回 | 項目 | 内容 |
第1回 | ガイダンス,および言葉の説明 | 一年間の予定を説明し,倫理学(ethics)の語義・対象・課題を概説し,道徳という言葉との違いを説明する。
【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第2回 | 学問全体における倫理学の位置づけ,生命倫理学の誕生 | アリストテレスの学問区分(理論学・実践学・制作学)を説明し,倫理学のもつ人間によって結果を変えられる実践的学問という本質的性格を明らかにする。医療技術の発達がもたらした生命の位置づけの変化の結果として,生命倫理学が誕生したことを明らかにする。
【事前学習】2時間,テキストの3~4頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第3回 | 生命倫理1(体外受精) | 体外受精の歴史・種類・費用を概説し,それに付随して生じた代理母,精子バンクの問題を解説する。
【事前学習】2時間,テキストの4~6頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第4回 | 生命倫理2(体外受精) | 体外受精の問題点を概説し,最後に残ってしまう余剰胚の問題を述べ,そこからある意味で派生したクローン技術,臓器製造の問題を解説する。
【事前学習】2時間,テキストの6~7頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第5回 | 生命倫理3(人工妊娠中絶) | 人工妊娠中絶の問題の争点を整理する。日本と海外において中絶が容認されてきた歴史を比較し,女性の権利と胎児の生存権の衝突を回避する手段としての三期説を紹介する。ピルとエイズの関係を紹介する。
【事前学習】2時間,テキストの7~9頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第6回 | 生命倫理4(出生前診断・着床前診断) | 出生前診断・着床前診断について説明し,その結果可能になる遺伝病の回避・男女の生み分け・救世主兄弟について概説する。遺伝子操作への賛成論と反対論を比較する。【事前学習】2時間,テキストの9~10頁を予め読んでおくこと。できれば、参考書『概説 現代の哲学・思想』の223~227頁もあわせて。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第7回 | 生命倫理5(優生思想1) | 優生思想が現実的に生まれた19世紀の背景・考え方を説明し,それが実践された結果としての断種法成立の歴史を紹介する。日本の優生思想をハンセン病患者への差別という点から解説する。
【事前学習】2時間,テキストの10~12頁(参考書230~234頁)を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第8回 | 生命倫理6(優生思想2) | 優生思想の論理とそれが描く未来について概説する。
【事前学習】2時間,テキストの10~12頁(参考書230~234頁)を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第9回 | 生命倫理7(脳死・臓器移植) | 脳死は心臓死とどう違うのかを概説する。臓器移植の歴史・種類を概説し,日本はなぜ臓器移植が少ないのかを明らかにする。臓器移植の諸問題を説明する。
【事前学習】2時間,テキストの12~18頁(参考書227~228頁)を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第10回 | 生命倫理8(安楽死) | 安楽死の種類・要件を説明する。日本における安楽死事件を紹介し,安楽死を認めつつある世界的趨勢と比較する。「死ぬ権利」,リビング・ウィル,ホスピスについて紹介する。【事前学習】2時間,テキストの18~20頁(参考書228~230頁)を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第11回 | 生命倫理9(生命の尊厳と生命の質・パーソン論) | 「生命の尊厳」から「生命の質」への価値基準の変化を概説し,その結果生まれたパーソン論を説明する。パーソン論の長所と短所を明らかにする。
【事前学習】2時間,テキストの21~23頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第12回 | 生命倫理10(医療の倫理) | 医師中心のパターナリズムから,患者中心のインフォームド・コンセントへと変遷しつつある理由を説明する。自己決定権の条件を明らかにする。
【事前学習】2時間,テキストの23~23頁(参考書221~223頁)を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第13回 | 生命倫理11(医療費・お金の問題) | 限りある医療費を公正に,効果的に配分するための種々のやり方について説明する。生命倫理の四つの原則について整理する。
【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第14回 | 環境倫理1(自然の生存権) | 倫理学の対象の拡大の結果として環境倫理が生まれたことを説明する。環境倫理の三つの主張を概説し,その第一のものとしての自然の生存権を説明し,それを実現する手段(樹木の当事者適格・自然保護の諸段階)4を検討する。【事前学習】2時間,テキストの29~35,47~49頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第15回 | 環境倫理2(世代間倫理・地球全体の視点)
| 第二のものとしての世代間倫理(未来に対する責任)を説明し,第三のものとしての地球全体の視点を,環境倫理最大の問題としての,人口問題と南北問題について検討する。【事前学習】2時間,テキストの36~38,53~58頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。
|
