講義名 財政学 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火4
単位数 4

担当教員
氏名
川端 和美

学習目標(到達目標) ・我が国の財政の現状と課題を説明することができる。
・経済学の価値基準である公平と効率の観点から税制の在り方を説明することができる。
・財政の観点から社会保障が抱える諸問題について説明することができる。
授業概要(教育目的) 本講義では、国や地方公共団体などの公共部門の経済活動を取り上げる。
現在の日本が直面している諸問題にも具体的に言及しながら、政府の機能と役割について考察する。本講義を通じて、政策形成に携わることができるための基礎能力を身につけること、また納税者として税が適切に使われているかを評価することができる能力を習得することを目標とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回財政とはこの講義の概要と受講についての留意点、評価の方法について説明する。
財政の役割について解説し、私たちの生活とどのような関連があるのかを学ぶ。
【準備学習】シラバスを読んでおくこと。
第2回市場と政府の役割①公共部門の役割について考察する。
公共財の経済的な性質を明らかにする。
個人の公共財の需要形成について考える。
キーワード:財政の3機能,純粋公共財.
【準備学習】参考文献②p.2〜p.17,p.78〜p.79を読む。
第3回市場と政府の役割②「市場の失敗」の例を紹介する。
その典型的な例として、「外部性」に関する諸問題を考察する。
キーワード:外部不経済,ピグー税,コースの定理.
【準備学習】「外部不経済」の例を考えてみよう。
第4回マクロ経済政策①45度線モデルを使って、乗数効果について解説する。
【準備学習】各自が持っているマクロ経済学のテキストの該当箇所を読む。あるいは参考文献②p.238〜p.243を読む。
第5回マクロ経済政策②IS-LMモデルの導出方法を学ぶ。
【準備学習】各自が持っているマクロ経済学のテキストの該当箇所を読む。あるいは参考文献②p.246〜p.248を読む。
第6回マクロ経済政策③IS-LMモデルから財政・金融政策の効果を考える。
キーワード:財政・金融政策,流動性の罠.
【準備学習】各自が持っているマクロ経済学のテキストの該当箇所を読む。あるいは参考文献②p.248〜p.252を読む。
第7回予算制度①予算制度について解説する。
予算の編成から執行・決算までの一連の流れを理解する。
【準備学習】参考文献①p.70〜p.82,参考文献②p.26〜p.36を読む。
第8回予算制度②我が国の歳入・歳出構成の推移を概観し、直近の我が国の財政状況を統計資料を用いて読み解く。
キーワード:一般会計,潜在的国民負担率.
【準備学習】参考文献②p.20〜p.23を読む。
第9回予算制度③平成27年度、平成28年度の予算編成の背景と概要について解説する。
【準備学習】参考文献①p.83〜p.95を読む。
第10回社会保障財政①我が国の社会保障制度について解説する。
社会保障の給付と負担の関係を財務省のデータを用いて考察する。
日本の社会保障の特徴を見る。
キーワード:合計特殊出生率,社会保障給付.
【準備学習】参考文献①p.110〜p.113を読んでおくこと。
第11回社会保障財政②我が国の公的年金制度を考察し、その効用と課題について検討する。
キーワード:公的年金制度,マクロ経済スライド.
【準備学習】参考文献①p.1116〜p.120を読む。
第12回社会保障財政③我が国の医療費を財源別、年齢階級別などから多面的に解説する。
また介護保険制度導入の経緯と意義を検討する。
高齢化と家計貯蓄率の関係についても言及する。
キーワード:社会保障と税の一体化改革,医療費,介護保険制度.
【準備学習】参考文献①p.114〜p.116,p.106〜p.107を読む。
第13回我が国の財政事情まず我が国の財政を家計に例えることによって、日本の財政状況の理解を深める。
プライマリーバランスを検討する。
財政赤字が累積することによって生じる問題点を考える。
キーワード:基礎的財政収支(プライマリーバランス).
【準備学習】参考文献①p.33〜p.36,参考文献②p.58〜p.65を読む。
第14回理解度の確認小テストを実施する。
小テストの詳細については2週間前までに講義中に言及する。
第15回中間まとめまとめ
第16回税制の役割①課税の理論、租税の原則を解説する。
直接税と間接税の違い、また垂直的公平と水平的公平を区別する。
キーワード:応能原則,応益原則,租税原則.
【準備学習】参考文献②p.106〜p.111を読む。
第17回税制の役割②税の納税義務と負担は必ずしも一致しないことを確認する。
消費税を例に挙げ、課税が消費者と生産者の負担にどのように帰着するかについて解説する。
需要・供給の価格弾力性が税負担の割合に影響することを説明する。
キーワード:租税の帰着,需要・供給の価格弾力性.
