講義名 政治学 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 金5
単位数 4

担当教員
氏名
瀧川 修吾

学習目標(到達目標) 政治とは利害調整のしくみであるため、国家にせよ集団にせよ、人が集まるところに政治は生じます。しかし、政治に無関心な人が増え、民主主義の根幹を揺るがす事態に陥っています。
古代から現代までの政治社会の特質や諸問題と,そこで生まれた代表的な政治思想を学ぶことで,経済社会に関する基礎知識を習得し,文化的素養や市民的教養を涵養するとともに,グローバル化する現実の社会で生起する様々な問題に関する理解力・分析力,多様な価値観を受容する倫理観・公共心を身につける。そして,自ら省みて,状況を改善する方策を見出すことができるようになる。
DP-1,DP-2,DP-8/CP-1,CP-2,CP-8
授業概要(教育目的) 皆さんの多くは,これまで政治の「制度」や「機構」を暗記することを主として学んできたものと思われます。これも重要には違いなく,先例や権力に付き従い,受動的に生きていくならば,政治に関する知識はそれで十分と言えるでしょう。しかし、政治とは人類が進化の過程で獲得したコミュニケーション技術の,最大にして最高峰のものです。将来に起こりうる危機を見据え,より良い社会の在り方を模索していくには,過去との対話によって「政治とは何か」を根本から考えてみる必要があります。
授業計画表
 
項目内容
第1回ガイダンス授業全般のテーマや内容,使用教材,スケジュール,成績評価の方法などについて説明を行います。
・予習(120分)
シラバスに目を通し,高等学校で学んだ関連知識をノートに書き出して整理をしておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,授業の目的と到達目標を確認する。
第2回人類と政治(人間は政治的動物か)古来,人間は政治的動物(zoon politikon)であるとされてきました。近年,複数種進化説が常識となった化石人類の進化の歴史を素材に,この古くて新しい問題について考察し,我々にとって社会や政治がいかなる意味を持つのかについて理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
高等学校で学んだ教科書等の当該箇所を参照し,人類進化の歴史について復習した上で講義に臨むようにする。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第3回政治と政治学①(政治とは何か:国家現象説と集団現象説)政治を1つの“現象”として捉える時,それは“国家”がなければ出現しないものなのか,それとも“集団”があれば出現するものなのか。この2つの学説について考察することで,政治学という学問の性質を知ると共に,皆さん自身の政治に対する認識を,あらためて整理することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。C1・D1・I1
・予習(120分)
上記の2つの学説について,自らが支持する立場とその理由について400字程度で簡潔に纏めてくる。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第4回政治と政治学②(政治学の細分化と専門化)今日,政治学は幾つかの専門分野にわかれ,様々な視点から研究がなされています。その概容を把握することが目的の1つで,またその中から時事的な問題との関連で特定のテーマを選び,やや掘り下げた解説もするので,少しく専門のエッセンスに触れることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
ICTを用い,政治学にはどのような専門科目があるのか調査の上で講義に臨む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第5回政治と政治学③(政治学の対象と関連領域)政治学は細分化・専門化だけではなく,社会のあらゆる事象と関連を持つ“政治”を研究対象とするため,他の学問領域とも密接な関係をもっています。前回同様,概容の把握だけでなく,少しく踏み込んだ研究に触れるることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
4回目の講義の終わりに指示された内容に取り組む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第6回古代の政治社会と政治学①(古代都市国家と直接民主制)古代の政治社会がどのようなものであったのかにつき,その大要を把握し,特に古代ギリシャの都市国家や,そこで行われた直接民主制について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
「神権政治」と「祭政一致」の意味を政治学事典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第7回古代の政治社会と政治学②(ソクラテスとプラトンの哲学)古代の政治思想を代表する名著『国家』を中心に,プラトンとその師ソクラテスの生き方や人間観,国家観などを学び,政治の本来的な役割や政治と教育との関係について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
ソクラテスとプラトンの略歴について人名辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第8回古代の政治社会と政治学③(哲人政治とポリティア)前回に引き続き,古典的名著,プラトンの『国家』やアリストテレスの『政治学』などを素材に,理想の政治とは何かについて,また同時に民主政治の問題点について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
アリストテレスの略歴について人名辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第9回中世の政治社会と政治学①(封建制とその変容)ひと言で中世ヨーロッパと総括してしまうことには様々な困難が伴いますが,いわゆる封建制の二元的な権力構造や農業を中心とした共同社会の特質と変化につき,カール大帝の統治行為などを手がかりに大要を把握することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
