講義名 論理学 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水5
単位数 4

担当教員
氏名
長谷川 武雄

学習目標(到達目標) 「人間は考える葦である」とはパスカルの言葉である。しかし、あまりにもこの「考える」が身近なゆえに、それに対する反省はするものの、どのように反省すべきか、どうすれば「よく考えることができるか」については多くの人が悩んでいる。それに一筋の光を与えるのが「論理学」であろう。もちろん論理学を学べばすぐに「よく考えることができる」ものではなく(むしろ論理学は生活的ではない)、反省の方向づけと道具を提供するものである。従ってこの道具を使い始めることによって、「厳密に」そして「論理的に正しく」考えることの意味を理解し、その上で「論理的に考える」道筋を示してくれる。
授業概要(教育目的) 「生物学」など、その名前によっておおよそその内容を思い描くことができるが、「論理学」などは漠然と「思考」に関わるのではないかと想像できても、具体的となるといっそう想像することは難しい。そこでこの講義では、その点をより具体的に理解してもらうために、「日常世界」から「学問の世界」そして「空想の世界」までを、論理的に思考してみる。「論理」に従った思考とはどのように思考することか、その枠組と、それに従う規則を具体例を用いて解いていく。それを実際に行うことによって、「論理」、「論理に従った思考」とはどのようなことか、を理解してもらう。
授業計画表
 