第16回 | 倫理学史を学ぶ理由 | 倫理学の対象が拡大し対象が変化しても,考え方そのものは過去の倫理思想とそれほど違いがないことを,現代の経営倫理との関連で確認する。コーポレート・ガバナンス,コンプライアンス,モラルハザード,株主代表訴訟内部告発などを概説する。【事前学習】2時間,テキストの59~73頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第17回 | 現代の経営倫理 | 具体的事例・事件(エンロン・ライブドア事件・米国大和銀行事件など)を概説し,それを通して,「嘘をついてはいけない」という昔からの規則と現代の経営倫理が違わないことを明らかにする。【事前学習】2時間,テキストの59~73頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。
|
第18回 | 人間の自己理解の変遷 | 過去の倫理思想を,個人よりも社会が先という習俗の立場・社会よりも個人が先という道徳性の立場・双方を共に扱う人倫の立場の三つに区分して説明する。人間よりも自然,個人よりも社会に力点を置く古代の立場と,それを逆転する近代の立場を比較して,人間の自己理解の変遷を説明し,近代主体性の特徴を明らかにする。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第19回 | ギリシア人の倫理思想 | 正義という観念がなかった最も古いホメロスの世界と,正義という観念が誕生したヘシオドスの考え方を通して,ギリシアの正義観の変遷を説明する。
【事前学習】2時間,テキストの103~109頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第20回 | ソフィストとソクラテス | ソフィストの相対主義的考え方になぜソクラテスは反対したのかを明らかにする。そのためにソクラテスの生涯・有罪判決・死んだ理由を説明し,その背景にあるノモス(法)観の変遷について解説する。
【事前学習】2時間,テキストの109~116頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第21回 | プラトンの理想国家とアリストテレスの現実的倫理 | プラトンの魂の三分説と理想国家論を概説する。アリストテレスの現実的倫理(社会的動物としての人間・幸福の三種類・訓練と習慣づけによって形成される性格・欲望と思慮)を説明する。
【事前学習】2時間,テキストの117,120~128頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第22回 | ユダヤ教とキリスト教 | ユダヤ教の基本的考え方(契約・律法・メシア思想)と,キリスト教の中心的思想(イエスの教え・パウロ・十字架による贖罪)を説明する。
【事前学習】2時間,テキストの137~140頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第23回 | ルネッサンスと宗教改革期の倫理 | ルネッサンスのユマニスム(人文主義)の特徴を概説し,そこから生まれた教養概念を説明する。宗教改革を概説し,そこから生まれたプロテスタンティズムの禁欲的職業倫理を説明する。
【事前学習】2時間,テキストの143~147頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第24回 | 社会契約説 | 社会は自然発生的ではなく,人間が契約によって作ったという社会契約説を解説する。ホッブズの社会契約,ロックの社会契約,ルソーの社会契約の特徴とそれらの違いを説明する。
【事前学習】2時間,テキストの149~160頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第25回 | カント1 | 従来の倫理学説への批判を概説し,善とは結果を先に考えるもの(条件付きの善)ではなく,結果を考えない純粋な動機によるもの(無条件」の善・善い意志)であるという,カントの説を説明する。【事前学習】2時間,テキストの161~163頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第26回 | カント2 | 善とは義務を果たすことであり,義務とは誰の心の中にも生じる命令(道徳法則)であり,自由とは自分の命令に自分が従うことである(意志の自律としての自由),というカントの説を説明する。カントに対する批判を概説する。【事前学習】2時間,テキストの163~167頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第27回 | ヘーゲルの市民社会論 | 倫理は個人の内面にだけ成り立つのではなく,広く社会の中で成り立つものである,というヘーゲルのカント倫理学への批判を概説する。その場面(客観的精神・法・道徳・人倫)を説明し,中心的な場面(人倫・家族・市民社会・国家)を解説して,個人の欲望を根源と見るヘーゲル市民社会論の特質を明らかにする。
【事前学習】2時間,テキストの171~180頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第28回 | 功利主義 | ベンサムの功利主義(快楽の価値計算・最大多数の最大幸福・制裁)を概説し,それに対してミルが加えた修正点を説明する。
【事前学習】2時間,テキストの181~188頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第29回 | ニーチェの道徳批判 | 道徳は,弱者の強者に対するルサンチマン(逆恨み)から生まれたものであり,強者の手足を縛るものであるという,ニーチェの道徳批判について説明する。【事前学習】2時間,テキストの207~211頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |
第30回 | 正義論
| ロールズの正義論(公正としての正義,およびそれを実現するための手続きとしての原初状態・無知のヴェール・正義の二原理)を説明し,それに対する批判(自由至上主義・共同体主義・センの提言)を検討する。【事前学習】2時間,テキストの79~99頁を予め読んでおくこと。【事後学習】2時間,授業内容を復習し,ノートを整理しておくこと。 |