カール大帝の略歴について歴史事典や年表等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第10回中世の政治社会と政治学②(中世の神学と政治思想)キリスト教の影響を色濃く受けた中世ヨーロッパの政治思想がいかなるものであったのかにつき,トマス・アクィナスらを手がかりに把握し,そのなかでも異彩を放つ,マキャベリの『君主論』を素材に,危機と政治の関係について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
「マキャベリズム」の意味を辞典等を用いて調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第11回近代の政治社会と政治学①(絶対王政と市民革命)商工業の発達や,ルネッサンス・宗教改革がヨーロッパ社会にもたらした衝撃と,その結果,出現した絶対王政につき,広範に学び,近代市民革命がもたらした自由主義や立憲主義につき,その大要を把握することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
「ルネッサンス」と「宗教改革」の意味を社会学事典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第12回近代の政治社会と政治学②(中世の幕引き,T.ホッブズ)基本的人権は人間に固有のものとされるが,果たして本当にそのような権利は存在するのでしょうか。古典的名著『リバイアサン』(1651)を手がかりに,権力も法律も無い人間の自然状態がいかなるものであったのか,また本来的に政治に求められるものが一体何であるのかにつき,探求することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
ホッブズの略歴について辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第13回近代の政治社会と政治学③(革命のイデオローグ?,J.ロック)所有権絶対の原則は近代法の三大原則の一つとされ,そうした価値観のもと,近代の資本主義社会は飛躍的な発展を遂げました。まさしくその典拠とも言うべき『統治二論』(1690)のなかで論じられた,王権神授説の否定,自然状態論と社会契約論,労働価値説,権力分散,革命権などの重要な理論について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
ロックの略歴について辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第14回近代の政治社会と政治学④(フランス革命の導火線,J.J.ルソー)『社会契約論』(1762)の著者ルソーは,徹底した民主政治の在り方を模索した思想家で,フランス革命だけでなく,日本の自由民権運動にも強い影響を及ぼすことになりました。前2回の講義に引き続き,社会を変革した政治思想の持つ普遍的なエネルギーの一端に触れ,政治とは何かにつき,探求することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
ルソーの略歴について辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第15回前期総括,“現代”と政治学14回の授業での学びの総括を行うと共に,後期で対象としている“現代”という時代区分につき,諸説を紹介しつつ,政治学が対峙する“現代”とはいかなるものなのかについて概説します。
・予習(120分)
14回の講義を振り返り,資料やノートを整理しつつ,不明な点や新たな疑問点等をまとめたメモを持参する。
・復習(120分)
授業全体を振り返り,ここで学んだ内容を卒業論文や志望する進路等において活用できるように整理しておく。
第16回資本主義と格差社会資本主義の発展は,人類にかつて無いほどの富と繁栄をもたらしたが,他方で貧困と様々な格差も生みました。その現象は一つの国家にとどまらず,地球規模でも展開されました。帝国主義と植民地支配です。こうした資本主義がもつ克服しがたい病理と,これに加え続けられている“修正”のメカニズムについて理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
自分たちの身近にある“格差”について考えてくる。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第17回デモクラシーの危機とファシズムの台頭政治的無関心やポピュリズムといった問題は,今日でも問題視される民主政治の宿弊と言えます。普通選挙の実現により貧しい大衆にも政治参加の道が開かれるなか,資本主義経済が破綻し世界恐慌の壁に激突すると,デモクラシーはファシズムという陥穽に直面しました。ドイツや日本を事例にして,民主主義が陥りがちな危機について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
「ファシズム」と「ナチズム」の意味を辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第18回社会主義の挑戦と冷戦かつて世界は修正資本主義と社会主義とによって二分されていました。社会主義とはどのようなもので,なぜこれが現実では理論通りにならなかったのかについて考察し,冷戦と呼ばれた時代と,これが世界に残した爪痕について理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
「Utopia」と「New Lanark」の意味を辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第19回デモクラシーの帝国と国家なき戦争冷戦終結後の世界は,遺憾ながら平和とはなりませんでした。現在の“国家なき戦争”と呼ばれる国際紛争の様相と,その原因について理解を深めるとともに,今後,我々はこの問題とどのように向き合って行ったら良いのかについて,皆さんと一緒に考えてみることで,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
“テロ”はなぜ起こるのかについて考えてくる。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第20回三権分立の基本構造と立法府①(国会)国会の機能や権限,組織につき,過去の制度や世界の立法府と比較しつつ概観することで,立法府に関する基礎的な知識を修得することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
