講義名 女性労働論 ≪◇学部≫
講義開講時期 後期
曜日・時限 金4
単位数 2

担当教員
氏名
村上 英吾

学習目標(到達目標) 本講義の課題は,職場における差別の理論を踏まえて,職場における男女差別の実態と差別解消に向けた政策および企業の取り組みについて考察できるようになることを目指します。そのためには以下の能力を身につけることを目指します。
1.職場における経済的差別の理論について説明できる
2.現代日本の職場における女性の地位について説明できる
3.職場の男女平等を実現する意義について説明できる
4.日本における男女平等政策の歴史的経緯について説明できる
授業概要(教育目的) 本講義の課題は、女性労働者をめぐる諸問題およびその政策対応について考察することです。職場における女性の地位は、かなりの程度改善されたものの、全体的にはまだ低位のままです。しかし、政府は長期的に少子化に向かうなかで、女性の労働参加を促そうとしています。そこで、こうした政策の意義と今後の課題について、女性労働の歴史理解と国際比較を通じて考えられるようにすることを目指します。
はじめに、 女性労働の問題を経済学的に分析するための理論的枠組みを解説します。その後、女性労働の歴史、現代日本の女性労働問題、諸外国の女性労働者の労働問題について検討し、これらの問題に対する諸政策について考察します。
授業計画表
 
項目内容
第1回イントロダクション日本における女性の経済的地位に関する「定型化された事実」について統計データにより概観します。
【事前学習】2時間
スライド1を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
統計で示された女性労働者の経済的地位に関する「定型化された事実」の背景について考えてみよう。
第2回男女差別の経済学1(偏見による差別)労働市場における差別の概念について説明し,労働市場差別に関するミクロ経済学アプローチ(偏見による差別仮説)を学びます。
【事前学習】2時間
スライド2(1〜25)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
労働市場差別の概念について,自分の言葉で説明できるようにノートにまとめておこう。また,偏見による差別仮説の理論的特徴について整理しておこう。
第3回男女差別の経済学2(統計的差別)労働市場における差別の概念について説明し,労働市場差別に関するミクロ経済学アプローチ(偏見による差別仮説)を学びます。
【事前学習】2時間
スライド2(26〜39)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
統計的差別仮説の特徴について整理し,偏見による差別との違いについて説明できるようにしよう。また,女性の経済的地位に関する「定型化された事実」について,これらの理論を応用しながら説明できるようにしておこう。
第4回性別役割分業の再生産構造職場の女性差別に関する社会学的アプローチ(ジェンダー論)を学びます。
【事前学習】2時間
スライド3を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
授業で説明された専門用語や職場におけるジェンダー構造の事例について説明できるようにノートにまとめておこう。
第5回労働力女性化の歴史的展開1(近代家族の確立と専業主婦化)資本制経済初期の女性労働者の就労実態から戦後の「労働民主化」における位置付けまでを概観する。
【事前学習】2時間
スライド4を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
戦後の「労働民主化」において女性労働者が保護される存在に位置付けられた経緯について説明できるようにノートにまとめよう。
第6回労働力女性化の歴史的展開2(男女平等に向けた女性たちの戦い)職場における男女差別の実態について,その後の政策展開に影響を及ぼした裁判事例から確認します。
【事前学習】2時間
配付資料4を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
裁判事例から,企業が女性労働者をどのようにみなしてきたかについて理解した上で,労働市場差別の理論でどのように説明できるかについて考察してみよう。
第7回現代日本の女性労働1(職場における男女平等政策)男女雇用機会均等法が成立した国内的および国際的な背景を理解し,均等法および労働基準法の女性保護規定に対する労働者と経営者の考え方の違い,均等法の意義と限界について学びます。
【事前学習】2時間
スライド5を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
均等法に対する労使の利害の違いについて説明できるようノートにまとめておこう。
第8回現代日本の女性労働2(均等法後の女性労働)均等法が女性の働き方に与えた影響と残された課題について学びます。
【事前学習】2時間
スライド6(1〜30)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
均等法の限界と均等法が改正されていった経緯について整理しておこう。
第9回現代日本の女性労働3(均等法の限界)均等法の限界について裁判事例などから明らかにします。
【事前学習】2時間
スライド6(30〜39)を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
均等法による男女平等の限界(間接差別問題、男性の長時間労働の規制)はどうすれば解消できるか考えてみよう。
第10回男女平等に対するバックラッシュアメリカと日本における女性の職場進出への対抗運動(バックラッシュ)について説明します。
【事前学習】2時間
スライド7を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
あなたの身近にあるバックラッシュの事例をさがしてみよう。
第11回企業経営と女性労働者の活用女性労働者の活用状況と企業の収益性の関係に関する実証的な分析を紹介する。
【事前学習】2時間
スライド8を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
事業で紹介された統計分析を読み込み,女性労働者の積極的な活用が収益性にどのような影響を及ぼすかを説明できるよにしよう。
第12回先進国の女性労働日本における女性の社会経済的地位や女性労働者の日本的特徴を国際比較を通じて明らかにする。
【事前学習】2時間
スライド9を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
他の先進諸国に比べて日本の女性労働者がどのような位置にあるかを説明できるようノートにまとめよう。
第13回女性労働をめぐる課題女性労働者を積極活用するために政府が取り組む諸施策の有効性について検討する。
【事前学習】2時間
スライド10を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
女性の労働参加を促すために政府が実施している政策の効果について,労働市場差別の理論を応用しながら考察してみよう。
第14回女性労働をめぐる課題女性労働者を積極活用する企業の事例について検討する。
【事前学習】2時間
スライド10を読んでおいて下さい。
【事後学習】2時間
女性労働者を積極的に登用している企業の特徴と直面する課題についてノートにまとめよう。
第15回確認試験と解説授業を通して学んだことの確認試験(80分)および解説(10分)を行う。
【事前学習】5時間
これまでの授業の内容全体を総復習しておいて下さい。
【事後学習】2時間
確認試験の解説をもとに自分の解答を振り返り、間違っていたところは復習しておこう。
授業形式 授業は講義形式で行います。ときどき授業内にテーマに関連した携帯アンケートを実施したり、授業内または宿題としてレポート提出を求めます。これにより、授業の理解を深めます。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
80% 10% 10% 0% 0% 100%
評価の特記事項 4年生、保体審の学生を特別扱いすることはありません。Web上で講義資料を配付しますから、授業に欠席した場合は各自学習してください。本講義の履修者はこのシラバスの内容に合意したものとみなします。
テキスト テキストは使用しません。適宜、資料を配付します。
また、各項目に関連する文献を講義内で紹介します。
参考文献 熊沢誠『女性労働と企業社会』岩波書店
武石恵美子『女性の働き方』ミネルヴァ書房
大沢真理『現代日本の生活保障システム』岩波書店
濱口桂一郎『働く女子の運命』文藝春秋
オフィスアワー(授業相談) メールでの質問も直接に相談に来る場合も、随時受け付けています。質問がある場合は必ず事前に電子メール(アドレスは授業時に告知します)等でアポイントを取ってください。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 本講義では職場における女性差別問題や女性労働者の活用実態について、理論的・歴史的および統計的に把握することを目指します。とりわけ就職活動をしている4年生は、職場における女性の地位の相対的な低さを実感しているのではないでしょうか。身近な問題ですから、そうした問題に引きつけて考えるようにしてください。
授業用URL http://murasemi.com/lectures/womens-labor/