講義名 政治学 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火3
単位数 4

担当教員
氏名
佐藤 高尚

学習目標(到達目標)  新聞の政治の記事を理解できるようになることが,本講義の目標です。
1 日々の政治に関するニュースを,社会科学としての政治学の観点からとらえることができる。
2 デモクラシーの歴史と特徴を学び,それを現代世界や日本政治と関連付けて説明することができる。
3 政治の基本的なアクター(政党・圧力団体・官僚など)の機能を把握し,各々の機能について説明できる。
4 現代日本政治の課題とその解決策とを,他地域と比較しつつ,政治学の概念を用いて示しうる。
授業概要(教育目的)  本講義の目的は,政治についての基本的な見方を学ぶことにあります。政治学の基本的な概念を踏まえた上で,それを用いた政治現象の分析・検討をおこないます。みなさんの理解度や習熟度により,弾力的に授業を運営していく予定でいます。 
 前半では,政治学の基本概念の説明が中心となります。これにより,現在の日本政治に限定されない,幅広い政治の現象について分析することが可能となります。後半では,現代政治の課題を複数取り上げ,それらが政治学の観点からどのように分析可能か,またどのような対処が望まれるのか,具体的に考察していくことを予定しています。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス学習目標,授業の進め方,成績評価の仕方について説明します。また,参考文献案内をする予定です。
【事前学習】1時間
事前にシラバスを熟読しておくこと。履修上確認しておきたい点をチェックしておくこと。
【事後学習】1時間
講義内で紹介した文献を各自手に取り,内容を確認すること。
第2回政治の概念政治の特徴を,法律や経済など他の社会領域と比較した上で,明らかにします。また,様々な「政治」観を紹介し,それらが現実政治においてどれだけ妥当性を持ちうるのかを検討する予定です。
【事前学習】1時間
任意の新聞の社説のうち,政治に関係するのもがどれにあたるのかを検討しておくこと。シュミット『政治的なものの概念』を読んでくること。
【事後学習】1時間
講義内で扱った重要語句を文献等で調べ確認しておくこと。
第3回政治権力(1)政治権力の概念には,どのようなものがあるのかを説明します。特に,権力論の中でも,実体説と関係説とに焦点をあてて説明する予定です。
【事前学習】1時間
「権力」という言葉が辞書ではどう記載されているか確認しておくこと。新聞記事ではどのような用いられ方をしてるのか確認しておくこと。
【事後学習】1時間
講義内の例以外の権力現象としてどのようなものがありうるのか各自検討すること。
第4回政治権力(2)政治権力の特異性を検討します。特に,政治権力と社会的権力との違いを考察し,そうした比較を通して,公権力としての政治権力の意味内容を明らかにする予定です。
【事前学習】1時間
家族や学校における権力関係と政治権力との共通点と相違点を考えておくこと。前回の権力論との関係を考えておくこと。
【事後学習】1時間
前回の講義内容と今回の内容を関連付けて,ノートに整理しておくこと。
第5回支配と正統性
支配と正統性の問題を扱いますが,その中でも代表的な議論としてヴェーバーの3類型ーー伝統的支配,カリスマ的支配,合法的支配ーーを取り上げます。また,社会の多様性と正統性がどのように関連しているかを説明する予定です。
【事前学習】1時間
歴史的事例や新聞記事の中から,伝統的支配,カリスマ的支配,合法的支配のそれぞれにあてはまる具体例を調べておくこと。ヴェーバー『権力と支配』を読んでくること。
【事後学習】1時間
ヴェーバーの正統性の議論以外の論拠を調べること。
第6回リーダーとリーダーシップ
エリート論とリーダー論の枠組みの共通点・相違点を検討した上で,さまざまなリーダー論を取り上げます。特に,リーダーの資質論の特徴とその問題点を検討するとともに,リーダーを支えるフォロワーの役割に注目し,その機能を明らかにする予定です。
