講義名 リスクマネジメント論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月4
単位数 4

担当教員
氏名
柳瀬 典由

学習目標(到達目標) リスクマネジメントが、個人や企業の効用や価値を高めるメカニズムについて、理論的に考えることが出来ることを目的とします。その上で、現実の様々なリスクマネジメントの手法についても、その基本的仕組みを説明できるようになることを目的とします。
授業概要(教育目的) リスクマネジメントへの関心が国内外で急速に高まりつつあります。この背景には、リーマン・ショックに代表される複雑・高度な金融商品に絡む企業の巨額損失事件や、東日本大震災に代表される巨大自然災害、また、9.11同時多発テロ等、国境を越えて深刻な影響が生じるイベントが多発していることがあると考えられます。リスクマネジメント論では、経済学およびファイナンス理論を基礎としたリスクマネジメントの理論的枠組みを学習するとともに、具体的な保険契約やデリバティブ契約、さらには代替的リスク移転(ART)についても検討します。
授業計画表
 
項目内容
第1回リスクリスクとリスクコストの概念について明らかにする。(教科書第1章 第1節、第2節)
第2回リスクマネジメントリスクマネジメントのプロセスと手法について学習する。(教科書第1章 第3節、第4節)
第3回リスクマネジメントの目的リスクコストの構成要素とそのトレードオフ関係について学ぶ。(教科書第2章)
第4回リスクの認識と測定 [1]確率変数と確率分布,期待値と分散,歪度について理解する。(教科書第3章)
第5回リスクの認識と測定 [2]予想最大損失とバリューアットリスク(VaR)の基本的な知識を学習する。(教科書第3章)
第6回リスクプーリングとリスク分散 [1]損失が独立な場合のリスクプーリングの効果を理解した上で、大数の法則と中心極限定理の基本的な知識を学習する。(教科書第4章)
第7回リスクプーリングとリスク分散 [2]損失に相関がある場合のリスクプーリングの効果を学ぶ。また、リスク・プーリングの管理者としての保険会社の存在意義を明らかにする。(教科書第4章)
第8回ポートフォリオ理論の基礎株式市場におけるリスク分散(分散投資)について学ぶ。また、共分散と相関係数の基本的な理解を行う。(教科書第4章および補助資料)
第9回資本資産価格理論(CAPM)の基礎アンシステマティックとシステマティックリスクについて整理したうえで、資本コストの基本的な考え方を理解する。(教科書第4章および補助資料)
第10回保険の価格決定 [1]公正保険料(fair premium)の概念について理解する。(教科書第8章 第1節、第2節)
第11回保険の価格決定 [2]投資収入と保険金支払いのタイミングについて整理した上で、投資家報酬付加保険料の概念を理解する。(教科書第8章 第3節、第4節、第5節)
第12回保険の価格決定 [3]資本ショックとアンダーライティング・サイクルについて明らかにする。(教科書第8章 第6節、第7節)
第13回個人のリスク回避とリスクマネジメントリスク回避の概念を整理したうえで、個人の保険購入行動のメカニズムを明らかにする。(教科書第9章 第1節および補助資料)
第14回企業のリスクマネジメント企業のリスクマネジメントと企業価値との関係について、その基本的な議論の枠組みを学習する。(教科書第9章 第2節)
第15回中間のまとめまとめ
第16回リスクの付保可能性保険市場の限界について、モラルハザードと逆選択の観点から検討する。(教科書第10章および補助資料)
第17回リスクマネジメントと企業価値 [1]リスクマネジメントが企業の資本コストや将来キャッシュフローの大きさに与える影響について、理論的な観点から検討する。(教科書第13章)
第18回リスクマネジメントと企業価値 [2]ロス・ファイナンスのコスト、サービス価値、ならびに事後的な外部資金調達に着目することで、リスクマネジメントと企業価値の関連性について検討する。(教科書第13章)
第19回リスクマネジメントと企業価値 [3]財務上の困難、過少投資問題の緩和、ならびに経営者報酬に着目することで、リスクマネジメントと企業価値の関連性について検討する。(教科書第13章)
第20回リスクマネジメントと企業価値 [4]税便益、財務会計上の数値の平滑化、規制の影響に着目することで、リスクマネジメントと企業価値の関連性について検討する。(教科書第14章)
第21回リスクマネジメントと企業価値 [5]リスク保有・低減に与える企業の特徴について整理するとともに、リスクマネジメント概念としての統合型と個別(サイロ)型の特徴と意義について理解する。(教科書第15章)
第22回デリバティブによるリスクヘッジ [1]デリバティブ契約の基本として、先物契約とオプション契約について、その基本的仕組みを理解する。(教科書第17章)
第23回デリバティブによるリスクヘッジ [2]リスク・エクスポージャーに直面する企業が、先物契約やオプション契約を活用することで、どのようにリスクヘッジを可能としているのかについて明らかにする。(教科書17章)
第24回代替的リスク移転(ART)[1]代替的リスク移転(ART)の概要を学んだ上で、損失実績を反映する保険契約ならびにファイナイトリスク契約の基本的理解を行う。(教科書第18章)
第25回代替的リスク移転(ART)[2]キャプティブ、マルチライン保険契約、マルチトリガー保険契約、偶発時における条件付ファイナンスについて、代替的リスク移転(ART)の観点から検討する。(教科書第18章)
第26回ロス・コントロール [1]損失予防と損失軽減、エクスポージャー・ユニットの分離、保険がロス・コントロールに与える影響について検討する。(教科書第11章)
第27回ロス・コントロール [2]最適なロス・コントロールの水準について理論的に検討した上で、安全規制の根拠について学習する。(教科書第11章)
第28回権利侵害の経済分析不法行為責任制度について経済的な観点から分析する。(教科書12章)
第29回賠償責任リスクとその管理賠償責任リスクとその管理について学習する。(教科書21章および22章)
第30回まとめまとめ
授業形式 パワーポイントと板書を併用した講義
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
60% 20% 20% 0% 0% 100%
テキスト ハリントン・ニーハウス『保険とリスクマネジメント』、東洋経済新報社、2005年。
(※)なお、テキストは高価なため、必ずしも購入する必要はない(図書館で借りて該当箇所を読むなど、工夫してほしい)。
参考文献 ドハティー『統合リスクマネジメント』、中央経済社、2012年。
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後、本館2階講師室にて20分間は対応します。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 本講義は、毎回の学習内容の理解が前提となって、次回以降の講義内容が展開されていきます。したがって、毎回講義に出席し、次の講義前に必ず、前回の内容を復習しておくことが必須となります。また、授業終了後に、教科書の該当章に関する練習問題を配布することがありますので、その場合は、次回までに練習問題を解くことによって、自らの理解度を確認してください。問題の模範解答については、次回の講義で解説します。