講義名 文学A ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金1
単位数 4

担当教員
氏名
佐藤 温

学習目標(到達目標) 1. 上代から近世(おおむね奈良時代から江戸時代まで)の日本文学の歴史を捉えることができる。
2. 各時代の代表的な作品を読み,その価値や意義について説明できる。
3. 日本の歴史との関わりにおいて,個々の作品が生み出された背景を説明できる。
4. 日本の文化の形成過程において,個々の作品が与えた影響を論じることができる。
5. 今日の日本文化と古典文学との関係について説明できる。
授業概要(教育目的)  上代から近世までの日本文学の歴史を,代表的な作品を読みながら概観します。これらの時代の文学は一般に「古典」として一括りにされますが,その長い時間の中で様々な特徴を持つ作品が生み出されてきました。本授業では,時代ごとの代表作を取り上げ,(部分的にではありますが)実際に読み味わいつつ,作品の価値や意義に加えて背景を成す同時代の社会や文化について考えます。そして,日本文学の誕生から近代文学前夜までを通観することで,文学を通して日本の歴史,ひいては日本文化の形成過程の一端を明らかにすることを目標とします。なお,授業は前期が上代~中世,後期が近世という時代区分で進めます。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス授業のルール,教科書,その他受講に際して必要な事柄について説明を行います。
【準備学習】
教科書『原色 新日本文学史 増補版』を購入しておいてください。
第2回導入:日本古典文学の概略前期に扱う上代から中世までの時代について,代表作や代表的作家を確認しながら同時期の文学をめぐる状況について大まかに説明します。
【準備学習】
教科書P11~P102に目を通しておいてください。
第3回上代1:神話の世界『古事記』・『日本書紀』を通して,口承の神話が国家によって編纂されていく過程と,それらの日本文学史上の意義を,内容および表現・文体に注目しつつ考えます。
【準備学習】
教科書P12~P20を読んでおいてください。
第4回上代2:和歌の誕生『万葉集』を取り上げ,古代社会における歌の位置づけを確認しながら,その成立時期ごとの特徴,代表的歌人について触れます。また,「万葉仮名」の歴史的意義を考えます。
【準備学習】
教科書P21~P32を読んでおいてください。
第5回中古1:和歌の発展『古今和歌集』を対象として,その代表的歌人および代表歌を取り上げつつ,和歌が平安時代に公的な文学としての地位を獲得する背景とその後の勅撰集の展開について理解していきます。
【準備学習】
教科書P33~P43を読んでおいてください。
第6回中古2:物語の誕生『竹取物語』・『伊勢物語』を読み,物語文学の始まりとしての両作品の意義と「作り物語」・「歌物語」の特徴などを理解します。
【準備学習】
教科書P44~P47を読んでおいてください。
第7回中古3:物語の展開(1) 『源氏物語』を取り上げ,その概要を確認しながら中古物語文学の頂点とも言うべき同作の評価点を考えます。
【準備学習】
教科書P47~P51を読んでおいてください。
第8回中古4:物語の展開(2)前回に引き続き『源氏物語』を取り上げ,その文学史上の意義や影響を確認します。
【準備学習】
前回授業のノート・プリントに基づいて内容を復習しておいてください。
第9回中古5:物語の展開(3)『源氏物語』の後に著された物語(『夜の寝覚』・『堤中納言物語』など)を読み,平安時代後期の物語文学の展開について理解します。
【準備学習】
教科書P51~P54を読んでおいてください。
第10回中古6:日記・随筆『土佐日記』以後の日記文学の展開から『枕草子』が随筆文学として成立するまでを追い,作者の内面を描く文学が確立していく過程について考えます。
【準備学習】
教科書P55~P62を読んでおいてください。
第11回中古7:説話貴族文化全盛の中古にあって,その周縁世界を描いた文学である説話に注目します。主に仏教説話・世俗説話から成る『今昔物語集』を取り上げます。
【準備学習】
教科書P63~P66を読んでおいてください。
第12回中世1:和歌の展開『新古今和歌集』を取り上げ,貴族文化衰退の中にあって和歌の伝統の命脈を保つ役割を担わされた同歌集の意義を,代表歌・代表歌人を通して考えます。
【準備学習】
教科書P67~P77を読んでおいてください。
第13回中世2:軍記物語戦乱の時代を描く『平家物語』を読み,その歴史的背景と文学的意義について考えます。また,後世の文化に与えた影響についても学びます。
【準備学習】
教科書P78~P84を読んでおいてください。
第14回中世3:随筆『方丈記』・『徒然草』を読み,作中の無常観や作者たちの隠遁的な姿勢を取り上げながら,背景となる中世社会のあり方について考えます。
【準備学習】
教科書P88~P96を読んでおいてください。
第15回中間のまとめまとめ
【準備学習】
前回までのノート・プリントを見直して復習しておいてください。
