講義名 国税徴収法 ≪大学院≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 火6
単位数 2

担当教員
氏名
小林 幹雄

学習目標(到達目標)  国税徴収法は国税だけではなく、地方税や公課の徴収においても「国税の滞納処分の例による」とされるなど租税等の徴収手続に関して基本法ともいうべき地位にある重要な法律です。この講義により国税徴収法の実体法の部分(競合する債権の優劣や第二次納税義務)と手続法の部分(差押手続や換価手続など)及びその関係について立体的に知ることができ、将来租税の専門家である税理士として、国税だけでなく地方税や公課の徴収手続についても実務に必要な知識及び応用能力を身に付けることができます。将来、研究者を目指す人にとっては研究の基礎となる知識や法的な考え方を修得することができます。
授業概要(教育目的)  講義内容は国税徴収法の規定の内容ということになりますが、配布する講義資料に基づき、国税徴収法の実体法上の内容及びその徴収手続の合理性の有無及びその正当性の有無を説明しつつ、裁判例も紹介しながら問題点を紹介することになります。具体的には、租税債権はその徴収につき私債権と競合する場合のルール及び手続上の調整が講義内容の中心となります。したがって、国税徴収法だけではなく、民事執行法やいわゆる倒産法制などとの関係についても講義内容としています。また、国税徴収法の実体法の部分については民法その他の法律上の担保物権とも深くかかわりますので必要に応じて関係する民法の内容にも触れる予定です。
授業計画表
 
項目内容
第1回国税徴収法の概要現行国税徴収法の成立の背景についての概観。また、国税徴収法の理解の基礎となる滞納処分の対象となる納税者等の範囲。
 【準備学習】
 事前に配布した講義資料の該当箇所を予め読んでおくこと。その際、文言の概念につき法律学辞典や法律学に関する書籍により調べておくこと。

 
第2回国税債権の優先権(1)国税債権や地方税債権が私債権に対して有している一般的優先権の根拠及びその根拠との関係において国税債権に優先する私債権の内容・態様。
第3回国税債権の優先(2)国税債権と被担保債権(質権、抵当権、先取特権、留置権、仮登記担保、譲渡担保により担保される債権)の具体的な優劣等の基準。
第4回国税債権の優先(3)租税債権間及び租税債権と公課との優劣の基準並びに一般的な優劣の基準に矛盾が生じた場合(いわゆるぐるぐる回り)の調整基準。
第5回滞納処分(1)国税債権の実現手続としての滞納処分の意義(課税処分の関係を含む。)及び強制執行や破産手続などの他の執行手続との関係
第6回滞納処分(2)滞納処分を構成する差押処分の手続要件及びその法律効果(1)
第7回滞納処分(3)滞納処分を構成する差押処分の手続要件及びその法律効果(2)
第8回滞納処分(4)差押処分以外の執行手続としての交付要求及び参加差押えの手続要件及びその法律効果
第9回滞納処分(5)差押財産の換価処分の手続要件及びその法律効果並びに配当
第10回国税徴収の緩和措置(1)徴収の猶予、換価の猶予、執行停止等の手続要件及び法律効果
第11回国税徴収の緩和措置(2)国税債権の消滅時効の意義
第12回滞納処分等の処分に対する不服申立て及び訴訟の特例滞納処分等を構成する各処分についての不服申立て及び訴訟についての期間制限の内容及び違法性の承継との関係
第13回国税の保全措置その他租税債権の保全措置の内容及び租税債権の特殊性から見たその合理性並びに租税徴収上の罰則
第14回判例研究いわゆるぐるぐる回りをめぐる裁判例の検討
第15回判例研究滞納処分における民法177条又は同法94条2項の適用に関する裁判例の検討
授業形式 配布する講義資料(約180ペイジ程度になる見込みです。)に基づき、通常の講義形式(受講生に報告等を求めない。)により行います。講義資料がありますので、ノートをとるべきところは極めてすくなくて済むと思いますが、その分予習復習に時間を割いていただきたいと思います。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
0% 90% 0% 10% 0% 100%
評価の特記事項 評価は基本的にレポートの成績によりますが、出席状態も参酌します。
テキスト ○配布する講義資料(180ペイジ程度になる見込みです。)
○必要に応じてプリントを配布します。
参考文献 ○志場喜徳郎ほか『国税徴収法精解』平成21年改訂(大蔵財務協会)
○茂串俊ほか『国税通則法精解』(大蔵財務協会)版は問いませんが、なるべ く新しいものが好ましい(25年改訂が最近のものです。)。
○金子宏『租税法』18版(弘文堂)
○『租税判例百選』第5版(有斐閣)
○『倒産判例百選』第4版(有斐閣)
○『行政判例百選Ⅰ、Ⅱ』第4版(有斐閣)
オフィスアワー(授業相談) 面談が必要な場合には事前にメールしてください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ  経済学研究科の院生にはなじみの少ない法律分野になりますので講義資料に掲げる民法、民事執行法、破産法や会社更生法などの根拠条文を自ら確認するようにしてください。余裕があればこれらの法律のテキストや解説書などの学習もお勧めします。この講義では租税債権と私債権の回収ルールや執行手続きにおいてどこが同じでどこが違うか、そしてその違うところに合理性や妥当性があるか否かという問題意識を持ってもらうことが大事です。単に国税徴収のルールを理解するだけでは十分ではありません。