツールに加えて実務的な知識が必要となります。本講義では,金融に関連する上記の幅広いトピックスについて,経済学に基づいた理論的なバックグラウンドを重視しながら,可能な限りデータやエピソードに基づいた実証的・実務的な議論を行います。

受講者には,講義で学んだ知識やツールを使うことで,金融に関する日々の経済ニュースや企業活動・経済政策の動向などについて,自分なりの理解と評価が出来るようになることを期待します。
授業概要(教育目的) 前期は,まず「企業の金融活動」に関するトピックスを,企業財務の初歩的なツールを中心に解説します。続いて,金融システムの全体像を把握した上で,「銀行」の役割と「金融市場」の機能について紹介します。また,VCといった銀行以外の金融機関の役割、証券化市場の仕組みなどについても解説します。

後期は,最初に資産価格理論の発展的なテーマとしてCAPMの基本的な考え方を解説します。続いて,閉鎖経済モデルを用いて金融政策の基本的な役割を学んだ上で,開放経済モデルを用いて為替レートの決定メカニズムを含めた金融政策の役割をより深く学びます。最後に,金融政策に関する幾つかの重要なトピックスを解説します。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション講義計画と成績評価に関する説明を行った上で,金融論を学ぶ目的と分析の対象となる経済主体について具体的な事例を用いて解説します。

【準備学習】
シラバスの内容を予め読んでおくこと。何故金融論に関心があるのか(無いのか)を自分なりにメモしておくこと。
第2回企業金融の基礎(1)企業金融論の対象,財務諸表の構成,投資・資金調達・資金繰りについて解説します。これらの知識は講義全体を通じて参照される重要な概念です。しっかり理解するようにしてください。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,企業の貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の基本的な構造を予習しておくこと。
第3回企業金融の基礎(2)企業の資金調達を経済学的に考える上でのベンチマークとなるMM定理とその限界を学んだ上で,最適資本構成に関する議論を行います。また,金融面(資金調達面)の制約が企業行動へどの様な負の影響を及ぼす可能性があるかについても議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,関心のある企業のウェブサイトからB/Sをダウンロードして出力しておくこと。
第4回金融システムの概要、銀行の役割(1)間接金融,直接金融,市場型間接金融の概念について概観した上で,株式市場,国債市場,社債市場,為替市場などの主たる金融市場やその他の市場(例:CDS市場)についてその機能を解説します。続いて,金融システムにおける主たるプレイヤーをリストアップした上で,特に,銀行の役割(決済・預金・融資、資産/期間変換機能・モニタリング/情報生産機能)について詳しく議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,自分が最も関心のある(関心のない)金融市場を選択しその理由を簡単にメモしておくこと。
第5回銀行の役割(2)企業と銀行の間の貸借関係を題材にして,企業金融における情報の問題(モラルハザード問題と逆選択問題)について定式化し,金融取引における情報の問題を解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,金融に関して情報の問題が起こりやすいケースを各自メモしておくこと。
第6回銀行の役割(3)銀行におけるリスク管理と銀行規制について実務的なトピックスを解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,以下の二行について指定した財務諸表をダウンロードして出力しておくこと。

