講義名 日本経済論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火2
単位数 4

担当教員
氏名
佐久間 隆

学習目標(到達目標) 1.現代日本経済が直面している課題について、高齢化、人口減少、グローバル化などの背景とともに対応策を経済学的視点から説明できる。
2.日本における企業のあり方について、異なる企業観を踏まえて説明できる。
3.日本における経済成長と生産性の動向を経済理論とデータに基づいて分析することができる。
4.以上に基づいて、日本企業の経営戦略や日本政府の経済政策を適切に評価することができる。
授業概要(教育目的) 本講義では、政府においてマクロ経済政策や産業振興に携わった経験を生かして日本経済の生産面に重点を置いて検討を加えます。
① 法人企業を対象として、日本における会社のあり方について考察します。
② 戦後の経済成長に関する基本的事実と現代の諸課題について説明します。
③ GDP統計の基礎知識について解説した上で、データに基づいて景気循環を確認し、成長理論と成長会計について丁寧に説明します。
④ マクロ経済や産業・企業の生産性に関する分析の実例を提示します。特に、内生的成長理論を踏まえイノベーションに焦点を当てます。最後に、生産性を高める観点から政府の役割について考察を加えます。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス初回のみシラバスなどのプリントを配布します。以後、資料は、EcoLinkにアップします。
シラバスに基づいて講義の進め方と評価方法について説明します。
本講義では、生産面、特に、会社(企業)に焦点を当てて日本経済について考察しますが、それがなぜなのかを解説します。
[事前学習]シラバスとテキストの序章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]:授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第2回会社とはなにか市場経済一般における法人・会社の起源、会社の特徴と諸形態をみたあとで、日本における会社の発展と現状について議論します。
[事前学習]テキストの第1章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第3回会社はだれのものか企業の所有に関して異なる2つの企業観を紹介した上で、東京スタイルと村上ファンドの対立という実例を通して、この2つの企業観を対比して考察します。
[事前学習]テキストの第2章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第4回日本的経営(1)日本的経営システムの基本的構成要素である終身雇用、年功序列、企業内組合が高度経済成長期に持っていた経済合理性とバブル崩壊後に変革を迫られている状況について議論します。
[事前学習]テキストの第3章1を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第5回日本的経営(2)株式の持ち合い、現場主義、メインバンクシステムについて議論し、まとめとして日本的経営システムの評価を試みます。
[事前学習]テキストの第3章2~5を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第6回企業統治経営者の規律付けの仕組みとしての企業統治が働きにくいことが日本的経営の弱点であることをみた上で、いくつかの問題例をケーススターディとして取り上げます。
[事前学習]テキストの第4章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第7回日本企業の収益構造近年、日本企業の株式保有構造や資本構造に生じている変化についてみていきます。国際的にみて日本企業の収益率が低いことを踏まえて、それが何を意味するのか、また、伝統的日本型企業と英米型に移行した企業の間にみられる二極化傾向について議論します。
[事前学習]テキストの第5章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]:授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第8回日本経済と会社(まとめ)第2回から第7回までのまとめを行います。
第1回目のレポートの課題を出します。テーマは、ガバナンス報告書などに基づいた日本の上場企業3社の経営比較とする予定です。
[事前学習]これまでの授業内容のポイントと思うところや疑問点を書き出しておくこと。:2時間
[事前学習]:ガバナンス報告書の読込とレポートの作成:5時間
第9回マクロ経済の統計‐GDP(1)マクロ経済の基本的統計であるGDP統計の概要について解説します。
[事前学習]テキストの第7章1を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第10回マクロ経済の統計‐GDP(2)GDP統計を用いて支出・生産・分配の三面から日本経済の特徴について学習したのち、GDPが大きいことが必ずしも経済厚生が高いことを意味しないことについて議論します。
[事前学習]テキストの第7章2、コラムを予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第11回戦後日本の経済成長(1)戦後の混乱期から高度経済成長期までを振り返ります。高い成長率が実現したり、日本型の経営システムが成立したりした背景を概観します。
[事前学習]テキストの第14章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第12回戦後日本の経済成長(2)石油ショックと高度経済成長の終了、バブル経済とその後の低迷から現在にいたる日本経済の状況について振り返ります。
[事前学習]テキストの第15章を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第13回現代日本経済の諸課題(1)長い間、低い経済成長率が続いている状況をみた上で、そこから抜け出す必要について考えます。
[事前学習]テキストの第12章1を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第14回現代日本経済の諸課題(2)少子高齢化が進む状況と社会保障制度をめぐる課題について考察します。政府の財政状況が悪化している状況をみた上で、財政の持続可能性と経済成長の関係について考察します。
[事前学習]テキストの第12章2~3を予め読んでおくこと。あわせて補足資料にも目を通しておくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第15回戦後日本経済の流れと現代の諸課題(まとめ)第10回から第14回までのまとめを行います。
第2回目のレポートの課題を出します。テーマは日本の経済成長の変遷および関連する問題とする予定です。
