講義名 情報経済論 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月5
単位数 4

担当教員
氏名
野中 康生

学習目標(到達目標) 1.不確実性や情報の非対称性を伴う市場で発生する問題についてその原因や発生の仕組みを説明できる。
2.上記の問題に対して情報の経済学的な視点から有効な解決策を提示できる。
3.WEB上で実施する実習に取り組む事で、講義内容への理解を深めることができる。
授業概要(教育目的) 本講義で現実の経済活動(市場取引)に伴う情報の問題を経済学的視点から考えます。授業では具体的な事例を取り上げながら,情報の不完全性や非対称性、不確実性といった情報の問題が経済活動に与える影響を明らかにし、その解決策について考えます。
前期の授業では電子商取引、後期の授業では就職活動をそれぞれ学期を通した事例として扱います。これらの活動において我々がどの様な情報の問題に直面しているのかを確認します。そして、それらを解決する上で有効な方法何かを理論的に考察します。更に、本講義では授業と平行してWEB上での実習を行い、授業内の理解の向上を図ります。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクションシラバスの無い様に基づき、本年度の授業内容、成績評価方法、履修上の注意点、および前期の実習内容について説明します。

【事前学習】2時間
 シラバスの内容を良く確認しておいて下さい。
【事後学習】2時間
 説明した内容をよく確認した上で、履修するかどうかを判断してください。
第2回電子商取引と情報の経済学1) 電子商取引に関する基本的な知識を確認します。
2) 電子商取引における情報の問題について考えます。

【事前学習】2時間
 日常の経済活動において、どんな情報のやり取りをしているかを考えてみましょう。もし、その様な情報のやり取りができない場合、どんな問題が発生するか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、自身にとって身近な経済活動における情報の役割について確認して下さい。
第3回不完全情報と取引費用1) 情報の不完全性と取引費用について学習します。
2) 取引費用の概念を用いて電子商取引と直接的な商取引とを比較します。

【事前学習】2時間
 実店舗に商品を買いに出かけたとき、商品の代金以外でどの様な費用が発生するかを考えましょう。その際、金銭による直接的な支出以外にどの様な費用が発生しているかを考えましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、店頭での直接取引とECを比較し、発生する取引費用の違いを確認して下さい。
第4回契約後の問題: モラルハザード1) 情報の非対称性の定義を確認します。
2) モラルハザードと情報の非対称性との関係について学習します。

【事前学習】2時間
 インターネットで商品を売買する際、どの様な問題が発生するかを考えてみましょう。また、それらの問題が発生する原因についても考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、モラルハザードが発生する理由と情報の非対称性との関連について確認して下さい。
第5回契約前の問題:逆選択1) 逆選択について学習します。
2) 市場取引でモラルハザードが逆選択につながるメカニズムを確認します。

【事前学習】2時間
 市場で取引が成立する条件に付いて考えてみましょう。モラルハザードの危険性がある市場では、買い手の行動はどう変化するか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、逆選択が発生する仕組みについて再度確認して下さい。
第6回リスクと不確実性1) 不確実性と期待値の考え方を学習します。
2) 期待値を用いた個人の意思決定を学習します。

【事前学習】2時間
 将来の結果が確定的でない状況では、何を判断基準として自身の行動を決めるかを考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえて、期待値の計算方法について再度確認してください。
第7回情報の非対称性への対策1) 情報の非対称性に対する基本的な対策について考えます。
2) 電子商取引における対策の具体例を確認します。

【事前学習】2時間
 実際のECではどの様なトラブル対策がなされているかを調べてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報の非対称性の観点から、トラブル対策の有効性について再度確認してください。
第8回標準型ゲーム入門11) ゲーム理論の基本的な知識を確認します。
2) 最適応答戦略について学習します。

【事前学習】2時間
 他の授業でゲーム理論について学修した方は、その内容をおさらいしておきましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、プレイヤー・戦略・利得について再度確認してください。
最適応答戦略の意味とその求め方について再度確認して下さい。
第9回標準型ゲーム入門21) 支配戦略均衡について学習します。
2) ナッシュ均衡について学習します。

【事前学習】2時間
 プレイヤーが互いに最適応答戦略を選んでいる場合、ゲームはどの様な状況にあるか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、各均衡の定義とその求め方について再度確認して下さい。
第10回封印入札の分析11) 第一価格方式の封印入札についてゲーム理論的な視点からの考察を行います。
2) 封印入札の導入事例と問題を考えます。

【事前学習】2時間
 ゲーム理論的な視点で考えた場合の第一価格入札における最適な入札行動について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報が対称的である場合の第一価格入札の均衡について再度確認してください。情報が非対称となる場合、均衡がどの様に変化するか再度確認して下さい。
第11回封印入札の分析21) 第二価格方式の封印入札についてゲーム理論的な視点からの考察を行います。
2) 入札談合対策として第二価格方式が果たす役割について考えます。

