講義名 倫理学　≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日･時限 水１
単位数 4

担当教員
氏名
根村　直美

学習目標(到達目標) 本講義では，以下の能力を身につけることを目指します。
１．倫理学とは「相互尊重」を追究する学問であることを理解し，その視座から問題を捉えることができる。
２．「生命倫理学」に関わる具体的問題について，どのように判断しどう行動していけば「相互尊重」の関係性を実現していくことができるのかを考察することができる。
３．学問的知見を吸収しつつ自らの判断を形成すること，および，その判断を理性を用いて論証することの重要性を理解し，それらを実践できる。あわせて，他者の判断と論証に向き合うこと，そして，論争の解決を平和的な交渉により試みることの重要性を理解し，それらを実践できる。
授業概要(教育目的) 「人工妊娠中絶は許されるのか」「代わりに子どもを産んであげてよいのか」「脳死者から臓器を移植することは許されるのか」「不治の病に苦しむ人の『死なせてくれ』という頼みを引き受けてよいのか」。これらの問題を体系的に扱う試みが「生命倫理学」です。生命倫理学は，人間が生命を操作するようになった現代を象徴する学問です。と同時に，生きることの意味や死ぬことの意味，更には，相互に尊重しあうことの意味を問いかける学問でもあります。本授業では，生命倫理学を通じ，「生」および「死」についての様々な考えに触れてもらうとともに，どうすれば「相互尊重」の関係性を実現していくことができるのかを探ってもらいます。
授業計画表
 
回項目内容
第1回 はじめに－生命倫理学とは何か－ 本授業においては，どのような問題を扱い，何をねらいとするのか説明する。
【事前学習】２時間
シラバスをよく読んでおくこと。
【事後学習】２時間
本授業の学習目標と授業の概要についてよく理解しておくこと。
第2回人工妊娠中絶（１）人工妊娠中絶の現状 人工中絶問題の歴史，および，人工妊娠中絶の現状を欧米と日本とに分け概観する。
【事前学習】２時間
「人工妊娠中絶」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第2回の授業内容について復習しよく理解しておくこと
第3回人工妊娠中絶（２） 倫理学的検討・その１欧米における倫理学的議論のうち，保守派とリベラル派の代表的議論を紹介する。
【事前学習】２時間
第2回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第3回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第4回人工妊娠中絶（３）倫理学的検討・その２欧米における倫理学的議論のうち，中間派の代表的議論を紹介する。
【事前学習】２時間
第3回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第4回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第5回人工妊娠中絶（４）倫理学的議論の現在 人工妊娠中絶をめぐって展開されている倫理学的議論の現在の状況を分析する。
【事前学習】２時間
第2‐第4回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第5回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。

