講義名 文学B ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金4
単位数 4

担当教員
氏名
位田 将司

学習目標(到達目標) 日本近代文学の作品を読むことで,「文学」というジャンルが政治・経済・文化という諸ジャンルとの交流のなかで構築されてきたことが理解できるようになります。例えば,近代的な「自我」や「アイデンティティ」,あるいは皆さんが日常的に抱いている「感情」などは,人間に元々備わっていたもではなく,「文学」という言語の諸構造(システム)が,歴史的に作り出して来たということを知ることができるはずです。また,「文学」が「共同体」をつくる「芸術=技術」であることも,考えられるようにもなるでしょう。

対応DP及びCP:1,2,8
授業概要(教育目的) 「文学」を具体的に分析するには,実際にテクスト(作品)に触れることが不可欠です。本講義では日本近代文学の成立期から,日本の「近代」がグローバルな意味で確立する,1930年代のテクストを扱います。文学史をはじめとする概念的な説明はもちろんですが,実際のテクストを読み解くことで,テクストの持つ問題点や可能性を考えていきます。講義のなかでは,できるだけ数多くのテクストを紹介し,読解していく予定です。その読解の過程で,日本における「近代」と「文学」の意味を探求していきましょう。「文学」が単なる知識や教養なのではなく,読む者,書く者自身を常に変化させる「力」を持つものとして理解していきます。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス授業の進め方,評価の基準を説明します。また「文学」を学ぶ意義を解説します。
【事前学習】2時間
シラバスを事前に読み,どのような作品を確認しておいてください。
【事後学習】2時間
第2回講義の予習。(講義内で指示する)
第2回坪内逍遥『小説神髄』を読む。「日本近代文学」とは何か?日本の「近代文学」はどのように理論化されて来たのかを,実際に坪内逍遥の作品を通じて考察します。
【事前学習】2時間
『小説神髄』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第3回講義の予習。(講義内で指示する)
第3回「言文一致」という言語革命(1)
現在使用されている日本語の書き言葉が「いつ」「どのように」構築されたのかを探ります。理論的なテキストを読みます。
【事前学習】2時間
『小説神髄』のテキストを読んで,内容を復習しておいてください。
【事後学習】2時間
第4回講義の予習。(講義内で指示する)
第4回二葉亭四迷『浮雲』と近代の小説日本の近代小説の先駆けとなった『浮雲』を読みながら,「近代小説」とは何だったのかを考えます。「言文一致」と『浮雲』の関係を理解していきます。
【事前学習】2時間
「言文一致」のテキストの復習及び『浮雲』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第5回講義の予習。(講義内で指示する)
第5回「言文一致」という言語革命(2)現在使用されている日本語の書き言葉が、「いつ」「どのように」構築されたのかを探ります。特に二葉亭四迷の「翻訳論」を中心に考察していきます。
【事前学習】2時間
「言文一致」と『浮雲』の関係をテキストで復習してください。
【事後学習】2時間
第6回講義の予習。(講義内で指示する)
第6回「自然主義文学」について(1)「ありのまま」に描写する文学日本近代文学史において「自然主義」と呼ばれる小説を読みます。「自然主義」は「ありのまま」を描くことに文学的価値を見出したのです。「ありのまま」・「現実」・「フィクション」の歴史を考察します。
【事前学習】2時間
「自然主義文学」についてのテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第7回講義の予習。(講義内で指示する)
第7回「自然主義文学」について(2)文学における「告白」という制度日本近代文学史において「自然主義」と呼ばれる小説を読みます。現代にも通じる「告白」という行為を,文学的な行為にしたきっかけがここにあります。現代にも通じる「キャラクター」を理解していきます。
【事前学習】2時間
「自然主義」と「キャラクター」についてテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第8回講義の予習。(講義内で指示する)
第8回田山花袋『蒲団』を読む(1)「ありのまま」という表現方法を中心にして小説を読み解く。実際に『蒲団』という作品を読むことで,自然主義文学を理解していきます。
【事前学習】2時間
『蒲団』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第9回講義の予習。(講義内で指示する)