【事前学習】2時間
 ゲーム理論的な視点で考えた場合の第二価格入札における最適な入札行動について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報が対称的である場合の第二価格入札の均衡について再度確認してください。また、情報が非対称となっても均衡変化しない理由を再度確認して下さい。
第12回公開入札の分析11) 価格引き上げ方式の公開入札についてゲーム理論的な視点からの考察を行います。
2) 一般的なネットオークションにおける最適な戦略を考えます。

【事前学習】2時間
 ゲーム理論的視点で考えた場合の英国式オークションにおける最適な入札行動について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報が対称的である場合の英国式オークションの均衡について再度確認してください。情報が非対称となっても均衡変化しない理由を再度確認して下さい。
第13回公開入札の分析2
前期レポート課題の説明
1) 価格引き下げ方式の公開入札についてゲーム理論的な視点からの考察を行います。
2) 各オークションの分析結果を比較・検証します。
3) 前期WEB実習のふりかえりを行います。

【事前学習】2時間
 ゲーム理論的な視点で考えた場合のオランダ式オークションにおける最適な入札行動について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報が対称的である場合のオランダ式オークションの均衡について再度確認してください。また、情報が非対称となる場合、均衡がどの様に変化するか再度確認して下さい。
第14回前期WEB実習の振り返り1) WEB実習を踏まえた前期のレポート課題について説明します。
2) 前期授業の総括として小テストを実施します。

【事前学習】2時間
 サポートサイト上で自分自身の実習結果について確認しておきましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、自分自身の実習における取り組み状況を振り返り、レポート課題についての理解を深めてください。
第15回中間のまとめと第1回小テスト1) 今学期の授業内容を振り返ります。
2) 前期授業の総括として小テストを実施します。

【事前学習】2時間
小テストに備え、これまでの授業内容及び練習問題について再度復習してください。
【事後学習】2時間
 今学期の授業全体を振り返り、課題レポートに取り組んで下さい。
第16回労働市場と情報の問題
後期WEB実習について
1) 労働市場への参入としての就職活動の目的と位置付けを確認します。
2) 後期WEB実習の内容について確認します。

【事前学習】2時間
 大学生が取り組む就職活動にはどのような特徴がみられ、経済学的な視点から見た場合、どの様な問題が存在するか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、後期の実習内容についてしっかりと確認して下さい。
第17回新卒労働市場と情報の非対称性1) 本年度の新卒採用の状況を概括します。
2) 採用側の視点に立ち、新卒採用の労働市場における情報の問題を確認します。

【事前学習】2時間
 大学生の就職活動を採用する企業の視点で見たとき、どの様な問題があるか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、新卒採用特有の情報の問題について再度確認して下さい。
第18回契約後の問題:労働市場のモラルハザード1) 買い手(雇用主)側から見た労働市場のモラルハザードを確認します。
2) モラルハザードが発生する原因を理解します。

【事前学習】2時間
 アルバイト従業員の不適切な動画の投稿等、採用した従業員の問題行動はなぜ起こるのか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、労働市場でモラルハザードが発生するメカニズムを再度確認して下さい。
第19回モニタリングとインセンティヴ契約1) モニタリングと実施上の問題を確認します。
2) インセンティヴ契約と誘因整合性の関係について考えます。

【事前学習】2時間
 非対称情報下で、どうすれば労働者が適切に働くかを考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、インセンティヴ契約の誘因整合性について再度確認して下さい。
第20回契約前の問題:統計的差別と逆選択1) モラルハザードを踏まえた企業の採用行動について確認します。
2) 統計的差別が逆選択を導くプロセスを学習します。

【事前学習】2時間
 職場における男女の格差の問題はなぜ起こるのかについて考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報の非対称性が統計的差別や逆選択を導くメカニズムについて確認して下さい。
第21回労働市場のスクリーニング1) スクリーニングとは何かを確認した上で、それが私的情報に基づいて求職者を分類できることを理解します。
2) スクリーニングによる採用手段の有効性と問題点について確認します。

【事前学習】2時間
 飲食店のメニューや携帯電話の料金プランなど、消費者自身に契約内容を選択させる仕組みが持つ役割について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、情報を持つ側の自己選択によって私的情報が伝達されるメカニズムについて確認して下さい。
第22回働き方改革と裁量労働制1) 裁量労働制について基本的な内容を確認します。
2) これまでの授業内容を踏まえ、働き方の多様性と情報の問題との関係について考えます。

【事前学習】2時間
 働き方の多様性が労働市場に与える影響について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、労働者自身による働き方の選択から、採用側が労働者の持つ私的情報を判断可能か考えてみましょう。
第23回シグナリングの理論1) 求職者側から私的情報を顕示する手段として、シグナリングの仕組みを理解します。
2) シグナリングが正しく機能する条件を確認します。

