講義名 アジア経済史 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 火5
単位数 4

担当教員
氏名
今井 就稔

学習目標(到達目標) 「日本のなかの中国」・「中国のなかの日本」―社会経済史からみた日中関係のあゆみ、というテーマで、中国経済の歴史と中国社会の特徴について考察します。とくに日本との関係を意識しながら進めますので、高校の世界史を履修していなくても、また歴史科目は暗記事項が多くて嫌になってしまった経験のある人も、興味のある方は参加を歓迎します。
目標は、両国の関係がぎくしゃくしている現在、改めて中国社会や日中関係について冷静に考えることができるようになることです。
授業概要(教育目的) 通年科目で長丁場なので、以下のようにおおまかなテーマを設定しようと思います。
夏学期…「日本のなかの中国」 華僑の歴史について、その移民や中華街の形成などについて、日本の中華街の事例などにも言及しながら考えていきたいと思います。
冬学期…「近代日本における人の移動と中国」 上海や満洲への日本人移民と、現地社会との関わりについて考えていきたいと思います。
 バランスよく日中関係を考えられるようにすることが目的です。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス華僑史のとらえ方 授業の進め方について アンケート
第2回中国社会の原理中国社会における人々の結びつき 相互扶助のしくみを考える 
第3回中国社会における移住中国社会にも移住、移民の歴史がある。移住を促した要因を当時の社会背景のなかで考える。
第4回大量出国の時代移住の歴史のうち、東南アジアや北米への移住を中心として、それまでよりも大きな規模で生じた現象を、19世紀の世界変動の中で考える。
第5回現地社会における華僑移住したあとの華僑の現地社会における変容と同化の過程について。
第6回長崎の唐人屋敷この回からは日本における華僑の形成の話となり、まずは江戸時代の唐人屋敷の成立と唐船貿易、現在にまで残る華僑由来の文化について紹介する。
第7回開港と日本華僑の形成明治以降、神戸横浜を中心に形成された中華街と日本華僑の形成過程について考察する。
第8回中国商人と日本中国商人の日本進出・貿易の拡大と日本社会の側との関係について考察する。
第9回近代日本の外国人管理外国人、とくに華僑の増加による当時の政府の入国コントロール政策から考える。現代の外国人労働者受け入れにも通底する視点が提起される。
第10回植民地の形成と華僑日本帝国の膨張とそれにともなう華僑の位置づけの変化について考察する
第11回在日留学生清末、1900年代初頭に、中国から日本へ留学する人々が増加した。その事情と日本での生活について考察する。
第12回国民国家の形成と国籍問題戦前から戦後にかけての華僑の国籍問題について考える。とくに植民地の喪失と帝国の解体が華僑にとってもった意味について考察する。
第13回老華僑・新華僑1980年代以降に日本にやってきた新しいタイプの華僑について考察する。
第14回理解度の確認これまでの要点のまとめ。
第15回中間のまとめまとめ 小テストを実施する
第16回後期ガイダンス前期とは逆に、日本から海外への移住した日本人移民を近代日本のあゆみとともに考える。概説的な話をしながら後期の授業のテーマを説明する。
第17回北海道移民開拓使の設置、アイヌとの関係などを中心に、明治初期以降、本州から北海道に渡った人々に注目する。
第18回ハワイ・北米への日本人移民華僑の移民・移住とも重ね合わせながら日本人のハワイ・北米への考える
第19回南米移民主にブラジル移民を中心として南米移民への流れを考える。
第20回植民地と日本人移民 1台湾・朝鮮半島の植民地化に伴って植民地に移住した人々の構成について2回にわたって考える。
第21回植民地と日本人移民 2前回の続き
第22回上海社会と日本人 1国際都市上海には戦前から日本人が多く移住した都市であった。とくに紡績業を中心とした日本企業が上海に進出すると、それにともなって企業の日本人社員が上海に住むようになり現地社会との関係も生じた。いくつかの事例をもとに2回にわけて考える。
第23回上海社会と日本人 2前回の続き
第24回満洲と日本人 1満洲は中国東北地域にあたる。この地域は1932年に「満洲国」がつくられるなど、日本とは深い関係にあり、さまざまなかたちで現地に移住した日本人がいた。現地の「開発」や戦時期の国策移住などを2回に分けて考える。
第25回満洲と日本人 2前回の続き
第26回樺太・南洋群島への移民現在ではあまり注目されていないが、北方の樺太や南方の南洋群島へも日本人が移住している。いくつかの事例にもとづき、これまでの授業で扱った他の地域への移住との比較で考える。
第27回引き揚げ・残された課題 1アジア太平洋戦争が終わると、多くの人々が日本本土へと帰国することになるが、その過程は決して順調なものではなかった。復員・引き揚げをめぐって生じたさまざまな問題を考える。
第28回引き揚げ・残された課題 2中国残留日本人の形成について考える。
第29回理解度の確認16回以降の要点のまとめ
第30回まとめ授業内のテストを実施する
授業形式 講義形式で行います。が、授業中に感想をかいてもらったり、手を動かしてもらう作業もあるかもしれません。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
40% 20% 40% 0% 0% 100%
評価の特記事項 小テストとは夏学期の最後の確認テスト、定期試験とは1月最後の授業のものです。レポートは夏休みの課題として出す予定。やる気のない人まで授業に来ておしゃべりをするので出席はとりません。
テキスト 使用しません。プリントを配布します。
参考文献 毎回授業で配るプリントにて紹介します。
全体的なものでは
・可児弘明他編『華僑・華人事典』弘文堂、2002年
・吉原和男他編『人の移動事典:日本からアジアへ・アジアから日本へ』
オフィスアワー(授業相談) プリントにメールアドレスはいつも書いてありますから、なにかありましたらお気軽にどうぞ。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ ・私語、携帯電話の使用はやめてください。出席はとりませんので、授業にはやる気のある人だけ参加するようにしましょう。
・4月の初回のガイダンスで細かなお願いやきまり、試験について説明します。昨年と変更する点も多々あるので、授業や成績評価全体の「評判」を先輩から聞いて受講しようとしている人はあまり参考にならない点を注意してください。