講義名 社会保障論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水5
単位数 4

担当教員
氏名
高智 英太郎

学習目標(到達目標) 以下の能力・技術を身につけることをめざします。
1.日常的に使用する「社会保障用語」の意味を理解し、説明できること。
2.身近にあるさまざまな問題を〈社会政策的な視点〉から捉えることで、マスメディアが発信するニュース・社説・論説・解説の骨子構図を簡潔に説明できること。
3.社会保障制度の基盤を形成する「社会保険5制度」の役割と機能、持続安定性をいかに確保していくべきか、加えて『全世代型の社会保障制度』をどのように構築していくべきか、簡潔かつ論理的に説明することができる水準を目指します。
授業概要(教育目的) 社会保障制度の初学者を対象として、わが国社会保障制度の中核を占める社会保険5制度(医療・年金・雇用・労災・介護)の存在と実施運営上の問題点を明らかにする。「社会保障」の位置づけは「社会政策」を屋根に例えたもので、社会保障の屋台骨を支えるのが社会保険各制度の仕組みだ。近年、負担と給付のバランス維持の観点からも「全世代型の社会保障制度」への転換が議論されている。後期高齢者医療制度の改革、要介護時の利用者負担引上げ、年金受給開始年齢の変更など政策課題は目白押しだ。外国制度の実例に触れる国際比較検討の手法も交え、わが国社会保障論の本丸議論へと踏み込んでいくことを目的とします。
授業計画表
 
項目内容
第1回『社会保障論』:イントロダクション講義の内容、講義の形式、評価方法、履修上の注意点を説明する。更に、身近な問題を社会政策的視点から捉えて考える技術と論法、比較的新しい学問領域である「社会保障論」の特徴、時局の政策課題、外国制度の実際に触れる意義等についてポイントを説明します。
【事前学習】2時間
【事後学習】講義中に出てきたキーワードを専用ノートに書き留め、理解の継続を確実にしましょう。次回テーマのレジュメを配付するので、要旨を把握しておくこと。(2時間以上)
第2回社会保障制度をめぐる変遷と現状


社会保障制度審議会(首相の諮問機関=当時)が示した『勧告』(1950年10月)、国民皆保険制度の達成(1961年度)、介護保険制度の創設(2000年度)まで、給付拡大の経緯と意義、新たな政策課題について説明します。
【事前学習】テキスト該当箇所「社会保障の概念整理」をよく読んでおくこと。(2時間以上)
【事後学習】アメリカ社会保障法(1935年)の輪郭をレジュメ(別途配付)を通じて理解し、法の趣旨も把握しておくこと。social securityとsocial protection
それぞれの用語の使用方について確認しておくこと。
(2時間以上)

第3回社会保険制度
⓵ 医療保険制度
公的医療保険制度の歴史、制度の変遷、給付拡大と患者一部負担の引上げ、国民医療費の高騰、被保険者と保険料、保険者について説明します。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】キーワードを忘れないよう、独自開発のテイクノート技術とノウハウを研磨しておきましょう。キーワードの「国民医療費」を各自で研究して下さい。
(2時間以上)
第4回社会保険制度
➁ 医療保険制度
現物給付と現金給付、診療報酬と薬価基準、医療提供体制の概要を取り上げます。医療費適正化・ムダ排除等の視点からは「医療制度」「診療報酬」「医療提供体制」を結ぶ三角形(理想は正三角形)が持つ重要な意味合いを制度の持続可能性の視点から重点的に説明します。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間)
【事後学習】診療報酬(1点10円)改定(2年に1回)を審議する中央社会保険医療協議会(中医協)の委員構成・役割・機能の輪郭を把握しておくこと。(2時間)



第5回 高齢者医療制度高齢者の医療費は誰が負担している? なぜ、高齢者だけ特別な制度が必要か(外国との比較検討も)、後期高齢者医療の財政、前期高齢者の財政調整の仕組みについて、テキストにて概要を理解できるよう説明します。
【事前学習】「2025年問題」とは何か、どのような波及影響が予想されうるか、箇条書きにしておこう。
(2時間以上)
【事後学習】⓵後期高齢者の患者一部負担割合を未就学児のそれと較べて言えることは何か、➁「後期高齢者医療保険」といわない理由をそれぞれ挙げて下さい。
(2時間以上)
第6回社会保険制度
⓷ 介護保険制度
最新(2000年度創設)の社会保険制度が介護保険である。介護サービスを保障する仕組み、保険者(=実施運営機構)、被保険者と保険料、保険給付、介護提供体制の実際について概要を理解できるよう説明します。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】急速な高齢化進展による給付内容の変更、要介護認定にどう対応すべきか、自論を展開して下さい(2時間以上)