【事前学習】1時間
日本の歴代首相のリーダーシップ発揮の成功例・失敗例を調べておくこと。マキャヴェッリ『君主論』を読んでくること。
【事後学習】1時間
リーダーシップ論そのものの問題点を再確認しておくこと。
第7回政治の誕生とその展開前回までの政治学の中心的概念を踏まえたうえで,それらが歴史的にはどう扱われてきたのか,「ポリスからキリスト教世界へ」という流れで明らかにします。特に,プラトン,アリストテレス,トマス・アクィナスを取り上げる予定です。
【事前学習】1時間
上記思想家の経歴・主要著作・主要著作の概要を調べておくこと。
【事後学習】1時間
上記思想家の政治の考え方の現代的意義を検討すること。
第8回近代と政治政治学の変遷を,(1)ルネサンスと宗教改革および(2)社会契約論の系譜という流れで説明します。前者ではマキャヴェッリとルターを扱い,後者ではホッブズ,ロック,ルソーを扱います。
【事前学習】1時間
トレルチ『ルネサンスと宗教改革』,ロック『統治論』を読んでくること。
【事後学習】1時間
マキャヴェッリ『君主論』,ルソー『社会契約論』を読み,講義内容をフォローしておくこと。
第9回デモクラシーの生成とその展開(1)デモクラシーとは何かということを,まず古代ギリシャのデモクラシーを考察することで,その本源的観点から明らかにします。さらに古典的デモクラシーと,近代議会政治およびデモクラシーとの関連を考察します。
【事前学習】1時間
ポリスにおいてどのように政治が運営されていたか調べておくこと。
【事後学習】1時間
斎藤忍随『プラトン』を読み,講義内容をフォローしておくこと。
第10回デモクラシーの生成とその展開(2)大衆社会の登場の背景,そこからうまれた大衆デモクラシーの特徴を検討します。その上で,そうした大衆デモクラシーの諸課題をファシズムや政治的無関心との関連から明らかにします。
【事前学習】1時間
ヴァイマール体制の崩壊過程の概要を事前に調べておくこと。フロム『自由からの逃走』を読んでくること。
【事後学習】1時間
森政稔『迷走する民主主義』を読み,講義内容をフォローしておくこと。
第11回投票行動と政治意識投票行動の諸前提として,外的環境の要因がどれだけの影響を持ちうるのかを説明します。それを踏まえて上で,政党帰属意識の影響や,有権者の実像を明らかにします。
【事前学習】1時間
ここ10年の衆参の投票率およびその年代別投票率を調べておくこと。
【事後学習】1時間
直近の国政選挙における若年層の投票率と投票先を調べ,講義内容と関連づけて検討すること。
第12回国際社会(1)国際社会の枠組みとその変容を,以下の流れで扱います。まず、近代ウエストファリア体制と勢力均衡論を検討し,それに対しするものとしてWWIと国際連盟樹立とがどのよう位置づけ可能なのか説明します。加えて,WWIIと冷戦とが国際社会に新たにどのような要素をもたらしたのかを明らかにします。
【事前学習】1時間
E・H・カー『危機の二十年』を読んでくること。
【事後学習】1時間
前掲書の中で講義内容と関連する部分を再読しておくこと。
第13回国際社会(2)開発途上国の国家形成を,前回の議論と関連付けて説明します。この回では,途上国独立前の植民地支配の手法を検討し,それらが途上国の独立にどのような影響を与えたのかを説明します。その上で植民地支配の記憶が,独立後の途上国の呪縛となっていることを明らかにします。
【事前学習】1時間
前回の講義内容の中で,植民地や途上国はどのような位置に置かれていたのかを確認しておくこと。
【事後学習】1時間
現代の紛争地域を調べ,講義内容との関連を検討すること。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ:前期の重要ポイント振り返るとともに、質疑の時間を設け、個別の論点について解説します。
【事前学習】1時間
ノートなどを見直し,理解が不十分な点を確認しておくこと。
【事後学習】1時間
講義内容を踏まえ,再度ノートを整理しておくこと。
