講義名 民法 ≪□第一部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金3
単位数 4

担当教員
氏名
小野 健太郎

学習目標(到達目標)  民法は、市民の法という意味で、市民社会における市民相互の関係を規律するルールです。民法は、税金を納めたり、国家の刑罰権に服するような公的生活関係ではなく、自動車を購入したり、家を借りたり、婚姻をしたりするなどの私的生活関係に関するルールです。民法は、このような私的法律関係を規律します。この講義では、①物権、債権などの民法上の基本用語を理解し、説明できる。②土地建物などの不動産所有権制度を理解し、不動産物権変動論とその問題を説明できる。③動産取引のを理解し即時取得制度を説明できる。④債権関係を理解し説明できる。⑤成年後見制度を理解し説明できる。などを中心として学習到達目標とします。
授業概要(教育目的)  民法は、私的法律関係について、民法典で民法総則、物権、債権、親族、相続など5編1044条の条文でこれらの問題を規律しています。そこでは、日常あまり聞きなれない権利主体、法律行為、時効、債権、物権など多数の難解な言葉が出てきます。毎回、毎回の授業が積み木のように重なり合いながら授業が進展し理解できるようになります。ある意味外国語の授業とおなじです。重要な単語、概念は、暗記しなければなりません。授業のノートを整理して確実に、基本概念の意義とその効果を理解し説明できるようにすれば、自分の私的生活トラブルを解決できることになります(この能力取得が授業目標です)。
授業計画表
 
項目内容
第1回民法上の生活関係には、どのようなものがあるか考えてみよう?わたしたちの法的生活関係には、公法的生活関係と私法的生活関係がある。その区別を理解し、説明できるようにする。
紛争解決方法にどのようなものがあるか。その際(紛争解決)の基準にどのようなものがあるか、理解し説明できるように、考えておくこと。
第2回私法上の権利の実現方法には、どのような方法があるか?
裁判手続きの概要を確認しよう。
私たちは、どのように権利を実現しているか考えてみよう。たとえば、友人に1000万円貸したが、約束の期日が到来しているのに、返してくれない場合、貸主はどのような法的主張ができるだろうか?
自力救済の禁止、民事裁判制度、民事執行制度、民事保全制度など、予め調べておくこと。
第3回わたしたちには、民法上どのような権利が保障されているのか?民法上、私人(私たち)に保障されている、人格権、物権、債権、家族法上の権利について解説していく。
物権、債権などは、はじめて出てくる単語であることから、予め意味を調べておくことが望ましい。
第4回物権的請求権について人が物を所有している場合、その物に対して侵害がある場合に、その物の所有者は、侵害者に対して一定の行為を主張することができる。これを、物権的請求権という。
物権的請求権、占有訴権などについて、言葉の意味を調べておくことが望ましい。
第5回物権の意味とその分類人と物の関係を規定する物権を理解し、その分類を学ぶ。物権には、所有権、占有権のほか、抵当権、質権などの担保物権などがある。
予め、物権の分類(10種類)を調べておくことが、望ましい。
第6回債権の意味、債権の発生原因を学ぶ債権の定義を学ぶ。
債権には、約定債権関係と、法定債権関係がある。
約定債権は、当事者の合意に基づく債権関係であり、民法上13パターンがある。法定債権関係には、事務管理、不当利得、不法行為などがある。詳細は、後日説明することになるので、全体像を把握することが重要です。
第7回家族関係上の権利について学ぶ家族関係上の問題を検討します。親族関係では、婚姻の成立、離婚の問題。親子関係の問題など。相続関係では、相続に関する単純承認、放棄、限定承認などの問題を概観します。
生殖医療の問題など、最近の問題を新聞などで確認しておくことが望ましい。
第8回財産法の基本原則について学ぶ民法の基本原則には、①権利能力平等の原則、②所有権絶対の原則、③私的自治の原則、④過失責任の原則がある。
それぞれの制度につき概観するので、予めその内容を予習しておくことが望ましい。
第9回民法の基本原則の修正。とりわけ、権利濫用について学ぶ。民法の基本原則である「所有権絶対の原則」の修正原理である「権利濫用の法理」について学ぶ。宇奈月温泉事件などの判例を用いて、この問題を考えていく。
予め、民法判例集などで「宇奈月温泉」事件を調べておくことが望ましい。
第10回取引行為と意思能力取引の際に、その当事者に権利能力や意思能力が必要であることを学ぶ。
意思能力を欠く状態でなされた契約は、無効となることを学ぶ。また、未成年者のする取引にかんして、その行為の効果がどうなるかを学ぶ。
予め、未成年者がする契約の効果がどうなるか考えておくことが望ましい。
第11回成年後見制度について学ぶ取引に際して、精神障害のため判断力を欠く者がした行為の効力や、判断力が不十分な物のした行為の効力が問題となるが、民法はこれらの者につき、法定の手続きを用意し保護者を付与することとした。これを、成年後見制度といい、家庭裁判所が関与する。
第12回成年後見制度について学ぶ(続き)成年後見制度には、被後見、被保佐、被補助の制度がある。それぞれの制度の共通点、相違点を十分に理解する必要がある。
予め、成年後見制度の問題点などを新聞などで確認しておくことにより制度の理解が深まる。
第13回意思表示の際、意思に欠缺、瑕疵がある場合について学ぶ


