回 | 項目 | 内容 |
第1回 | 歴史を学ぶ喜び | 講義の内容やすすめ方について説明したあと,スクリーンにドイツの歴史的な諸都市を映し出しながら,「ドイツをめぐる旅」をし、歴史を学ぶ楽しさを味わう。【事前学習】2時間、どの歴史学概説書でもよいので、歴史学の概観について読んで自分なりに考えておくこと。【事後学習】2時間。今日の講義を聴いて考えたことのまとめをしておくこと。 |
第2回 | イオニア文化とヘロドトス | 紀元前5世紀を生きた「歴史の父」ヘロドトスの歴史的思想的背景を理解し,さらに彼の生涯を辿る。青年期の現実政治の体験,オリエント世界およびギリシア本土への大旅行について述べる。【事前学習】2時間。教科書,佐藤真一著『ヨーロッパ史学史』4-12ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。今日の講義の復習し、歴史探求の意義について確認すること。 |
第3回 | ヘロドトス『歴史』の執筆意図 | 『歴史』の序文に見られる執筆意図と探求の精神,ペルシア戦争の背景について考察する。「クロイソスの没落」や「クロイソスとソロンの対話」のエピソードにもふれる。【事前学習】2時間。教科書,12-18ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、歴史書の時代背景について確認しておくこと。 |
第4回 | ヘロドトスとペルシア戦争 | 東西の大決戦であるペルシア戦争をどのように把握しているか。第1回から第3回にいたるペルシア軍のギリシア遠征とその経過を『歴史』においてヘロドトスがどのように叙述しているかを具体的に見ていく。【事前学習】2時間。教科書,18-26ページを読み、ペルシア戦争について調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、ヘロドトスの叙述の特徴について考えてみること。 |
第5回 | ヘロドトスの叙述の特徴 | ヘロドトスは執筆にあたり,伝承をどのように受けとめているか,またどのような吟味をしているかを考察する。彼はいかなる意味で「歴史の父」と呼ばれるにふさわしいかを考える。【事前学習】2時間。教科書,26-31ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、現代のニュースについてもどのようにそれを吟味するかを考えてみること。 |
第6回 | ツキディデスとアテナイ民主政 | ヘロドトスよりいっそう厳密な歴史を書いたツキディデス。その青年期は,アテナイ民主政治の繁栄期であった。そこに登場する雄弁術の教師ソフィストの活動とツキディデスへの影響を検討する。【事前学習】2時間、教科書,32-36ページを読み、またギリシアの民主政治について予習しておくこと。【事後学習】2時間。講義を復習し、ツキディデスの思想的背景を確認すること。 |
第7回 | ツキディデスとペロポネソス戦争 | ギリシア世界を二分して戦われたペロポネソス戦争が勃発すると,これが大戦になると予測して戦争の記述を始め,また将軍として戦争に参加したツキディデスの歩みを辿る。【事前学習】2時間。教科書,36-43ページを読み、ペロポネソス戦争について概略調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習しておくこと。時代の中での歴史家を捕らえることを理解しておくこと。 |
第8回 | ツキディデスの批判的歴史叙述 | ツキディデスはペロポネソス戦争をどのような姿勢で描いているか。この点をヘロドトスと比較しながら考察し,ツキディデスの批判的叙述の特徴を浮き彫りにする。【事前学習】2時間。教科書,43-51ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、批判的吟味ということの意義を考えてみること。
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第9回 | ポリュビオスとローマの対外発展 | ポリュビオスの生きた時代は,共和政ローマが輝かしい対外発展をとげた紀元前2世紀であった。この時代の地中海世界の姿を確認し,若き日にアカイア同盟の将軍として生きた彼の生涯と関心を見ていく。【事前学習】2時間。教科書,52-57ページを読んでおくこと。古代ローマ史の概略を調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、時代と歴史化との関係を確認すること。 |
第10回 | ポリュビオスの『歴史』 | 『歴史』の執筆意図と構成を確認し,ポリュビオスがローマの対外発展をどのように描いているかを『歴史』のうちに辿る。ハンニバルのアルプス越えやカルタゴの滅亡にも触れる。【事前学習】2時間。教科書,57-61ページを読んでおくこと。共和政ローマの特徴について学んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習すること。 |
第11回 | ポリュビオスと「ローマの混合政体」 | ローマの輝かしい対外発展の原因はどこにあるのか。ポリュビオスの見出した主な理由は,「ローマの混合政体」にあった。カルタゴやスパルタとも比較しながら,ローマの政体の強さを彼がどのようにとらえているかを考察する。【事前学習】2時間。教科書,61-71ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。歴史家の生きた時代、問題意識、歴史研究の関連について考えてみること。 |