第15回試験及び解説授業:中間のまとめまとめ:試験を実施し、その後に試験についての解説を行います。
【事前学習】1時間
前期の各論点を自分の言葉で説明できるようにしておくこと。
【事後学習】1時間
解説を踏まえた上で,自分なりに試験の解答を再度作成しておくこと。
第16回政党(1)政党の定義・類型をはじめに示し,その後に政党制(一党制,二党制など)を説明します。さらに,日本における政党性の特徴を明らかにするとともに,現代の政党一般の課題を明らかにします。
【事前学習】1時間
衆議院・参議院のホームページを閲覧し,現時点での日本の政党の勢力分布を把握しておくこと。
【事後学習】1時間
講義で取り上げた政党の定義以外に,どのようなものがあるのか調べておくこと。
第17回政党(2)日本における政党をその課題の面から検討し,英米の二党制が本当に日本の政党制のモデルとなりうるのかを検討します。また,近年議論になっているインターネットと政党との関係を明らかにします。
【事前学習】1時間
日本の各政党のホームページを確認しておくこと。
【事後学習】1時間
高安健将『議院内閣制―変貌する英国モデル』を読み,講義のフォローをしておくこと。
第18回官僚制はじめに官僚制の特徴をあきらかにし,その上で官僚制の逆機能を説明して問題点を検討します。加えて,政治家と官僚の対立・協力・癒着の関係を考察し,政官関係の内実を説明します。
【事前学習】1時間
城山三郎『官僚たちの夏』を読んでくること。
【事後学習】1時間
官僚制と企業組織との異同を検討すること。
第19回利益集団利益集団と政党との違いをまずはおさえたうえで,圧力団体の機能・類型・課題を検討します。また,コーポラティズムを説明する中で,政治過程の中での利益集団の役割を明らかにする予定です。
【事前学習】1時間
日本経団連,連合,農協がどのような政治的活動をしているのかを調べておくこと。
【事後学習】1時間
日本経団連の歴代の会長が,政治についてどのような発言をしていたのか調べ,講義内容との関連を検討すること。
第20回政府の役割とその規模「大きな政府」論と「小さな政府」論と比較した上で,「節度ある政府」の在り方を考察するとともに,内外の環境の変化に対応した政府の役割を再考する予定です。
【事前学習】1時間
「大きな政府」と「小さな政府」それぞれのメリットとデメリットを調べておくこと。
【事後学習】1時間
日本は現在「大きな政府」もしくは「小さな政府」なのか,論拠となるデータを調べること。
第21回地域社会の政治自治体がいまどのような問題をかかえているかを,地方分権の実情を探ることから検討する。特に2000年以降の地方分権推進と市町村合併から,地方自治が以下に変容したのかを説明します。
【事前学習】1時間
居住都道府県内の市町村合併のケースを調べ,合併後の正負の効果を確認しておくこと。
『事後学習】1時間
大江正章『地域に希望あり――まち・人・仕事を創る』を読み,講義のフォローをしておくこと。
第22回政治とマスメディア(1)マス・メディアが投票行動にいかに影響するのかについて,その理論的枠組みを明らかにします。具体的には,即効薬理論,コミュニケーションの2段階の流れ,議題設定機能を扱う予定です。
【事前学習】1時間
即効薬理論,コミュニケーションの2段階の流れ,議題設定機能ーー以上の概要を調べておくこと。
【事後学習】1時間
リップマン『世論』を読み,講義との関連性を検討すること。
第23回政治とマスメディア(2)日本の選挙報道の在り方を検討します。特に,否定的報道が,政治的シニシズムとどのように関係するのかを明らかにします。
【事前学習】1時間
各新聞社のホームページで直近の衆・参選挙の評価の違いを確認しておくこと。
【事後学習】1時間
ソーシャル・メディアと政治との関連を検討しておくこと。
第24回民族とナショナリズム国民と国家の関係性を検討する中で,近代化とエスニシティが齟齬をきたす面を把握するとともに,それへの阿インチテーゼとしてのアイデンティティの政治の意義を明らかにします。
【事前学習】1時間