高等学校で学んだ教科書等の当該箇所を復習した上で講義に臨む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第21回三権分立の基本構造と立法府②(選挙)代表制民主主義をとる国々において選挙は,国民の代表を選出する極めて重要な制度です。選挙にまつわる諸原則や様々な制度などについて基礎的な知識を修得することを目的としつつ,可能な限り,これにまつわる脱線話にも時間を割き,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
高等学校で学んだ教科書等の当該箇所を復習した上で講義に臨む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第22回三権分立の基本構造と司法府裁判所の機能や権限,組織につき,過去の制度や世界の司法制度と比較しつつ概観することで,司法府に関する基礎的な知識を修得することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
高等学校で学んだ教科書等の当該箇所を復習した上で講義に臨む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第23回三権分立の基本構造と行政府①(内閣)内閣の機能や権限,組織につき,過去の制度や世界の行政府と比較しつつ概観するすることで,内閣に関する基礎的な知識を修得することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
予習(120分)
高等学校で学んだ教科書等の当該箇所を復習した上で講義に臨む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第24回三権分立の基本構造と行政府②(官僚)現代国家は行政国家とも呼ばれるように,行政の役割は極めて重要かつ広範囲に及びます。その担い手となる官僚とはいかなる存在なのか。ここでは,その歴史やメカニズム,問題点などについて基礎的な知識を修得する事を目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
高等学校で学んだ教科書等の当該箇所を復習した上で講義に臨む。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第25回現代政治の病理(鉄の三角同盟とフリーライダー)いわゆる“政官財の癒着”と批判されるような現象はなぜ起きるのか。その基本構造について学びつつ,多元的な価値を容認せざるを得ない民主政治の難しさについて理解を深めることを目的とし,市民的な素養・教養を養い,他者理解・倫理観・公共心を修得します。
・予習(120分)
「公益」と「特殊利益」の意味について考えてくる。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第26回政治とマスメディア新聞を第四の権力(the fourth estate)と比喩したのはE.バークですが,たしかに現代の政治を論じる上で,マスメディアの存在を無視することはできません。ここではマスメディアと政治の関係について,最近の事例も踏まえて基礎的な知識を修得することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
国営放送・公共放送・民間放送の違いを調べてくる。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第27回政治参加と地方自治“地方自治は民主主義の最良の学校”と言われます。ここでは,地方自治の意義や中央政府と地方政府の関係などについて,最近の事例も踏まえつつ,基礎的な知識を修得することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
ユニークな条例につき,各自で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第28回軍事的組織と政治それが“戦力”であるにせよ,“実力”であるにせよ,軍事的組織は,国家最大の物理的な力を占有する存在に他なりません。ここでは,危機と政治との関係を考えるに,最も重要なテーマである政軍関係について,基礎的な知識を修得することを目的とし,市民的な素養・教養を養い,理解力・分析力を修得します。
・予習(120分)
「civilian control」の意味を辞典等で調べておく。
・復習(120分)
授業を振り返り,学習内容を整理しておく。
第29回総括,“未来”と政治学 ~進歩か循環か「過去は現在の光に照らして初めて我々に理解できるものだし,過去の光に照らして初めて我々は現在をよく理解することができる」というのは,E.H.Carrの言葉です。「過去の経験からなされる一般化」は,我々の未来を明るく照らすのかについて,皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
・予習(120分)
14回の講義を振り返り,資料やノートを整理しつつ,不明な点や新たな疑問点等をまとめたメモを持参する。
・復習(120分)
授業全体を振り返り,ここで学んだ内容を卒業論文や志望する進路等において活用できるように整理しておく。
第30回期末試験・質問等受付一年間の講義内容を踏まえ,期末試験を実施する。
・予習(240分)
講義ノートを参照し,試験に備えてください。
授業形式 現代の政治過程における様々な概念や事象について理解し,説明できる能力を養います。各自が本講義を通じて学びとったものを活用し,身近な問題はもちろん,現実政治がこれからも直面するであろう様々な危機に対して,多様な意見を許容しつつ,柔軟な発想で打開策をアウトプットできる市民となることを期待し,政治学の観点から多角的に考察します。授業形態は講義により行います。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
50% 10% 20% 20% 0% 100%
評価の特記事項 期末に一度に評価をするのではなく,小テストやノートも評価項目に入れ,形成的評価を行います。
テキスト 特に使用しません。原則,毎回,レジュメや資料を配付します。
参考文献 有賀弘ほか『政治 第2版 個人と統合』(東京大学出版会),黒川貢三郞ほか『改訂 教養政治学』(南窓社)など,講義の中で適宜,紹介します。
オフィスアワー(授業相談) ■連絡先 takigawa.shugo@nihon-u.ac.jp
■オフィスアワー メール等で事前にアポイントメントをとって下さい。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 授業では,どうしても基礎的なことを中心に扱わざるをえません。ところが,学問がほんとうに面白いのは,その先にある専門的,応用的な領域です。授業を聴いて終わりにするのではなく,自らの興味関心に従い,積極的に学習することを期待します。