講義名 経営学 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月4
単位数 4

担当教員
氏名
平野 文彦

学習目標(到達目標) この講義では、現代社会の重要な機関としての「企業」に焦点をあて、その社会的な役割・目的・責任などを学ぶとともに、その存続と発展にとって不可欠な「経営」という機能について、基礎理論や事例等を通じて体系的に学習することを目的とする。
授業概要(教育目的) この講義では、企業や経営についての基本的知識や理論を学習すると共に、現代社会におけるその役割と意味について考え、受講生一人ひとりが社会における経営の問題に興味を抱き、より上級の専門学習へと展開していかれるような力を育成することを目的とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回 経営学の意義と目的ここではまず、なぜ「経営学」が必要とされるようになり、ますます高度な研究が求められるようになってきたのかについて、経済社会の構造変化・変質の流れとの関連において理解を深めていただく。
[準備学習]
 経営学を学ぶにあたっての、「自己の関心や期待」を、少なくとも1点以上、具体的な背景や事実を土台として、word 文章にまとめ(1点につき200~250字程度で簡潔・明瞭に)、メモリー・スティック、あるいはクラウドに置いて、送信可能な状態にして、最初の講義時間に持参すること。
第2回経営学への誤解、課題、定義、及び方法先人によって積み上げられてきた「知識」は、あらゆる分野において、これに触れようとする者にはワクワク感を与える。人間にとって「知る」ことは「楽しみ」であり、豊かに生きようとするための源である。したがって一つの小さな分野に限ってみても、日々に増殖を続けていくものである。
しかし、「学問」は、断片的知識の非論理的な集積ではない。学問それぞれに特有の「観察・研究の目的」を確認することから始めなければ、「群盲評象」に陥ってしまう。先人が築きあげてきた「経営学」を効率的に学ぶこともできないし、「経営とは何か」について正しく知ることも難しい。ここでは主として「経営学」の「目的」、「研究対象」、「アプローチの方法」について理解を深めていただく。
[準備学習] 
上記の課題に関連して、専門の辞書、あるいはインターネットを使って、「経営学」という学問について、現在、どのようなことが議論されているか調べてみること。
第3回伝統的経営学における「経営」の認識と限界ここでは、[1]経営学の出発点となったF.W.テーラーの『科学的管理法』から、[2]H. ファヨールの『管理原則論』、[3]]メイヨ-とレスリスバーガーらによる『人間関係論』を概観することによって、それぞれの意義と限界を理解していただく。
[準備学習] 
上記の経営学の三つの学説について、それぞれ要点の簡単な整理してみること。
第4回現代経営学における「経営」の認識ここでは、[1]C.I.バーナードのThe Functions of the Executiveによる『近代的組織論』と、P.F.ドラッカーのThe Practice of Managementによる『マネジメント論』について概観し、そこにおける「経営」の意義とび限界について理解を求めるとともに、現今の経済社会において求められている「経営学」の方向について理解を深めていただく。
[準備学習]
「経営学」という分野が、いつ頃、世界のどこで、どのような課題をもって登場してきたかのかについて、図書館や 情報機器を利用して文献を探し、自分なりに一応の整理を試みてくること。
第5回本講での「経営学」の全体像ここでは形式的にはドラッカーの所説に基づいて組み立てた「経営学」の全体像について理解を求める。さらに「人」である「経営者」が知識と判断と行動をもって実践しているマネジメントを脅かすものとして、「オートメーション」について正しい理解を促す。
[準備学習]
 身近に見られる「オートメーション」の例を観察して、「経営(MANAGEMENT)」 の努力とはどのような関係になっているのか、考えて、レポートしてみよ。