第9回田山花袋『蒲団」を読む(2)「ありのまま」という表現方法を中心にして読み解きます。実際に『蒲団』が当時の人びとにどのように理解されたのかを検証します。
【事前学習】2時間
『蒲団』のテキストを読んで物語内容を整理してください。
【事後学習】2時間
第10回講義の予習。(講義内で指示する)
第10回島崎藤村『千曲川のスケッチ』を読む自然主義の「自然描写」と人間の「内面」に注目して読み解きます。人間の「内面」を描くことが自然の「風景」を描くことと対になって登場してきた歴史を考察します。
【事前学習】2時間
『千曲川のスケッチ』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第11回講義の予習。(講義内で指示する)
第11回島崎藤村『破戒』を読む『破戒』を実際に読むことにより、主人公の「告白」の意味を,自然主義文学の「告白」という制度との関係で理解します。
【事前学習】2時間
『破戒』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第12回講義の予習。(講義内で指示する)
第12回夏目漱石と「自然主義文学」 両者の差異と共通性自然主義と同時代で活躍した夏目漱石について解説します。夏目漱石がどのように自然主義と距離をとって活動したのかを考察します。
【事前学習】2時間
夏目漱石と「自然主義」のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第13回講義の予習。(講義内で指示する)
第13回夏目漱石『こころ』を読む(1)『こころ』の作中人物関係を中心に読み解きます。恋愛関係における「三角関係」と「欲望」の問題を中心にして『こころ』を分析します。
【事前学習】2時間
『こころ』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第14回講義の予習。(講義内で指示する)
第14回夏目漱石『こころ』を読む(2)恋愛における「三角関係」と欲望の問題を考えます。また,この小説が「明治」から「大正」への改元を描いているところから,改元が小説『こころ』に与えた影響を読み解きます。
【事前学習】2時間
『こころ』のテキストを読んで、内容を復習してください。
【事後学習】2時間
第15回講義の予習。(講義内で指示する)
第15回試験とそれに関わるこれまでの講義内容の解説試験とそれに関わるこれまでの講義内容の解説
【事前学習】2時間
これまでの講義で配布した資料の見直し。
【事後学習】2時間
前期までの課題の確認。(講義内で指示する)
第16回前回までの講義を振り返って前期までの講義を振り返ります。
【事前学習】2時間
前期の講義で扱った作品や資料を読んで、文学史を整理しておいてください。
【事後学習】2時間
第17回講義の予習。(講義内で指示する)
第17回志賀直哉『和解』を読む(1)近代小説が抱えた「家族」「父と子」の関係から小説を読み解きます。小説を読むことで「家族」という制度の歴史性を理解していきます。
【事前学習】2時間
『和解』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第18回講義の予習。(講義内で指示する)
第18回「白樺派」の文学について「自然主義文学」への対抗として「白樺派」を解説します。実際の雑誌『白樺』のテキストを読み解きます。
【事前学習】2時間
「白樺派」についてのテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第19回講義の予習。(講義内で指示する)
第19回志賀直哉『和解』を読む(2)近代小説が抱えた「家族」「父と子」の関係から小説を読み解きます。「和解」とは志賀直哉にとって,どのような意味を持つのかを,当時の社会制度をふまえて考察します。
【事前学習】2時間
「白樺派」と『和解』について,配布テキストで関係を考察しておいてください。
【事後学習】2時間
第20回講義の予習。(講義内で指示する)
第20回有島武郎『或る女』を読む(1)近代文学と「女」の関係性から作品を読み解いていきます。「近代」という制度の中で女性がどのような存在だったのかを,作品を読むことで理解します。
【事前学習】2時間
『或る女』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第21回講義の予習。(講義内で指示する)
第21回有島武郎『或る女』を読む(2)近代文学と「女」の関係性から作品を読み解いていきます。近代文学が女性を描く際に陥った問題について考えます。
【事前学習】2時間
『或る女』のテキストを読んで,女性と文学の関係について復習しておいてください。
【事後学習】2時間
第22回講義の予習。(講義内で指示する)
第22回芥川龍之介とプロレタリア文学 芥川龍之介をプロレタリア文学作家の宮本顕治「敗北の文学」から考察します。芥川にとって「敗北」とは何であったのかを理解します。
