講義名 ジェンダー論 ≪□第一部≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 月4
単位数 2

担当教員
氏名
加藤 敦也

学習目標(到達目標) ジェンダー論の視座を理解することにより、現代社会におけるジェンダーに基づく不平等問題、またはジェンダーにとらわれない諸個人のライフスタイルの多様性について知識と見聞を得ることを目標とする。また、ジェンダー論の知見に基づき、現代社会の諸問題を考察し、説明できるようになることを目標とする。
授業概要(教育目的) 女/男という性別の区分は、生物学や科学の説明に還元しきれるものではなく、性差を定める社会的な背景に応じて意味が変わると考えるのがジェンダー論である。言い換えれば、ジェンダー論は性を社会的に構築されるものととらえ、性による格差や差別を有効にしている権力の在り方を相対化する視点を持つ学問領域である。本講義では主に男性のあり方がどのように社会的に作られていくのかについて、労働の問題、恋愛/性愛の問題、家族の問題、服装や美の基準の問題などを事例としながら説明していく。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション:ジェンダーとは何か?
 ジェンダー論を理解するための基礎知識について説明する。
 【準備学習】予習としてはジェンダー論の入門書を読み、ジェンダー論に関連する基本用語を学んでおくことがよい。また、文献を参考にし、考えを文章としてまとめること。
第2回性別役割分業:家族,労働の現場における女/男の区分
 日本社会における性別役割分業の歴史と現状について学ぶ。
 【準備学習】講義前にジェンダー論の入門書を読んでおくこと。講義後は補助資料を読み返し、さらに講義中に紹介した文献を読むことが望ましい。
第3回メンズリブ・男性学(「男」は社会的につくられる)
 ジェンダー論の一分野である男性学について学ぶ。男性もまたジェンダー化された存在であるということを理解してもらう。
 【準備学習】予習復習ともに「男性学」に関する文献を読んでおくことを勧める。例えば、この講義のシラバスに示している参考文献を読むと、講義内容の理解が深まるだろう。
第4回「フリーター」,「ニート」,「ひきこもり」と男性性――労働をめぐるジェンダー規範とジェンダー格差について
 ジェンダー研究に関連する理論ないし概念を踏まえ、就労をめぐる男性ジェンダーの問題と女性の就労問題および男女間の賃金格差などの諸問題を考える。
 【準備学習】講義の予習は第2回、第3回の配布資料を読んでおくこと。取り上げるテーマについてさらに関心のある人は、若年労働者の問題に関する研究書やニュース記事を読んでおくとよい。また、ジェンダー論の入門書を読めば、雇用労働におけるジェンダーの不平等問題が分かるようになる。
 
