講義名 労働経済論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水4
単位数 4

担当教員
氏名
村上 英吾

学習目標(到達目標) 本講義の課題は、雇用・失業、賃金、労働時間ならびに働き方・働かされ方に関する諸問題を経済学的に分析することです。そのためには以下の能力を身につけることを目指します。
1.経済学,政治経済学的な諸理論を応用して現代日本の労働問題の実態について説明できる
2.労働市場制度改革のあり方について,理論的実証的根拠に基づき考察できる
授業概要(教育目的) 前期は、労働問題を経済学的に分析するための理論的枠組みを解説します。後期は、 その理論的枠組みをふまえて、現代日本の労働問題について解説します。主な考察対象は、大企業正規労働者、非正規労働者、若年労働者です。そのうえで、これらの問題を解決するための政策について検討します。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション
資本制経済の基本構造
さまざまな経済システムを比較しながら現代経済の基本的な構造について考察します。
【事前学習】2時間
スライド1(1〜16)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
授業中に出てきたキーワードについて説明できるようにしよう。
第2回資本制経済の基本構造2現代経済の特徴の一つである利潤生産過程における労使間利害対立について説明します。
【事前学習】2時間
スライド1(17〜29)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
また,現代経済の特徴について「自由な選択」と「失業の脅威」という点から考えてみよう。
第3回労働時間決定の理論1(所得余暇選好モデル)労働供給の基礎理論である所得余暇選好モデルについて説明します。
【事前学習】2時間
スライド2その1(1〜26)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
モデルを応用してあなた自身の労働供給行動について考えてみよう。
第4回労働時間決定の理論2(目標所得モデル)政治経済学的な労働者イメージに基づく労働供給モデルである目標所得モデルについて説明します。
【事前学習】2時間
スライド2その1(27〜45)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
あなたや家族などの身近な人の労働供給行動について,所得余暇選好モデルと目標所得モデルを応用しながら考察してみよう。
第5回労働時間制度の歴史的展開1(労働時間制度の歴史的基礎)労働時間規制が成立した経緯について歴史的に説明します。
【事前学習】2時間
スライド2その1(46〜57)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
労働時間規制の歴史的根拠について説明できるようにしておこう。
第6回労働時間制度の歴史的展開2(日本の労働時間制度)現代日本の労働時間制度について説明します。
【事前学習】2時間
スライド2その2(1〜19)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
日本の労働時間制度について説明できるようにノートにまとめよう。
第7回現代日本の労働時間問題1うつ、過労死や過労自殺などの長時間労働がもたらす諸問題の事例を紹介しながら,日本の労働時間制度の問題点について考察します。
【事前学習】2時間
スライド2その2(20〜28)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
労働時間制度の問題点について説明できるようにしておこう。
第8回現代日本の労働時間問題2労働時間制度の見直しをめぐる経緯について説明します。
【準備学習】2時間
配付資料2その2(29〜41)を読んでおいて下さい。
【準後学習】2時間
労働時間規制
日本の労働時間制度の見直しの方向性について説明できるようにしておこう。
第9回賃金と労働1(限界生産力説と競争的賃金決定)ミクロ経済学の賃金理論の基礎である限界生産力説について説明します。
【事前学習】2時間
スライド3を読んでおいて下さい。ミクロ1の当該箇所の復習をしておこう。
【事後学習】2時間
限界生産力説の仮定を確認しておこう。
第10回賃金と労働2(労働者からの労働の抽出)雇用契約の不完備性を前提として,労働努力抽出モデルに基づく雇用主にとっての最適賃金の性質について説明します。
【事前学習】2時間
スライド4を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
労働努力抽出モデルから得られる含意について整理しておこう。
第11回職場の社会的編成1(労働者統制システムの三形態)雇用主が労働努力を引き出す方法について,労働者統制システムの理論と統制システムの三形態について説明します。
【事前学習】2時間
スライド5(1〜11)読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
あなたの身近な職場の労働者統制システムの理論で説明してみよう。
第12回職場の社会的編成2顧客による労働者の統制,低賃金サービス労働における技術変化と不熟練化について説明します。
【事前学習】2時間
スライド5(12〜30)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
接客労働の統制システムの特徴を整理しておこう。
第13回職場の社会的編成3官僚制的統制の形成と発展,職場の社会的編成と労働組合の役割について説明します。
【事前学習】2時間
スライド5(31〜42)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
官僚制的統制の成立した背景について説明できるようにしておこう。
第14回労働市場の分断構造統制システムの違いにより分断される労働市場の構造とその変化について説明します。
【事前学習】2時間
スライド6を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
労働者統制システムと労働市場の構造の関係について理解し,近年の労働市場構造の変化について説明できるようにしておこう。
第15回理解度の確認前期の理解度の確認
【事前学習】2時間
前期の内容を総復習しておいてください。
【事後学習】2時間
授業で説明したキーワードを自分の言葉で説明できるようにしていこう。また,ニュースなどの労働問題を理解できるよう前期で学んだ理論を応用してみよう。
第16回現代日本の雇用システム1日本における官僚制的統制システムとしての日本型雇用契約の特徴について説明します。
【事前学習】2時間
スライド7(1〜10)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについて説明できるようにしておこう。
第17回現代日本の雇用システム1日本型雇用の特徴の一つである職能資格給制度の雇用主にとっての利点と問題点について説明します。