第6回「ビジネス」とは何か。「企業」とは何か。ここでは「経営(MANAGEMENT))」の対象とされる「ビジネス」と「企業」について正しい理解を求める。特に「ビジネス」は、現実の社会に広く存在している “金儲け”、“賭け”、“利潤の極大化”を目的とした人間と企業の行動と混同されやすい。「『所有』と『経営』との必然的分離」、「生活を目的とした『生業(なりわい)』と、「何らかのミッション(社会的使命)をもって「価値(value)」を創出し続けている『企業』との峻別」を通して、「経営(MANAGEMENT)」の意義の現代的理解を求める。
[準備学習] 最近の経済ニュースの中から、「大きな魅力または期待を感じた企業行動(あるいは経営者の行動)」の事例と、「大きな失望や危険を感じた企業行動(あるいは経営者の行動)」の事例を一つ以上見つけ出し、感想を含めて、自分なりに分析してレポートすること。
第7回最近における日本と世界のビジネスここでは「経営学」への関心を高めることを目的に、一旦、「学問の世界」から「経営実践の世界」に目を転じて、常により大きな「価値の創造」を目指している「ビジネスの深さ」と「経営のダイナミズム」について、正しい理解を求める。これとは反対に、「企業不祥事」と呼ばれる事例についても必要な範囲で触れる。
第8回経営学を学ぶための基本的な態度・姿勢・視点の確認ここでは「経営学」について、これまでに学んできたことの整理と確認を行う。
[準備学習]
 簡単な理解度テストを予定しているので、準備をしてくること。そのガイダンスは前回までの講義の中でを行う。
第9回ビジネスの本質とそのマネジメント(1)マーケティングここではビジネスの手法として、顧客と市場の発見、開拓、創造などの活動を総称する「マーケティング(marketing)」について、好事例に基づいて全体の理解を深めることを求める。
[準備学習]
最近の経済ニュースやビジネス系テレビ番組の中から、企業が「大きな市場、多数の顧客」の創造に取り組んでいる例に関心をもってコメントしてみよ(2点以上)。
第10回ビジネスの本質とそのマネジメント(2)イノベーションここではビジネスの手法として、イノベーション(innovation・革新、創新)の活動に着目する。製品、技術、サービス、配送サービス、提供方法などの革新事例に基づいて、全体の理解を深めることを求める。加えて近年におけるオープン・イノベーションの動向についても考察と理解を求める。
[準備学習]
最近の経済ニュースやテレビ番組の中から、企業が「社会に大きな変革をもたらしている事例」を5点、拾い出して、それぞれにコメントしてみよ。
第11回ビジネスの本質とそのマネジメント(3)生産性の改善・向上ここではビジネスの第三の手法として、「生産性の改善・向上」の取り組みに焦点を当てる。IT(情報通信技術)、ICT(Information and Communication Technology、AI(人口知能)、ビジネス・システムなどについて、好事例に基づいて全体の理解を深めることを求める。加えてソーシャル・イノベーション(social innovation)の動向についても考察と理解を求める。
[準備学習]
最近の経済ニュースやテレビ番組の中から、企業が「生産性の改善・向上」に取り組んでいる例(3点以上)を取り上げて、それぞれについてコメントしてみよ。
第12回ビジネスの本質とそのマネジメント(4)その他の手法ここでは、これまでにビジネスが追い求める課題として考察した、①マーケティング、②イノベーション、③生産性の改善・向上、に加えて、④物的資源と財的資源(資金)、⑤利益、⑥マネジメントの能力、⑦人的資源、⑧社会的資源、について理解させる。特に年における企業の資金調達の方法について、いわゆるクラウドファンディングCrowdfundingの新しい動向などを含めてその特徴を理解させる
第13回ビジネス本質とそのマネジメント(5)ビジネスの諸相ここでは業種を大きく分けて、商業、製造業、及びサービス業について理解を深める。販売(大売り・卸売りと小売り・個売り)、物通・サプライチェーン、生産事業と生産方式の原理、ホスピタリティ事業とサービスの本質などについて、「ミッション」と「バリュー」と「ビジョン」の観点からの理解を求め、関心を広げさせる。
[準備学習]
トヨタ自動車株式会社のHPに『トヨタ自動車75年史』がある。文書で読んで、ここから学ぶべきことを10点以上レポートすること。