第7回社会保険制度
⓸ 介護保険制度
「権利保護」の観点から、介護サービス利用者の権利を守る仕組みについて理解する。介護保険審査会、苦情解決制度、成年後見制度の概要を説明します。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】社会保障審議会の介護保険部会及び介護給付費分科会の審議動向を厚労省H/P(議事概況)から追ってみましょう。多彩な意見が確認できますが、集約する視点で読破していくと、別の問題が見えてくるはずです。⇒ 対象月日の議事録は講義中に指示します。
(2時間以上)


第8回社会保険制度
➄ 年金保険制度
老後所得保障のカナメとなる年金制度を学習します。
全2回で制度全容の骨子を説明します。初回は、長期に生活費を得られなくなったら?という設定で、年金の種類、保険者、保険料と年金(受給)額の関係、国民年金と厚生年金の被保険者について説明します。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】同、「図⁻年金制度」をテキスト本文併読により理解しましょう。外国の年金受給開始年齢の変更、人口構造変容に関する参考資料を読んでおきましょう。(別途指示します。)(2時間)










第9回社会保険制度
➅ 年金保険制度
年金制度の財政方式、障害年金、遺族年金、年金の業務体制、企業年金等についてそれぞれポイントを説明します。また、「20歳未満で障害者になった人」はどうなるか?昼間部の大学生を例に若干深く考察してみます。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】⓵テキスト中にあるColumn(コラム)欄をていねいに読破しておこう。➁過去に大きな政治問題にもなった「消えた年金の顛末」を各自で探っておこう。
(2時間以上)

第10回社会保険制度
➆ 雇用保険制度




失業時に所得を保障する仕組みについて学習します。
他の社会保険制度との比較で相違が認められる点を説明します。更に失業の概念、リスクの本質と特徴を把握します。元気な人でも受給対象となる可能性があることの根拠を考察し、理解します。更に、多様な手当(給付)に触れ、当該制度の役割・機能の認識へと繋げます。
【事前学習】テキスト該当章(Column含む)を粗読みしておくこと。手当中心の現金給付である点がだいじです。(2時間以上)
【事後学習】「図‐雇用保険制度の概要・体系」と「表‐基本手当の給付日数」の骨子を本文併読で理解しましょう。(2時間以上)


第11回⓼ 労働者災害補償(労災)保険制度業務上(働く場)の事故について補償する仕組みを学習します。「保障」ではありません。当該保険はほかの社会保険とどこが違うか認識し、事業主の災害補償責任、労災保険の特殊な性格と社会保障の性格、保険者は国であることを確認した上で「適用事業と保険料」「業務上または通勤による災害認定」「保険給付」「社会復帰促進事業」のポイントを把握します。
【事前学習】テキスト該当章を粗読みしておこう。 (2時間)
【事後学習】「同、表‐労働基準法、労災保険法と社会保険各法の給付対比」及びColumnの内容を理解しておきましょう。(2時間)
第12回 生活保護制度と社会福祉制度社会保険以外の2つの仕組み「生活保護と社会福祉制度」を学習します。前者では、最低限度の生活に困ったら?の設定で、⓵対象者と財源、➁給付要件、⓷保護基準、⓸給付の程度、➄給付内容、➅実施主体、➆自立の助長と生活困窮者自立支援について説明します。「最後のセーフティネット」がキーワードです。後者では、高齢者や障害者・(待機)児童等を対象とした多様な福祉の実態を説明します。生活保護とは別の制度設計によるものである点を確認し、⓵給付種類と内容、➁制度の実施主体、⓷給付の仕組み3区分、⓸サービスの提供主体についても学習します。
【事前学習】テキスト該当章を粗読みしておくこと。
(2時間)
【事後学習】多数のキーワードを再度確認しておきましょう。(2時間)


