講義名 論理学 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水5
単位数 4

担当教員
氏名
長谷川 武雄

学習目標(到達目標) 「人間は考える葦である」とはパスカルの言葉である。しかし、あまりにもこの「考える」が身近なゆえに、それに対する反省はするものの、どのように反省すべきか、どうすれば「よく考えることができるか」については多くの人が悩んでいる。それに一筋の光を与えるのが「論理学」であろう。もちろん論理学を学べばすぐに「よく考えることができる」ものではなく(むしろ論理学は生活的ではない)、反省の方向づけと道具を提供するものである。従ってこの道具を使い始めることによって、「厳密に」そして「論理的に正しく」考えることを可能にしてくれる。
授業概要(教育目的) 「生物学」など、その名前によっておおよそその内容を思い描くことができるが、「論理学」などは漠然と、それも具体的となるといっそう想像することは難しい。そこでこの講義では、その点をより具体的に理解してもらうために、時間の流れを基軸に、その周りでいかにして「論理学」が一定の内容を持つようになったかを講義する。完成作品を楽しむだけでなく、完成に到るまでの過程(人間の英知と努力の過程)を楽しむことである。もちろん現在の論理学が完成品と言うつもりはないが。
授業計画表
 
項目内容
第1回講義説明これからの講義について、シラバスに従って説明。また質問を受ける。
第2回「論理」とは何かそもそも「論理」とはどのようなものか、それを明らかにした上で、日常生活の中での「論理」について考えてみる。
【準備学習】
「論理的に話し・考える」とはどのように語り、考えることか、再考してみる。
第3回「論理」とは何か「議論・論述等」で見られる文章や対話の中での「論理」や、更に身の回りを理解する(認識する)場合における「論理」の関わりを考える。
【準備学習】
各自の日常の対話やレポートの中での「論理性」について考えておくこと。
第4回まとめ私達の生活の中での「論理」の位置づけ、それについての理解の確認。
第5回「論理の学」の歴史「論理の学」を残した重要な人々を概観し、論理学の簡単な歴史を見る。①哲学者のアリストテレス。②哲学学派のストア学派。
【準備学習】
古代ギリシア哲学史の概要を調べておくこと。
第6回「論理の学」の歴史③現代の「論理の学」へ一歩近づいた数学者ブール。④今までの「論理の学」を統一的に構築した数学者フレーゲ。
【準備学習】
近代の数学史におけるブール、フレーゲの位置づけを調べておくこと。
第7回「論理学」の歴史先の「全体史」を踏まえ、より詳細に論理学観を見る。(1)アリストテレスの「オルガノン」を参考に、①「推論の形式」、②その推論の構成要素としての「命題」について。
【準備学習】
第5回の授業「①アリストテレス」について復習しておくこと。
第8回「論理学」の歴史③命題を構成している「名辞」について。
【準備学習】
第7回の授業内容を復習しておこくこと(特に「命題」について)。
第9回「論理学」の歴史(2)アリストテレスとは異なった哲学的観点(学問観)から、ストア学派は別の「論理学」を提唱した。後の「命題論理学」と関係する。
【準備学習】
第5回の授業「②ストア学派」を復習しておくこと。
第10回まとめ(1)(2)全体のまとめ、及び理解の確認。
第11回「論理学」の歴史(3)「論理学」は近世の哲学者ライプニッツによって新たな方向を目指した。数学を模範として論理学を構築しようとした、その発想を見る。
【準備学習】
近世哲学史におけるライプニッツの哲学観を調べておくこと。
第12回「論理学」の歴史(4)ライプニッツ以降様々な着想・工夫を経て、新たな「論理学」を構築した数学者フレーゲの理念を見る。①「命題」の新しい解釈。
【準備学習】
第6回の授業内容(④フレーゲ)を復習しておくこと。
第13回「論理学」の歴史②新しい解釈に基づく「記号論理学」の誕生。
【準備学習】
第6回の授業における「③ブール」の復習、及び可能ならば数学者「ド・モルガン」についても調べておくこと。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ。
