講義名 日本語表現B ≪◇学部≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 木5
単位数 2

担当教員
氏名
金子 亜由美

学習目標(到達目標) 1.19世紀半ばから20世紀初頭の日本の文学・文化史を政治・経済的な背景を踏まえて理解することができる。
2.日本の近代黎明期における文学運動の社会的役割について理解することができる。
3.1860年代から1910年代に書かれた日本の小説を鑑賞し、その歴史的意義を理解することができる。
授業概要(教育目的) 本講義では、明治期(1868~1912)に生じた文学運動及び制作された文学作品を取り上げ、その歴史的意義を解説する。その際には、これらの背景に存在する国内外の政治・経済の動向に着目し、日本が近代化を果たす際、文学がいかなる役割を負ったのかを考察していくことにより、文学が政治や経済と決して無関係のものではないことを明らかにするのを目標とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス講義の目的・内容・試験、講義の進め方や、講義を受ける際の諸注意等について説明する。

【事前学習】
シラバスで講義の目標や目的、注意事項などを確認しておくこと。
第2回「(近代)文学」とはなにか明治維新期における「文学」概念について解説する。特に、福沢諭吉の著述活動の社会的役割を明らかにする。
《言及予定作品》
福沢諭吉『学問のすゝめ』『西洋事情』「かたは娘」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第3回啓蒙と戯作明治10年代の啓蒙主義の流行と、戯作文学の関係について解説する。
《言及予定作品》
福沢諭吉『窮理図解』仮名垣魯文『胡瓜遣』『西洋道中膝栗毛』など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第4回「新聞」の発達明治初期の「新聞」という媒体が果たした社会的役割を解説する。特に、戯作文学の従事者が、新聞メディアの発達にどのように寄与したかを明らかにする。
《言及予定作品》
久保田彦作『鳥追阿松海上新話』など


【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第5回国会開設と「言文一致」坪内逍遥や二葉亭四迷によって提唱された「言文一致」運動が、国会開設に先立って「国民」をどのようにデザインしようとしていたかについて解説する。
《言及予定作品》
坪内逍遥『小説神髄』二葉亭四迷『浮雲』「あひゞき」国木田独歩『武蔵野』尾崎紅葉『多情多恨』森鴎外「舞姫」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第6回「貧民」ルポルタージュ日清戦争前後に現れた下層社会ルポルタージュ(松原岩五郎『最暗黒の東京』など)を取り上げ、そこに住む人々が「文学」の中でどのように可視化されていったかを明らかにする。
《言及予定作品》
松原岩五郎『最暗黒の東京』泉鏡花「貧民倶楽部」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第7回日清戦後文学日清戦争後に現れた「悲惨(観念)小説」の流行について解説すると共に、泉鏡花の「海城發電」を踏まえて、この時期に現れた「人間」を描けという要請の意味を明らかにする。
《言及予定作品》
泉鏡花「海城發電」「夜行巡査」広津柳郎「変目伝」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第8回「個」と「ヒューマニチー」の希求キリスト教(主としてプロテスタント)の移入と共に発露した「ヒューマニチー」=人間性尊重の機運が、日本文学に与えた影響について、特にハインリヒ・ハイネの受容に着目しつつ解説する。
《言及予定作品》
内村鑑三『余は如何にして基督信徒となりし乎』泉鏡花『風流線』など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第9回日露戦後文学日露戦争後に台頭した島崎藤村・田山花袋ら自然主義の一派が担った役割を中心に解説する。
《言及予定作品》
島崎藤村『破戒』徳田秋声『黴』夏目漱石『吾輩は猫である』『坊ちゃん』『三四郎』森鴎外『青年』など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第10回三越という「文化」事業三越百貨店が、その独自の消費文化を成立させる際、文学者・芸術家をどのように動員していったかについて解説する。
《言及予定作品》
尾崎紅葉「むそう裏」泉鏡花「月下園」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第11回表現規制と芸術日露戦後に特に厳しくなった風紀統制の下、文学者・美術家たちがどのような表現を行い、その統制に抵抗しようとしていたのかについて、雑誌『明星』などの動向を中心に解説する。
《言及予定作品》
与謝野晶子『みだれ髪」「君死にたまふことなかれ」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第12回他者としての「女」樋口一葉ら「閨秀作家」から、日露戦後に現れた「新しい女」までの系譜を解説し、近代化の過程で、女性がどのように文学に関わり、また、小説等の中でどのように描かれたのかを明らかにする。特に、田山花袋の「蒲団」に現れる「女学生」(少女)については、詳しく検討する。
《言及予定作品》
樋口一葉「たけくらべ」田山花袋「蒲団」「少女病」小杉天外『魔風恋風』泉鏡花『婦系図』など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第13回「時代閉塞の現状」石川啄木による自然主義批判と、「大逆事件」に関わる詩などを踏まえ、明治末期に生じた「時代閉塞」の意味について解説する。
《言及予定作品》
石川啄木「時代閉塞の現状」永井荷風「花火」夏目漱石『こゝろ』森鴎外「かのやうに」など

【事前学習】
前回講義に配布された資料に目を通し、質問に答えられるようにしておくこと。
第14回「明治」という時代これまでの講義を総括し、明治期における文学が、日本の近代において、どのような役割を果たしたのかについてまとめる。

【事前学習】
これまでの講義の内容を復習し、整理しておくこと。
第15回まとめまとめ
授業形式 資料を使用した講義形式が中心となるが、配布資料の内容の理解度や事前学習を行ってきたか等を確認するため、適宜学生と質疑応答を行っていく。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
60% 0% 0% 30% 10% 100%
評価の特記事項 特になし。
テキスト 特になし(配布資料を用いる)。
参考文献 上田博・瀧本和成編『明治文芸館Ⅰ~Ⅴ』嵯峨野書院,Ⅰ~Ⅲ2300円,Ⅳ2000円,2450円.
大塚英志『感情化する社会』太田出版,1500円.
関川夏央・谷口ジロー『新装版坊ちゃんの時代』シリーズ,双葉文庫,各1296円.
オフィスアワー(授業相談) 授業初回に指定するEメールアドレスに連絡し、必ずアポイントを取ること。原則として木曜日の11:30~12:30に対応するが、この時間帯が難しいという場合は相談にくること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 講義で言及された作品には、できるだけ目を通すようにするのが望ましい。また、講義で扱う作品は明治期のものが中心になる予定だが、話題と関連性のある場合は、大正・昭和期の作品にも触れることがある。
以下の項目を守って、講義を受講していただきたい。
1.配布資料は紛失しないよう、ファイル等にまとめてきちんと管理すること。
2.指定された事前学習は確実に行ってくること。
3.質問をされたら即座に答えられるよう、常に緊張感と意欲を持って講義に参加すること。
4.試験準備はきちんと行うこと。事前準備なしで受験することのないように。