講義名 文学B ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 水3
単位数 4

担当教員
氏名
山岸 郁子

学習目標(到達目標)  近代日本の文学の中で今日まで読み継がれてきた小説は,ほんの一握りである。では、それらの創作はいかにして読み継がれるようになったのか。さまざまな視点から読み返すとともに,文学者が著名になり,その小説が読まれる過程でメディアの力がいかに作用したのか,作品を分析し,資料を読み解くことによって理解することができる。
 また作品が読み継がれるためには「経済」の問題が関わっている。現代文学にも目を向け「文学作品」と「経済」の問題のみならず,出版産業や作家の経済(原稿料)について,その構造について具体的な説明ができるようになる。

対応DP及びCP:1,2,8
授業概要(教育目的)  文学作品に触れたとき、わたしたちはさまざまな感情を抱くだろう。それをそのまま述べるだけでは単なる「感想」になってしまう。文学を読むには、確実に技術が必要である。「感想」に客観性を持たせ,「分析」し「批評」する方法を身につけることを目的とする。
 講義を通じて,読書習慣を身につけ,文学と歴史の関わり,関連する文化やメディアについて理解を深めることによって,主体的に物語を読む力を獲得し,経済学部生にとってそれが日常においても役に立つ基礎教養となることを目指す。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス本講義の目的・概要・方法について説明する。
【事前学習】2時間
樋口一葉「たけくらべ」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで読書に関わる課題を提出する。
第2回樋口一葉「たけくらべ」Ⅰ物語の中で描かれる境界性について考察する。
【事前学習】2時間
配布プリント(補足資料)「一葉日記」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第3回樋口一葉「たけくらべ」Ⅱ明治の女性表現者について考察する。
【事前学習】2時間
森鷗外「舞姫」を読み,「たけくらべ」との違いを理解する。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第4回森鷗外「舞姫」Ⅰ「たけくらべ」と「舞姫」を社会状況から読み解く。
【事前学習】2時間
森鷗外「舞姫」を読み、「立身出世」について理解する。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第5回森鷗外「舞姫」Ⅱ「舞姫」を言説空間(当時の表現)から読み解く。
【事前学習】2時間
「雁」(森鷗外)についての配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第6回夏目漱石「それから」Ⅰ「それから」を時代背景から読み解く。
【事前学習】2時間
夏目漱石の「それから」(前半部)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第7回夏目漱石「それから」Ⅱ「それから」をテクスト論で読み解く。
【事前学習】2時間
平岡・代助・三千代の行動を整理する。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第8回夏目漱石「それから」Ⅲ「それから」を歴史的コンテクストから読み解く。三千代のイメージを生成しているものとは何なのか考える。
【事前学習】2時間
「それから」(後半部)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第9回夏目漱石「こころ」Ⅰ「こころ」の私(語り手)の位置について考察する。
【事前学習】2時間
夏目漱石「こころ」を読む(「先生と私」)。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第10回夏目漱石「こころ」Ⅱ「こころ」に描かれた,肉体的な父と精神的な父との違いを比較する。
【事前学習】2時間
夏目漱石「こころ」を読む(「両親と私」)。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第11回夏目漱石「こころ」Ⅲ「こころ」が教科書に採択されることの意味について考察する。
【事前学習】2時間
夏目漱石「こころ」を読む(「先生と遺書」)。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第12回江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」都市の成熟と文学について考察する。
【事前学習】2時間
江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第13回宮沢賢治「注文の多い料理店」オノマトペの効果について考察する。
【事前学習】2時間
宮沢賢治「注文の多い料理店」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第14回志賀直哉「城の崎にて」自然を観察する〈視点〉を中心に考察する。
【事前学習】2時間
志賀直哉「城の崎にて」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第15回中間のまとめ前期の文学作品について改めて内容を確認し,ポイントについてまとめる。
参考文献の探し方とレポートの書き方を説明する。
【事前学習】2時間
前期プリントに目を通す。
【事後学習】6時間
文学を客観的に読む手法を用いて,レポート(2,000字以上)を作成する。
第16回太宰治「富嶽百景」文体の特徴を考察する。
【事前学習】2時間
太宰治「富嶽百景」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第17回太宰治「桜桃」作家像の生成と期待される表現について考察する。
【事前学習】2時間
太宰治「桜桃」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第18回川端康成「雨傘」「バッタと鈴虫」ノスタルジーをどのように描くか,描かれる少年少女像について考察する。
【事前学習】2時間
川端康成「雨傘」,「バッタと鈴虫」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第19回芥川龍之介「羅生門」戦後教育における「羅生門」について考察する。
【事前学習】2時間
芥川龍之介「羅生門」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第20回芥川龍之介「蜘蛛の糸」文学作品と道徳教育の関係について考察する。
【事前学習】2時間
芥川龍之介「蜘蛛の糸」を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第21回松本清張「砂の器」戦後作家とメディアの関係について考察する。
【事前学習】2時間
映像化された文学作品を確認しておく。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第22回韻文(与謝野晶子,中原中也,寺山修司,穂村弘,笹井宏之,最果タヒなど)
韻文による表現の可能性について考察する。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第23回小川洋子「博士の愛した数式」語り手の機能について考察する。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第24回村田沙耶香「コンビニ人間」経済と文学の関係について考察する(その1)。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第25回角田光代「ランドセル」経済と文学の関係について考察する(その2)。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第26回日記と書簡について日記と書簡における文学性について考察する。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第27回文芸評論の歴史と現在文藝評論について考察する。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する
第28回文学賞の歴史と選評文学賞と文学産業ついて考察する。
【事前学習】2時間
配布プリント(補助資料)を読む。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第29回「文学」の多様な読み方についてのまとめ「文学」の読み方を通し,文学研究という方法について確認する。
【事前学習】2時間
扱った文学作品を読み直し,分析手法について確認をする。
【事後学習】2時間
エコリンクで講義に関する課題を提出する。
第30回確認試験と解説授業を通して学んだことの確認試験(60分)および解説(30分)を行う。
【事前学習】4時間
文学を読む手法を応用し,試験準備に取り組む。
【事後学習】2時間
解説を踏まえ,テストの振り返りを行う。
授業形式 プリントを配布し,講義形式で進めるが,漠然と聞いているのではなく,しっかりとメモ・ノートをとること。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
40% 30% 0% 30% 0% 100%
評価の特記事項 毎回EcoLinkにて,授業時に出す課題を1週間以内に提出してもらう(直接提出は不可)。そこから授業内容の理解度と出席を確認する(授業への参画度)。
テキスト テキスト(教科書)は使用しないが,取り上げる作品(底本を指定する)を事前に必ず読んで予習をすること。
作品の一部を取り上げるものについては予めプリントを配布し,講義する。

参考文献 関連する参考文献を適宜指示する。
オフィスアワー(授業相談) 水曜日:15:00~16:00 事前にアポイントをとり,本館2階講師室に来ること。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 遅刻・私語をはじめとして他の学生に迷惑のかかる行為は厳禁とする。
プリントはその時間のみ配布する。各自ファイリングすること。
必要書類のない欠席は認めない。
自分の中にもあるであろう〈物語〉への欲望を常に意識しながら授業に臨むこと。
取り上げる作品は手に入りやすいものばかりである。必ず読んでから授業に臨むこと。
これを機会に読書習慣をつけること。読書は自分を表現するための言葉の引き出しを増やすことにつながる。大学時代に多くの書物に触れておくことが,必ず10年後,20年後に自分の資源を花開かせる養分となる。なるべく多くの本を読むように常日頃から心がけること。