第13回 中央社会保険医療協議会等の審議と周辺課題

保険での医療サービスの値段はどう決まる? 診療報酬点数表を決めるルール、薬価基準、診療報酬請求の審査支払いの仕組みを説明します。診療報酬改定を審議する中医協の動向についても概観、把握します。
【事前学習】社保審・医療保険部会及び医療部会の役割機能についてレジュメで把握、理解しておくこと。最終的な報酬改定率は政府が決定することも忘れずに。
(2時間)
【事後学習】国の医道審議会の役割機能と活動実態を参考資料(別途配付予定)から把握しておくこと。
(2時間以上)
第14回2019年通常国会における社会保障制度関連法案の審議状況ことし1月から150日間の会期で開かれた通常国会。衆参両院の厚生労働委で審議に付された法案の審議経過・結果を振り返ります。医療・介護・年金・子ども子育て、働き方改革等に関連する事案が対象です。
【事前学習】日刊紙社説・記事に目を通しておくこと。(折りに触れて別途紹介します)(2時間以上)
【事後学習】国会及び関連審議会の審議状況を議事録から検証してみましょう。(別途指示します)(2時間)
第15回 確認試験と解説前期講義を通じて学習したことの確認試験(60分)及び解説(30分)を行います。試験は「前期B試験」として実施します。試験場にはテキスト、自筆の『社会保障論』専用のノートブック、講義中に配付した資料は持ち込んで差支えありません。
第16回 後期開講のイントロダクション前期B試験の結果を講評します。希望者には解答用紙を返却します。後期講義の特色、レポート等加点評価について再度説明します。
外国の制度をどのように学習したらよいか、参考サイトや厚労省、国立国会図書館、医療保険者などの定期刊行物を紹介します。自用の専用ノートに書き留めておきましょう。
【事前学習】後期分シラバスを改めて通読し、ポイントを押さえておきましょう。(2時間)
【事後学習】専用ノートブックは更新しましたか?活用の仕方に工夫を加えていきましょう。来週学習する「民間保険」をテキストから予習しておきましょう。
(2時間以上)
第17回 社会保険と民間保険社会保険と民間保険とはどこが違うか?の問題意識で臨みます。そして、社会保険は保険の仕組みといえるかを改めて検討します。更に、⓵民間保険との共通点、➁社会保険と公的扶助の違いをテキストの図・表から理解します。更に、民間保険の種類(生命保険と損害保険)と働きについて概観しつつ、保険契約者の保護、保険事業の運営・監督についても説明します。
【事前学習】テキスト該当章1.保険の仕組みを粗読みして理解を深めておきましょう。(2時間)
【事後学習】テキスト中のColumnからアメリカの医療の問題(1頁分)を熟読しましょう。
(アメリカ民間医療保険では家族の人数分保険商品を購入することになります。日本ではどうでしょう?)
(2時間)

 
第18回 世界の社会保障の歴史基本は、テキスト第8章1を素材に学習します。
「現代の社会保障という大河の源流」を辿ります。その上で、⓵救貧法の流れ、➁リベラル・リフォーム、⓷社会保険の流れ、⓸世界恐慌から第2次世界大戦へ、➄戦後の世界の社会保障の歩みについて、テキスト及びメディア発信の記事をベースに学習、理解を深めます。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間)
【事後学習】高齢者医療(ターミナルケア)のパターンをいくつかの国を決めて、実際の政策やケアの実際を比較検討してみましょう。(2時間)
第19回 日本の社会保障の歩み
~明治期から平成の終わりまで~
基本は、テキスト第8章2を素材に学習します。
「今の日本の仕組みは、どんな蓄積のうえに立つのだろう?」との視点から、⓵明治期、➁大正期、⓷昭和初期:第2次世界大戦終結まで、⓸昭和20年代:戦後の混乱期からの復興、緊急対策―(中略)―➆平成の時代:社会保障の再編成までをスコープし、変遷のポイントを把握します。
【事前学習】テキスト該当箇所を粗読みしておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】国民皆保険制度の達成を評価してみよう。
(時代背景、適用対象、給付概要を考えて)(2時間以上)
第20回 「全世代型社会保障」の理想と実態「社会保障制度の恩恵は高齢者にとどまるものではない!」。高齢者医療、高齢者介護、老齢年金といった具合に、若年層や壮年層対象の施策が見当たらないという不満が表面化しています。「子ども・子育て」や「働き方改革」などの〝新種目″の給付を長期かつ、内容をともなって実施していくには新たな財源と現行制度の見直しが不可欠です。「全世代型社会保障の理想と現実」と題して、フロアの受講生同士と講師を交えた討論の場を設定します。自由闊達に課題提示・解決策の具体案・展望等を述べて下さい。
【事前学習】今回討論のための準備をして下さい。
(2時間以上)
【事後学習】討論の結果を踏まえ、自由に標題設定してレポートを作成して下さい。(2時間)
第21回 外国の社会保障制度
⓵ ドイツの公的医療保険(GKV)と民間医療保険(PKV)
鉄の宰相の異名を持つオットー・フォン・ビスマルクがつくった疾病(医療)保険制度の歴史は1883年まで遡ります。日本の公的医療保険制度のモデルとされた経緯もありますが、現在では両国の医療保険制度は格段の相違が認められるところです。ドイツの公的医療保険の給付概要、患者一部負担と適用経緯、保険料率及び特別保険料の推移、医療提供体制と診療報酬の仕組みについても説明します。
【事前学習】指示した資料の内容を把握しておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】ドイツ医療保障専門家の短論文を読んでおくこと。(別途指示します)(2時間以上)
第22回 外国の社会保障制度
➁ ドイツの公的介護保険制度と民間介護保険制度
旧東西ドイツに分断されていた1970年代半ばから議論が開始された「介護(Pflege)」の問題。「保険方式」「税金方式」「両者のミックス方式」などの財政方式のあり方等が20年を超えて続けられました。H.コール首相の時代、1995年1月から施行の「公的介護保険制度」誕生までの議論を振り返るなかで、「社会で支える介護の問題」の実像を明らかにし、日本の制度との比較検討を行います。民間介護保険の存在と加入者、給付内容などポイントが分かる資料を提供します。
【事前学習】指示した参考資料に目を通しておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】法施行後3ヵ月間、保険料負担を課しながら「施設介護の給付なし」(1995.1~3)とした理由と妥当性について考えてみよう。(2時間以上)