http://www.mufg.jp/ir/fs/backnumber/2013mufg/pdf/mar/consoli_summary1303.pdf
(11頁~20頁目まで)
http://www.mufg.jp/ir/fs/backnumber/2013mufg/pdf/mar/consoli_summary1303.pdf
(6頁~12頁目まで)
第7回銀行以外の金融機関投資銀行,各種ファンド、ベンチャーキャピタルについて,その役割を概観します。併せて,市場型間接金融(証券化)の仕組みと近年の金融危機との関係についても議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,間接金融と直接金融の定義について復習しておくこと。
第8回株式市場と資産価格決定理論の基礎株式を題材にして,最も基本的な金融資産の価格付け方法であるDCF法を学びます。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,累乗の計算方法について確認しておくこと。
第9回債券市場の基礎(1)株式と債券の違いについて解説した上で,債券の価格付けについて基本的な考え方を学びます。また,ゼロクーポンボンドの定義や様々な債券(国債,社債,その他の仕組債)の定義についても学びます。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,新聞やインターネットのニュースソースで国債の利回り水準について確認した上で,その数字をメモしておくこと。
第10回債券市場の基礎(2)債券の価格付けに関する基本的な考え方を踏まえて,イールドカーブやフォワードレートの概念を学びます。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,新聞やインターネットのニュースソースを用いてどの様にイールドカーブを描画できるかを考えておくこと。
第11回ポートフォリオ理論(1)様々な金融資産を「リスクとリターン」の概念を用いて特徴付ける代表的な方法(シャープレシオ)について解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,ハイリスク・ハイリターンとローリスク・ローリターンの何れを好むか,各自考えておくこと。
第12回ポートフォリオ理論(2)前回の講義で学んだツールを用いて,「最適ポートフォリオ」がどの様に構築されるかを学びます。併せて,こうした手法の実務的な限界についても議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,シャープレシオの概念について復習しておくこと。
第13回中間テスト第12回の講義までを範囲とする中間テストを行います。
第14回小テストの解説(+必要に応じて追加の問題演習)小テストの解説を行うと共に,理解度が不足していると認められる箇所について,追加的な問題演習を行います。

【準備学習】
前期の内容は年度末の期末試験範囲でもありますので,各自しっかり復習するようにしてください。
第15回中間まとめまとめ
第16回CAPM(1)前期最後のパートで学んだ最適ポートフォリオ概念の実務的な問題点を踏まえて,インデックスモデル(ファクターモデル)を使うことのメリットを議論します。併せて,インデックスモデルの基本的な構造についても,若干の数学と統計学の知識を用いて定式化します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,平均・分散・標準偏差・相関係数の定義について予習しておくこと。
第17回CAPM(2)前回の講義で学んだツール用いて,CAPMを定式化します。その上で,CAPMの評価と最近の議論についても出来る限りカバーします。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,CAPMのどういった点が非現実的かを各自考えておくこと。
第18回ミクロの金融論とマクロの金融論これまでの議論で与件として与えられてきた経済変数としてどの様なものが有るかを確認した上で,ミクロの視点(個別の経済主体の視点)に加えて,マクロの視点(ある程度集計された経済活動や経済変数に着目する視点)を導入することの意義を議論します。併せて,後半の講義内容について概観します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,ミクロとマクロの金融論の何れにより関心があるかを各自考えておくこと。
第19回貨幣市場の基礎これまで明示的に取り扱ってこなかった「貨幣」について,その具体的な機能(ビットコインなどの仮想通貨に関する現代的な議論を含む)を概観した上で,実質利子率・名目利子率・インフレ率の関係,利子率・物価の決定メカニズム,中央銀行の基本的な機能と歴史について解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,フィッシャー方程式について予習しておくこと。
第20回IS-LMモデルの分析(1)金融政策の役割を議論する上で最も基本的なツールであるIS曲線とLM曲線の導出を行います。尚,本講義の内容はマクロ経済学の講義で学んだ内容を簡潔に復習するものです。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,マクロ経済学の講義で学んだ内容を復習しておくこと。
第21回IS-LMモデルの分析(2)前回の講義で学んだツール(総需要・総生産と金利の関係)を用いて,財政・金融政策の効果を解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,マクロ経済学の講義で学んだ内容を復習しておくこと。
第22回AD-ASモデルの分析とモデルの応用例第20回と21回の講義で学んだツールを用いて,総需要・総生産と物価の関係を解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,マクロ経済学の講義で学んだ内容を復習しておくこと。また,これまでの議論で不足している点を各自考えておくこと。
第23回国際金融(1)為替レートの概念を議論したうえで,その基本的な決定メカニズムとして一般的に考えられている幾つかの理論を解説します。併せて,幾つかの通貨制度の基本的な中身についても議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,ユーロの問題点について,新聞やインターネットのニュースソースを用いて自分なりに調べておくこと。
第24回国際金融(2)マンデル=フレミングモデルを定式化した上で,様々なマクロ変数と共に為替レートがどの様に決定されるかについて,一つの考え方を解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,過去10年程度の円/ドルレートの推移を確認しておくこと。
第25回為替と金融政策為替レートの決定メカニズムのうち,特に金融政策の影響について詳しく議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,最近の為替レートに対して日銀の金融政策が与えている影響について,新聞やインターネットのニュースソースにおける論調を自分なりに調べておくこと。
第26回金融政策に関する進んだトピックス(1)1980年代以降の金融政策の変遷を簡単に復習した上で,金融政策の目的(平時と不況時の金融政策),金融政策の手段(伝統的金融政策 vs. 非伝統的金融政策)について整理します。特に,ゼロ金利政策と流動性の罠,量的緩和の中身とその効果,インフレターゲティングの意義,時間軸効果の意味,非伝統的金融政策の中身,中央銀行のバランスシート問題),金融政策をめぐる論争(マネーサプライ論争、「ルール」対「裁量」)といったトピックスについて概観します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,上記の各用語について自分なりの説明が出来るように準備しておくこと。
第27回金融政策に関する進んだトピックス(2)前期に学んだ「企業レベルの金融制約が企業活動に与える影響」について復習した上で,金融政策の波及経路について詳しく議論します。また,各国の金融政策の運営方法(日銀・FRB・ECB等の体制,評価の視点)についても議論します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,以下のリンクにある「ノンテクニカルサマリー」を読んでおくこと。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/14e010.html
第28回金融政策に関する進んだトピックス(3)内容:景気変動やバブルと金融政策(発生・崩壊のメカニズム)との関係について,金融当局による金融機関検査・監督の仕組み,公的資金の注入,中央銀行の最後の貸手機能,政策金融の役割などを含めて解説します。

