講義名 物理学 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火2
単位数 4

担当教員
氏名
鈴木 秀則

学習目標(到達目標) 物理学における様々な概念・法則の内容を正しく理解し,物理における論理思考の筋道に接することにより,基本的な物理学の考え方を学ぶ。具体的な問題,身近な自然現象に関する問題に対して物理学的な考え方に基づき,適切な解答を導ける。
授業概要(教育目的) 物理法則というのは複雑で多様な自然現象の本質的な部分を抽出し表現したものです。複雑な現象を単純化しているのですから,難しく考える必要はありません。現象の本質を考えるということは,他の自然科学・社会科学においても共通して役立つことも多いはずです。まずは関心を持ち,落ち着いて一歩ずつ論理的に思考を重ねることが大切です。受講する学生たちが物理学の正しい知識とともに論理的な思考能力を習得できることを目的とします。
授業計画表
 
項目内容
第1回序:物理量・単位系本講義のガイダンスを行う。物理学の全体を概観する。基本的な単位系,数値の取扱いについて学習する。
【準備学習】特に必要ありません。
第2回力学1:運動の法則運動する物体に力が働くと運動の様子が変化する。運動の様子の表現方法,及び運動する物体の満たす法則について学ぶ。
【準備学習】物体が「運動する」とは,物体の位置や向きが時々刻々と変化する様子のことであり,日常用いる運動とは異なることを理解しておく。
第3回力学2:作用と反作用二つの物体AとBが力を及ぼしあうとき,AがBに及ぼす力とBがAに及ぼす力は,必ず同じ大きさで互いに逆の方向に働いている。物体に働く力について学ぶ。
【準備学習】力はベクトル量で表される。初歩的なベクトルの和・差を,矢印を用いて表せるようにしておくこと。
第4回力学3:円運動(正確な円軌道とはいえない場合も多いが)円運動という現象は多く見られる。円運動とは中心への落下運動である。円運動している物体にどのような力が働いているか学ぶ。
【準備学習】遠心力は慣性力の一種である。慣性の法則,運動方程式について復習しておくこと。
第5回力学4:エネルギー・仕事エネルギーは蓄えられた仕事と考えることができる。仕事をすればその分のエネルギーが減少する。力学的エネルギーがどのようにあらわされるものであるか学ぶ。
【準備学習】力学における「仕事」は,物体の位置の変化量とその変化の方向に加えた力の大きさとの積で定義される。日常に用いる仕事という言葉とは異なるものであることを理解しておく。
第6回力学5:エネルギー保存則仕事をする側・される側,すべてを含めて考えると,全エネルギーの総量は変化しない。いくつかの運動に対して,力学的エネルギー保存則が成り立っていることを確認する。
【準備学習】位置エネルギーと運動エネルギーについて復習しておく。
第7回力学6:運動量保存則運動している物体が何かに衝突したとき,高速の物体は軽くても大きな衝撃を生み,重い物体は遅くても大きな衝撃を生む。衝突の際に運動量が保存されることを学ぶ。
【準備学習】「運動量」は物体の速度と質量の積で定義されるベクトル量である。運動の法則について復習しておくこと。
第8回熱物理学1:熱と温度温度の異なる二つの物体を接触させると,熱が移動して二つの物体の温度は等しくなる。熱平衡状態について理解する。
【準備学習】「熱」,「温度」とは何であるか,どう違うのか,考えてみる。
第9回熱物理学2:熱力学第1法則熱とは,エネルギーの移動プロセスの一種として定義される。熱を考慮に入れた場合にも全エネルギーの量は変化しないことを学ぶ。
【準備学習】熱力学第1法則は,熱の移動まで考慮したエネルギーの保存則である。力学的エネルギー保存則について復習しておく。
第10回熱物理学3:状態方程式気体は加熱すると膨張し,冷却すると収縮する。理想気体を冷却し続けると絶対零度で体積はゼロになる。理想気体の満たす法則,状態方程式について学ぶ。
【準備学習】状態方程式は気体の体積,圧力,温度の関係式である。それぞれの物理量,特に圧力の表し方,単位について復習しておくこと。
第11回熱物理学4:熱力学第2法則仕事は全て熱に変えることができるが,熱は全てを仕事に変えることはできず,必ず利用されずに捨てられる熱がある。熱力学第2法則と不可逆過程について学ぶ。
【準備学習】自然現象には,ある方向には変化するが,逆方向には変化しない現象(覆水は盆に返らない,等)が無数にあることを知っておくこと。
第12回熱物理学5:気体の分子運動熱は物質を構成する原子・分子運動のエネルギー,気体の圧力は分子が壁に衝突し跳ね返るときの反動である,と考えられる。熱に関する現象をミクロの視点から理解する。
【準備学習】物体の運動の自由度とは何か,復習しておくこと。
第13回熱物理学6:エントロピーゴムを伸ばすと温度が上がる。水に塩を溶かすと凍りにくくなる。乱雑さの度合を表すエントロピーについて学ぶ。
【準備学習】熱力学第2法則について復習しておくこと。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ
