回 | 項目 | 内容 |
第1回 | プロローグ | 制度派経済学がどのような分野の経済理論なのかについてお話します。今後の授業の進め方、成績評価の方針について説明します。 |
第2回 | 制度派経済学前史(1)
経済学とリベラリズム | 制度派経済学はアメリカにおけるリベラル派の思想系譜の一つです。経済学におけるリベラリズムの多義性,リベラリズムのアメリカにおける意味について取り上げます。 |
第3回 | 制度派経済学前史(2)
超大国アメリカの成立 | ★映像資料鑑賞(1):ドキュメンタリーを鑑賞しながら、20世紀初頭のアメリカの歴史を振り返ります。 |
第4回 | 制度派経済学前史(3)
自由放任主義批判 | J.M.ケインズの経済思想なども取り上げながら,20世紀前半にどのような経緯で自由放任主義の思想が批判されるに至ったのかを明らかにします。 |
第5回 | 制度派経済学前史(4)
ポスト方法論争時代 | 制度派経済学は源流としては19世紀末に始まる思潮であり,時期的には経済学方法論争以後の学派です。この回では制度派経済学の方法論的提案がどのようなものであったのかを知るために,その背景にある「経済学方法論争」の争点について説明します。 |
第6回 | Thorstein Veblen(1)
ぜいたくな消費の経済学 | ★映像資料鑑賞(2):映画を題材に、19世紀後半のアメリカのGilded Ageの文化や社会の理解を深めます。
人は所得と価格だけをシグナルに消費するのではなく他者の目を気にしながら,すなわち他人に見せびらかすために,あるいは,世間体を守るために消費するというのがヴェブレンの分析でした。当時の正統派経済学の消費論との違いに留意しながら,彼の消費論の特徴を紹介します。
【事前学習1】
ヴェブレンの経済思想に関する宿題を出します。翌週に提出してください。 |
第7回 | ディスカッション①
消費と浪費、どう違う? | ヴェブレンの消費論をベースにしながら,個人の消費動向とその社会的効果について参加者が討論します。 |
第8回 | ディスカッション①
消費と浪費、どう違う? | 参加者がチームごとに討論の成果を発表します。面白かったチームに投票し、感想シートを提出します。 |
第9回 | Thorstein Veblen(2)
ビジネスの論理と産業の精神 | ヴェブレンの処女作『有閑階級の理論』は消費者サイドの議論でした。それではそのような世界において企業者はどのように行動するのでしょうか。ヴェブレンの企業論と,それに関わる信用論,景気変動論について説明します。 |
第10回 | Thorstein Veblen(3)
浪費なき社会は可能か | 浪費なき社会がアメリカにおいて実現する条件についてのヴェブレンの議論を紹介し,その現代的インプリケーションについて考察します。
【事前学習2】
ミッチェルの経済思想に関する宿題を出します。翌週に提出してください。 |
第11回 | Wesley C. Mitchell(1)
進化論的経済学と数量経済学の統合 | ヴェブレンの教え子であり友人でもあったミッチェルは,師の進化論的経済学の考え方と,当時台頭し始めた数量経済学を統合しようと考えました。こうした彼の思想の根底にある哲学に接近するのがこの回のテーマです。 |
第12回 | Wesley C. Mitchell(2)
最初の科学的な景気循環論 | 19世紀後半にはすでに景気の変動や循環に関する研究が出始めていましたが,ミッチェルの研究は科学的な分析の最初と言われています。この回では,ヴェブレンの景気変動論との違いにも注意しながら,彼の景気循環論のエッセンスを説明します。 |
第13回 | Wesley C. Mitchell(3)
国民的福祉の向上を目指して | ミッチェルは景気循環論を主題とすることによって,経済学がどのような意義を有すると考えたのかという結論的問題について考えます。 |
第14回 | 日常生活のなかの制度派経済学的思考 | 夏休みのレポートの書き方,およびその評価方法ついて説明します。 |
第15回 | フォローアップ | まとめ |
第16回 | John R. Commons(1)
制度派経済学者コモンズ | 制度派経済学の創始者はヴェブレンと言われていますが,実は,制度派経済学という言葉が広まった時代の中心人物はコモンズです。彼がどのような生い立ちから制度派経済学という方法論的枠組に関心を抱いたのかを紹介します。
【事前学習3】
コモンズの経済思想に関する宿題を出します。翌週に提出してください。 |
第17回 | John R. Commons(2)