第15回中間のまとめまとめ
第16回古典的「論理」の世界アリストテレスから中世を経て継承された古典的論理学(いわゆる名辞論理学)の構成要素の説明。概念(名辞)、判断(命題)について。
【準備学習】
第5、7、8回の授業内容を復習しておくこと。
第17回古典的「論理」の世界論理学の中心的存在である「推論」について(特に定言三段論法)。
【準備学習】
前回の授業内容(概念、判断)について説明出来るよう十分理解しておくこと。
第18回古典的「論理」の世界「推論」の全てが正しいのではなく、あるものだけが正しい。その判定の方法(オイラーの図による)。
【準備学習】
前回の授業内容(推論)について説明出来るよう十分理解しておくこと。
第19回古典的「論理」の世界「推論」の全てが正しいのではなく、あるものだけが正しい。その判定の方法(ヴェンの図による)。
【準備学修】
前回の授業内容(オイラーの図)について説明出来るよう十分理解しておくこと。
第20回古典的「論理」の世界推論の妥当性判定(例題・課題)。
【準備学修】
2つの判定法について復習しておくこと。
第21回古典的「論理」の世界推論を行う(ある前提から、一つの結論を導出する)。
【準備学修】
妥当な推論とはどのようなものか復習しておくこと。
第22回まとめ古典的「論理」全体のまとめ、及び理解の確認(古典的論理の世界観とその妥当な世界)。
【準備学修】
古典的論理の世界観と推論の妥当性を復習しておくこと。
第23回現代的「論理」の世界アリストテレスとは別のストア学派によって目指された論理学の世界。いわゆる「命題論理学」における「命題」について。
【準備学修】
第5、9回の授業「ストア学派」について復習しておくこと。
第24回現代的「論理」の世界日常表現の「命題」化。世界は「命題」によってどのように表現されるか、その方法について。
【準備学修】
前回の授業内容(命題・論理的結合子)について説明出来るよう十分理解しておくこと。
第25回現代的「論理」の世界日常表現の「命題」化(例題・課題)。
【準備学修】
前回の授業内容(命題化)について、その方法等十分理解しておくこと。
第26回現代的「論理」の世界命題の結合によって世界が表現される(論理的世界と経験的世界)。この世界で行われる推論の妥当性を見極める。
【準備学修】
「命題・論理的結合子・真偽」の関係について、復習しておくこと。
第27回現代的「論理」の世界推論の正しさの判定(例題・課題)。
【準備学修】
推論の方法を復習しておくこと。
第28回現代的「論理」の世界推論を行う(ある前提から、一つの結論を導出する)。
【準備学修】
妥当な推論とはどのようなものか復習しておくこと。
第29回理解度の確認論理学の「歴史」、及び「論理学」について復習・まとめ。
第30回まとめまとめ。
授業形式 講義内容に従って二つの作業をもって進める。まずその歴史的知識・原理や法則を説明し理解してもらい、れを踏まえて、実際にその歴史的知識の意義、また原理や法則を用いて、具体的対象の「論理的分析」と「論理的思考」を行ってもらう(理解の確認と講義進行状況によって適宜授業時課題・質疑応答あり)。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
50% 15% 15% 10% 10% 100%
評価の特記事項 レポートと小テストは全体として見る。授業時の「質疑応答」は「受講態度」「その他」の評価となる。また最終的評価は、それぞれの評価内容を総合的に見て判断する。欠席届等、必ず提出すること。
テキスト 特定の「教科書」は指定しない。板書と配布プリントによる。
参考文献 全てを網羅するものではないが、2点紹介しておく。
  山下正男『論理学史』岩波書店、2800円.
  近藤洋逸・好並英司『論理学入門』岩波書店、2300円.
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後、本館2階講師室にて20分間は本館講師室にいます。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 身近な文章(新聞の社説や論文など)や、会話の中で、生きた「論理」を自分で分析し、実践してみる。