第15回中間のまとめまとめ
第16回電磁気学1:電荷・電圧・電流電流は電気量(電荷)の流れである。電圧は電気的エネルギーの差(電位差)であり,電流を発生させる。電気抵抗は電流を妨げる。電気に関する基礎知識を習得する。
【準備学習】オームの法則はどんな法則か,知っておくこと。
第17回電磁気学2:電気回路・電力電流が電気回路を流れているときは絶えず仕事をしており,エネルギーが消費される。電力とは単位時間当たりに消費される電気的エネルギーである。簡単な電気回路について学ぶ。
【準備学習】電気エネルギーまで含めてもエネルギー保存則が成り立つ。力学的エネルギー保存則,熱力学第1法則について復習しておくこと。
第18回電磁気学3:電場同種の電荷間には斥力,異種の電荷間には引力が働く。この力は,一方の電荷が電場をつくり,他方の電荷はその電場から力を受けると考えられる。「場」の概念を理解する。
【準備学習】電荷に働く静電気力は形式上は万有引力の法則と似ているので,万有引力について復習しておく。
第19回電磁気学4:磁場磁石はその周囲に磁場をつくり,鉄などを引き寄せる。磁石には必ずN極とS極がセットで現れ,一方の極だけを取り出すことはできないことなど,磁場に関する知識を学ぶ。
【準備学習】地磁気は地球により生じる磁場である。地球をひとつの磁石として考えたとき,北極側はN極・S極のどちらであるか,考えてみる。
第20回電磁気学5:電気と磁気電流はその周囲に磁場をつくる。逆に,磁場の変化によって電流が生じる。モーターを逆に使うと発電機になる。モーター・発電機の原理について学ぶ。
【準備学習】電流と磁場の関係性について復習しておく。
第21回電磁気学6:電磁波磁場が時間変化すると周囲に電場が生じ,電場が時間変化すると周囲に磁場が生じる。これが空間を波動として伝わるのが電磁波であることを学ぶ。
【準備学習】電場,磁場の概念について復習し,理解しておくこと。
第22回波動:光・音波光は電磁波の一種である。光はレンズに入射すると屈折し,密度の異なる空気の層を通過すると曲がって伝わる。蜃気楼が観測される。音波や水面波などの波動に関する基礎的な知識を学ぶ。
【準備学習】裸眼で水中に入るとピントを合わせることができないのはなぜか,考えてみる。
第23回現代物理学1:粒子と波動の二重性光は波動であり,かつ粒子でもある。電子は粒子であり,かつ波動でもある。原子の構造について学び,電子の粒子・波動の二重性について学ぶ。
【準備学習】光や電子などの微小な粒子の現象に対して,ニュートン力学や日常的な感覚による先入観を持たないようにする。
第24回現代物理学2:微小な世界の多数の粒子「ひとつの状態」には二つ以上の電子が存在することはない。多数のヘリウム原子が「ひとつの状態」に共存することはある。複数の微小な粒子の性質について学ぶ。
【準備学習】微小な世界での粒子・波動の二重性について復習しておくこと。
第25回現代物理学3:金属・絶縁体・超伝導絶縁体や半導体の電気抵抗は温度が下がると増加する。金属の電気抵抗は温度が下がると減少する。超伝導体を冷却すると電気抵抗はゼロになる。物質の電気的な性質についてミクロな視点から考える。
【準備学習】電気抵抗に関する基礎,電子の性質について復習しておくこと。
第26回現代物理学4:強磁性体磁石を熱したら磁石ではなくなる。熱によるゆらぎのために秩序が乱され,無秩序な状態へと転移する。自発的な秩序の生成を平均場近似の視点から考える。
【準備学習】磁石,磁場などの磁気的性質について復習しておく。
第27回現代物理学5:特殊相対性理論静止してる人が見ても,等速で動き続けている人が見ても,光の速さは同じ。アインシュタインによると,質量もエネルギーである。
【準備学習】慣性系,電磁波について復習しておくこと。
第28回現代物理学6:核反応・原子力原子核は分裂すると少し軽くなる。その分のエネルギーを利用する,というのが原子力の原理。
【準備学習】エネルギー保存則について復習しておく。
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ
第30回まとめまとめ
授業形式 板書による講義形式で行います。必要に応じてプロジェクターなどを利用して補います。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
80% 0% 0% 10% 10% 100%
テキスト 指定しません。板書をノートに取ることをお勧めします。
参考文献 和田純夫著『グラフィック講義 物理学の基礎』サイエンス社
その他,講義中に適宜紹介します。
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後,本館2階講師室にて20分間は対応しています。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 高校物理などの予備知識は必要としません。
高度な数学を要求することもありませんので,法則や原理を表す簡単な式や言葉・文章をそのまま理解する能力さえ有すれば,講義内容は理解できるはずです。