契約の成立要件、有効要件、効果帰属要件を学んだ後、心裡留保による契約の効力、通謀虚偽表示の契約の効力などを検討する。
予め、言葉の意味を調べておくことが重要である。
第14回意思表示の際、意思に欠缺、瑕疵がある場合について学ぶ
意思表示の際、表意者の錯誤がある意思表示の問題を検討する。債権法改正でこの錯誤規定が大幅に変更される可能性があることも触れる予定である。
第15回中間のまとめまとめ
第16回意思表示の際、意思に欠缺、瑕疵がある場合について学ぶ
意思表示の際、表意者に詐欺・強迫がある場合の意思表示の効力について学びます。
日常用語の、詐欺強迫と異なることに注意してください。
予め、これらの言葉の意味について考えておきましょう。
第17回意思表示が取り消されたり、無効となる場合を学びます。意思表示の取消原因、無効原因について「まとめ」てみます。さらに、取り消しと、無効の効果の区別を明確に意識することが重要です。
予め、自分なりに無効と取り消しの相違点を調べておくことが望ましい。
第18回動産と不動産。不動産取引と民法について民法上の物の分類である、動産と不動産の区別について学ぶ。さらに、不動産取引の基礎について学ぶ。
予め、土地を購入する場合には、どのような手続きをえると所有権を取得できるか、考えておくこと。
第19回不動産取引と民法について(続き)。不動産取引に関する、意思主義+対抗要件主義について学ぶ。不動産取引における登記制度の意味を確認します。
予め、民法176条、民法177条を熟読しておくこと。
第20回動産取引と民法動産取引の権利移転システムと、対抗要件システムを学びます。動産取引における対抗要件としての引渡し(占有移転)のシステムを学びます。
予め、民法182条、183条、184条を読んでおくこと。
第21回動産の即時取得の制度を学ぶ。動産取引の特徴である即時取得制度を学びます。民法192条の要件に関し、前回の占有移転と同様の記論が展開するため、両者を混同してしまう恐れがあるので注意が必要です。
予め、192条を熟読しておくこと。
第22回代理制度について(無権代理も含めて)意思表示は、契約当事者がこれを自ら行うことが原則です。しかし、当事者の意思の補充のため、あるいは、意思の拡張のために代理制度が認められるようになりました。今回は、このような代理人の意思表示が本人に効果が帰属するための要件を学んでいきます。
第23回代理制度について(特に表見代理について)有権代理の要件が満たされない場合は、無権代理となりますが、本人と無権代理人との間にある一定の関係が認められる場合には、本人は無権代理行為のの効果帰属を拒むことはできません。これを、表見代理といいます。
予め、民法109条、110条、112条を熟読しておくこと。
第24回売買契約関係について売買契約が成立した場合の、売主、買主の権利義務関係を検討する。売主の義務としては、財産権移転義務、対抗要件を取得させる義務、(瑕疵)担保義務などがあり、買主は代金支払い義務を負うが、これらを検討していく。
予め、売買に関する民法の条文を読んでおくことが望ましい。
第25回債務不履行責任について契約関係が成立しているにもかかわらず、その債務の本旨に従った履行のないことを、債務不履行という。
債務不履行に基づく損害賠償責任の発生パターンを検討し、その効果を考える。
民法415条、416条を読んでおくこと。
第26回債務不履行責任について前回に引き続いて、債務不履行に基づく損害賠償請求の発生パターンを検討する。
さらに、債務不履行がある場合、当事者は、契約解除の主張ができる。解除の要件、効果を検討する。
民法540条~546条を読んでおくこと。
第27回不法行為の意義、成立要件について正当な理由なく他人の権利(利益)を侵害したものは、そこから生じた損害を賠償する責任を負う。これが不法行為責任であり、その成立要件に関して、多くの議論がある。主として、故意・過失の問題を検討していく。
予め、民法709条を読んでおくことが望ましい。
第28回不法行為の意義、成立要件について(続き)不法行為の成立要件に関して、権利侵害、損害、因果関係の問題を検討する。
予め、民法709条を読んでおくことが望ましい。
第29回特別な不法行為(使用者責任)、PL法についてある事業のために他人を使用したが、その他人が第三者に不法行為をした場合の使用者等の責任を認める規定を検討する(民法715条)。さらに、製造物責任法の構造も概観する。
予め、民法715条を読んでおくことが望ましい。
第30回まとめ16回以降の要点のまとめ
授業形式 通常は、講義形式で行う。パワーポイントを用いての授業なので、情報量が多いが、しっかりとノートをまとめてください。講義中、具体的事案に関しては、質問をしながら授業をするばあいもあるので、よく考え聞いてください。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
90% 0% 0% 10% 0% 100%
評価の特記事項 基本的にすべての講義を受講することにより、全体像が理解できることになります。試験は、基本的なものです。講義に参加し、基本的なことを暗記し、考えるこ
とを継続すれば高評価なものとなります。
テキスト 特に指定はありません。自分が「これならば読めそうだ」と思うテキストを何度か通読することをお勧めします。
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後、20分間は本館2階講師室にいます。本館2階講師室に来てください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 相続の問題、成年後見制度の問題など、自分自身の家族や親せきのあいだで話題となることがあります。「わからない」として放置するのではなく、どこがわからないかを考えることが重要だとおもいます。また、テレビや新聞など家族問題、遺言相続の方法などに関して、特集記事が掲載されています。それらの記事をとりあえず切り抜いておき、時間がある夏休みや、授業の空き時間を利用して読み込むことが有効だとおもいます。民法関係の事案に、まづ関心を持つことから始めることだと思います。