第12回 | キリスト教の歴史観とルカ | ギリシア文化と並んでヨーロッパ精神を支えるキリスト教は,歴史に対しても独自の理解をもっている。イエスの誕生をもって前後に分けていく西暦の数え方にもそれは示されている。こうしたキリスト教の歴史理解を,ルカをとおして考えてみる。【事前学習】2時間。教科書,74-91ページを読んでおくこと。ヨーロッパの精神を支えたキリスト教について理解しておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、キリスト教の世界史的意義について理解しておくこと。 |
第13回 | 歴史家ルカと救済史 | 「ルカによる福音書」と「使徒言行録」を手がかりにその独自の歴史把握を検討する。ルカは歴史家であるとともに,イエスの十字架による救いに注目する救済史家でもあった。この点を考察する。【事前学習】2時間。教科書,91-96ページを読んでおくこと。また、聖書が歴史的にどのようにして成立した書物なのかを調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、ルカについて理解しておくこと。 |
第14回 | アウグスティヌスと『神の国』 | ゲルマン民族の大移動の波にもまれる古代末期のヨーロッパにあって,キリスト教の立場を擁護したアウグスティヌス。キリスト教的な歴史把握の古典である。彼の『神の国について』に見られる歴史のとらえ方を検討する。【事前学習】2時間。教科書,97-126ページを読んでおくこと。アウグスティヌスの生涯について調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、キリスト教独自の歴史把握について確認しておくこと。 |
第15回 | 中間のまとめ | 試験及び解説授業【事前学習】2時間。これまでの講義と学習を振り返って、古代・中世ヨーロッパ史学史の大筋を理解しておくこと、特にギリシア・ローマの歴史家たちにおける批判的研究の深化と、キリスト教的な独自の歴史観とを中心にまとめておくこと。【事後学習】2時間。後期の講義の前提として、前期の講義で扱った歴史家たちの探求の軌跡の理解は不可欠であるので、後期の講義の準備のためにも、これまで学んだことを確認しておいていただきたい。
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第16回 | マキアヴェッリとイタリアの情勢 | まず,後期のねらいと概要を説明する。そのあと,近世初頭のイタリア,とくにルネサンスの花開いたフィレンツェの政治状況,マキアヴェッリの『君主論』と政治的現実の冷徹な把握を考察する。【事前学習】2時間。教科書,128-139ページを読み、さらにルネサンスについて調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、どのような時代が『君主論』を生んだかを確認しておくこと。 |
第17回 | マキアヴェッリの歴史叙述 | 『ディスコルシ』の検討を通じて,マキアヴェッリにおける君主政と共和政についてふれ,さらに歴史叙述の世俗化とルネサンスの歴史叙述の特徴について述べる。
【準備学習】2時間。教科書,139-155ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、2つの書物の相違が生まれた背景を理解しておくこと。 |
第18回 | 宗派時代の歴史叙述とフラキウス | ルターの宗教改革により,ヨーロッパは宗派対立の時代を迎える。その時期を反映し,歴史叙述の面ではルター派とカトリック陣営から,それぞれの立場に立った教会史叙述が生まれる。まず,フラキウスの編纂した『マクデブルク諸世紀教会史』を考察する。【事前学習】2時間。教科書、156-173ページを読み、さらに宗教改革について概略理解しておくこと。【事後学習】2時間。宗教改革の立場からどういう歴史叙述が生み出されたかをまとめておくこと。 |
第19回 | バロニウスとカトリック教会史 | 反宗教改革の担い手のひとつであったオラトリオ会に属するバロニウスの生涯とその著作『教会年代記』を取り上げ,カトリックの教会史叙述を検討し,両教会の教会史の宗派性とともに,教理や教会制度に関する考察という新しい面を開拓したことを確認する。【事前学習】2時間。教科書,173-181ページを読んでおくこと。「反宗教改革」について調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、カトリック独自の歴史理解をまとめておくこと。 |
第20回 | マビヨンとサン・モール会の学問 | 「博識の時代」と呼ばれる17世紀後半は,史料の収集と批判的吟味が深められた時代であり,近代歴史学が成立する基礎を築いた時期でもあった。この時期の代表的な学者としてのマビヨンの生涯を考察する。【事前学習】2時間。教科書,182-187ページを読んでおくこと。修道院の歴史の概略について調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、修道院の学問的意義について確認しておくこと。 |