理論的道具としての「取引」概念 | コモンズは人々の関係が稀少性にもとづく利害の衝突によってのみ説明されるのではないと考えました。相互依存の秩序としての慣習法が大きな役割を果たしていると分析したからです。こうした彼の制度概念を理解する鍵を握っているのはゴーイング・コンサーン論です。これがこの回のテーマになります。 |
第18回 | John R. Commons(3)
適正な資本主義を求めて | コモンズは人々の取引の正当性の根拠を考察しました。適正さの基準はどこに求められるべきか。この問いを解くことができれば,資本主義社会も適正なものになるはずだと考えたからです。こうしたコモンズの価値論に踏み込むのがこの回です。
【事前学習4】
ガルブレイスの経済思想に関する宿題を出します。翌週に提出してください。 |
第19回 | John K. Galbraith(1)
ゆたかな社会の経済学 | ★映像資料鑑賞(3):映画を鑑賞しながら、ガルブレイスが活躍し始めた1960年代のアメリカの文化や社会の理解を深めます。
ガルブレイスは,20世紀の経済社会は「ゆたかな社会」に突入したと考えました。そのような彼の歴史分析について紹介します。 |
第20回 | John K. Galbraith(2)
資本主義の古い病と新しい病 | 20世紀の経済学が直面している問題群は19世紀とは大きく違ってきているとガルブレイスは言います。社会は見かけはゆたかになってきていますが,新しい病も見つかり始めています。こうしたガルブレイスの問題提起に触れるのがこの回です。 |
第21回 | John K. Galbraith(3)
産業国家から公共国家へ | 当初は新たな経済体制としての産業国家に期待を寄せていたガルブレイスでしたが,晩年はそれをコントロールするような公共的機構の必要性を説くようになりました。この回でお話しするのは,ガルブレイスの思想のクライマックスです。 |
第22回 | Gunnar Myrdal(1)
ケインズ以前のケインズ政策 | 積極的な財政政策ないし失業対策と聞くとケインズを思い出す人が多いはずです。しかし,1920年代にはすでに北欧スウェーデンのミュルダールが同じような政策的提言を行っていました。この回ではミュルダールのプロフィールをたどりながら,その思想の背景を確認します。
【事前学習5】
ミュルダールの経済思想に関する宿題を出します。翌週に提出してください。 |
第23回 | Gunnar Myrdal(2)
福祉国家のあり方 | ★映像資料鑑賞(4):ドキュメンタリーを鑑賞しながら、フェアトレードをめぐる現代的議論について関心を深めます。
北欧諸国は福祉国家のさきがけでありましたが,ミュルダールは,グローバルな視点からすればそうした福祉国家の立場は依然「完全形」ではないと断じました。彼の「福祉世界」論はずっと大きな理想的ヴィジョンであり,今日の開発経済学や国連などの理論的ベースとなりました。その概要を追うのがこの回です。 |
第24回 | ディスカッション②
福祉世界に向けて:先進諸国の論理はどこまで有効か? | ミュルダールの福祉世界論をベースにしながら,先進国と低開発国の関係やあり方について参加者が討論します。 |
第25回 | ディスカッション②
福祉世界に向けて:先進諸国の論理はどこまで有効か? | 参加者がチームごとに討論の成果を発表します。面白かったチームに投票し、感想シートを提出します。 |
第26回 | Karl W. Kapp(1)
成長の限界と持続可能な発展 | 1937年にナチスを逃れてアメリカに亡命したカップは,アメリカ経済が華やかに発展していく一方で,人々の暮らす環境が日に日に損傷していくさまを目の当たりにしました。彼の時代の課題,すなわちこうした経済成長の負の側面を取り扱う経済学の樹立という問題について確認するのがこの回です。
【事前学習6】
カップの経済思想に関する宿題を出します。翌週に提出してください。 |
第27回 | Karl W. Kapp(2)
環境破壊と社会的費用 | 「経済活動の結果として人々が被る直接・間接の損失」と定義されるカップの社会的費用概念について検討します。マーシャルやピグーの市場経済観とも比較します。 |
第28回 | Karl W. Kapp(3)
経済学にヒューマニズムを取り戻す | カップの結論は現代経済学にはヒューマニズムの精神が足りないという悲観的なものでした。それでは,制度派経済学の立場から,カップはどのような処方箋を提示しうるのでしょうか。カップの思想のエッセンスを説明します。 |
第29回 | 制度派経済学の経済学史的意義 | 本講義の理解度を確認します。 |
第30回 | 総括 | フィードバック |