講義名 経済特殊講義Ⅰ(欧州新興市場国の直接投資) ≪□第一部≫
講義開講時期 前期
曜日・時限 金3
単位数 2

担当教員
氏名
池本 修一

学習目標(到達目標) 本講義は,池本・田中編著『欧州新興市場への日系企業の進出』文眞堂,2014年を,9名の執筆者によって直接講義するというものである。本講義によって,履修者は,まず中東欧・ロシアの経済状況と貿易構造・直接投資の理論的背景を理解・把握し,次に事例研究として,中東欧・ロシア5カ国(ポーランド,ハンガリー,チェコ,スロバキア,ロシア)の自動車産業を中心とした対外直接投資の実態,自動車産業の集積状況と問題点を理解し説明できるようになる。
授業概要(教育目的) 前期15回の授業は,池本・田中編著『欧州新興市場への日系企業の進出』文眞堂,2014.の9名の執筆者が各1-2回講義するオムニバス形式の総合講座である。ロシア,中東欧は,社会主義体制崩壊後に市場経済化を進めてきた。その際にアジア新興国で採用された輸出志向の外資機械産業誘致による経済発展政策を採用した。そこで日系企業進出動向をケーススタディとして,ロシア・中東欧の経済に,外資がどのような影響を及ぼしているかを,テーマ,国別に講義することが本講義の目的である。
授業計画表
 
項目内容
第1回総論中東欧とロシアにおける日系企業(日本発の多国籍企業、FDI)の特徴を解明するために必要な過去の研究のサーベイとそれを理論的に検討する。
(準備学習)
テキスト第1章を読んでおくこと。
第2回貿易理論中欧4か国チェコ,ハンガリー,ポーランド,スロバキアの貿易構造分析を行う。
(準備学習)
テキスト第2章を読んでおくこと。
第3回直接投資の経済効果海外直接投資は多くの経済的な便益とその機会を有していると考えられている。 本講では統計データを使用した実証分析を試み、近年の中東欧諸国経済に対する直接投資がもたらす影響を明らかにする。
(準備学習)
テキスト第3章を読んでおくこと。
第4回欧州自動車産業精算ネットワーク欧州自動車産業の生産ネットワークの進化とグローバル競争力の構築について、その基本構造、産業集積地域分析、生産ネットワークの進化について検討する。
(準備学習)
テキスト第4章を読んでおくこと。
第5回チェコ経済と直接投資1チェコの日系企業進出の経緯とその後の進展について実務家の視点から詳細に分析する。
(準備学習)
テキスト第8章を読んでおくこと。
第6回ポーランド経済と直接投資1近年の外資系企業の進出事例の類型化を通じて,ポーランドの投資環境の特徴を明らかにするとともに,外資系企業の進出動向を分析している。日系企業を含めた外資系企業の進出は,製造業以外にも幅広い業種にみられるとともに,進出の形態も企業買収や資本参加など,多様化が進んでいる。これらはポーランドの投資環境や社会環境にも影響を与え,また新たな投資を呼び込む契機となっている。これらの動向を検討する。
(準備学習)
テキスト第6章を読んでおくこと。
第7回ポーランド経済と直接投資2
日系製造企業のポーランド進出案件に注目して、進出件数と個別の直接投資額に一定程度の変化は見られるものの、過去においても、現在においても、依然として日系製造企業の進出が進んでいるという現実に関して、進出当初からの著者自身による断続的なインタビューの結果に基づいて、その要因群の析出を試みる。
(準備学習)
テキスト第5章を読んでおくことと。
第8回チェコ経済と直接投資2チェコに進出した日系企業,特にトヨタおよびトヨタグループ企業を対象に,日本的生産方式がどのような形で適応しているかを検討する。
(準備学習)
テキスト第7章を読んでおくこと。
第9回ハンガリー経済と直接投資中東欧経済とハンガリー経済の現状を概観し、本講義の目的,アプローチ,問題点を再度検討し,ハンガリーの対内直接投資の現状を検討する。次に、中東欧地域に進出した日系企業の動向と特徴と時系列的変化を整理し,スズキハンガリーと取引している日系サプライヤー企業2社の現在の特徴を明らかにしたのち、アセンブリーメーカーであるスズキハンガリーの活躍とその問題点を分析する。
(準備学習)テキスト第1章と第9章を読んでおくこと。
第10回スロヴァキア経済と直接投資スロバキアの対外直接投資による進出状況・概観を検討する。スロバキア投資庁の設置や税制簡素化等の規制緩和による政策からの支援と、物流上の戦略的な位置、政治的・経済的安定、EU加盟とユーロ導入、低廉で良質な労働力による競争力から、2000年代にFDI主導の経済成長を果たし、一人当たり自動車生産額は世界一となった。しかし近年の労働法改正や制度変更による税制の複雑化が投資を阻害しつつあり、自動車に重度に依存した産業構造はEU、とりわけドイツの景気動向に脆弱になっている。これらの状況を概観する。
(準備学習)
テキスト第11章を読んでおくこと。
第11回ロシア経済と直接投資1ロシア向け外国投資も考慮しつつ,日本の対ロシア直接投資の動向とロシアの投資環境について考察する。日本のロシア向け投資は,ヨーロッパ諸国等と比較して旺盛であるとは言い難いものの,徐々に日系企業の進出が増加している状況にある。またそれは,卸売・小売り・修繕や金融仲介等の産業に加え,日本の自動車メーカーの進出に伴い,部品の供給等も含む輸送機械器具部門において活発である。これらの状況を概観する。
(準備学習)
テキスト第13章を読んでおくこと。
第12回ロシア経済と直接投資2ロシア市場への日系自動車企業の進出事例として日産自動車を取り上げた。同社は単独でサンクトペテルブルクに展開しているほか、ルノー=日産合同としてアフトワズへの資本参加を行っており、後者は多くの困難を伴っているものの、新興国市場での地歩確立に不可欠な要素となった。以上,現地での調査をもとにロシアでの外資自動車産業の進出について検討する。
(準備学習)
テキスト第14章を読んでおくこと。

第13回欧州新興市場国の経済発展と直接投資第1章から第14章を踏まえて、欧州新興市場国が、どのような経済発展戦略を採用したかを比較検討する。あわせてアジア新興市場国との比較を試みる。テキストは特に指定しない。
第14回理解度の確認これまでの講義をまとめ,中東欧ロシア諸国における日系企業の進出状況,特色,問題点を再検討し,第1講以降の要点をまとめる。
第15回まとめ全体のまとめ
授業形式 オムニバス方式により,各講義は異なるテーマで異なる教員により講義をすすめる。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
80% 0% 0% 20% 0% 100%
評価の特記事項 最終授業時に試験を実施する。
テキスト 池本修一・田中宏編著『欧州新興市場への日系企業の進出』文眞堂,2800円.
オフィスアワー(授業相談) 当講義幹事の池本は,毎週火曜日17時から18時まで研究室とするが,他の教員は,授業終了後に直接教員へ授業相談の時間を問い合わせること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 授業計画表を参考に,講義ごとに担当の教員が異なるので,事前に担当教員執筆章を読んでその要点をまとめておくこと。詳細は授業計画表を参照のこと。