回 | 項目 | 内容 |
第1回 | 旧ソ連・東欧諸国の特殊性
| 最初の授業では,この時間が対象とする旧ソ連・東欧諸国の置かれた特殊な立場を理解してもらう。つまり,多様な歴史や文化をもつ国々が20世紀のある時期に社会主義体制をとることになり,結局それが失敗して再び西側先進諸国の体制を目指すようになった経緯,そしてさらにそれらの国々の経済の現状を簡単に説明する。
【準備学習】
まず地図で,旧ソ連・東欧諸国の位置を確認しておこう。 |
第2回 | 旧ソ連諸国のプロフィール
| 現在はロシアをはじめとする15の国々に分解した旧ソ連諸国の概要を説明する。また,この時間で用いる旧ソ連諸国のグループ分けとその根拠を明らかにする。
【準備学習】
第1回で配布した資料により,旧ソ連諸国の大まかな特徴と,この授業における旧ソ連諸国のグループ分けを知っておこう。 |
第3回 | 東欧諸国のプロフィール
| 西欧とロシアに挟まれた東欧諸国の概要を説明する。すでにEUに加盟し,先進国の仲間入りをしたといえる国々,あるいは現在も貧しいままの国々のあることを述べながら,この時間で用いる東欧諸国のグループ分けとその根拠を明らかにする。
【準備学習】
第2回で配布した資料により,東欧諸国の大まかな特徴と,この授業における東欧諸国のグループ分けを知っておこう。 |
第4回 | 社会主義とは何か?
| かつて旧ソ連・東欧諸国が採用していた社会主義体制の概要を説明する。社会主義にもさまざまなタイプがあり,その中で旧ソ連・東欧諸国の社会主義がどのタイプに属するのか,などについて解説する。
【準備学習】
第3回で配布した資料により,どのような理由で社会主義という考え方が生まれたのか,それを実行したときにどのような問題が生じたのかを知ろう。 |
第5回 | マルクスの社会主義論とソ連の現実
| 一般に旧ソ連・東欧諸国の社会主義体制の基礎となったのは19世紀の思想家マルクスの考え方であるといわれるが,本当にそうなのか,あるいはマルクスの考え方のどの点に問題があって社会主義が最終的に失敗したのか,などの問題点について考える。
【準備学習】
第4回で配布した資料により,マルクスの考え方の概要を知っておこう。 |
第6回 | 社会主義経済システム
| ソ連など,現実の社会主義経済はどのような仕組みをもち,またどのように運営されていたのか,その実態を簡単に説明する。売り手と買い手の利害調整,社会全体としての資源の節約,技術革新の実現と伝播など,われわれの経済で市場が果たしているさまざまな機能を,市場をもたない社会主義経済は十分に実現することができたのだろうか。
【準備学習】
第5回で配布した資料により,市場が果たす機能について十分に理解しておくこと。 |
第7回 | ソ連の経済実績
| すでに社会主義経済は崩壊したが,そのため現在では,社会主義経済の非効率性のみが強調される傾向がある。しかし1950年代にはソ連経済も高度成長期を迎えた事実は否定できない。それにもかかわらず社会主義経済はそれを維持できなかった。それはなぜか,経済学の理論からその原因を明らかにする。
【準備学習】
第6回に配布した資料により,経済が成長する仕組みを知ることによって,ソ連経済の黄金時代とその後の低迷の理由を知る手掛かりを得ておこう。 |
第8回 | 経済のペレストロイカ
| ソ連最後の指導者ゴルバチョフは,社会主義の再生を図ってペレストロイカと呼ばれる改革を実行したが,結局それがソ連崩壊のきっかけとなった。いわば,病人を手術で治療しようとしたが,かえってその手術が命取りになってしまったわけだ。どのような改革を行なおうとしたのか,ポイントを解説する。
【準備学習】
第7回で配布した資料によって,ゴルバチョフの行なおうとした改革の全体像を理解しておこう。 |
第9回 | 社会主義体制の崩壊とその原因
| 資本主義のもつ矛盾を解決した社会として想定されたはずの社会主義も,結局資本主義に破れてしまった。社会主義体制が魅力を失った究極的な原因は何だったのか。この問いに対する担当者(栖原)の見解を示す。
【準備学習】
第8回で配布した資料により,社会主義体制下で生きていた人々の不満を理解しておこう。 |
第10回 | 旧ソ連・東欧の体制転換
| 1990年前後から,旧ソ連・東欧諸国は雪崩をうったように社会主義体制を放棄し,西側の体制,すなわち政治的な民主主義と経済的な資本主義の組み合わせを目指すようになった。各国における脱社会主義の具体的な動きの全体像を解説する。
【準備学習】
第9回で配布した資料により,旧ソ連・東欧諸国における体制転換の動き,保守派と改革派の対抗の様子を理解しておこう。 |
第11回 | 「ショック療法」による経済体制転換