【準備学習】
講義レジュメを予め読んだ上で,以下のリンクにある日銀考査,金融庁検査,政府系金融機関の機能に関する概要に目を通しておくこと。

http://www.boj.or.jp/finsys/exam_monit/exampolicy/kpolicy13.pdf
http://www.fsa.go.jp/news/25/ginkou/20130830-5/01.pdf
http://www.dbj.jp/pdf/ir/about/plan/plan.pdf
https://www.jbic.go.jp/wp-content/uploads/page/about/plan/120711_keikaku_01.pdf
https://www.jfc.go.jp/n/company/plan.html
第29回問題演習主として後期の範囲を対象として,演習問題の解説を行います。

【準備学習】
事前にEcoLinkで配布する演習問題を各自解いた上で,講義に出席してください。
第30回まとめ16回以降の要点まとめ
授業形式 講義形式
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
70% 0% 30% 0% 0% 100%
評価の特記事項 成績評価のウェイトは,中間試験(=前期末に行われる小テスト)が30%,期末試験が70%です。
テキスト 特に教科書は指定しません。毎回の講義前にEcoLinkに講義レジュメをアップロードしますので事前に印刷して講義へ持参するようにしてください。
参考文献 講義中に適宜紹介します。
オフィスアワー(授業相談) 講義に関する質問は,金曜日2限(10:40~12:10)に研究室で受け付けます。必ず前日までにメール(第一回目の講義でアドレスを公開します)でアポイントメントを取ってから来てください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 金融論で学ぶトピックスは,金融業界だけに関係するものではありません。例えば,様々な業種の企画・営業・財務・経理セクションに加えて,公的部門でも業務の遂行に当たって金融市場や企業金融に関する基本的な知識が極めて重要となっています。本講義を皆さんにとっての効果的なトレーニング機会とできるように努めたいと思いますので,皆さんも予習復習を欠かさずに頑張ってください。

尚,講義の進行を妨げる行為を繰り返す学生については厳しい態度で臨みます。真面目に勉強しようとする学生の邪魔になる可能性のある学生は本講義の受講をお勧めしません。