【準備学習】参考文献②p.122〜p.126を読む。
第18回税制の役割③課税の経済効果を考える。
資源配分上の損失(超過負担)を最小に食い止める課税について検討する。
【準備学習】参考文献②p.117〜p.122を読む。
第19回税制の役割④課税が人々にどのようなインセンティブをもたらすのかを、所得税が労働供給に与える影響を例に挙げて考察する。
さらに消費税の特徴についても言及する。
キーワード:効率性,公平性.
【準備学習】参考文献②p.112〜p.116を読む。
第20回税制の役割⑤所得の再分配を巡る問題を考える。
さらに超過負担が税率や税収、需要の価格弾力性とどのような関係にあるのかを解説する。
キーワード:負の所得税,ラムゼイルール.
【準備学習】参考文献②p.127〜p.132を読む。
第21回公共財の理論公共財の最適な供給水準について理論的に検討する。
キーワード:サムエルソンの公式、ナッシュ均衡、リンダール均衡
【準備学習】参考文献③p.174〜p.181を読む。
第22回公的年金の理論公的年金の2期間モデルを使って、公的年金の賦課方式と積立方式の家計への効用について考察する。さらに公的年金の導入が貯蓄あるいは労働供給にどのような影響を及ぼすかについて検討する。
【準備学習】第11回の講義ノートを見直す。
第23回地方財政①国と地方政府の役割の違いを理解し、地方分権定理について学ぶ。
その際、便益のスピルオーバーについても言及する。
キーワード:オーツの分権定理,便益のスピルオーバー.
【準備学習】参考文献①p.254〜p.274,参考文献②p.215〜p.218を読む。
第24回地方財政②地方公共団体の財政力を示す指標を紹介する。
地域間の財政力格差の是正と公共サーヴィスの地域間の公平性を確保するための財源移転について解説する。
キーワード:ティブーの足による投票,財政力指数,地方交付税交付金.
【準備学習】各自でそれぞれの出身都市の財政の特徴を調べる。
第25回公債論①公債負担の伝統的な議論を紹介し、公債が家計の行動にどのような影響を及ぼすのかを考える。
キーワード:バローの中立命題,公債の負担転嫁論.
【準備学習】参考文献①p.233〜p.244,参考文献②p.156〜p.159を読む。
第26回公債論②公債発行がいかなる場合に正当化されるかについて検討し、公債発行が生み出す負担について解説する。
さらに、租税との比較によって公債についての理解を深める。
キーワード:公債管理政策.
【準備学習】参考文献②p.162〜p.168を読む。
第27回財政投融資財政投融資制度とは何かを説明する。平成13年度の抜本的改革が行われた背景を知ることによって、制度の在り方を考察する。
キーワード:財政投融資,財政投融資計画.
【準備学習】参考文献①p.305〜p.314,参考文献②p.37〜p.42を読む。
第28回諸外国の財政事情と経済協力財政赤字、国税に占める直間比率などいくつかの指標をもとに、諸外国の財政の概要を解説する。
さらに、我が国と諸外国とのつながりについて言及する。
キーワード:SNA,直間比率,法人実効税率,ODA.
【準備学習】参考文献①p.1170〜p.179を読む。
第29回理解度の確認これまでの講義内容に関する練習問題を出題し、解説する。
第30回まとめ16回以降の要点まとめ
授業形式 パワーポイントと黒板を併用した講義形式で行う。
毎回レジュメをEcolinkにアップロードするので、各自印刷して持参すること。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
70% 0% 20% 10% 0% 100%
評価の特記事項 定期試験と小テストを実施します。また講義終了前にその日に扱った内容を確認する課題を提出してもらうこともあります。それを「講義態度」として試験の成績と共に総合的に評価します。
テキスト 特に指定しません。
参考文献 ①大矢俊雄編著『図説 日本の財政 平成27年度版』東洋経済新報社,2015年,2600円+税.
②小塩隆士著『コア・テキスト財政学』新世社,2380円+税.
③井堀利宏著『財政 第3版』岩波書店,2700円+税.
など
オフィスアワー(授業相談) 授業内にお知らせする指定アドレスに連絡して、事前にアポイントをとってください。
指示された時間帯に本館2階講師室に来て下さい。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 財政学で扱う問題は、皆さんの身近にたくさんあります。例えば、消費税率引き上げ、年金問題、少子高齢化問題、環境問題など様々です。日々の暮らしの中で色々なことに興味・関心を持って下さい。その好奇心が財政学を理解する上で不可欠です。授業後はレジュメ等を見直し、計算問題などはもう一度、自分で解き直してみて下さい。講義への積極的・継続的な出席を希望します。