講義名 環境経済論 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月3
単位数 4

担当教員
氏名
根本 志保子

学習目標(到達目標) 環境問題は,我々の生活,経済活動と深く関連しています。発生している問題の背景を把握し,論理的に解決策を検討することが重要です。本講義では,1年の講義を受講することにより,以下を目指します。
・様々な環境問題の現状と政策を知る
・経済学における外部性の概念や,炭素税などの経済的手法の理論を学び,環境問題や政策を経済学的視点で捉える
・自動車走行やエネルギーの需要管理,原子力発電のコスト,再生可能エネルギー普及のための買取制度など,環境政策の具体例を経済の観点から学ぶ
・環境経済論の専門的な知識と自分の言葉の両方を使って,環境問題やエネルギー問題の解決策を論理的に議論できるようになる
授業概要(教育目的) 本講義では,具体的な事例を通じて環境問題への理解を深めてもらうとともに,環境問題を経済学的に考える上で重要ないくつかの理論を学びます。また各環境政策においてどのようなことが論点となっているのか, また実際の環境政策において学んだ概念や理論がどのように使われているのか,についても解説します。理解に必要な経済学等の知識については,必要に応じて授業中に説明します。
授業計画表
 
項目内容
第1回環境問題の概要
 
環境問題の様々な分野とそれぞれの特徴を説明する。
第2回環境問題の歴史、環境問題と経済の関係世界と日本の環境問題・政策の歴史,経済活動と自然・環境の関係を概説する。
【事前準備】
第1回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第3回社会的費用の考え方環境問題の原因として「原因者が支払っていない費用」に着目する。
【事前準備】
第2回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第4回外部不経済の考え方1経済と環境問題の関係について外部不経済という概念で考える。ミクロ経済学の生産者行動について復習する。
【事前準備】
第3回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第5回外部不経済の考え方2外部不経済がない場合の生産者行動について復習する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第3回~第4回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第6回外部不経済の考え方3外部不経済がある場合の生産者行動と社会的最適生産水準について解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第3回~第5回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第7回外部不経済の考え方4市場全体での社会的最適生産水準および環境税のモデルとしてピグー税の考え方を解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第3回~第6回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第8回外部不経済の考え方5ピグー税により外部不経済を内部化した場合の社会全体の厚生の変化を,生産者余剰,消費者余剰,厚生損失の概念などから解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第3回~第7回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第9回外部不経済の考え方6環境税としてのボーモル・オーツ税を紹介する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第3回~第8回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第10回外部不経済の考え方7外部費用をだれが負担するか,また法と権利の観点から「コースの定理」を検討する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第3回~第9回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第11回自動車公害から学ぶグリーン税財政と政策1 自動車公害と政策を解説する。
【事前準備】
第2回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第12回自動車公害から学ぶグリーン税財政と政策2交通需要管理政策とロードプライシング政策を紹介する。
【事前準備】
第11回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第13回資源と廃棄物1
 
循環型・省資源社会からみて「リサイクルは望ましいのか」を検討する。
【事前準備】
第2回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第14回資源と廃棄物2
 
「グッズとバッズ」の概念からリサイクル資源市場の動きをミクロ経済学の枠組みから解説する。また資源問題と廃棄物問題の解決の方向性を検討する。
【事前準備】
第13回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第15回前期のまとめ前期のまとめ(前期試験)
【事前準備】
前期の授業で配布したプリントをよく理解し、準備すること。
第16回資源問題とエネルギー1原子力発電の仕組みとメリット・デメリットを学ぶ。
【事前準備】
第2回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第17回資源問題とエネルギー2放射性廃棄物の処理と最終処分場処理施設の問題について,フィンランドの最終処分場「オンカロ」を取材した映画『100,000年後の安全』を鑑賞し,その問題提起について考える。
【事前準備】
世界の最終処分場についての議論を予習しておくこと。
第18回資源問題とエネルギー3再生可能エネルギーの種類とメリット・デメリット、コスト,潜在量を検討する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第19回資源問題とエネルギー4
原子力エネルギーのコストについて考える。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第17回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第20回資源問題とエネルギー5日本の電力事業の規制と電力改革の現状について学ぶ。
【事前準備】
独占企業について予習しておくこと。
第21回資源問題とエネルギー6政府が発表している日本のエネルギー戦略を学び,考察する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第18回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第22回気候変動問題1気候変動(地球温暖化)問題の概要,国際会議の経緯・各国間の論争点を解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第19回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第23回気候変動問題2 京都議定書と京都メカニズムについて解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第20回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第24回気候変動問題と政策1-炭素税 炭素税のメリット・デメリットを検討し,諸外国での導入例を紹介する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第21回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第25回気候変動問題と政策2-排出量取引制度1排出量取引の様々な制度的枠組みを解説し,国内外での導入例を紹介する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第22回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第26回気候変動問題と政策3-排出量取引制度2排出量取引制度下での各排出者の行動をミクロ経済学の枠組みで解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第23回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第27回気候変動問題と政策4-排出量取引制度3排出量取引制度下での各排出者の行動をミクロ経済学の枠組みで解説する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第24回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第28回気候変動問題と政策5-日本の取組み気候変動問題への日本の取り組みを紹介・検討する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第25回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第29回気候変動問題対策の今後現在も国際会議で議論中の「ポスト京都議定書(京都議定書以降の国際的な枠組み)」について紹介する。
【事前準備】
授業中に問題を出します。第16回~第26回の授業で配布したプリントを予め読んでおくこと。
第30回後期のまとめ後期のまとめ,または期末試験
【事前準備】
後期の授業で配布したプリントをよく理解し、準備すること。
授業形式 講義は毎週配付するレジメに従って進めます。前期・後期ともに、授業中にこちらから質問をし,受講生に回答してもらうことがあります。回答には加点します。前期試験未受験および夏のレポート未提出の学生は,期末試験の受験資格を失います。その場合は,仮に期末試験を受験しても採点しませんので注意して下さい。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
60% 30% 0% 10% 0% 100%
評価の特記事項 定期試験(前期1回,後期1回)と夏季休暇中のレポート(各100点)の合計を3で割り,これに出席点(不定期)と授業中に行う練習問題への回答への加点を加味し総合評価。
テキスト 各回レジメを配布。
参考文献 PK.ターナー/D.ピアス/I.ベイトマン(大沼あゆみ訳)『環境経済学入門』東洋経済新報社
栗山浩一・馬奈木俊介『環境経済学をつかむ』有斐閣
原田正純『水俣病』岩波新書
大島堅一『原発のコスト-エネルギー転換への視点』岩波新書
オフィスアワー(授業相談) 月曜日の4限14:40~16:10(本館講師控室),予約を取ること。予約方法は初回授業にて知らせます。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 質問を歓迎します。ただし授業中の私語は厳禁です。夏の試験の未受験,夏期レポート未提出の場合は,後期の試験を受けても採点しないので注意してください。
1年間の講義を通して,環境問題の解決策を皆さんとともに考えていきたいと思います。皆さんが環境問題に対する自らの解決策を自らの言葉で議論できるようになることが授業の目標です。