講義名 応用心理学 ≪◇学部≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 水4
単位数 2

担当教員
氏名
土屋 明夫

学習目標(到達目標) この応用心理学では「社会心理学」を講ずる。「社会心理学」は、人間関係や社会的諸状況を通しての人の心理・行動のあり方を理解する学問である。身近な例として“自己理解”にも“他者の影響性”が大きいことや、一人の場合は苦もなく出来ることも周りに人がいると躊躇してしまうことなど、経験済みのことだろう。そこで、この社会心理学を学ぶことで、受講生には、次の3項目が達成できることを目標とする。
1.対人関係や集団行動など“社会的行動”の法則に関する理解が深められる。
2.日常行動に関心がもて、客観的に自分や他者の行動分析ができるようになる。
3.各自の日々の生活に、学んだ知識を役立てられるようになる。
授業概要(教育目的) 「社会心理学」は、人の行動を考える場合、人間関係や社会的諸状況との関係性に焦点を当て、その視点から人の心理や行動の背景にある法則を理解するものである。それ故、扱うテーマも、社会的自己、消費者行動、リーダーシップ等々身近なものが多い。講義では、これらの心理や行動の背景にある法則の解説を、検証過程も加味し考察するが、受講生には、社会的行動に対する科学的視点からの理解を深め、かつ学んだことを自分の日常生活に役立てられるようにすることを目的とする。特に今回の講義では“社会的自己”に重点をおくので、青年期の段階にあって“自己の確立”が大きな課題とされる受講生の参考に資することも目的とする。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション社会心理学とはどんな学問か。アカデミック・スキルズ(ノートの取り方など)。自由課題レポート作成に関する説明など。
【事前学習】2時間
「社会心理学を学ぶ」また「大学で学ぶ」ことの必要性や「学んだことをよく理解するための工夫」、さらに現在の「関心事」について頭の整理をしておくこと。
【事後学習】2時間
自分は何のために「学ぶ」のか、まず「学ぶ目的」を明確にし、講義や今後の大学生活に入れるようにすること。また「関心事」をレポートに仕上げる計画・準備をすること(自主レポート作成)。
第2回社会的行動の基礎(1)ー動機についてー行動を動機づけるもの(動機とは、社会的動機、動機づけに関する諸理論の解説)。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(pp.23~26)を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
日頃の自身の体験を頭に置き、理解・整理しておくこと。
第3回社会的行動の基礎(2)ー“やる気”が維持される背景ー内発的動機づけ・外発的動機づけとは何か。この両動機づけの差及び関連性について。また“やる気”を持続させるための要因は何か。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(pp.26~32)を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
日頃の自身の体験を頭に置き理解・整理し、さらに自身の“やる気”の状況分析、改善点を考えてみること。
第4回社会的行動の基礎(3)ー自己とは、自己と諸行動との関連性ー社会的自己《自己をどう理解したらよいか、セルフスキーマ(自己概念)、自己概念と日常行動との関連性》
WAI(20答法)を実施し、自己概念の内容を把握する。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(pp.32~38)を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
20答法を通しての自己分析結果をレポートにし、提出すること。
第5回社会的行動の基礎(4)ー自尊感情・自己評価・自己高揚動機ー自己の安定性(肯定感)ー自尊感情と自己評価ー。自尊感情に関する諸モデル。自信喪失回避策としての“自己高揚動機”とは。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(pp.38~44)を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
自身の“自己安定性”を分析し、改善点を整理しておくこと。
第6回社会的行動の基礎(5)ー自己開示・自己呈示ー対人場面での自己ー自己開示・自己呈示とはー自己理解(確立)における他者目線の重要性。
“ジョハリの窓”を通しての自己分析を行う。
【事前学習】2時間
テキスト第2章(pp.44~49)を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
自身の日常生活で行っている自己開示・自己呈示場面を考えてみること。さらにジョハリの窓の結果を踏まえて、自身の自己確立過程で改善すべき点を整理してみること。ジョハリの窓を通しての自己分析結果はレポートにし提出してもらう。
第7回社会的行動の基礎(6)ー自己の確立とは、青年期の特徴及び課題ー発達心理学の視点からの“青年期の特徴及び課題”について解説することで、現在青年期段階にある受講生の今後の自己確立に向けての参考にしてもらう。
【事前学習】2時間
参考資料を配布するので、読んでおくこと。
【事後学習】2時間
“青年期の特徴及び課題”を理解した上で、自身の現時点での自己の確立状況分析をし、今後に生かせるようにすること。
第8回社会的態度(1)ー人の行動における“態度”の重要性ー態度とは何か(態度の定義、態度の構成要素など)。
態度に関する諸理論。