[事前学習]第10回以降の授業内容のポイントと思うところや疑問点を書き出しておくこと。:2時間
[事後学習]テキストの関係部分の読み返しとレポート作成:3時間
第16回前期後半の振り返りと後期への接続(1)第9~10回を振り返り、GDP統計の基本についての理解を確認し、経済成長の分析のための利用について説明します。
[事前学習]第9~10回の授業資料を読み返しておくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第17回前期後半の振り返りと後期への接続(2)第11~13回を振り返り、戦後の経済成長の変遷と低成長の問題点を確認し、日本の景気循環と経済成長を分析する視点と意義について考えます。
[事前学習]第11~12回の授業資料を読み返しておくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第18回景気循環(1)景気循環とその要因を考察したあと、1990年代、2000年代の日本の景気循環の特徴、景気動向指数について学習します。
[事前学習]テキストの第8章1~3を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第19回景気循環(2)景気循環の下で、物価と失業がどのような関係を示しつつ変動するか学習します。
[事前学習]テキストの第8章4を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第20回経済成長の諸要因(1)長年にわたる経済成長が人々の経済的豊かさをいかに高めるかをみます。
[事前学習]テキストの第9章1を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第21回経済成長の諸要因(2)経済成長を労働と資本という生産要素の投入で説明するソロー型成長モデルの基本的な枠組みを解説します。
[事前学習]テキストの第9章2を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第22回経済成長の諸要因(3)経済成長の要因を分解して全要素生産性(TFP)を求めるための成長会計の方法について学習します。
[事前学習]テキストの第9章3を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第23回生産性の規定要因(1)全要素生産性計測(TFP)が技術進歩以外の要因からも影響を受けるという計測上の問題があることに留意しながら、マクロ経済全体と産業別に成長会計を適用した結果に基づいて日本の産業のどこに主な課題があるか議論します。
[事前学習]テキストの第10章1~2を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第24回生産性の規定要因(2)内生的成長論の立場から生産性上昇に研究開発が果たす役割の重要性について学習します。
[事前学習]テキストの第10章3を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第25回経済成長と政府の役割(1)第27回までの3回で、政府が経済成長促進に果たす役割について考えます。まず、金融の発展が経済成長を高める可能性について議論します。
[事前学習]テキストの第13章1~2を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第26回経済成長と政府の役割(2)輸出入や直接投資を通ずる経済の国際化が生産性を高める可能性について議論します。
[事前学習]テキストの第13章3を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第27回経済成長と政府の役割(3)競争の状況が企業の生産性向上努力に与える影響について議論します。
[事前学習]テキストの第13章4を予め読んでおくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第28回成長の制約持続可能な発展、資源とエネルギー問題、地球環境問題等について議論します。
[準備学習]
テキストの第11章を予め読んでおくこと。:2時間
[事前学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第29回日本経済の成長と循環(まとめ)第16回から第28回までのまとめを行います。試験の出題範囲と出題形式等について説明します(履修者が多い場合は、特定試験期間に試験を行うので説明は最終回に行います)。
[事前学習]後期の授業内容のポイントと思うところを書き出しておくこと。:2時間
[事後学習]授業資料の読み返しとノート整理:2時間
第30回理解度の確認と全体のまとめ試験により後期授業の理解度を確認し、試験終了後に解説します(特定試験期間に試験を行う場合は、解説は行いません。)。
授業全体をまとめて、現代の日本経済が抱える課題を俯瞰的にとらえます。
[事前学習]テキストの出題範囲の読み返しとノート整理:3時間(特定試験期間に危険を行う場合は事後学習になります。)
[事後学習]回答が誤りだったり不十分だったりした点の確認:2時間
授業形式 講義形式で授業を進めます。基本的にテキストの要旨や補足資料のパワーポイントをプロジェクターで表示しながら解説しますが、必要に応じ板書で補います。パワーポイントは事前にEcoLinkにアップするので準備学習やノート作成に活用してください。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
60% 30% 0% 10% 0% 100%
評価の特記事項 出席はEcoLinkでとります。レポートは、1回目20%、2回目10%とウェイトが小さくないので必ず両方とも提出すること。試験は持込不可です。
テキスト 稲葉陽二・乾友彦・伊ケ崎大理著『日本経済論』弘文堂,2376円.
参考文献 古沢泰治・塩路悦朗著『ベーシック経済学:次につながる基礎固め』有斐閣アルマ
梅田雅信・宇都宮浄人著『経済統計の活用と論点(第3版)』東洋経済新報社
オフィスアワー(授業相談) 金曜日の15:00~16:00、研究室で質問や相談などを受け付けます。事前にメールでアポイントをとるか、授業の際に直接申し出てください。3名までなら連れ立っての来訪OKです。研究室の場所とメールアドレスはガイダンス時に伝えます。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 授業計画表で示したテキストの該当箇所を予め読んでおいてください。授業の進め方は、テキストの章立ての順序通りではないことに注意してください。なお、第6章と第16章は省きます。
様々な経済学や経済統計の知識を使って具体の経済を分析する応用力が身に付くので、就職活動の際に企業をみる目を養ったり、社会に出てからの調査力や企画力の下地を形成することになると思っています。