講義名 国際経済論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月6
単位数 4

担当教員
氏名
南 雅一郎

学習目標(到達目標) マクロ経済学とミクロ経済学の基礎をふまえ、現実の国際経済問題を考える上で必要な基礎的な理論を学び、学んだ理論的な枠組みを用いて国際貿易、国際金融、国際経済制度などをめぐる現実の国際経済問題を考えることができる力を修得する。
授業概要(教育目的) 授業内容は国際経済問題を考える上で必要な国際経済学の理論と政策的なインプリケーションの解説、およびそうした理論と政策に関連した国際経済の現実の概説である。国際経済学の理論に関する理解を深めさせ、貿易摩擦、投資摩擦、対外不均衡、円高・円安、経済のグローバル化、投機資本、経済発展、通貨危機といった問題を国際貿易(モノ)と国際金融(カネ)の両面から考えさせることを目的としている。前期は国際貿易、後期は国際金融に関する講義を行う。
授業計画表
 
項目内容
第1回国際経済学とはどのような学問か国際経済論の授業の流れを概説すると同時に、それがどのような学問で、経済学全体の中でどのような位置づけをされているのかを確認する。
第2回貿易は何故行われるのか(絶対優位と比較優位)伝統的貿易論の基礎である比較生産費説を学習する。
[準備学習]可能であれば高校で使用した「政治経済」のテキスト等も参照しておくこと。
第3回貿易は何故行われるのか(HOモデル)生産要素賦存量と貿易の関係を考察し、ヘクシャー=オリーン理論(リプチンスキー定理、ストルパー=サミュエルソン定理を含む)について学習する。
[準備学習]ミクロ経済学で学習した生産可能フロンティア等について復習しておくこと。
第4回貿易パターン決定に関する諸仮説伝統的貿易理論をふまえ、その他の仮説(プロダクト・サイクル仮説等)を検討する。
第5回貿易障壁をどのように理解すべきか(関税と数量規制)貿易政策に関する議論を提示し、自由貿易主義と保護主義の対立について考える。具体的には関税と数量規制の役割と経済効果について考える。
[準備学習]クロ経済学で学習した生産者余剰及び消費者余剰について確認しておくこと。
第6回貿易障壁をどのように理解すべきか(補助金の役割と自主規制)貿易政策に関する議論を提示し、自由貿易主義と保護主義の対立について考える。具体的には輸出補助金、輸入材産業に対する補助金、輸出自主規制の役割と経済効果について考える。
[準備学習]
第5回の授業で議論した内容について復習しておくこと。
第7回通商政策の役割と幼稚産業の保護通商政策が交易条件に与える効果等について検討し、幼稚産業保護の是非について考える。
[準備学習]
幼稚産業の保護に関する具体的な事例について簡単に調べておくこと。
第8回通商産業の役割と不公正貿易自由貿易と保護貿易のあり方について改めて検討し、関税同盟やEPA/FTA等の経済統合の経済効果について考える。
[準備学習]
EPA/FTAに関する具体的な事例について簡単に調べておくこと。
第9回産業内貿易とフラグメンテーション産業内貿易の理論的な枠組みを理解し、なぜこうした貿易パターンが形成されるのか、また貿易メリットが伝統的な貿易論とどこが異なるのかを検討する。同時にフラグメンテーションやアウトソーシングのような企業行動が現実の輸出入に影響を与えている現実を分析する。
[準備学習]独占、独占的競争、完全競争市場について復習しておくことが望ましい。
第10回その他の貿易政策戦略的貿易政策、アンチダンピング、セーフガード等の経済効果について検討する。
[準備学習]
セーフガードについて、国際経済のテキスト等から簡単に調べておくこと。
第11回国際貿易の枠組みと国際貿易ルールGATT、WTO、FTA/RTA等の地域貿易協定に関する議論を整理する。
[準備学習]
GATT、WTOが形成されてきた歴史的背景について、国際経済に関するテキスト等を通じて調べておくこと。
第12回国際要素移動と国際貿易多国籍企業の展開、直接投資、外国人労働者の問題を検討する。
第13回貿易と環境・国際貿易の政治経済学貿易の環境への影響について検討し、多国間環境協定とGATT/WTOとの整合性等について議論する。加えて、貿易摩擦や投資摩擦など、貿易をめぐる紛争についても検討する。
第14回理解度の確認これまでの国際貿易に関する議論にかかる要点のまとめ。
[準備学習]
これまでの学習内容についてノート等をまとめておくこと。また質問があれば整理しておくこと。
第15回まとめまとめ
第16回国際貿易から国際金融へ~貿易の一般均衡モデルと異時点間の貿易貿易の一般均衡モデルを解説し、異時点間の貿易について説明することで国際金融の考え方への導入をはかる。[準備学習]
ミクロ経済学で学習した無差別曲線等について復習しておくこと。
第17回国際収支表と国際マクロ経済GDP等のマクロ経済指標の意味、SNAに関して復習し、国際収支表に関する基本的な理解を得る。
[準備学習]