| ロシア・東欧諸国の経済体制転換では,いわゆる「ショック療法」といわれた急激な市場経済化の方法がとられた。これは,市場経済化を容易なものであると考え,いわば自由放任による短期間での市場化を目指すものであった。「ショック療法」による市場化の具体的な方法について説明する。
【準備学習】
第10回で配布した資料により,いわゆる「ショック療法」の具体的な内容を知っておこう。 |
第12回 | 「ショック療法」の背景
| なぜロシア・東欧諸国の経済体制転換で,「ショック療法」が用いられることになったのか。その背景を明らかにする。これには,1980年頃より顕著となった経済学上の理論的な転換,つまりリベラリズムの復活がかかわっている。授業ではこの点について解説する。
【準備学習】
第11回で配布した資料により,ケインズ主義と新自由主義の考え方の違いを理解しておこう。 |
第13回 | 体制転換による生産の低下
| いわゆる「ショック療法」は,経済体制の転換を始めた旧ソ連・東欧諸国に想定外の急激な生産と所得の縮小をもたらした。特に旧ソ連諸国のGDPの低下は大きく,社会主義時代の半分に落ち込んだ国も多数にのぼった。これにくらべると,東欧諸国の低下の幅は相対的に小さい。こうした生産低下と地域差の原因を明らかにする。
【準備学習】
第12回で配布した資料により,生産低下の大きさと地域による違いについて,基礎知識を得ておこう。 |
第14回 | 体制転換によるインフレーション
| 「ショック療法」は,ほとんどの旧ソ連・東欧諸国にハイパー・インフレーション(激しい物価上昇)をもたらした。GDP低下の大きかった旧ソ連諸国はまた,特に激しいインフレに悩まされた。これに対して一部の東欧諸国の価格上昇幅は相対的に小さかった。激しいインフレの原因とその地域差について説明する。
【準備学習】
第13回で配布した資料により,インフレの原因に関する考え方を理解しておこう。 |
第15回 | 中間のまとめ
| まとめ:前期の授業を振り返り,社会主義時代から市場経済への転換を試みた旧ソ連・東欧地域の経済の推移を総括する。
【準備学習】
これまでに授業で配布した資料を再びチェックし,これらの国々の経済の流れを再確認しておこう。 |
第16回 | 体制転換と雇用
| 前期の授業に引き続いて,体制転換期の旧ソ連・東欧経済について検討する。今回は雇用に目を向け,社会主義時代の完全雇用が崩れ,失業が発生した状況を確認する。ただし社会主義の時代の長かった旧ソ連では,生産低下に見合うほどの失業は生まれなかった。その原因についても考察する。
【準備学習】
世界各国の失業の現状について,ネットなどで調べておこう。 |
第17回 | 国有企業の民営化(1)
| 市場経済化のための最重要の課題の一つである社会主義時代の国有企業の民営化について解説する。今回の授業では,一般的な意味での民営化の仕組みと,それとの比較の上での旧社会主義諸国における民営化の違いを明らかにする。
【準備学習】
第16回で配布した資料により,一般的な民営化の意義や方法について基礎知識を得ておこう。 |
第18回 | 国有企業の民営化(2)
| 今回の授業では,ロシア・東欧諸国における民営化において,具体的にどのような方法が用いられたのか検討する。わが国でも行われるような民営化は一社ごとの民営化であるのに対して,旧社会主義諸国の民営化は,何万社もの企業をできるだけ急速に民間会社にしなければならない。どのような方法が用いられたのだろうか。
【準備学習】
第17回で配布した資料により,ロシア・東欧諸国で使われた民営化手法について,予備知識を得ておこう。 |
第19回 | 国有企業の民営化(3)
| 特別な方法が多く用いられたロシア・東欧諸国の民営化では,それによる顕著なひずみもまた明らかになった。所有権のスピーディな移転を目指して行われたこれらの諸国における民営化の帰結を明らかにする。
【準備学習】
第18回で配布した資料により,また前回の授業での話しから,どのような問題点が生じたのか,事前に考えてみよう。 |
第20回 | ロシア・東欧諸国の財政
| 旧ソ連・東欧諸国における財政は,社会主義時代から大きな変化を余儀なくされた。何よりも市場経済化に伴う生産低下によって税収が激減したにもかかわらず,「ショック療法」の要請によって均衡財政がめざされたために,財政支出が小さくなって公務員の給与支払いまでが滞った。ロシア・東欧諸国における財政の問題を概説する。
【準備学習】
第19回で配布した資料により,財政の果たすべき一般的な役割について予備知識を得ておこう。 |
第21回 | ロシア・東欧諸国の金融
| 一般に旧ソ連・東欧諸国は,現金通貨に比較して預金通貨の割合が低い。経済学の用語では,これを「金融の深化」が進んでいないという。つまり,それだけ銀行に対する国民の信頼が薄いことを示す。こうした,経済において貨幣が主導的な役割をはたしていなかった社会主義時代を経験した経済における金融の現状を説明する。
