講義名 リスクマネジメント論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火3
単位数 4

担当教員
氏名
中村 恒

学習目標(到達目標) 学生の学習目標(到達目標)は以下の4点です:
1. リスクとは何か、そしてリスクマネジメント(及び保険)の機能とは何かについて、ビジネス活動や経済活動に関連付けて捉えることができる。
2. リスクマネジメントについて、資本市場でのリスク分散と保険の機能の違いを説明できる。
3. リスクマネジメント(及び保険)を、経済学上の需給均衡の観点から捉えることができる。
4. ビジネスの場における企業や個人のリスクマネジメント(及び保険)について、それらの効果と限界を適切に説明でき、最近の金融危機におけるリスクマネジメントの問題点を説明できる。
授業概要(教育目的) リスクとは何か、そしてリスクマネジメント(及び保険)の機能とは何かについてビジネス活動や経済活動に関連付けながらその基礎概念を解説し、さらに企業や個人のリスクリスクマネジメント(及び保険)の機能について、その効果と限界を説明しながら、ビジネスで幅広く必要な基本的な知識を解説します。
授業計画表
 
項目内容
第1回リスクの基礎(1) リスクとは何か
日常生活の中で使用される「リスク」という言葉は、時に曖昧に使用されていることを確認する。さらに、リスクとは何かを個人や企業の経済・ビジネス活動に関連付けて明らかにする。
【準備学習】
テキストの第1章を予め読んでおくこと。
第2回リスクの基礎(2) バラツキとしてのリスク個人や企業の経済・ビジネス活動において、将来どのような結果が生じるかが不確実なときに、その結果のバラツキをリスクとしてどのように捉えるのかを明らかにする。
【準備学習】
テキストの第2章を予め読んでおくこと。
第3回リスクの基礎(3) 確率分布リスクを確率分布によって特徴付けるときに、確率分布からどのようなリスクの情報を読み取ることができるのかを明らかにする。特に、確率分布として正規分布を使用するときの便利な点と問題点を、最近の金融危機を参考にしながら考察する。
【準備学習】
テキストの第3章を予め読んでおくこと。
第4回リスクの基礎(4) リスクの分類これまで見てきたリスクの概念を、具体的に実際の個人や企業の経済・ビジネス活動に当てはめながら、どのように分類できるのかを明らかにする。
【準備学習】
テキストの第4章を予め読んでおくこと。
第5回リスクの基礎(5) リスクの計量化リスクは実務的にどのように数値として捉えることができるのかを明らかにする。
【準備学習】
テキストの第5章を予め読んでおくこと。
第6回リスクの基礎(6) リスクプレミアム個人や企業のリスクに対する態度を測る指標としてリスクプレミアムとは何かを明らかにする。
【準備学習】
テキストの第6章を予め読んでおくこと。
第7回リスクの基礎(7) 期待効用仮説リスクプレミアムを導出する枠組みとして期待効用仮説を解説する。
【準備学習】
テキストの第7章を予め読んでおくこと。
第8回リスクの管理(1) リスクコストリスクが企業や個人にどのようにコストを引き起こし、いかに人的資本や企業の価値に影響を及ぼすのかを明らかにし、リスク管理の意義を解説する。
【準備学習】
テキストの第8章を予め読んでおくこと。
第9回リスクの管理(2) 期待損失の軽減リスク管理の手法の一つとして、期待損失を軽減する方法を解説する。
【準備学習】
テキストの第9章を予め読んでおくこと。
第10回リスクの管理(3) プーリングアレンジメントリスク管理の方法の中で、結果のバラツキを軽減する方法としてプーリングアレンジメントを解説する。
【準備学習】
テキストの第10章を予め読んでおくこと。
第11回リスクの管理(4) リスク軽減を阻む要因期待損失を軽減する方法やプーリングアレンジメントを阻害してリスク軽減を阻む要因を、事例を挙げながら解説する。
【準備学習】
テキストの第11章を予め読んでおくこと。
第12回リスクの管理(5) 市場でのリスク分散リスク管理の方法の中で、資本市場における分散投資やポートフォリオ投資によってリスクを管理する方法を解説する。
【準備学習】
テキストの第10章を予め読んでおくこと。
第13回リスクの管理(6) 保険とヘッジ様々なリスク管理の方法が利用可能なとき、それらを複合的に利用しながらどのように統合的にリスク管理をするのかを明らかにする。とくに保険とヘッジの違いについて、災害リスクに対し災害保険と災害債券を比較しながら解説する。
【準備学習】
テキストの第12章を予め読んでおくこと。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ
第15回中間のまとめまとめ(小テスト)
第16回リスクのプライシングと保険需給リスクを保険商品やデリバティブなどの金融商品を使って移転するときに、どのようにそれらの商品価格が決まるのかを、経済学的に市場での需給理論を使いながら明らかにする。