第16回導入:近世文学の概要と特徴江戸時代の文学の特徴について,同時代の文化の展開や,印刷・出版に関する状況などに注意しながら,大まかな枠組みを説明します。
【準備学習】
教科書P103~P136に目を通しておいてください。
第17回近世の書物と出版(1)江戸時代の文学を考える際に不可欠な当時の書物文化のあり方について考える前段階として,上代以来の書物のあり方を書誌学的な見地から通観します。
【準備学習】
前回に配布されたプリントの指定された箇所を読んでおいてください。
第18回近世の書物と出版(2)近世初頭の活字出版以降の印刷・出版の動向をまとめつつ,近世期の書物文化が形成されていく過程を辿ります。
【準備学習】
前回に配布されたプリントの指定された箇所を読んでおいてください。
第19回仮名草子近世初期に成立した小説である仮名草子を取り上げ,その中世からの接続と後続の近世文学との関係を代表作を読みながら考えます。
【準備学習】
教科書P104~P107を読んでおいてください。
第20回浮世草子(1)近世前期の小説ジャンルである浮世草子を井原西鶴の作品を中心に読み,その小説としての到達点と,背景を為す同時期の町人たちの生活文化や経済活動について学びます。第1回目は西鶴の「好色物」を取り上げます。
【準備学習】
教科書P107~P110を読んでおいてください。
第21回浮世草子(2)前回に引き続き西鶴の浮世草子を読みます。第2回目はその「町人物」を取り上げます。
【準備学習】
前回授業時のプリントを読んで復習しておいてください。
第22回談義本・洒落本戯作と呼ばれる通俗小説の内,初期に成立した談義本(教訓・風刺的な内容を含む通俗小説)と洒落本(遊郭を舞台とした小説)を読みます。
【準備学習】
教科書P113~P114を読んでおいてください。
第23回黄表紙・滑稽本大人向け絵本である黄表紙と,滑稽なストーリーを軽妙に描いた滑稽本を読み,娯楽的な読み物の展開について考えます。
【準備学習】
教科書P114~P116を読んでおいてください。
第24回人情本・合巻恋愛小説である人情本と,黄表紙を合冊にして長編化した小説である合巻を取り上げ,近世後期の大衆向け小説のあり方について考えます。
【準備学習】
教科書P115~P116を読んでおいてください。
第25回俳諧俳諧の歴史的展開を追いながら,松尾芭蕉『奥の細道』など代表作を読み味わいます。
【準備学習】
教科書P117~P122を読んでおいてください。
第26回前期読本(1)怪異小説集として知られる上田秋成『雨月物語』を読みながら,浮世草子以後の小説ジャンルとして成立した読本の特徴と意義について考えます。
【準備学習】
教科書P110~P111を読んでおいてください。
第27回前期読本(2)前回に引き続き『雨月物語』を取り上げ,特に物語の内容や構成と先行する文学作品との関わりに注目しながら読解します。
【準備学習】
前回に配布されたプリントの指定された箇所を読んでおいてください。
第28回後期読本(1)江戸時代後期のベストセラー小説である曲亭馬琴『南総里見八犬伝』を取り上げ,同作の文学史上の意義について考えます。
【準備学習】
教科書P112~P113を読んでおいてください。
第29回後期読本(2)前回に引き続き『南総里見八犬伝』を読み,馬琴の創作意識に着目しながら近世後期における小説のあり方を理解します。
【準備学習】
前回に配布されたプリントの指定された箇所を読んでおいてください。
第30回まとめまとめ
授業形式 講義形式。教科書の内容に基づきながら講義を進めつつ,必要に応じて配布プリントによって作品を読み,その解説を行います。授業中にはただ何となく話を聞くのではなく,板書や話の要点をノートにとることが必要となります。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
0% 70% 0% 30% 0% 100%
評価の特記事項 各学期末のレポートの成績をもとに,出席状況および平常点を加味して評価します。(レポートの成績のみ,あるいは出席点のみで単位を取得することは不可能と考えてください。)
テキスト 秋山虔・三好行雄(編著)『原色 新日本文学史 増補版』(文英堂) その他,授業中に読む作品の本文プリントは適宜授業中に配布します。
参考文献 適宜指示します。
オフィスアワー(授業相談) 火曜日14:40~15:40を原則としますが、事前にアポイントをとってください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 遅刻・途中入退室・飲食・私語・携帯電話やスマートフォンの操作など授業の進行を妨げる行為は禁じます。その他ルールなどについては第1回目のガイダンスで説明するので,受講希望者は必ず出席してください。
欠席については,必要書類がある場合のみ考慮します。(欠席時に配布プリントを入手できなかったとしても,後日の再配布には一切応じません。)
なお,基本的に日本の高等学校程度の古文・漢文の知識を有することを前提として授業を行います。ただし,それらの学習経験に乏しい場合でも,強い意欲と継続的な努力によってそれを克服する意志の有る受講生は歓迎します。