第21回 | マビヨンにおける史料 | マビヨンの編纂・著作活動,フランス各地,ドイツやイタリアへの史料収集の旅に触れ,さらに史料の批判的吟味を示した彼の画期的な書物『古文書学』を手がかりに,彼の史料批判の具体的な姿を検討する。【事前学習】2時間。教科書,188-202ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習すること。古文書吟味の具体的内容についてまとめておくこと。 |
第22回 | ヴォルテールと啓蒙主義 | 啓蒙主義の代表的知識人であったヴォルテールは,フランス社会に見られた不寛容と闘うとともに,『ルイ14世の世紀』を描くことによって歴史叙述に新しい局面を開くことになった。その具体的な叙述を検討する。
【事前学習】2時間。教科書,203-213ページを読んでおくこと。「啓蒙主義」とはどういうものか、調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、ヴォルテールの思想を理解しておくこと。 |
第23回 | ヴォルテールと救済史観の批判 | 伝統的な救済史観を排し,古代中国をはじめとする東洋にまで視野を広げた世界史の立場を築いたヴォルテールの『風俗試論』を検討し,啓蒙主義歴史学の特徴について述べる。【事前学習】2時間。教科書,213-220ページを読んでおくこと。ヴォルテールの伝統批判について理解しておく。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、伝統的歴史把握のどういう点をヴォルテールが批判したかを確認すること。「 |
第24回 | ランケと古典文献学 | 「近代歴史学の父」と呼ばれるランケは初めから歴史家を志していたわけではなかった。ライプツィヒ大学時代は神学と古典文献学を専攻していた。その時代状況と,彼の学生時代までの歩みを辿る。【事前学習】2時間。教科書,221-225ページを読んでおくこと。『ランケ自伝』(岩波文庫)を読んでおくことが望ましい。【事後学習】2時間。講義内容を復習すること。 |
第25回 | ランケの歴史家への道 | ランケが歴史家となる決意を固めたのは,フランクフルト・アン・デア・オーダーのギムナジウムの教員時代(1818-1825)であり,とくにそのきっかけとなったのは,「古代文学史」という題目の講義準備であった。その際,歴史学と文学,神学との違いも意識された。この点について述べる。【事前学習】2時間。教科書,225-234ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。何が近代歴史学の基礎となったのかを確認すること。 |
第26回 | ランケと近代歴史学の成立 | 最初の著作『ロマン・ゲルマン諸民族の歴史』および『近世歴史家批判』が高く評価されることによってベルリン大学に招かれたランケは,それ以後,半世紀以上にわたって,歴史学の世界に大きな足跡を残す。ランケにおける近代歴史学の成立について考察する。【事前学習】2時間。教科書,234-240ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、ランケの歴史学の意義を理解すること。 |
第27回 | マイネッケと第一次世界大戦 | 第一次世界大戦はヨーロッパの歴史学に大きな転機をもたらした。大戦中に併合論や国粋主義が高まるのを経験したマイネッケは,大戦後,『近代史における国家理性の理念』を公けにすることによって,近代国家の影の面に光をあてた。彼の学問について述べる。【事前学習】2時間。教科書,242-268ページを読んでおくこと。第一次世界大戦の概略について知っておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、時代と歴史家の問題意識との関連を理解すること。。 |
第28回 | ブロックと「アナール学派」の成立 | 20世紀初頭,フランスの学問には,伝統的な歴史学に対するさまざまな挑戦が生じていた。それらに刺激を受けとめながら,いわゆる「アナール学派」の歴史学を開拓したのが,ブロックであった。彼の学問の歩みをストラスブール時代まで辿る。【事前学習】2時間。教科書,269-276ページまでを読んでおくこと。「アナール学派」について調べておくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、20世紀初頭のフランスの学問状況との関連で、新しい歴史学の誕生を理解すること。 |
第29回 | ブロックと心性史 | ブロックの主著のひとつであり,心性史の古典とされる『病を癒す国王』の内容を検討する。題名からして斬新なこの歴史書の問題関心の新鮮さ,史料研究の広がり,叙述と問題意識の鋭さを味わってみよう。【事前学習】2時間。教科書,276-302ページを読んでおくこと。【事後学習】2時間。講義内容を復習し、新たな歴史学の潮流がいかに斬新な問題意識に支えられたものであるかを確認すること。 |
第30回 | まとめ | 試験及び解説授業【事前学習】2時間。「近代歴史学の父」と呼ばれるランケにおいて成立する近代歴史学は、長い助走の時期を背景にして確立するにいたった。マキアヴェッリ以降の歴史家たちが、どのような意味で歴史学の確立に寄与したのかということに注目しつつ、全体の流れを理解してほしい。【事後学習】2時間。ヘロドトスに始まり20世紀のアナール学派にいたる歴史探求の歩みの考察を通じて、歴史的理解がどのようにして成立し、またそれがどのような意義を今日も持っているかを確認し、今後の勉学に生かしていただきたい。 |