講義名 中国経済論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月2
単位数 4

担当教員
氏名
曽根 康雄

学習目標(到達目標) 日本のマス・メディアには中国情報が氾濫しており,それゆえ真の中国像を理解するのが難しくなっている。また,日本における中国経済に対する評価の中には,現代中国の一部分のみを強調した偏ったものも少なくない。我々は,中国という国の仕組みや経済建設の経緯が日本と大きく異なることを認識した上で,現在起きている事象の本質を理解し,直面する事態と向き合っていかなければならない。この講義では,世界経済とりわけ日本経済にとって重要性が高まる中国経済の将来を個々人が考える上で,基礎となる知識の習得を目指す。
授業概要(教育目的) この講義では,テーマとして①建国以来の政治経済史,②計画経済から市場経済への体制移行,③80年代以降の企業改革,④中国経済における香港の役割,を扱う。①では,建国から80年代までの中国の政治・経済の歩みを,映像資料を活用しながら講義を行う。②と③では,80年代以降の中国の経済発展戦略とその特徴および矛盾を,企業改革を例に取り考察する。④では,中国経済のグローバル化という視点から,香港に焦点を当てる。中国との付き合い方を考えるために,経済現象の背後にある歴史,社会,政治,文化など,経済と関わりのある周辺分野を含めた学際的,地域研究的なアプローチに基づいて,講義内容を構成する。
授業計画表
 
項目内容
第1回講義の概要年間の講義の内容,講義のルールを説明する。最近の中国の経済・社会に関するトピックを取り上げ解説する。
第2回最近の中国経済動向(1)グローバル金融危機以降の中国の経済政策運営を分析する。
第3回中国経済への招待(ダイジェスト)テキストを手掛かりに,中国経済を理解するための視座を検討する。
第4回建国以降の中国経済史(1)建国後の土地改革から50年代の農業集団化への流れを辿り,この時期の経済政策を評価する。
第5回建国以降の中国経済史(2)60年代前半の経済調整策と同後半の文化大革命期の経済運営を比較する。
第6回建国以降の中国経済史(3)
対外開放政策につながる70年代の政治経済の変化を検討する。
第7回建国~70年代の経済建設のまとめ
計画経済体制下の経済政策運営の評価を行う。
第8回体制移行期の中国経済(概論)「計画経済」から「市場経済」への移行のアプローチと問題点を検討する。
第9回80年代の改革開放政策(1)改革開放政策の初期条件と初期の経済改革(戸別農家経営請負制,分権化)を考察する。
第10回80年代の改革開放政策(2)80年代に実施された双軌制を考察し,その成果と問題点,制度改革の矛盾を検討する。
第11回改革開放政策の転換(天安門事件と「南巡」)80年代末~90年代初の経済改革の停滞,90年代に入ってからの改革開放政策の新たな展開を考察する。
第12回国有企業体制の創出(1950~70年代)建国以降の計画経済体制の中で形成された国有企業の特徴を考察する。
第13回非国有企業の生成(1980年代~)80年代以降の改革開放政策の中で,民営企業や外資企業が現れた経緯を検討する。
第14回最近の中国経済動向(2)
中国の経済政策運営を,前期開講時点と比較して分析する。ただし,中国経済の状況に応じて,内容を多少変更することもありうる。
第15回前期小テスト,前期のまとめ【※】講義の進行状況や中国情勢などにより,小テストの日程は前後することもありうる。
第16回最近の中国経済動向(3)
中国の経済政策運営を,前期と比較して分析する。ただし,中国経済の状況に応じて,内容を多少変更することもありうる。
第17回国有企業改革(1)
計画経済体制下の国有企業(国営企業)の特徴と80年代の改革を整理する。
第18回国有企業改革(2)
90年代以降の国有企業改革の展開とグローバル化の動向を検討する。
第19回中国の金融システム(1):銀行システム
中国の銀行の発展過程と特徴を検討し,現在の金融システムの市場化の度合いを評価する。
第20回中国の金融システム(2):資本市場
中国の株式市場の発展過程を概観し,金融システムの側面から世界との一体化の度合いを評価する。
第21回民営企業の発展(1)80年代以降の民営企業を類型化し,各々の発展の特徴を考察する。
第22回民営企業の発展(2)中国経済に占める民営企業の位置を検討する。
第23回中央企業と「国進民退」国有企業と民営企業の関係,「国家資本主義」的な傾向が強まる中国経済について考察する。
第24回香港の機能(1)
香港特別行政区の成り立ち,「一国二制度」と呼ばれる制度の特殊性を検討する。
第25回香港の機能(2)
中国の産業の発展,および華南経済圏の形成過程を考察する。
第26回香港の機能(3)
香港の国際金融センター機能と中国の経済発展に果たす役割を検討する。
第27回人民元制度の改革(1)
80年代以降の中国の為替管理制度の変遷を考察する。
第28回人民元制度の改革(2)
通貨の自由化と国際化の意味,それに対する中国政府のアプローチの特徴を考察する。
第29回最近の中国経済動向(4)
中国の経済政策運営を,後期開講時点と比較して分析する。ただし,中国経済の状況に応じて,内容を多少変更することもありうる。
第30回通年の講義のまとめ主に後期の講義内容の要点を復習する。
授業形式 講義は,配布資料とパワーポイントに沿って進める。授業時間内に,出欠を兼ねて,筆記課題やクイズへの回答を提出してもらうこともある。中国を身近に感じられるように,可能な限り写真や映像なども取り入れて講義を進めたいと考えている。また,足下の中国の経済・社会動向や世界経済・国際金融情勢との関係など時事問題についても,講義の中で解説を加える。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
80% 0% 15% 5% 0% 100%
評価の特記事項 出席は年に数回確認する(授業時の課題・クイズの提出などによる場合もある)。前期末に小テストを行う。
テキスト 『呉敬璉,中国経済改革への道』NTT出版(2015年3月)
参考文献 中国は変化のペースが非常に速いため,参考図書や資料は,講義の際にテーマに応じて適宜紹介する。中国理解の入門書としては,差し当たり下記の参考図書を紹介する。
『現代中国経済論』ミネルヴァ書房(2011年4月)
『現代中国を知るための40章【第4版】』明石書店(2012年3月)
オフィスアワー(授業相談) 原則として月曜日3限,火曜日2限・6限。研究室を訪問の際は,事前にメールまたは電話などの方法でアポをとること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 新聞やテレビのニュースで中国に関する情報に対して常に注意を払うこと。毎回の授業で,その週に中国で起きた出来事についてコメントや質問を行う。
なお,授業中の私語は厳禁する。受講態度の悪い学生には退出を命じる。