【事前学習】2時間
 言葉だけでは正しい情報を伝える事が困難な場合、どの様な行動が有効であるかを考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、シグナルの有無によって私的情報が判断できる理由を確認して下さい。
第24回シグナリング・ゲーム1) シグナリングに関する簡単なモデル分析を行います。
2) 分析結果から,シグナリングの仕組みについて学習します。

【事前学習】2時間
 シグナルを発信する事の費用と便益の比較として求職者の行動がどう決まるかを考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、シグナリング・ゲームの構造と求職者のタイプを判別する仕組みについて確認して下さい。
第25回シグナリングと採用活動1) シグナリングが正しく機能する条件を確認します。
2) 現実の採用活動におけるシグナリングについて考えます。

【事前学習】2時間
 シグナリング・ゲームにおいて、求職者の行動がタイプ別異なる理由を考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、タイプ別の採用が実現する条件について再度確認して下さい。
第26回就職活動の継続問題1) 就職活動行う学生の意思決定と情報の問題の関係を確認します。
2) 内定取得後に就職活動を継続することの費用と便益について考えます。

【事前学習】2時間
 ある企業の内定を獲得した学生は、その後就職活動を続けるでしょうか。続ける場合と終了する場合の双方の理由について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、就職活動を継続する上での費用と便益について再度確認して下さい。
第27回就職活動の継続と留保賃金の変化1) 就職活動継続の純便益と留保賃金の関係を考えます。
2) 新卒者の就職活動における最適停止問題を分析します。

【事前学習】2時間
 就職活動の前半と後半では、学生が直面する状況はどう変化しているか考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、就職活動の継続に伴って留保賃金が変化する理由について確認して下さい。
第28回就活ルールの廃止とシグナルの変化新卒採用における売り手・買い手双方の問題点について再度確認して解決策を考えます。

【事前学習】2時間
 日本的雇用慣行と新卒採用との関係について考えてみましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、就活ルール廃止後の企業の採用行動について考えてみましょう。

第29回後期WEB実習のふりかえり
期末課題レポートの説明
1) WEB実習における情報の非対称性の問題と対策について考えます。
2) 後期レポート課題について確認します。

【事前学習】2時間
 サポートサイト上で自分自身のWEB実習の結果をを振り返っておきましょう。
【事後学習】2時間
 授業内容を踏まえ、自身のWEB実習の取り組み状況を情報の経済学的視点から検証してみましょう。
第30回授業のまとめと第2回小テスト1) 今学期の授業内容を振り返ります。
2) 後期授業の総括として小テストを実施します。

【事前学習】2時間
 ミニテストに備え、これまでの授業内容及び練習問題について再度復習をしておいてください。
【事後学習】2時間
 今学期の授業内容を振り返り、期末課題レポートにしっかりと取り組んでください。
授業形式  授業は毎回90分間の講義形式で行います。黒板への版書は行わず、PowerPointのスライドを表示しながら授業を進めます。
 各回の授業では授業内にで取り組む練習問題を含むリアクションペーパーを作成・提出してもらいます。また、授業外の時間にWEB上での実習に参加してもらいます。
なお、小テストは第15回および第30回の授業時に行います。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 40% 20% 40% 0% 100%
評価の特記事項 WEB実習に不参加またはレポート未提出の場合はレポートの評価がゼロとなります。
授業への参加度は毎回の授業で提出するリアクションペーパーを含めて評価されます。
テキスト 教科書は使用せず、授業内容に応じて適時レジュメを配布します。
参考文献 神戸伸輔 著『入門ゲーム理論と情報の経済学』日本評論社,2700円.
梶井厚志・松井彰彦 著『ミクロ経済学―戦略的アプローチ―』日本評論社,2484円.
横尾 真 著『オークション理論の基礎』東京電機大学出版局,2700円.
細江守紀 著『情報とインセンティブの経済学』九州大学出版会,3024円.
オフィスアワー(授業相談)  授業に関する質問・相談は、原則として授業の前後に教室で対応します。その他、電子メールやサポートサイト上でも対応する予定です。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ  本講義では単なる知識の暗記ではなく、提起された問題を皆さん自身が考え、自ら答えを導くことが求められます。したがって、単位修得の為には継続的に授業に出席するだけでなく、課題や実習に積極的に取組む姿勢が要求されます。もし、授業内容や実習等に不明な点があれば遠慮なく質問して下さい。また、本講義で扱う経済学の基礎的な理論について適宜復習して下さい。
 なお、本講義は授業中の私語やその他の迷惑行為を厳しく禁止しています。違反者には厳しいペナルティを課しますので十分注意して下さい。また、WEB実習への参加はレポートの評価の前提条件となります。必ず実習に参加して下さい。
授業用URL http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~nonaka/neco/index.html