【事前学習】2時間
テキスト第3章、第1節~2節を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
態度とは何か、人の具体的行動に態度はどのように関わっているのかなどを理解し、活用出来るようにしておくこと。
第9回社会的態度(2)ー説得による態度変容ー態度の変容(説得による態度変容、交渉術など)。
ステレオタイプと偏見など。
【事前学習】2時間
テキスト第3章、第3節~4節を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
様々な情報にさらされ、行動や考えがその影響によって変化する背景をよく理解し、様々な場面で活用出来るようにすること。
第10回小集団行動(1)ー集団の構造と機能ー集団の構造と機能。
集団の影響(集団圧力、同調行動、権威と服従など)。
【事前学習】2時間
テキスト第4章、第1節~2節を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
“人の集まり”をどう捉えたらよいか、“集団”と“集合”の違いや集団の機能などをよく理解しておくこと。
第11回小集団行動(2)ー同調行動、服従の心理、リーダーシップー集団の影響(集団圧力、同調行動、権威と服従など)。
リーダーシップ(リーダーシップの機能と役割、リーダーシップに関する諸理論など)。
【事前学習】2時間
テキスト第4章、第2節~3節を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
上記テーマは、日常生活でしばしば体験することであるが、よく理解し活用出来るようにすること。
第12回大衆現象の心理(1)ー大衆とは、災害時の心理ー災害の心理(災害時の避難行動、避難行動の影響要因、災害時の流言、流言伝播の要因、災害時のパニックなど)。被害者の精神的ストレスと心のケア(PTSDなど)。
【事前学習】2時間
テキスト第6章、第1節を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
いつ遭遇するか分からない“災害”、それ故に災害時での行動は想像も出来ないものになり易い。その災害時での心理を解説するが、よく理解し活用できるようにすること。
第13回大衆現象の心理(2)ー災害時での精神的ストレスと心のケア ー被害者の精神的ストレスと心のケア(災害時の愛他的行動など)。
流行(流行の種類・特質、流行とマスコミュニケーションなど)。
【事前学習】2時間
テキスト第6章、第2節~3節を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
災害時の精神的ストレスと心のケアに関する認識は、今の時代大変必要とされる。それ故よく理解し活用できるようにすること。
第14回社会的パーソナリティ ー個人主義・集団主義、異文化適応などー文化とパーソナリティ(個人主義と集団主義など)。
異文化適応。日本人の国民性(日本人論など)。
【事前学習】2時間
テキスト第7章(pp.152~161)を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
グローバルな環境の中で日常生活をする可能性が高い今日、自国民の特徴を把握し、異文化への適応を身に付けておく必要性は高い、それ故、そのことを常に頭におき、いつでも対処できるようにしておくこと。
第15回確認試験及び解説試験の範囲は、上記14回までのテーマに関したものであるが、その中でも講義時に特に【重要】と指摘されたテーマとする。試験(60分間)の終了後には、解説も加える。
【事前学習】2時間
これまで学んだことを十分に理解しておくこと。
【事後学習】2時間
試験結果を反省し、理解不十分な箇所は補完しておくこと。また、身に付けた知識は日常生活で活用出来るようにしておくこと。
授業形式 基本的にはスライドなども使用しての講義が中心である。しかしテーマによっては、学生側の意見も聞きながらゼミ形式で進める場合もある。
また、心理学の方法論の特徴である“客観的方法論”を体験してもらうために、簡単な実験や検査を実施し、そのデータに基づきながら講義を進める場合もある。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
60% 20% 0% 20% 0% 100%
評価の特記事項 授業への出欠状況、教室での意見発表、さらに関心をもつテーマでのレポート作成など、積極的な授業への取り組み姿勢も評価の対象にする。
テキスト 田之内、土屋、和田、伊坂、鎌田共著『ガイド 社会心理学』北樹出版、2006.
参考文献 村井、土屋、田之内編著『社会心理学へのアプローチ』北樹出版、2000.
池上知子、遠藤由美共著『グラフィック社会心理学』サイエンス社、1998.
オフィスアワー(授業相談) 講義に関する質問や他の相談は、基本的には、授業時や授業終了時に受けるようにする。さらに、その時点で必要とあれば、講師室(学習相談室)やメールで応じる場合もある。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 人の理解には、自分自身や人間一般に関心を持ち、その行動や心理を観察し、じっくり考えてみる姿勢が必要とされる。それ故、授業には積極的に出席し、授業で取り上げられるテーマについては、ともかく自身でも考えてみることが大切である。そこで生じた疑問は、そのままにせず、質問したり、テキストや参考文献などに目を通し、ある程度納得がいくまで“つきつめて考えるみる”ことを習慣づけてもらいたい。そのように“熟考する姿勢”が、次第に自分自身や人間全般に関心を持たせるようになり、ひいては「社会心理学」にも興味が涌くことにつながってくる。