講義名 財務会計論CⅠ ≪大学院≫
講義開講時期 前期
曜日・時限 水2
単位数 2

担当教員
氏名
古庄 修

学習目標(到達目標)  本講義は,財務報告プロセス(財務報告の創出機構と開示プロセス)を多角的に考察する。特に,従前の財務報告(financial Reporting)から最近の統合報告(Integrated Reporting)へのグローバルな展開の意味を理解し,財務報告の理論的および制度的枠組みの再編成をめぐる動向について,ナラティブな情報の開示の制度化を含めた視野の広い議論ができるようになることを学習目標とする。
授業概要(教育目的)  統合報告をめぐる最近の動向とその行方を展望しながら,財務報告の範囲の画定問題と財務報告の構成要素の区分問題について考察する。
 本講義は,統合報告における論点がすでに各法域におけるナラティブな情報の制度化の過程において顕在化しているとの基本認識に基づき,これを財務諸表,統合報告および非財務報告の相互の連係の在り方に係る「統合財務報告制度」の形成問題と捉えて,従前の財務報告の枠組みないし体系の再編成について議論を展開する。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス財務報告の概念的・制度的枠組みの全体像を解説する。また,各授業時間における報告の担当者を決める。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第2回企業報告モデルの特徴とナラティブ報告の位置づけ英米において提起されてきた企業報告モデルの特徴と歴史的経緯,英米における異同点および財務諸表とナラティブな情報の相互関係について考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第1章をよく読んでおくこと
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第3回財務報告の体系の再編成IASB実務意見書『経営者による説明』(MC)の内容を検討し,財務報告の範囲とMCの位置づけについて考察する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第2章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。

第4回ナラティブな情報の開示規制に係る国際的動向EU、国連および証券監督者国際機構(IOSCO)の取組みや開示規制,そして今日の国際統合報告評議会(IIRC)の国際統合報告フレームワークの公表に至る経緯と概要を解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第2章補論、邦訳版IIRC国際統合報告フレームワーク(事前配布)および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第5回英国OFR開示制度の導入経緯英国版MD&Aとして制度的に導入された英国のOFRの意義と背景,1993年OFR意見書と2003年改訂意見書との相違点、OFR開示における業績概念および財務報告の概念的枠組みにおけるOFRの位置づけ等を考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第3章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第6回英国会社法改正とOFR開示モデルの構造英国会社法に組み込まれた事業概況(Business Review)開示規定を英国におけるガバナンス改革との関係を捉えて考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第4章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第7回オフバランス取引と公正価値測定のMD&A開示問題米国におけるオフバランス取引と公正価値測定に係る経営者による討議と分析(MD&A)の補足機能の変容について考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第5章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第8回開示プロセスの階層構造と財務報告制度開示プロセスの階層構造を捉えて,会計規制の重層化および公的・任意開示化の意義を考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第6章補論および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第9回米国における非GAAP測度の開示規制米国SECによる非GAAP測度(代替的業績指標)をめぐる開示規制の動向と,非GAAP測度の価値関連性に係る実証研究をサーベイし,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第6章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第10回欧州市場におけるGAAP測度と代替的業績測度の共存関係EU市場における代替的業績測度(APM)の開示実態を踏まえて,ヨーロッパ証券規制当局委員会(CESR)の勧告およびAPMに係る開示規定の意義および直近のIASBの取組みを解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第7章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第11回ナラティブ報告に係る概念フレームワークの形成と論点ナラティブな情報の開示に係る概念的枠組みの形成を概観し,ナラティブな情報の質的特性,および注記情報とナラティブな情報の境界問題をめぐる論点を考察する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第8章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第12回ナラティブ報告の信頼性と保証問題英国会社法をめぐる議論を踏まえて,監査人による取締役報告書の保証と手続き,OFR監査,ナラティブ報告の作成プロセスの信頼性確保をめぐる論点を考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第9章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第13回ビジネスモデルを基礎とする統合財務報告制度の枠組み英国のガバナンス・コードに組み込まれたビジネスモデル開示をプラットフォームとする新たな財務報告の制度的な枠組みについて考察し,解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト第10章および次回報告者が事前に作成し,配布するレジュメを読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習し,次回のプレゼンテーションに備えること。
第14回統合財務報告制度の論点と課題財務報告,統合報告,非財務報告の相互関係を考察し、統合財務報告制度の形成過程の捉え方について解説する。
【事前学習】1時間
講義用テキスト終章および講義時に事前配布する資料を読んでおくこと。
【事後学習】1時間
講義内容をよく復習しておくこと。
第15回総括統合報告の国際的な開示事例を解説するとともに,あらためて統合報告の意義と展望について総括する。また,次の課題として,非財務情報の開示に係る基準設定をめぐる会計基準設定主体の責任についてその論点を考察する。
【事前学習】1時間
講義時に事前配布する開示事例等の関連資料を読んでおくこと。
授業形式 講義および討議形式による。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 0% 0% 50% 50% 100%
評価の特記事項 平素の受講態度およびプレゼンテーションに重点を置き,総合的に評価を行う。
テキスト 古庄 修著,『統合財務報告制度の形成』,中央経済社,2012年,4,200円(税別).
参考文献 古庄 修編著,『国際統合報告論』,同文舘出版,2018年,3,800円(税別).
宝印刷(株)総合ディスクロージャー研究所編,『統合報告書による情報開示の新潮流』,同文舘出版,2014年,2,800円(税抜).
オフィスアワー(授業相談) 木曜日12時から13時の間とする。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 講義に空白が生じないように,やむを得ず欠席をせざるをえない場合には必ず事前に連絡を入れること。プレゼンテーションが評価の対象となるために,事前の準備が求められる。