項目内容
第1回義説明これからの講義について、シラバスに従って説明、また質問を受ける。論理学のいくつかの見方を確認する。
【準備学習】
シラバスに目を通し、各項目内容について確認しておくこと。教科書「はじめに」を読んでおくこと。
第2回日常生活と「論理」私達の日々の生活(行動)の1つとして、様々な情報を処理している。この処理は身体的活動というより思考活動と言えるが、ここに「論理」との関わりを確認する。
【準備学習】
教科書9~19頁を読み「思考活動における情報の処理」とはどのようなことか、考えておくこと。
第3回日常言語と「論理」思考活動における「論理」の位置付けを考えて見る。その際、学問的知識・常識・その他の様々な知識と言われるもの、それらと「論理」及び「記号」の関係はどのようなものか、考察する。
【準備学習】
教科書19~39頁を読み「心の働きと論理」の関係を把握し、各自その関係を自分に当てはめてみる。
第4回日常言語と「論理」思考活動において重要な要素が「記号」であるが、いったい「記号」と思考活動、あるいは私達とどのような関係が見られるのか、「記号論」から分析を見る。
【準備学習】
教科書39~50頁を予め読んでおくこと。
第5回命題論理学(「文」の論理)記号論による分析から、「論理」の要となるところに「(日常)言語」が存在している。とくに「記号(言語)と記号(言語)の結びつき」がその重要な内容である。それがどのような意味を持つのか明らかにする。
【準備学習】
教科書50~53頁を予め読んでおくこと。
第6回命題論理学(「文」の論理)現代論理学の基本である「命題」、「論理的結合子」及び「真理値」の関係について説明する。
【準備学習】
教科書84~96頁を予め読んでおくこと。
第7回命題論理学(「文」の論理)一次言語体系としての「日常言語」に対して、二次言語としての「論理学的言語」がどのように対応し、関連づけられるか、具体的にその対応関係を説明する。
【準備学習】
命題論理学の基本的要素である「命題・論理的結合子・真理値」を復習しておくこと。
第8回命題論理学(「文」の論理)前回は基本的対応関係を見たが、更に複雑な日常表現を命題化してみる。
【準備学習】
基本的要素がどのように日常表現と対応しているか、復習しておくこと。
第9回命題論理学(「文」の論理)日常表現と命題の対応を再度復習し確認する。
【準備学習】
簡単な日常表現を各自で命題化してみる。基本的対応関係に従った命題化がなされているか、確認できるようにしておくこと。
第10回命題論理学(「文」の論理)直接的知覚による知識に比較して、私達の所有している知識は、圧倒的に「間接的・非知覚的」知識である。その真実さの一面を保証するものが「論理的思考(推論)」である。推論の正しさとはどのよなことか、その判定の基礎には何があるかを明らかにする。
【準備学習】
「知識(結論)の正しさ」と「推論(の仕方)の正しさ」を考えて見る。
第11回命題論理学(「文」の論理)思考の正しさ(推論の妥当性)を実際の推論のなかで確認する。
【準備学習】
簡単な推論を各自考え、その妥当性を確認してみる。
第12回命題論理学(「文」の論理)「正しい思考」とはどのようなものかを理解しているということは、「正しい思考」を行うことができる、ということでもある。「正しい思考」を行って、一定の結論を導出してみる。
【準備学習】
「正しい思考(正しい推論)」とはどのようなものか、再度確認しておくこと。
第13回命題論理学(「文」の論理)前回の「正しい思考」によって得た結論と、その結論の「正しさ」の関係はどのようなものか、考えてみる。
【準備学習】
「正しい推論」と「推論を正しく行うこと」、両者の要点を比較してみる。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ。
第15回中間のまとめまとめ。
第16回論理学の歴史論理学の歴史は哲学の歴史と密接に関係している。その誕生から現代までの論理学の変遷を概観する。
【準備学習】
教科書63~69頁を予め読んでおくこと。
第17回論理学の歴史現代論理学は「記号論理学」と言われるが、その典型である「数学」との関係も密接である。その関わりを見る。
【準備学習】
教科書69~84頁を予め読んでおくこと。
第18回伝統的論理学(「語」の論理)最初の論理学はアリストテレスによって整理され、中世から近世に至るまで主流であった。その長い歴史を持つ彼の論理学は、その点から見れば一つの体系化されたものと言える。その基本的構想を概観する。
【準備学習】
「命題論理学」を復習しておくこと。
第19回伝統的論理学(「語」の論理)伝統的論理学の中心的推論である「定言三段論法」の「正しさ」の判定方法として、直観的・視覚的に判定できる方法(オイラーの図、ヴェンの図)を説明する。
【準備学習】
再度「正しい思考の仕方(推論)」と「正しい結論」の関係を確認しておくこと。
第20回伝統的論理学(「語」の論理)いくつかの具体的推論の妥当性を、オイラーの図、ヴェンの図を用いて判定してみる。
【準備学習】
前回の判定方法を復習しておくこと。
第21回述語論理学(「述語」の論理)今日の論理学の基礎は「命題論理学」である。それを基礎として、伝統的論理学を再解釈して考案されたのが「述語論理学」である。その基本的考え方の枠組を見る。
【準備学習】
教科書53~56頁、112~119頁を予め読んでおくこと。
第22回述語論理学(「述語」の論理)命題の内部構造をどのように形式化するか、その中で重要な表現「すべて」と「存在する」の意味とその形式化、それらの基本的見方を明らかにする。
【準備学習】
伝統的論理学(アリストテレスの論理学)における基本構想を再確認しておくこと。
第23回述語論理学(「述語」の論理)日常表現をどのように命題化することができるか、その基本的考え方を明らかにし、その方法を示す。
【準備学習】
教科書137~144頁を予め読んでおくこと。
第24回述語論理学(「述語」の論理)具体的日常表現を論理学上の命題に変換する方法を説明、各自実際に命題化してみる。
【準備学習】
述語論理学の「命題」の内部構造、その要素の関係を再度確認しておくこと。
第25回述語論理学(「述語」の論理)前回に引き続き、日常表現を命題化してみる。
【準備学習】
前回の方法を再確認しておくこと。
第26回述語論理学(「述語」の論理)具体的日常表現を論理学上の命題に変換する。逆に命題を日常表現に変換してみる。
【準備学習】
日常表現と命題の対応関係を確認しておくこと。
第27回述語論理学(「述語」の論理)「思考の仕方の正しさ」の判定方法を説明する。
【準備学習】
命題論理学の判定方法、伝統的論理学の判定方法を確認しておくこと。
第28回述語論理学(「述語」の論理)前回に引き続き、いくつかの妥当性判定を実際に行ってみる。
【準備学習】
前回の「判定方法」を復習しておくこと。
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ。
第30回まとめまとめ。
授業形式 講義内容に従って二つの作業をもって進める。まずその「論理・論理学」の原理や規則を説明し理解してもらい、それを踏まえて、実際に具体的対象の「論理的分析」と「論理的思考」を行ってもらう(理解の確認と講義進行状況によって適宜授業時課題・質疑応答あり)。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
50% 15% 15% 10% 10% 100%
評価の特記事項 レポートと小テストは全体として見る。授業時の「質疑応答」は「受講態度」「その他」の評価となる。また最終的評価は、それぞれの評価内容を総合的に見て判断する。欠席届等、必ず提出すること。
テキスト 沢田允茂『現代論理学入門』岩波新書,780円.
参考文献 全てを網羅するものではないが、2点紹介しておく。
  近藤洋逸・好並英司『論理学入門』岩波書店,2300円.
  沢田允茂『考え方の論理』講談社学術文庫,740円.
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後、本館2階講師室にて20分間は本館講師室にいます。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 身近な文章(新聞の社説や論文など)や、会話の中で、生きた「論理」を自分で分析し、実践してみる。