講義名 景気循環論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水5
単位数 4

担当教員
氏名
小巻 泰之

学習目標(到達目標) 1.マクロ経済学での基礎的な理論(貨幣需要等)・モデル(IS-LMモデル等)を基に,経済活動の変動が起こる原因について説明できる。
2.経済政策の発動(公共事業の拡大と減税の差異など)の効果などを,マクロモデルに関する計算問題から説明できる。
3.デフレ経済に至った原因を日本経済の歴史的推移から説明できる。
4.デフレ経済でゼロ金利政策が有効とされる理由について説明できる。
授業概要(教育目的) 日本は,バブル経済崩壊以降,「失われた20年」と呼ばれる長期的な低迷状況にある。そのような中で,アベノミクスといわれる政策により回復のきっかけを得ているとされている。そもそも,これまでの経済活動の低迷がどうして生じたのか。また,アベノミクスの是非はどのように考えるべきなのか。本授業では,マクロ経済学で学んだ基礎的な知識をもとに経済変動の諸要因を解説する。また,簡単なマクロモデルをもとに,定量的に経済活動を捉え,経済政策の当否を判断できるように努める。最終的には,種々の経済現象について,自ら頭の中にマクロモデルをつくり定量的に物事を考える力を身につけることを目標とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス,日本経済の動向(GDP,インフレ,失業,大震災)
1950年以降の日本経済の状況ついて,経済成長率,インフレ率,失業率,為替レートの動きから概観する。その中で,特徴的な動きを簡単に解説する。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
第2回戦後インフレ
第二次大戦により,日本の経済成長の源泉(資本ストック)は大きく損なわれた。一方,統制された経済環境の中で,需要が大きく拡大し戦後インフレが惹起した。ある意味で典型的な需要型のインフレの問題点を考える。
【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】預金封鎖,傾斜生産
第3回ドッジプラン


戦後インフレを収束させたのはドッジプランである.その内容と問題点を検討する。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】均衡財政
第4回戦争特需日本経済を高度成長に導く契機の一つとなったのは,戦争だったのか?戦争特需と経済成長を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】需要拡大
第5回高度成長(1)投資の二面性,国際収支の天井高度成長初期には,経済成長を持続できなかった。その原因を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】投資が投資を呼ぶ
第6回オリンピック景気

2020年に東京オリンピック開催が決定された。1964年東京オリンピックとの違いを考えながら,大型イベントの功罪を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】新規需要の拡大とその効果
第7回証券不況
1950年以降の日本経済の状況ついて,経済成長率,インフレ率,失業率,為替レートの動きから概観する。その中で,特徴的な動きを簡単に解説する。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】株価暴落とその影響
第8回高度成長(2)モデル経済循環のモデルを紹介し,その妥当性を検討する。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】景気循環モデル
第9回高度成長(3) 安定成長の要因 「いざなぎ景気」と呼ばれる長期の景気拡張が可能となった背景を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】労働と資本
第10回60年代のアメリカ経済


1960年代のアメリカ経済は,"Golden 60th"と呼ばれている。経済成長の要因を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】資本蓄積,外貨流出
第11回ニクソン・ショック 円高ショックが経済に与える影響を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】ブレトンウッズ体制,金本位制
第12回列島改造論財政拡張を中心とする総需要管理政策の内容と,その是非について考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】公共事業,インフレ
第13回オイルショック典型的な供給ショックである石油価格上昇の影響について考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】供給制約,インフレ
第14回理解度の確認(授業内試験)これまでの要点のまとめとして,授業内試験を実施します.
第15回中間のまとめ
試験を返却し,解説します.
第16回第二次オイルショックとインフレ期待



授業の最初に,夏季課題レポートの講評を行います。

短期間で2度の石油価格高騰が生じた。しかし,2回目のショックの影響は軽微なものですんだ。その要因を考える。
【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】早期政策転換
第17回オイルショックとアメリカ経済アメリカ経済におけるオイルショックの影響は日本とは異なった。その要因を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】所得政策,インフレ
第18回レーガノミクス低迷するアメリカ経済の立て直し策として,レーガノミクスをどのように評価すべきかを考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】サプライサイドエコノミクス,規制緩和
第19回ポリシーミックスと国際的波及(マンデル・フレミング)1980年代前半の日米の経済政策の差異が,強いドル(ドル高円安)を生じさせた。その経済的な背景を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】マンデルフレミング効果
第20回サスティナビリティとプラザ合意アメリカにおける貿易収支の赤字とドル高は,両立しえない状況である。その結果,金融市場は大きく混乱する。その原因を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】ドル暴落
第21回バブル(発生のメカニズム)バブル発生の原因をいくつか紹介するとともに,なぜバブル発生を防げなかったのかを考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】ユーフォリア,拡張的金融政策
第22回バブルの崩壊
バブル崩壊の主因とその影響を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】金融収縮,需要収縮
第23回デフレ:2000年代の見方と政策対応,インフレ需要関数デフレの発生要因について,一般的に指摘されたことを整理し,その当否を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】小幅なデフレ
第24回デフレ:ニューケインジアンフィリップスカーブ,インフレ供給関数デフレが長期間続く原因として,期待形成の影響を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】期待形成,デフレ
第25回デフレの原因:UKの大恐慌100年続いたとされる,デフレとその後の景気低迷の原因を整理し,日本へのインプリケーションを考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】名目賃金の下方硬直性
第26回デフレの原因:産業構造の変化と円高



デフレの原因として,産業構造と就業構造の変化を考える。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】第三次産業の衰退
第27回金融危機と金融財政政策デフレ経済下における金融財政の適否について考える。特に,1997年問題を取り上げる。
【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
第28回アベノミクスの検証 アベノミクスとは何か。また,その効果をどのように考えるべきなのかを解説する。

【準備学習】Ecolinkで配布する授業レジュメ及び演習問題を確認すること。
【キーワード】三本の矢の検証
第29回理解度の確認(授業内試験)第16回以降の講義内容について試験を行います
第30回まとめ 試験の返却と解説
授業形式 授業はパワーポイントを用いた講義形式で行う。演習問題については,解答(事前に解答者を募集)を授業が始まる前に板書してもらい,授業の最初に解説する。また,毎回のレジュメをEcolinkにアップロードするので,各自印刷して持参すること。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
0% 50% 50% 0% 0% 100%
評価の特記事項 レポートは夏季及び冬季の休暇を利用して作成.詳細はEcolinkに掲載する。小テストは,短答式及び計算問題を中心となる予定。講義態度は演習問題を解答した場合に付与する。
テキスト 利用しません。レジュメで対応します。参考文献などは適宜,授業内で示します。
参考文献 八代尚宏著『日本経済論・入門 - 戦後復興からアベノミクスまで』有斐閣,1890円.
オフィスアワー(授業相談) 毎週水曜日13:00-14:30。事前にアポイントをとり,指示された時間帯に研究室もしくは,本館2階講師室に来ること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ マクロ経済学は決して完成したものではなく,政策及び現実に合わせて組み替え可能な学問だと考えている。また,現実の経済現象をモデルをもとに考えることが必要である。講義ではモデルを構築していくプロセスにおいて,様々なマクロ経済学の諸命題について,学生の皆さん自らがモデルを構築できるような教育を実践したいと考えている。
参考URL 1 http://www.eco.nihon-u.ac.jp/~komaki/