E・H・カー『ナショナリズムの発展』を読んでくること。
【事後学習】1時間
ナショナリズムとポピュリズムとの関連を自分なりに検討しておくこと。
第25回自由主義自由と自由主義はどう関係するのか明らかにし,自由主義には二つの系譜があることを明らかにします。その上で,現代の自由主義が市場原理主義とグローバリズムとにどう関連しているのかを説明します。
【事前学習】1時間
ミル『自由論』,もしくはジョン・グレイ『自由主義』を読んでくること。
【事後学習】1時間
現代自由主義の課題を身近な例から検討すること(例:リーマン・ショック)。
第26回保守主義保守主義の起源をまず説明し,その次に20世紀における変容の実態を明らかにします。そして今世紀のアメリカ保守主義の問題を取り上げる中で(例:ブッシュとネオコン),現代保守主義の課題を考察します。
【事前学習】1時間
バーク『フランス革命の省察』,佐々木毅『現代アメリカの保守主義』を読んでくること。
【事後学習】1時間
宇野重規『保守主義とは何か-反フランス革命から現代日本まで』を読み,講義のフォローをしておくこと。
第27回社会主義マルクスとその革命理論を政治学の観点から考察します。また,現代において西欧・中南米で左派政権の台頭などから,格差社会への処方箋としての意義など,社会主義の現代的意義を明らかにします。
【事前学習】1時間
マルクス『共産党宣言』を読んでくること。
【事後学習】1時間
現存の社会主義「体制」と「政権」を調べ,現状を確認しておくこと。
第28回グローバリゼーショングローバリゼーションの特徴を政治学的観点から位置づけるとともに,反グローバリズムの動きや,グローバリゼーションとデモクラシーとの関係を明らかにします。
【事前学習】1時間
伊豫谷登士翁『グローバリゼーションとは何か:液状化する世界を読み解く』を読んでくること。
【事後学習】1時間
TPPの問題を講義内容と関連付けて検討しておくこと。
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ:後期の重要ポイント振り返るとともに,質疑の時間を設け,個別の論点について解説します。
【事前学習】1時間
ノートなどを見直し,理解が不十分な点を確認しておくこと。
【事後学習】1時間
講義内容を踏まえ,再度ノートを整理しておくこと。
第30回確認試験と解説まとめ:試験を実施し,その後に試験についての解説を行います。
【事前学習】1時間
後期の各論点を自分の言葉で説明できるようにしておくこと。
【事後学習】1時間
解説を踏まえた上で,自分なりに試験の解答を再度作成しておくこと。
授業形式  講義形式で行います。
 また授業中に意見・感想を求める場合があります。直接発言をもとめたり,資料についてペーパーに書いてもらったりします。
 みなさんの理解度や習熟度により,弾力的に授業を運営していく予定でいます。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
70% 10% 10% 5% 5% 100%
評価の特記事項 中間試験を実施する場合には,前期50点・後期50点の配点とします。
テキスト 特にありません。
講義用ファイルを学内ネットワークで公開します。
参考文献 適宜紹介しますが,さしあたり以下を参照のこと。必ずしも購入の必要はありません。
タラ・スミス著『権利の限界と政治的自由』,三和書籍,3360円.
秋山和宏編著『新版 現代政治の理論と諸相』,三和書籍,3150円.
杉本稔編著『政治の世界』,北樹出版,2730円.
藤原孝・山田竜作編『シティズンシップ論の射程』,日本経済評論社,4620円.
オフィスアワー(授業相談) 講義前後,当該教室にて対応します。詳細は、講義時に支持します。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ  履修条件は特にありませんが,政治に関心があり,積極的に授業に参加しうる履修者を希望します。
 新聞やインターネットを利用し,日頃からニュースをチェックしておいてください。