講義名 日本の科学技術A ≪□第一部≫
講義開講時期 前期
曜日・時限 火4
単位数 2

担当教員
氏名
宮川 卓也

学習目標(到達目標) 本講義は日本の科学技術が単線的に発展してきたものでも西欧からの単純な受け売りでもなく、日本独自の歴史的文脈のなかで複雑な過程を経て形成されてきたものであることを理解することが第一の目標である。そのうえで、1)日本と近現代東アジアの科学技術の歴史的流れを説明できるようになること、2)科学技術のもつ様々な側面を認識すること、3)短いエッセイ(書評)を書けるようになることを達成目標に設定する。
授業概要(教育目的) 本講義は19世紀から20世紀まで日本を中心とした東アジアの科学・技術の歴史的展開を通観する。19世紀以降の東アジアの科学技術が、それ以前とはどのように異なる展開を示したのか、どのような文脈の中で進展してきたのかなどを追いかけることで、現代科学技術の歴史的展開を理解することが目的である。15回という限られた時間のなかで、科学の全分野について細かく見ていくことはできないが、できるだけ幅広い視点から近現代東アジアの科学技術がどのように変遷してきたのか、政治的・経済的・社会的文脈との関連を十分に考慮しつつ概観する。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション:科学とは何か、科学史とは何か、日本・東アジアの科学技術をどう捉えるのか本講義の目的や範囲、課題などについて説明する。
[事前学習]「東アジアの科学・技術」と聞いて何が思い浮かぶか、それはなぜか考えてくる。
第2回19世紀以前の東アジアの科学東アジアには古来から文明が栄え、科学や技術においても独自に発展を遂げてきた。19世紀まで中国や朝鮮で育まれてきた科学・技術とはどういうものだったのか概観する。
[事前学習] 19世紀以前の出身国の科学や思想について簡単に調べておく。
第3回江戸時代の科学西欧から科学技術が大量に流入する以前、江戸時代に注目して日本にはどのような知的営為があったのか概観する。
[事前学習] 日本史のテキストなどから江戸時代の大まかな歴史について予習しておく。
第4回書評の書き方本講義の課題の一つである書評の書き方について説明する。
[事前学習] どのテキストについて書評を書くか考えておく。
第5回明治維新と西欧近代科学の導入幕末から明治にかけて西欧の科学技術を取り入れるため、日本政府や知識人がとった対策とはどのようなものだったのか。またどのような意図のもとに政策が進められたのか考察する。
[事前学習] 幕末-明治維新の歴史を予習しておく。
第6回明治〜大正の科学:国立科学博物館or江戸東京博物館(授業時外)受講生の意見も参考にどちらかの博物館に行き、実際に科学技術の成果物を見学する。
[事前学習] 近現代日本の代表的な科学者、発見・発明品を一つか二つ選び、簡単に予習しておく。
第7回帝国大学と高等教育機関科学技術の研究・教育に大学や専門学校など高等教育機関は大きな役割を果たした。ここでは帝国大学の設立過程やそこに込められた意図とはどういうものだったのか考察する。
[事前学習] 東京大学と日本大学の歴史について調べてくる。
第8回第一次世界大戦と研究所の設立第一次世界大戦は現代科学技術の展開において大きな転換点となった。当時の映像などを参照しながら、第一次世界大戦が社会に与えたインパクトとはどういうものだったのか、また日本ではどう受け止められたのか検討する。
[事前学習] 第一次世界大戦の経緯について簡単に調べ、また戦争に関連した科学技術にどのようなものがあるのか調べてくる。
第9回帝国と植民地の科学(1):帝国の科学日清・日露戦争を経て日本は周辺国・地域を植民地とし、帝国主義国家として歩んでいくこととなった。植民地支配を進めていく上で、科学は重要な役割を果たし、また科学の発展にも植民地での科学活動は少なくない影響を与えた。台湾や朝鮮など、植民地で実施された科学活動を二週にわたって概観する。
[事前学習] 日本が台湾や朝鮮などにつくった科学技術関連機関にどんなものがあったのか調べてくる。
第10回帝国と植民地の科学(2):植民地の人々と科学日本の統治下にあった台湾や朝鮮の人々は科学技術にどう向き合い、実践したのかについて、いくつかの事例を取り上げて考える。
[事前学習] 日本の植民地出身で活動した科学者・技術者について調べてくる。
第11回戦時期の科学技術「戦争と科学技術」というと軍事技術に注目しがちだが、戦時期の重要な特徴は研究開発の制度化と動員であり、それが戦後にも大きく影響したことである。15年戦争で築かれた科学の制度の特徴を理解し、戦後へのつながりを考える。
[事前学習] 戦時期の東アジアの政治・社会状況について調べておく。
第12回戦後日本の科学技術(1)敗戦後の米軍占領期を通じて、戦時期につくられた制度や組織の多くは解体・改編されることになったが、科学技術関連の制度・組織にはどのような変化があったのか。また科学者、技術者の意識・行動にはどのような変化が見られたのか検討する。
[事前学習] 戦後・冷戦初期の東アジアの政治・社会状況について調べておく。
第13回戦後日本の科学技術(2)1950年代後半から高度経済成長期に入った日本は、科学技術、産業分野で飛躍的な発展を遂げる一方、社会的な問題も引き起こしていた。水俣病などの公害はその代表的なものだ。科学技術の進展が抱える両義性について考える。
[事前学習] 水俣病について簡単に調べてくる。
第14回戦後東アジアの科学技術20世紀前半まで日本や欧米各国に抑圧されてきた東アジア各国は、第二次世界大戦後、さらなる政治社会的混乱を経験しつつも、科学技術の発展に力を注いできた。その様子を概観する。
[事前学習] 20世紀後半の出身国の科学技術について簡単に調べてくる。
第15回総括
授業形式 ビデオやパソコン画像を適宜使用しながらの講義。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
0% 60% 30% 10% 0% 100%
評価の特記事項 レポートは短い書評と博物館の感想文。小テスト(レスポンスペーパー)は、初回と最終回を除き、2回以上提出。
テキスト 授業に使うPPTを前日までに用意するので各自プリントしてくること。
参考文献 中岡哲郎『日本近代技術の形成』朝日選書、2006
中山茂『科学技術の戦後史』岩波新書、1995
廣重徹『科学の社会史(上)』岩波現代文庫、2002
吉見俊哉『大学とは何か』岩波新書、2011
オフィスアワー(授業相談) 講義終了後の30分(講師室)。必ず事前にアポをとること。詳細は授業初回に説明。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 日本をはじめ東アジアの国々が最先端科学技術をもつようになったのには複雑な歴史的要因があった。少しばかり歴史に目を向けて日本と東アジアの科学技術について考えてみよう。事前学習はインターネットもいいが、できればいろいろな本に触れて欲しい。授業には大人の分別を以って臨むことを期待します。