第14回ビジネスと経営者これまでに学んだ「ビジネスの本質とそのマネジメント」について、その総括的な理解を求めるとともに、そのマネジメントの責任者たる「経営者」を「経営学」はどのように認識しているかについて確認する。加えて「資本と経営の分離」、「経営の近代化」との関連において、「経営学」がとらえる「経営(MANAGEMENT))」と「経営者(MANAGER)」の役割について考察と理解を求める。
第15回経営学の基礎に関する確認これまでに学んだことについて、「経営学」の基礎的の理解がどのように進行しているかを確認する。
[準備学習]
これまでの授業におけるノートや配布資料について整理を済ませておくこと。
第16回マネジャーのマネジメント(1)経営者の概念ここでは「所有」から分離された「経営」とその責任者である「経営者」について、その本質的理解を促す。特に、[1]“有能で責任感のある”経営者像、[2]“制度”としての経営者、[3]組織内の“層あるいはチーム”としての経営者(個人経営者から組織的経営陣へ)、[4]組織の内外における“利害調整者”としての経営者、などについて理解を深めさせる。
[準備学習]
「経営者とは何か。経営者が果たすべき機能と責任とは何か」について考えさせられる事例を、日々のニュースの中から3点、拾い上げてみること。
第17回マネジャーのマネジメント(2)目標設定と自主管理マネジメントは、「上から決められたノルマ」や「報告と手続きの制度」による「支配」の方法とは、まったく異質のものである。むしろ、どこからも強制されなくても動く、いわば自律性(autonomy)こそがマネジメントの最大の特質である。ここではP.F.ドラッカーのいう「目標設定とセルフコントロール」の概念について理解を求めるとともに、「評価の必要性と限界」についての考察を学ぶ。
第18回マネジャーのマネジメント(3)組織文化マネジメントは単に部下に働きやすい環境の職場を提供することだけでなく、マネジャーが自らの機能を発揮しやすい組織を整えていくことが課題となる。その基礎となるのが「組織文化(組織の精神)」である。組織に、内外に向かって表明する「経営理念」も大きな役割を果たす。従業員の賃金・給与の支給制度だけでなく、経営者を対象とした「報奨と報酬」の制度も、昇進の制度、そして上司のリーダーシップなどが、その組織の風土を決定づけるものである。ここではこの「組織文化」のマネジメントについて理解を求める。
[準備学習]
好感をもっている企業数社について、どのような「経営理念」を掲げているかを調べてみること。
第19回マネジャーのマネジメント(4)ガバナンス ここでは、「経営者」は、一つの組織の経営に責任を有する存在であるとはいえ、“社会の一機関”としての役割を果たすことが求められていることから、いわば“強権による個人的支配者”として振舞うことは、一般には許されていない。経営者の行動には、常にガバナンスがかかっている。憲法・民法・労働芳をはじめとする多くの法規制とコンプライアンス(compliance)、コーポレート・ガバナンスの確保、国際的観点からのグローバル・コンパクト(The United Nations Global Compact)など、種々の制約がある。これらについて理解を深める。
第20回マネジメントのための組織構造(1)組織の組み立て経営のための組織は様々に組み立てられるが、ここでは、(1)個人組織と会社組織(特に株式会社制度、LLC(Limited Liability Company、有限責任会社)、その他)、(2)組織化の原理(分業と協業の体制)、(3) 連邦型組織と機能別組織、(4)集権的組織と分権的組織、などについて、どのようなメリット、デメリットを伴うのかについて、理解を進める。
第21回マネジメントのための組織構造(2)大企業、小企業、制著企業ここでは、事業の効率的な展開に当たってどのような組織形態を選択すべきかの課題について考える。大規模化を求める大企業か、限定された顧客や市場の要求に応えるための小企業か、成長分野を開拓する成長企業かの別、さらには、組織のアライアンス(alliance)、M&A(Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』)、組織間関係(InterOrganizationalRelations)noの意義と動向についても理解を深める。