【準備学習】
第20回で配布した資料により,市場経済における金融の役割を再確認しておこう。 |
第22回 | ロシア・東欧諸国と経済の腐敗
| 特に体制転換の初期には,旧ソ連・東欧諸国における経済の腐敗,すなわち汚職や経済の犯罪化が目についた。現在でも,これらの国々の腐敗認知度は,その経済発展レベルに比較して大きくなっている。このような,政府に対する信頼性の欠如の経済的影響を考える。
【準備学習】
第21回で配布した資料により,ロシア・東欧諸国において腐敗認知度の高さが問題となっていることを認識しておこう。 |
第23回 | ロシア・東欧諸国の対外経済関係(1)
| 社会主義時代の旧ソ連・東欧諸国は,コメコンと呼ばれた相互経済協力体制を作っていた。しかし市場経済体制への転換期においてコメコン体制もまた崩壊し,それぞれの国は独自の方針にしたがって対外経済関係を構築していった。こうした対外経済上の枠組みの大きな変化について説明する。
【準備学習】
第22回で配布した資料により,社会主義時代のコメコンの仕組みを理解しておこう。
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第24回 | ロシア・東欧諸国の対外経済関係(2)
| 現在のロシア・東欧諸国では,ロシアなど一部の天然資源が豊富な国を除いて貿易収支が赤字であり,そのため経常収支も赤字である。したがって対外債務が増加し,それが経済上の大きな問題点となっている。そうしたロシア・東欧諸国の対外経済上の問題点について明らかにする。
【準備学習】
第23回で配布した資料により,国際収支表の簡単な見方について学んでおこう。
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第25回 | 世界同時不況とロシア・東欧経済(1) | 2008年秋からのいわゆるリーマン・ショックは,世界経済に大きなマイナスの影響を与えた。ロシア・東欧諸国は,そうしたリーマン・ショックの影響を最も強く受けた地域の一つである。なぜそのような事態を迎えてしまったのか,この授業では主として金融の側面から世界同時不況の影響を考える。
【準備学習】
第24回で配布した資料により,いわゆるリーマン・ショックが引き起こした世界同時不況の概要について理解しておこう。
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第26回 | 世界同時不況とロシア・東欧経済(2)
| 世界同時不況は,まず最初に金融の側面からロシア・東欧諸国に悪影響を与えたが,引き続いて実物面でもこれらの諸国に大きな否定的作用をもたらした。今回の授業では,国内における消費や投資の減少,あるいは対外貿易の減少など,実物面に与えた影響を考える。
【準備学習】
第25回に配布した資料により,日本がこうむったリーマン・ショックの悪影響について理解しておこう。
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第27回 | ロシア・東欧経済の現段階(1) | ロシアなど,旧ソ連諸国(15カ国)の,体制転換開始以降の経済を振り返りながら,特に「ショック療法」による市場経済化がこれら諸国の経済の現況にどのような影響を与えたのかを考える。
【準備学習】
第26回に配布した資料およびそれまでに配布した資料により,旧ソ連諸国の現況について理解しておこう。
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第28回 | ロシア・東欧経済の現段階(2) | ポーランドなど,東欧諸国(13あるいは14カ国)の,体制転換開始以降の経済を振り返りながら,特に「ショック療法」による市場経済化がこれら諸国の経済の現況にどのような影響を与えたのかを考える。
【準備学習】
第27回およびそれまでに配布した資料により,東欧諸国の経済の現況について理解しておこう。
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第29回 | 理解度の確認 | 16回以降の要点のまとめ:後期の授業を振り返り,市場経済への転換を試みた旧ソ連・東欧地域の経済の推移を総括する。
【準備学習】
これまでに授業で配布した資料を再びチェックし,これらの国々の経済の流れを再確認しておこう。
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第30回 | まとめ | まとめ:全体の総括 |