第5回「肉食系」男子と「草食系」男子(恋愛における意識の変容)
 現代日本社会における若年男性の恋愛行動および恋愛観について、男性のジェンダー規範の変容という観点から説明する。
 【準備学習】講義の予習は第2回、第3回配布資料を読んでおくとよい。取り上げるテーマについてさらに関心のある人は、出生動向基本調査もしくは若者の「性」白書などの若年者の恋愛意識、結婚観、性行動に関する統計調査を見ることを勧める。また、講義では「草食系男子」についての参考文献を示すので、講義後に読んでおくとよい。
第6回セクシュアリティのあり方(性の二重基準,あるいは男はなぜポルノを見るのか:異性愛を中心に)
 異性愛男性のセクシュアリティについて、特にポルノ消費のあり方とその是非をめぐる議論について紹介する。
 【準備学習】講義の予習復習ともにフェミニズムにおけるポルノグラフィについての研究知見を調べることを勧める。参考文献は講義内で指示するので、講義後に読むこと。また、配布資料を熟読すること。
第7回ゲイ/クィアスタディーズ
 ゲイ・スタディーズ、クィア・スタディーズという学問領域における研究知見をもとに、同性愛/異性愛という区分により生じる諸問題について学ぶ。
 【準備学習】セクシュアル・マイノリティに関する入門書を読むことが望ましい。復習としては配布資料に示されているキーワードについて、文献などを用いて調べることを勧める。
第8回結婚と男性(晩婚化・未婚化について) 日本社会における、晩婚化・未婚化現象について、男性ジェンダーの諸問題という観点から考察する。
 【準備学習】予習としては第4回、第5回の配布資料を熟読しておくこと。講義後は講義内で紹介した文献を読むか、配布資料を熟読すること。
第9回父親としての男性(男性の家事・育児参加について) メンズ・リブの歴史を踏まえつつ、現状における男性の家事参加および育児休暇取得の問題まで説明する。
 【準備学習】予習としては男性の家事・育児参加がなぜ社会の中で求められているのかについてあらかじめ調べておくこと。その際、この授業の第2回、第3回の配布資料を参考とするとよい。講義後は講義内で紹介する参考文献にあたり、性別役割分業の問題点を整理すること。
第10回男性と暴力その①(DV、デートDV) DV、デートDVについて学ぶ。DVがはびこる一つの要因としてジェンダー容認感覚があることの理解を促す。
 【準備学習】予習としてはDV、デートDVとは何かについてあらかじめ調べておくこと。講義後の復習は、DV、デートDVとジェンダー容認(性役割の容認)感覚との関連性について、配布資料を熟読し、理解を深めてほしい。また、DVに関するジェンダー研究の入門書を紹介するので、それを参考にすること。
第11回男性と暴力その➁(男男間暴力――教育空間における暴力を中心に) 男性同士の間で生じる暴力の問題について、体罰もしくはいじめなどの問題を事例として考察する。
 【準備学習】第10回目の配布資料を参考にすること。なお、予習・復習ともに以下の文献を参考とすることを勧める。渋谷知美,2009,『平成オトコ塾――悩める男子のための全6章』筑摩書房.また、講義後は配布資料を熟読すること。
第12回美しさとジェンダー(美の二重基準について) 容姿の美しさに対する評価をめぐって、女性ジェンダーに偏った評価が割り当てられてきた歴史を踏まえ、美に関するジェンダーの二重基準に変化があるかどうかを検討する。
 【準備学習】予習としては、わかりやすい参考文献として次のものを参考にすること。千田有紀,2009,『女性学/男性学(ヒューマニティーズ)』岩波書店.また、復習としては配布資料を熟読し、さらに講義で紹介した参考文献を読むとよい。
第13回ファッションとジェンダー ファッションが表象するジェンダーを具体例として、現代社会におけるジェンダー規範について説明する。
 【準備学習】 予習としては第12回の配布資料を熟読しておくこと。または第12回の講義で紹介した文献を読んでおくこと。
 復習としては講義の配布資料を読み、また講義で紹介した参考文献を読むこと。
第14回「女らしさ」、「男らしさ」のゆくえ 若年女性、若年男性のライフスタイルのゆくえについて、結婚、多様なセクシュアリティの権利という観点から説明する。
 【準備学習】予習として、すべての配布資料を熟読しておくこと。
第15回ジェンダー論のまとめ 講義で説明したジェンダー論の基本概念を復習したうえで、現代社会に残るジェンダー問題について論点を整理し、説明する。
 【準備学習】すべての配布資料を熟読しておくこと。講義終了後は、講義で紹介したジェンダー論の基本概念(基礎知識)について、その定義を説明できるように、ノートにまとめておくとよい。
授業形式 基本的に講義形式とし、適宜、映像資料等を紹介する。なお、授業に関連する資料は毎回配布する。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
0% 60% 0% 40% 0% 100%
評価の特記事項 本からの引用が大半を占めるレポートや極端な字数不足であるレポートは及第点とはならない。また、評価方法の配分比率に留意すること。
テキスト 特に指定しない。講義に関連する文献は適宜講義内で指示する。また、授業に関連する資料を配布するので、それを参考にすること。
参考文献 千田有紀・ 中西祐子・ 青山薫,2013,『ジェンダー論をつかむ』有斐閣.
渋谷知美,2009,『平成オトコ塾――悩める男子のための全6章』筑摩書房.
多賀太,2006,『男らしさの社会学――揺らぐ男のライフコース』世界思想社.
田中俊之,2009,『男性学の新展開』青弓社.
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後、本館2階講師室にて30分間は対応しております。または授業内で配布した指定アドレスに連絡してください。回答は次回授業後とします。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ  事前学習に関しては、シラバスに明記してある参考文献のほかに、ジェンダー論に関する入門書を読んでおくとよい。例えば、以下に示す文献を入門書として推薦する。加藤秀一・石田仁・海老原暁子,2005,『図解雑学 ジェンダー』ナツメ社.また、講義後は講義内容の要点をノートにまとめ、配布された資料を熟読するなどして、学習するとよい。さらに講義で紹介した文献を読めば、より内容理解が深まる。
 なお、講義終了時にはその日の講義内容に関するコメントペーパーを書いてもらい、提出してもらうこととする。優れたコメントペーパーを書いたものは、講義の翌週に匿名で読み上げることとする。