【準備復習】
テキストの第13章を予め読んでおくこと。
第17回保険の供給(1) 公正保険料:期待損失コストと割引価値保険市場において、供給動向が価格との関係でどのように決定されるのかを明らかにする。とくに、その決定要因の一つとして期待損失コストと金利の影響を解説する。
【準備復習】
テキストの第14章を予め読んでおくこと。
第18回保険の供給(2) 公正保険料:経費付加保険料保険市場において、供給動向が価格との関係でどのように決定されるのかを明らかにする。とくに、その決定要因の一つとして、保険供給主体である保険会社の運営コストの影響を解説する。
【準備復習】
テキストの第15章を予め読んでおくこと。
第19回保険の供給(3) 公正保険料:投資家報酬付加保険料保険市場において、供給動向が価格との関係でどのように決定されるのかを明らかにする。とくに、その決定要因の一つとして、投資家による保険会社への投資リスクの評価がどのように影響するのかを解説する。
【準備復習】
テキストの第15章を予め読んでおくこと。
第20回保険契約と法保険契約とはどのように規定され、どのように法的に管理されているのかを経済学の観点から解説する。
【準備復習】
テキストの第16,17,18章を予め読んでおくこと。
第21回保険の需要(1) 個人の保険需要保険市場において、経済活動に伴うリスクにさらされている個人がどのように保険を需要するのかを明らかにする。
【準備復習】
テキストの第19章を予め読んでおくこと。
第22回保険の需要(2) 企業の保険需要:市場のリスク分散との関係保険市場において、ビジネスリスクにさらされている企業の保険需要のあり方が、個人の保険需要のあり方とどのように異なるのかを解説する。
【準備復習】
テキストの第20章を予め読んでおくこと.
第23回保険の需要(3) 企業の保険需要:なぜ企業は保険を需要するのか企業の保険需要のあり方が個人の保険需要のあり方と異なる状況で、企業が保険を需要する理由を明らかにする。
【準備復習】
テキストの第20章を予め読んでおくこと。
第24回保険可能性の制約(1) 付加保険料保険市場が効率的でないとき、保険によるリスク移転の機能が制約される。これを保険可能性が制約されると言う。とくに、付加保険料が割高になることによって、保険可能性が制約されることを明らかにする。
【準備復習】
テキストの第21章を予め読んでおくこと。
第25回保険可能性の制約(2) 逆選択保険会社が保険加入者の質(例えば、ドライバーの事故確率など)を事前に知ることができない状況において、逆選択とは何かを解説し、逆選択が保険可能性をいかに制約するのかを明らかにする。
【準備復習】
テキストの第22章を予め読んでおくこと。
第26回保険可能性の制約(3) モラルハザード保険会社が保険加入者の事後的な努力水準(例えば、ドライバーの運転注意水準など)を知ることができない状況において、モラルハザードとは何かを解説し、モラルハザードが保険可能性をいかに制約するのかを明らかにする。
【準備復習】
テキストの第23章を予め読んでおくこと。
第27回保険可能性の制約(4) 保険可能性の制約への対応保険可能性が制約されているときに、保険会社はその制約を緩和するためにどのように対処するのかを明らかにする。具体的に自動車保険の経験料率制度について解説する。
【準備復習】
テキストの第24章を予め読んでおくこと。
第28回分析 Rothschild and Stiglitzの事例逆選択が保険可能性を制約しているときに、保険市場で価格が競争的にいかに決定するのかを分析的に明らかにする。
【準備復習】
テキストの第22章を復習しておくこと。
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ
第30回まとめまとめ(最終授業時試験)
授業形式 講義形式で行います。概ねテキストに沿う形で、およそ毎回1章ずつ進めます。Ecolinkにアップロードされた講義資料を使って講義を行います。各自、Ecolinkから講義資料をダウンロード・印刷し、あるいは自分のPCにダウンロードして、講義に持参してください。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
40% 20% 40% 0% 0% 100%
テキスト 米山高生 著 『リスクと保険の基礎理論』同文舘、2,800円.
参考文献 ニール A.ドハーティ 著 『統合リスクマネジメント』 中央経済社、6,200円.
オフィスアワー(授業相談) 本授業終了後、本館2階講師室にて20分間ほど対応します。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 予備知識としては、ミクロ金融関連の科目を修得し、微積分、線形代数の基礎を理解していることが望ましいです。予備知識が不十分な学生は各自で補いながら講義を受けてください。さらに、理解を深めるために、毎回の該当章の章末問題を解くことを勧めます。