講義名 外国史概説 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金3
単位数 4

担当教員
氏名
伊東 七美男

学習目標(到達目標) 以下の学力の獲得を目標とする。
1.古代から近世に至る地中海史の概略を示すことができる。
2.異文化交流の持つ歴史的意義を認識し,かつそれを説明できる。
3.西洋対東洋という二項対立的捉え方ではない広い視野からの歴史的考   察ができる。
4.グローバル化が進む現代と地中海史の学習の意義の関連を明確に示すこと ができる。
授業概要(教育目的) 古代から16世紀に至る地中海地域の歴史を,主に異文化間の接触・交流という側面に着目しながら概観する。地中海地域には古代エジプト文明,エーゲ文明,ギリシア・ローマの文明,イスラーム文明等様々な文明が出現した。地中海は古来海上交通が盛んであり,各文明はそれぞれの時期において地中海沿岸の他地域とさまざまな形で接触・交流を行った。個々の文明で程度の差はあるものの,他地域との相互交流あるいは対立は文明の性格やその歴史的展開に重大な影響を与えた。その様相を把握し,各文明を相対化して理解することを通じて歴史に対する広い視野からの考察力を養い,「学習目標」に挙げた諸項目の達成を図る。
授業計画表
 
項目内容
第1回地中海史の意義・地中海地域の気候・風土導入部,学習目標や学習目的等の説明。地中海地域の気候・風土と文化・文明との関係についても触れる。[準備学習]シラバスを熟読しておくこと。
第2回古代エジプト古代エジプトの統一から新王国時代までを扱う。とくにアジアとの関わりを強く持った新王国時代の性格に着目する。[準備学習]古代エジプトの歴史の基本的流れを把握しておくこと。
第3回古代メソポタミア,シリア,小アジア古代メソポタミア文明の概略を把握した上で,地中海東岸のシリア,小アジア(現在のトルコの地域)の歴史的意味を考察する。[準備学習]メソポタミアの地形・気候・風土の特徴を確認しておくこと。
第4回エーゲ文明(1)クレタ文明の性格を考察するとともに,エジプト,メソポタミアなどとの交流の状況に着目する。[準備学習]クレタ島の地理的位置や遺跡等を押さえておくこと。
第5回エーゲ文明(2)ミケーネ文明の性格を考察するとともに,エジプト,メソポタミアなどとの交流の状況に着目する。[準備学習]前回の授業で配付したプリントで,クレタ文明とミケーネ文明のそれぞれの遺跡の特徴の違いを確認しておくこと。
第6回フェニキア人・アラム人・ヘブライ人これら3民族のそれぞれの活動とその歴史的影響について考察する。[準備学習]これら3民族の居住地域および隣接地域の政治勢力を把握しておくこと。
第7回ポリスと地中海ギリシアに成立したポリス(都市国家)および地中海沿岸に多数建設されたギリシアの植民市を扱い,ポリスと地中海の関係について考察する。[準備学習]ギリシアの地理的位置や地形・風土,アテネやスパルタなど主要なポリスの地理的位置などを把握しておくこと。
第8回前5世紀のギリシアとペルシア戦争ペルシア戦争がギリシア世界に与えた影響を中心に扱う。[準備学習]ペルシア戦争の概略を把握しておくこと。
第9回前4世紀のギリシアアテネ・スパルタ・テーベなどのポリスの動向とマケドニアの覇権について考察する。[準備学習]マケドニアの地理的位置を押さえ,マケドニアとポリスの社会構造の違いを確認しておくこと。
第10回ヘレニズム世界と東地中海アレクサンドロス大王の東方遠征以後の時代(ヘレニズム時代)の諸王朝の動向を扱う。[準備学習]ヘレニズム時代の本質を理解しやすくするために,ポリスという存在の本質を復習しておくこと。
第11回ローマの成立と発展イタリア半島統一までのローマを扱う。[準備学習]ローマの地理的位置を押さえ,発展の概略を把握しておくこと。
第12回ローマの地中海統一ポエニ戦争からプトレマイオス朝の征服による地中海統一までを扱う。[準備学習]カルタゴ,シチリア島,イタリア半島の地理的関係やローマの領土拡大の概要を把握しておくこと。
第13回ローマ帝国の盛衰「ローマの平和(パックス=ロマーナ)」から西ローマ帝国滅亡までを概観し,ローマ帝国の地中海支配の意味を考察する。[準備学習]ローマ帝国の統治体制の特徴を理解しやすくするために,共和政ローマの政治体制の特徴を復習しておくこと。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ
第15回中間のまとめまとめ
第16回キリスト教の成立と発展キリスト教の成立と発展の背景や影響を考察する。[準備学習]キリスト教の基本的内容を確認しておくこと。
第17回ビザンツ帝国史ローマ帝国の東西分裂後の東ローマ帝国(ビザンツ帝国)を扱い,スラヴ人やイスラーム勢力との関係も踏まえて,ビザンツ帝国の意義を考察する。[準備学習]ビザンツ帝国の都コンスタンティノープルの地理的位置やスラヴ人についての基礎的知識を把握しておくこと。