第23回 外国の社会保障制度
⓷ フランスの公的医療保険制度を中心に
フランス医療保障制度を幅広に説明します。
同国は日本と同様、医療保険制度を採用して医療サービスを展開しています。講義では制度の概要、保険給付、医療提供体制(保健医療従事者の縦割り開業)、医薬品にかかる患者一部負担の実施状況、終末期医療の実態などについて若干詳しく説明します。
【事前学習】フランス医療保障専門家の短論文を粗読みしておくこと。(別途指示します)(2時間以上)
【事後学習】フランスの合計特殊出生率の数値推移を関係資料をもとに評価してみてください。(2時間以上)
(乳幼児対象の多様な手当、幼稚園の普及などに着目)
第24回 外国の社会保障制度
⓸ イギリスの公的医療保障制度(NHS)を中心に
イギリス(連合王国)の保健医療制度の大きな特徴の1つは、主たる財源を租税としてNHS(国民保健サービス)を通じて国民に提供していることです。プライマリ・ケアから治療、リハビリまで包括的に医療サービスを原則無償で受けられるとされますが、実際のところはどうなのか?専門家の短論文を手引きとして学習します。
【事前学習】専門家の短論文をサイトから取り出し、印刷しておくこと。(別途指示します)(2時間以上)
【事後学習】患者自己負担の実際を再確認しておくこと。(2時間)
第25回 外国の社会保障制度
➄ 北欧諸国の医療保障制度を中心に
北欧4ヵ国(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク)の医療提供体制(施設・保健医療従事者人員)、法定給付(外来・入院)、患者自己負担について説明し、4ヵ国間の比較検討を行います。参考文献として英語の添訳のある「北欧統計年報」を紹介、活用します。
【事前学習】国土面積に比して人口が少ない北欧諸国の遠隔医療技術の普及と患者満足度について各自、可能な範囲でわかった事実を箇条書きにしてみましょう。
(2時間)
【事後学習】高齢者の終末期医療に北欧の国々ではどのように向き合っているのか、レポート作成の対象に加えてみて下さい。(2時間以上)
第26回 国際機関の社会保障政策とデータ発信の実際
 ~ISSA,OECD,WHO,ILO,EU~
国際社会保障協会、経済協力開発機構、世界保健機関、国際労働機関、欧州連合における近年の社会保障制度の向上発展を期した諸施策の実際について学習します。
【事前学習】OECD(本部=パリ市)から適宜公表されるOECD Health Data の最新版(英語)をサイトから取り出し、加盟国の「医療費の対GDP比(%)」数値を印刷しておきましょう。(2時間以上)
【事後学習】WHO(本部=ジュネーブ)による『憲章』では《健康に関する高い理想》が掲げられている。その核となるエッセンスを箇条書きにして下さい。
(2時間)
第27回 主要国にみる社会保障制度統計の実際
⓵ ドイツの公的医療保険関連データ(統計表)事例
ドイツ公的医療保険制度全般にわたる基本統計を素材に学習する。GKV-Spitzenverband(公的医療保険中央連合会)から発信される定番資料のポイントを学習します。「論理的でとても美しい」と評判の統計技術についても眼前の実物で確認します。統計表のみならずGraphik(グラフ)についても同様とします。
【事前学習】ドイツ連邦保健省サイトから指示した資料を取り出し、印刷しておくこと。(別途、指示します)
(2時間以上)
【事後学習】同上からの原資料の内容を確認しておくこと。こと(別途指示します)(2時間以上)
第28回 主要国にみる社会保障制度統計の実際
➁ ドイツの公的介護保険制度関連データ(統計表)事例
ドイツ公的介護保険制度の給付一覧(ドイツ連邦保健省)を詳説します。その上で、同制度の給付受給者の状況を年齢階級別にみた統計(同)及び財政収支統計を検分、評価します。幼児や青少年でも給付受給が可能である点や金銭給付の存在など日本との相違も学習します。
【事前学習】講義で用いる資料を予め紹介します。ドイツ連邦保健省サイトから取り出し、印刷しておくこと。
(2時間以上)
【事後学習】23歳以上の子どものいない被保険者に課される「追加保険料」(0.25%)の是非について考察してみましょう。(2時間以上)