【事前学習】2時間
スライド7(6〜17)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
職能資格旧制度と諸外国のジョブ型賃金システムとの違いについて説明できるようにしておこう。
第18回現代日本の雇用システム3日本企業が職能資格給制度から成果主義賃金へと転換しようとした背景とその結果について説明します。
【事前学習】2時間
スライド7(18〜43)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
多くの企業で成果主義賃金導入はうまくいかなかった理由について説明できるようにしておこう。
第19回雇用形態の多様化と労働問題11990年代半ば以降,企業が非正規雇用を積極的に活用しようとしていった背景について説明し,さまざまな雇用形態のうち,初期の段階で社会問題となった請負労働と「フリーター漂流」について紹介します。
【事前学習】2時間
スライド8(1〜18)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
請負労働の特徴と問題点について説明できるようにしておこう。
第20回雇用形態の多様化と労働問題2労働者派遣法が規制緩和されていった経緯とリーマンショック後の派遣切りの実態について説明します。
【事前学習】2時間
スライド8(19〜32)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
労働者派遣法改定のポイントが説明できるようにしておこう。
第21回雇用形態の多様化と労働問題3非正規雇用の中で最も多いパート労働の実態と問題点,正規雇用との均等待遇について説明します。
【事前学習】2時間
スライド8(33〜58)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
「均衡待遇」とは何か,均等待遇実現に向けてどのような取り組みが必要かについて整理しておこう。
第22回雇用形態の多様化と労働問題4均等待遇に取り組んでいる企業の事例について紹介します。
【事前学習】2時間
スライド8(59〜65)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
均等待遇に取り組む企業の事例のポイントについて整理していこう。
第23回雇用と失業1失業の概念と統計的に計測する方法について説明し,失業の推移について確認します。
【事前学習】2時間
スライド9(1〜11)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
失業とはどのような状態を指すのかを正確に理解しよう。
第24回雇用と失業2失業と賃金および利潤との関係についてマクロ経済学的な視点から考察します。
【事前学習】2時間
スライド9(12〜23)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
マクロ経済的な失業と前期で説明した素朴な労働市場のイメージとの違いについて理解しよう。
第25回最低賃金制度と労働者の生活保障1日本の最低賃金制度と最低賃金制度の国際比較
【事前学習】2時間
スライド10(1〜8)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
最低賃金制度の目的,最低賃金の決定方法について理解しよう。
第26回最低賃金制度と労働者の生活保障2最低賃金引き上げをめぐる理論的および実証的研究動向について説明します。
【事前学習】2時間
スライド10(9〜18)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
最低賃金引き上げの効果に関する異なる見解と実証研究の結果について理解しよう。
第27回労働市場を巡る制度改革の展望1労働市場制度の諸課題を踏まえ,改革案について諸外国の労働市場制度と比較しながら考察します。はじめにアメリカ型の流動的な労働市場政策について検討します。
【事前学習】2時間
配付資料11(1〜19)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
アメリカ型の労働市場政策の特徴と問題点について理解しよう。
第28回労働市場を巡る制度改革の展望2ヨーロッパにおいて取り組まれている労働市場政策のフレクシキュリティ政策について検討します。
【事前学習】2時間
スライド11(20〜33)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
フレクシキュリティ政策の特徴について理解しよう。
第29回労働市場を巡る制度改革の展望3諸外国の労働政策を参考にしながら,日本における労働政策を展望します。
【事前学習】2時間
スライド11(34〜50)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
前期の労働市場に関する理論から後期の日本の雇用システムの現状と課題,諸外国の労働市場政策を踏まえて,労働市場のあり方についてまとめよう。
第30回確認試験と解説授業を通して学んだことの確認試験(80分)および解説(10分)を行う。
【事前学習】5時間
これまでの授業の内容全体を総復習しておいて下さい。
【事後学習】2時間
確認試験の解説をもとに自分の解答を振り返り、間違っていたところは復習しておこう。
授業形式 授業は講義形式で行います。ときどき、授業内にテーマに関連した携帯アンケートを実施したり、授業内または宿題としてレポート提出を求めます。これにより、授業の理解を深めます。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
80% 10% 10% 0% 0% 100%
評価の特記事項 4年生,保体審の学生を特別扱いすることはありません。Web上で講義資料を配付しますから,授業に欠席した場合は各自学習してください。本講義の履修者はこのシラバスの内容に合意したものとみなします。
テキスト テキストは使用しません。授業用スライドを講義用Webページ(授業で告知します)からダウンロードできるようにしますので,事前に印刷し関連部分に目を通して授業に臨んでください。
参考文献 Bowles, Edwards and Roosevelt Understanding Capitalism, 3rd. Edition, Oxford.
小野旭『労働経済学』東洋経済新報社.(2,200円)
オフィスアワー(授業相談) メールでの質問も直接に相談に来る場合も、随時受け付けています。質問がある場合は必ず事前に電子メール(アドレスは授業時に告知します)等でアポイントを取ってください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 本講義では労働問題を理論的に把握することを目指しますが、労働問題はアルバイト等で働いているみなさん自身,あるいは家族などに関係する身近な問題ですから,そうした問題に引きつけて考えるようにしてください。
授業用URL http://murasemi.com/lectures/labor-econ/