第18回ゲルマン人諸国家の動向東ゴート王国,西ゴート王国,フランク王国など地中海沿岸のゲルマン人諸国家の動向を扱う。[準備学習]ゲルマン人の原住地や諸部族の移動先を確認しておくこと。
第19回イスラーム教の成立と発展7世紀初めにムハンマドによって開かれたイスラーム教の教義の内容やイスラーム勢力の征服過程を扱う。[準備学習]イスラーム教についての基礎的知識やイスラーム勢力が拡大した地理的範囲を把握しておくこと。
第20回イスラーム勢力とキリスト教勢力の対立・交流(1)十字軍イスラーム・キリスト教両勢力の対立・交流の事例の一つとして,十字軍を採り上げる。イスラーム側から見た十字軍とは何か,という視点にも着目する。[準備学習]イェルサレムの地理的位置や十字軍の遠征ルート,当時のイスラーム諸王朝について確認しておくこと。
第21回イスラーム勢力とキリスト教勢力の対立・交流(2)シチリア島史古来,フェニキア,ギリシア,ローマ,ゲルマン,イスラーム,ノルマン等様々な勢力が進出し,多様な文化を残したシチリア島の歴史を考察する。[準備学習]古代・中世のシチリア島史の概略を把握しておくこと。
第22回イスラーム勢力とキリスト教勢力の対立・交流(3)イベリア半島フェニキア,ローマ,ゲルマン,イスラーム勢力等が進出し,キリスト教勢力によるレコンキスタ(国土回復運動)でキリスト教世界に回復されたイベリア半島の歴史を考察する。[準備学習]古代・中世のイベリア半島史の概略を把握しておくこと。
第23回地中海地域の歴史家たちヘロドトス,トゥキュディデス,イブン=ハルドゥーンというそれぞれに個性ある歴史家たちの作品を比較し,それぞれの性格を考察する。[準備学習]前期に扱ったヘロドトス,トゥキュディデスの歴史書の特徴を復習しておくこと。
第24回東方貿易,ヴェネツィアの繁栄地中海東部の海上貿易である東方貿易(レヴァント貿易)とそれによって繁栄したヴェネツィアの歴史を採り上げる。[準備学習]ヴェネツィアの地理的位置および都市の景観などの事前知識を把握しておくこと。
第25回十二世紀ルネサンス 中世西ヨーロッパの文化刷新運動である十二世紀ルネサンスを採り上げ,アラビア語文献等のラテン語への翻訳活動の意義とその活動が可能になった背景を考察する。[準備学習]イベリア半島のトレド,シチリア島のパレルモについての基礎的知識を把握しておくこと。
第26回オスマン帝国の成立と発展13世紀末にオスマン朝が成立してから,「帝国」へと発展する過程と発展の要因およびオスマン帝国がヨーロッパに与えた影響を考察する。[準備学習]オスマン帝国の最大版図を確認しておくこと。
第27回イタリア=ルネサンスイタリア=ルネサンスの意義およびその成立・経過・衰退の諸要因を考察する。[準備学習]イタリア=ルネサンスの代表的な芸術家たちについて確認しておくこと。
第28回ハプスブルク家と地中海1516年以降,ハプスブルク家はスペインも領土とした。スペイン=ハプスブルク朝を中心に,オスマン帝国との対抗等,地中海との関係を考察する。[準備学習]ハプスブルク家についての基礎的知識を把握しておくこと。
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ
第30回まとめまとめ
授業形式 講義形式で行う。毎回授業で配付するレジュメプリントに,扱う項目の見出しや簡潔なまとめを記してあるので,各自それに必要事項や要点の内容などを書き込んでもらう。合わせて,参考プリント(史料や資料)を配付し,授業内容理解の一助とする。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
50% 0% 40% 10% 0% 100%
評価の特記事項 前期の最終授業時に小テストおよび後期の最終授業時に定期試験をそれぞれ行う。これに出席状況等を加味して評価を決定する。
テキスト 特定のテキストは使用しない。各授業時にプリントを配付する。
参考文献 桜井万里子・本村凌二『世界の歴史5 ギリシアとローマ』中央公論社,2524円.歴史学研究会編『古代地中海世界の統一と変容』(地中海世界史1),青木書店,2800円.松本宣郎・牟田口義郎『地中海』(地域からの世界史10),朝日新聞社,1400円.その他,重要な参考文献は授業で適宜紹介する。
オフィスアワー(授業相談) 授業終了後は時間が空いているので,授業終了時に質問等申し出てもらえば余裕を持って対応できる。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 高校世界史の基本的知識を把握していることを前提として講義を行う。異文化交流という点が重要な視点の一つとなるので,高校世界史とは異なる切り口になる場合も少なくない。高校世界史の基礎知識に不安がある者は,予め基本事項や時代の大きな流れについてよく確認しておくことを望む。