第29回 現在の社会保障の課題と今後の展望

後期講義を総括する。とくに、「高齢者は弱者か?」が1つの問題として提起されているが、〈全世代型社会保障制度の構築〉について、その可能性を分野・領域別に展望する。政治家の側は、総じて「高齢者の投票ビヘイビアを無視できない」として、後期高齢者の患者一部負担割合の「原則1割」を据え置いてきたが、高齢化の高波に国・地方・保険財政いずれも窮迫する状況にあります。「医療」「介護」「年金」の各制度の基盤を維持していくために不可避の政策手法をとことん追求します。
【事前学習】テキスト第8章該当箇所を粗読みしておくこと。(2時間以上)
【事後学習】財政審資料の内容を確認してみましょう。
 (別途指示。厚労省と財務省の考え方の差に着目!)
(2時間以上)
第30回 確認試験と解説後期講義を通じて学習したことの確認試験(60分)及び解説(2時間)を行います。
【事前学習】「後期B試験」に臨む態勢を整えること。
(各自の判断ではあるが、60分以上が望ましい)
【事後学習】2時間 講師との間で確認しておきたいこと、相談事のある受講生は試験終了後に試験場で受け付けます。
授業形式 主に講義形式で実施しますが、講義時のテーマ若しくは配付資料の内容によっては、フロアの受講生と講師の間で討議する形式を採る場合もあります。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
65% 15% 0% 20% 0% 100%
評価の特記事項 各自「社会保障論専用」のノートブックを準備する。講義中に重要事項に言及することあり。「2回のB試験」では、自筆のノートブックに限り参照可としている。
テキスト 第16版「はじめての社会保障」福祉を学ぶ人へ
椋野美智子・田中耕太郎[著]
有斐閣アルマ(2019年3月末刊行)*)第15版の本体価格は1,800円でした。
参考文献 ⓵外国の社会保障制度:「2018年海外情勢報告」(厚生労働省)[例年3月公表]
➁外国の社会保障制度:「外国の立法」(国立国会図書館 調査及び立法考査局)
⓷外国の医療保障制度:「健保連海外医療保障」(季刊)№121~
 *)上記⓵∼⓷いずれもインターネットから容易に入手できる。



オフィスアワー(授業相談) 水曜日:15:00~16:00。2階講師室を訪ねてください。事前にサウンドしてもらえれば種々の希望を考慮した対応が可能です。遠慮や躊躇は不要です。気軽にアプローチしてみてください。講義終了時のアポとりも受け付けています。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 復習も大切ですが、本講義では「予習優先」で臨むことを心掛けてください。講師は、理解の進行が効率的に運ぶよう講義スタイルの工夫に努めます。受講生は、社会保障制度の課題が国会や関係審議会でどのように審議されているのか、経済紙をはじめ日刊紙に極力目を通すことを習慣にしましょう。関連各制度の「持続可能性・安定性」や「負担と給付のバランス」にも着目し、「他人ごと」の視点ではなく、「自分自身の問題」という意識で政策課題の解決手法を考察することが肝要です。外国や国際機関における社会保障制度の見直しや改革に関する生資料や適用・給付統計(写)についても添え訳を付した解説を企画しています。