第22回事例研究ここではすぐれた企業を事例にして、「経営(MANAGEMENT)」の総合的分析を試みる。
第23回WORKER とその仕事のマネジメント(1)IBM Story(1)古典的事例としてのIBM Storyに学ぶ、(2)「人を雇う」]ことの本来的意味、特に「雇用の維持」が持つマネジメント上の意義について理解する。さらに、(3)近年における職場へのロボット、人工知能の導入と影響、について理解を深める。
第24回WORKER とその仕事のマネジメント(2)HRMここでは、(1)伝統的な「人事・労務管理」から「人的資源管理(Human Resource Management)」への重点移行の本質的意味、(2)「命令・服従」による掌握と支配の論理からの脱却、(3)従業員のやる気に火を点ける(imspiration)について理解を深める。
[準備学習]
“経営の神様”と呼ばれている松下幸之助、そして稲盛和夫について、そのマネジメントの基本的姿勢などを整理してみよ。
第25回WORKER とその仕事のマネジメント(3)「最高の仕事」へのモティベーション人が「輝く」ための職場の環境条件は何か。(1)「最低の仕事」に向かわせる要因と、「最高の仕事」に向かわせる環境要因、(2)「最高の仕事」へのモティベーションの二つに分けて考察する。加えて、モティベーションの基本について、これまでに明らかにされてきた理論と学説を理解李させる。
[準備学習]
 「働く意欲」がかき立てられる要因にはどのようなものがあるか、また反対に「働く意欲が奪われる要因にはどのようなものがあるか、自己の体験をもとに、やや深く考察してみること。
第26回WORKER とその仕事のマネジメント(4)経済的次元「人はなぜ働くのか」。グーグルが定めた「ワーク・ルールズ」について、以下のように紹介されている。「グーグルのカラフルなオフィスは非常に有名で、グーグルの福利厚生、人事制度には数々の伝説のようなものがある。昼食も夕食も全て無料、社内でクリーニングが出せる、移動美容室が来る、など。本書で明らかにされているが、グーグル社員が亡くなった場合に遺族は社員の死後10年間、給与の50%が支給される、といった制度まである。」 労働の条件や環境、中でも賃金・給与などの経済的条件は、どのように重要視されるべきだろうか。話題と資料を提供しながら、「人はなぜ働くのか」について理解を深める。
第27回世界の経営者は今、何を追求しているかここではまた、「学問」の世界から「実践」の世界に目を移し、世界の経営者は、今、何を追求しているかについて、至近の事例に基づいて考察し、「経営」と「経営学」への関心を高める。
[準備学習]
配布資料に基づいて、これからの「経営」と「経営者」の課題について、学びとるべきだと考えることを整理してみること。(5000字程度)
第28回本講義を通じての「経営学」の要点の整理と確認これまでに学んだことについて、「経営学」の基礎の習得がどのように進んだかを確認する。
[準備学習]
これまでの授業におけるノートや配布資料について整理を済ませておくこと。
第29回新時代に要求される「経営」と「経営者」のありかたこれからの「経営」と「経営者」の課題について、以下の3点から考えていただく。
(1)仕事、意思決定
(2)明日の経営者の育成
(3)責任の自覚
第30回理解度の総合的把握これまでに学んだことについて、正しく理解されたかどうかの確認を行う。
授業形式 講義形式:詳細な講義内容については、それぞれの担当者によって異なるので注意すること。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
50% 10% 10% 30% 0% 100%
テキスト 授業開始時に指定する。
参考文献 P.F.ドラッカー『現代の経営』(上)(下)(ダイヤモンド社)
オフィスアワー(授業相談) 月曜日5限
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 上記に記載した課題の他は、講義中に指示する。