【事前学習】2時間
配布テキストで「プロレタリア文学」について調べてきておいてください。
【事後学習】2時間
第23回講義の予習。(講義内で指示する)
第23回芥川龍之介『歯車』を読む(1)「歯車」というタイトルを手掛かりに作品を読み解きます。『歯車』に関わる言語の構造をタイトルから考え,「歯車」というタイトルの意味を分析します。
【事前学習】2時間
『歯車』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第24回講義の予習。(講義内で指示する)
第24回芥川龍之介『歯車』を読む(2)「歯車」というタイトルを手掛かりに作品を読み解きます。『歯車』に関わる言語の構造をタイトルから考え,「歯車」というタイトルの意味を分析します。
【事前学習】2時間
『歯車』の内容についてテキストで復習してください。
【事後学習】2時間
第24回講義の予習。(講義内で指示する)
第25回小林多喜二『蟹工船』を読む(1)マルクス主義と「労働」という観点から作品を読み解きます。「工場」という場所が,文学にとってどのような場所であったのかを考察します。
【事前学習】2時間
『蟹工船』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第25回講義の予習。(講義内で指示する)
第26回小林多喜二『蟹工船』を読む(2)マルクス主義と「労働」という観点から作品を読み解きます。「労働者」を文学がどのように表現し,描こうとしたのかを理解します。
【事前学習】2時間
『蟹工船』のテキストを読んで,物語内容を整理しておいてください。
【事後学習】2時間
第27回講義の予習。(講義内で指示する)
第27回アヴァンギャルドとしての「新感覚派」「文学」・「言語」における前衛=アヴァンギャルドについて解説します。
【事前学習】2時間
配布テキストを読み,「アヴァンギャルド」の意味を調べておいてください。
【事後学習】2時間
第28回講義の予習。(講義内で指示する)
第28回横光利一『機械』を読む(1)「形式」と「心理」から作品を読み解きます。「文字」の「形式」によって「心理」を表現する方法について考えます。横光利一の属した,「新感覚派」についても解説します。
【事前学習】2時間
『機械』のテキストを事前に読んでおいてください。
【事後学習】2時間
第29回講義の予習。(講義内で指示する)
第29回横光利一『機械』を読む(2)「形式」と「心理」から作品を読み解きます。「文字」の「形式」によって「心理」を表現する方法について考えます。横光利一の属した「新感覚派」についても解説します。
【事前学習】2時間
『機械』と「新感覚派」の関係を配布資料で復習して,整理しておいてください。
【事後学習】2時間
第30回講義の予習。(講義内で指示する)
第30回試験とそれに関わるこれまでの講義内容の解説試験とそれに関わるこれまでの講義内容の解説
【事前学習】2時間
これまでの配布資料の整理。
【事後学習】2時間
これまで学んできた内容の確認。(講義内で指示する)
授業形式 講義形式でおこないます。毎回の講義で、出席カードを兼ねた講義内容に関する質問・感想用紙を配布します。質問内容は成績に反映させませんので、積極的に質問・感想を書いてください。受講生の質問・感想内容を解説に反映させて講義を進めていく予定です。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
80% 0% 0% 10% 10% 100%
評価の特記事項 積極的な授業への参加を望みます。前・後期最終講義で定期試験を各一回ずつおこないます。この定期試験が評価に大きな比重を占めることに注意してください(必ず二回とも受験すること)。
テキスト 日本近代文学に関わる資料を授業中に配布します。
参考文献 適宜授業中に指定します。
オフィスアワー(授業相談) 火曜日:15:00〜16:30 事前に必ずメールか講義後直接アポイントをとって下さい。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 遅刻・私語をはじめとして他の学生に迷惑のかかる行為は厳禁です。
学習意欲を持った学生諸君の受講を望みます。
必要書類のない欠席は認めません。

なお、講義で扱う文学作品は,予習として事前に【必ず】読んでください。「青空文庫」(参考URL参照)で,PCからでも色々な小説が読めます。この講義を機会に,詩や小説に触れる機会をつくりましょう。「文学」は単なる知識や教養ではなく,それに関わる者を作り変えてしまうような「力」を持っています。社会の変化,自分自身の変化を理解するためにも「文学」に触れましょう。また,質問等は歓迎しています。積極的に自分で調べ,質問をしてください。
参考URL 1 http://www.aozora.gr.jp/