第6回小テストと要点の解説第1回から第5回までの内容に関する小テストを実施するとともに，それらの回の授業内容の要点整理を行う。
【事前学習】２時間
第1回‐第5回の授業内容について復習しておくこと。
【事後学習】２時間
小テストを振り返ることを通じて，前期のここまでの授業内容を見直しておくこと。
第7回ドメスティック・バイオレンス（１）概念とその概念の学問的背景 ドメスティック・バイオレンスの概念とそうした概念の学問的背景について説明する。
【事前学習】２時間
「ドメスティック・バイオレンス」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】】２時間
第7回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第8回ドメスティック・バイオレンス（２）暴力の実態と法的な取り組み ドメスティック・バイオレンスの実態と防止のための法的な取り組みを紹介する。
【事前学習】２時間
第7回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第8回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第9回ドメスティック・バイオレンス（３）被害者心理の分析を中心に　主に，暴力の被害者が陥る心理という観点から，ドメスティック・バイオレンスを考察する。
【事前学習】２時間
第8回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第9回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第10回ドメスティック・バイオレンス（４）倫理学的議論の現在：加害者研究を中心にドメスティック・バイオレンスをめぐる倫理学的議論の現在の状況を分析し，特に加害者研究に注目する。
【事前学習】２時間
第7-9回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第10回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第11回生殖補助医療（１）技術と現状 生殖補助医療の技術の現状と，それらの技術がどう利用されているかを概観する。
【事前学習】２時間
「生殖補助医療」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第11回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第12回生殖補助医療（２）初期の議論と現在の議論の前提 生殖補助医療をめぐって展開された初期の倫理学的議論を紹介するとともに，現在の議論の前提をおさえる。
【事前学習】２時間
第11回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第12回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第13回生殖補助医療（３）倫理学的議論の現在　生殖補助医療をめぐって展開されている倫理学的議論の現在の状況を分析する。
【事前学習】２時間
第11回－第12回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第13回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第14回性の多様性概論「性の多様性」に関する諸知見に基づいた倫理学的考察を示す。
【事前学習】２時間
「性の多様性」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第14回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第15回確認試験と解説／前期授業内容の補足説明第14回までの前期授業内容についての確認試験と解説，および，前期授業内容に関する補足を行う。
【事前学習】２時間
前期の各回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
中間試験を振り返ることを通じて，自身の授業目標の達成状況について確認しておくこと。
第16回クローン技術を考える倫理学の立場からクローン技術の問題の所在を探り，「生」と「死」の交差点にある技術であることを示す。
【事前学習】２時間
「クローン技術」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第16回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第17回脳死（１）「死の定義」への関心と脳死をめぐる議論 脳死の出現により「死の定義」への関心が高まったことを受けつつ，米国と日本の脳死をめぐる議論を紹介する。
【事前学習】２時間
「脳死」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第17回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第18回脳死（２）「死」をめぐる考察の諸相と脳死をめぐる倫理学的議論の現在「死」をめぐって行なわれてきた様々な考察を紹介する。また，脳死をめぐって展開されている倫理学的議論の現状を分析する。
【事前学習】２時間
第17回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第18回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第19回 脳死（３）脳死に関する補足説明と｢死」をめぐる考察の意義脳死に関する法的状況などについて補足説明を行う。また，「死」をめぐる考察がどのよう意義をもつのかを探る。
【事前学習】２時間
第17-第18回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第19回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第20回小テストと要点の整理第16回から第19回までの内容に関する小テストを実施するとともに，それらの回の授業内容の要点整理を行う。
【事前学習】２時間
第16回‐第19回の授業内容について復習しておくこと。
【事後学習】２時間
小テストを振り返ることを通じて，後期のここまでの授業内容を見直しておくこと。
第21回 臓器移植（１）移植医療の現状 日本における移植医療の現状を，必要に応じて欧米と比較しつつ概観する。
【事前学習】２時間
「臓器移植」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第21回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第22回臓器移植（２）移植医療そのものをめぐる倫理学的検討移植医療そのものに関し繰り広げられてきた倫理学的議論を紹介する。
【事前学習】２時間
第21回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第22回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第23回臓器移植（３）移植医療にともなう諸問題の倫理学的検討　 移植医療にともないどういう問題が生じてきたのか，また，それらに対しどのような倫理学的議論が行われてきたのかについて紹介する。
【事前学習】２時間
第22回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第23回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第24回臓器移植（４）倫理学的議論の現在／配分と選択をめぐって（１）倫理学的検討１）移植医療をめぐって展開されている倫理学的議論の現在の状況を分析する。
２）「誰が治療を受けるべきか」という優先順位の問題について思考実験を用いて考察を行ってもらう。
【事前学習】２時間
１）第20回-第23回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
２）「配分と選択」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第24回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第25回配分と選択をめぐって（２）倫理学的議論の現在／安楽死（１）安楽死の概念と区別１）配分と選択に関する倫理学的議論の現状を分析する。
２）安楽死の概念と区別を説明する。
【事前学習】２時間
１）「配分と選択」に関する思考実験について再考しておくこと。
２）「安楽死」の問題に関して，現在自身がもっている知識を確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第25回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第26回安楽死（２）倫理学的検討・その１　消極的安楽死・間接的安楽死をめぐる社会的状況と倫理学的議論を紹介する。
【事前学習】２時間
安楽死の概念と区別について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第26回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第27回安楽死（３）倫理学的検討・その２　積極的安楽死をめぐる倫理学的議論について，特に欧米の議論を中心に紹介する。
【事前学習】２時間
第26回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第27回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第28回安楽死（４）倫理学的議論の現在：積極的安楽死をめぐって積極的安楽死の合法化に踏み切った国の状況を紹介し，その背景にある倫理学的議論をまとめる。
【事前学習】２時間
第25回-第27回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第28回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第29回クローン技術・再考クローン技術を「不死」を求める技術ととらえ，「不死」が人間をどのような世界へと連れて行くことになるのかを考える。
【事前学習】２時間
第16回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
第29回の授業内容について復習しよく理解しておくこと。
第30回確認試験と解説／後期授業内容の補足説明 第29回までの後期授業内容についての確認試験と解説，および，後期授業内容に関する補足を行う。
【事前学習】２時間
後期の各回の授業内容について確認しておくこと。
【事後学習】２時間
学年末試験を振り返ることを通じて，自身の授業目標の達成状況について確認しておくこと。
授業形式 １．原則として，講義形式で授業を行う。講義は，板書および配付プリントを中心に進めていくが，関連のビデオ教材なども使用する。
２．適宜受講者に質問を投げかけ，一方的な説明に終わらないようにしたいと思う。受講者の側からの質問・積極的な発言も歓迎する。
３．各回の内容に関しては，進行状況等によって変更・調整を行うものとする。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度 		その他 合計
80% 0% 20% 0% 0% 100%
評価の特記事項 「定期試験」は中間試験と学年末試験を実施する。また，年2回（各学期１回）の小テストを行う。なお，各学期での３分の２以上の出席，中間試験・学年末試験の受験は単位取得に必須の要件とする。
テキスト 特定のテキストは指定しない。
参考文献 【個別テーマ】適宜，授業において提示する。
【学習目標に関する理論】根村直美『現代倫理学の挑戦―相互尊重を実現するための自己決定とジェンダー―』学術出版会，6400円＋税，2013年．
オフィスアワー(授業相談) 原則として，水曜日10:30-11:30。
授業終了時アポイントメントを取り，指定の時間に本館2階講師室に来てください。
事前学習の内容など，学生へのメッセージ １．学問的知見を吸収することを通じ自分自身の考えを見つめ直そうとする姿勢をもって授業に臨んでください。また，異なる考えに向き合おうとする姿勢をもって授業に臨んでください。
２．私語・遅刻・途中退出等のマナー違反は厳禁とします。マナー違反がはなはだしい場合には退出してもらいます。ご承知おきください。
３．受講態度が悪い者には単位取得が難しいよう定期試験や小テストの内容を設定しますので，集中して授業に臨んでください。また，「評価の特記事項」で述べたように，単位取得には，各学期での３分の２以上の出席，中間試験・学年末試験の受験を必須としますので留意してください。