マクロ経済学履修者は国民経済計算について復習しておくこと。未履修者については経済学の基礎テキストでGDP等について調べておくことが望ましい。
第18回日本の国際収支の推移と円相場の動向戦後の日本経済について、国際収支の動向と外国為替相場の推移をふまえながら概説する。
[準備学習]
ネットもしくは国際金融のテキスト等で日本の国際収支の動向及びドル・円相場について簡単に調べておくこと。
第19回国際収支動向をどのように理解すべきか(その1)国際収支動向を理解するために貿易乗数と弾力性アプローチについて学習する。
[準備学習]ミクロ経済学で学習した「弾力性」について復習しておくこと。またマクロ経済学の履修者は「乗数効果」についてみておく(未履修者は、できればマクロ経済学の基礎的なテキスト等を通読しておくことが望ましい)。
第20回国際収支動向をどのように理解すべきか(その2)ISバランスと国際収支の関係を理解し、日本、中国、アメリカといった国々の国際収支の推移を比較検討する。
[準備学習]
マクロ経済学履修者は、マクロ経済学のテキスト等で貯蓄・投資バランスと対外収支の関係について確認しておくこと。
第21回為替管理、為替制度、財政・金融政策(その1)IS-LM分析について復習し、資本移動の完全自由化、比較的自由化した場合を前提として、変動相場制あるいは固定相場制を採用したときに財政・金融政策の経済効果がどのように異なるのかを検討する。
[準備学習]マクロ経済学履修者は、マクロ経済学の当該テキスト等でIS-LM分析について確認しておくこと。
第22回為替管理、為替制度、財政・金融政策(その2)資本移動が規制によって比較的不自由化した場合及び完全に規制した場合を前提として、為替制度の選択によって財政・金融政策の経済効果がどのように異なるのかを検討する。また大国と小国における政策効果の相違についても比較する。
[準備学習]
第21回の授業内容について、整理・確認しておくこと。
第23回外国為替市場と為替相場外国為替市場及び為替相場の基礎的な知識を学習し、為替実務の実態をみることで市場に関する理解を深める。
第24回投機マネーと為替リスク管理外国為替をめぐるリスクについて検討し、リスク管理の手法を学習する。また投機マネーの実態についてみていく。
第25回為替相場の考え方(その1)購買力平価の考え方を学び、マネタリー・アプローチについて学習する。
第26回為替相場の考え方(その2)期待収益と為替相場の関係について学習し、ポートフォリオ・アプローチについて検討する。為替のオーバーシュートについても理論的な枠組みを学習する。
[準備学習]
第25回の授業内容について確認しておくこと。
第27回通貨統合の理論とEUROの経験「国際金融のトリレンマ」と合わせて最適通貨圏の理論を学習し、EUROの経験をどのように理解すべきかを検討する。また、アジアの通貨統合に関する研究をふまえ、今後のアジアの金融的な結びつきについて展望する。
[準備学習]
EURO形成の歴史的背景について簡単に調べておくこと。
第28回通貨危機をどう理解するか通貨危機の考え方及び理論の変遷を学習し、実際に起こった通貨危機の事例をどのように理解すべきかを検討する。
第29回理解度の確認前期・後期の両方でカバーした内容に関してまとめのプリントを配布するが、特に16回以降の部分、つまり後期の国際金融に関する議論をまとめる。また、全体を通した質問を受け付け、都度解説する。試験範囲及び成績評価基準も再確認する。
[準備学習]
これまで学習した内容について自身のノートや配布資料等を整理・検討した上で、質問があれば内容をまとめておくこと。
第30回まとめまとめ
授業形式 講義形式。但し人数によっては議論・討論形式の授業も取り入れて行きたい。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 講義態度
(出席)
その他 合計
50% 5% 40% 5% 0% 100%
評価の特記事項 授業時の「中間試験」35%(小テスト40%に含まれる)、期末試験(定期試験)50%とする。レポートについては、回数が多くなった場合は小テスト分(40%の内で5%相当)を含めて10%まで評価に組み込む。
テキスト 特に指定しない。
参考文献 特に指定しないが、標準的な「国際経済学」「国際貿易論」「国際金融論」「国際マクロ経済学」「マクロ経済学」のテキストを図書館等でみて、ご自身に合ったものを適時利用することで授業に対応されたい。
オフィスアワー(授業相談) 月曜日12:10~13:00、火曜日12:10~13:00。必ず事前にアポイントメントを取ること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 私語厳禁。遅刻厳禁。携帯電話は必ず切るかサイレント・モードにしておくこと。守れない学生には退出を求める。パワーポイントと板書を併用して授業を進める。パワーポイントファイルについては必要に応じてアップする予定である。