講義名 文化人類学 ≪◇学部≫
講義開講時期 通年
曜日・時限 月5
単位数 4

担当教員
氏名
清水 純

学習目標(到達目標) 目標
1.文化人類学の概要を学習することにより,文化人類学の基本的な見方や考え方を理解できるようになる。
2.自分自身を取り巻く世界を見渡すときに,異なる価値観に対して柔軟に対応可能な視野の広さを身につけることができる。                                                            対応DP及びCP:1,2,8
授業概要(教育目的) 「人間とは何か」という根源的な問いかけをもとに授業をすすめ,文化人類学が明らかにしてきた多種多様な人類文化・社会に関する学問的知見を,実例とともに概説する。授業では,文化人類学者の現地報告を講読し,民族文化の映像記録を見る機会を提供する。このような学習方法は,異文化を間接的ながら具体的に体験するものとなり,自他を比較する視点を獲得することを可能にする。授業の内容は自分でレポートにまとめ,さらに自分の考えも交えて文章化する習慣をつける。年度末の総括の授業では一年間の授業を総括し,各自が自分なりの学習成果を鮮明に意識できることをめざす。
授業計画表
 
項目内容
第1回授業の進め方のガイダンス
文化人類学とはどのような学問か
文化人類学の授業の進め方のガイダンス。
課題図書の購読と確認テストの実施についての説明。課題図書のための設問プリントの配布を行う。
文化人類学とはどのような学問かについて概要を把握する。
【事前学習】2時間
海外旅行体験をはじめ,外国人との交流の経験,海外を舞台にした本や映画,ドラマなどを思い出し,文化の違いとはどのようなものかについて考えてみよう。
【事後学習】2時間
課題図書を購入し,読み始めること。
第2回文化の定義文化人類学の成立と発展について理解する。また,文化人類学を学ぶ上で最も基本となる文化の定義に焦点を当て,文化人類学が文化を扱う上でどのような立場をとってきたかについて学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第3回言語と文化文化の形成において,言語が果たす役割について考える。具体的な事例としてポーンペイ島の敬語・身分・礼儀について取り上げ,言語の使用法が社会的身分の相違を創り出し,独特の文化的行動体系を生み出す機能を持つことを理解する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにEcoLinkに提出する。
第4回異文化の意味の世界同じ文化的行為でも,社会によって多様な意味づけがありうることを,アジアにおけるイレズミ習俗を通じて学習する。日本人が持つ独特のイレズミ観を他の文化との比較で気づくようにする。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにEcoLinkに提出する。
第5回家族と親族①文化人類学で用いられる系図の描き方を覚える。また,父系社会の構造,双系社会の親戚関係,イトコ名称の多様性,婚姻規制の多様性などについて学習し,社会的に重要な血縁関係の範囲とは,文化によって恣意的に決められたものであり,文化ごとに異なるものだということを学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから学習資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業で習った系図の書き方を利用して,自分の家族や親族,祖先について調べ,実際に我が家の系図を書いてみよう。
第6回家族と親族②韓国の宗親会を取り上げる。韓国には父系血縁観念によって結ばれた父系親族組織があり,強いきずなに結ばれて社会活動をおこなっている。日本と異なる韓国の親族関係の在り方を学習し,現代化の中で伝統的観念の継承にどのような困難が表れているかを理解する。動画を見るときは見ながらメモを取ります。
【事前学習】2時間 
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてエコリンクに提出する。
第7回家族と親族③韓国社会の基礎となる家族では,男の子に高い価値があたえられている。家族の中での男子の位置づけを通して,韓国の家族関係が非常に強い父系血縁観念によって組み立てられている事を理解し,さらにその伝統が近年の韓国社会における男女の人口比率に大きな影響を与えてきた経緯について考察する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えて期限までにEcoLinkに提出する。
第8回家族と親族④北タイのヤオ族の養子慣行について取り上げる。ヤオ族社会の養子と養父母の関係や民族的アイデンティティの形成を通じて,私たち日本人が無意識のうちに普遍的と考えている家族と血縁に関する観念は,人類社会にとって必ずしも普遍ではなく,それと大きく異なる考え方もあることを学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてEcoLinkに提出する。
第9回環境への適応人類は長い年月をかけて,厳しい自然環境の中でさまざまな工夫を重ねて生きのびてきた。祖先から代々伝えられてきた知恵や工夫はどのように生かされているのか,極北でトナカイ放牧を行うチュクチ族の記録映像を通じて,環境への適応について学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにエコリンクに提出する。
第10回日本文化の潮流日本の南西諸島に見られる様々な仮面来訪神にかかわる行事のバリエーションを紹介し,さらにミクロネシア・メラネシア・ニューギニアの仮面文化の比較から,日本文化の中でも南海に連なる文化潮流について考える。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにEcoLinkに提出する。   
第11回境界をめぐる民俗人類文化における「境界」をテーマとし,①韓国の村の境界を守る神チャンスン,②アフリカの成人式,の2本の映像記録を見る。①では村の領域を内外に分ける空間的境界に神像が設置される意味について考える。②では,成人式が,人生の時間の区切る境界を「越える」儀礼であることについて考える。
【事前学習】2時間
EcoLinkから関連資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてEcoLinkに提出する。
第12回課題図書確認テスト第1回課題図書の上巻の内容に関する確認テストを行う。読書ノートを見ながら解答を記入する持ち込み式テストとする。
【事前学習】2時間
課題図書の上巻を読み,配布した設問プリントの設問①~③について各自が読書ノートを作成しておくこと。
【事後学習】2時間
確認テストで十分な解答ができなかったところについて,課題図書を読み直し,再確認しておくこと。  
第13回課題図書確認テスト第2回課題図書の上巻の内容に関する確認テストを行う。読書ノートを参照する持ち込み式テストとする。
【事前学習】2時間
課題図書の上巻を読み進め,配布した設問プリントの設問④~⑥について各自が読書ノートを作成すること。
【事後学習】2時間
確認テストの問題で十分な回答ができなかったところについて,課題図書を読み直し,内容を再確認しておくこと。
第14回課題図書の補充学習課題図書上巻に関する補充学習を行う。課題図書の内容について十分な解答ができなかった個所について,再度,解答し直すための時間とする。質問も受け付ける。
【事前学習】2時間
課題図書の設問で,十分な解答ができなかった部分について,読書ノートに解答を作成しておくこと。
【事後学習】2時間
課題図書の上巻を読み終えた感想を読書ノートにまとめてみよう。  
第15回前期の授業のまとめ前期の授業内容を総復習する。また,質問等を受け付ける。質問がある受講生はあらかじめ,質問事項をメモ書きにしてくること。
【事前学習】2時間
前期に配布した資料をよく読みなおしておく。
【事後学習】2時間
課題図書の下巻を読み始めよう。
第16回交換と経済①経済人類学の理論経済と交換に関する文化人類学の研究がどのような観点でなされてきたかについて,マルセル・モースの贈与論をはじめ,経済人類学のいくつかの理論的立場を解説する。特にカール・ポランニーによる経済人類学の理論をもとに事例を解説する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業中に出てきたキーワードを説明できるようにしておくこと。
第17回交換と経済②クラ(I)かつてマリノフスキーが調査したトロブリアンド諸島の儀礼的交換「クラ」について,1971年に撮影された日本映像記録の作成によるドキュメンタリー映像を通じて学習する。映像全体が70分余りと長いので,時間内のほとんどは動画の鑑賞とする。動画を見るときは見ながらメモを取ることを学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業内容をよく復習し,授業中にとったメモをもとにして映像の内容をまとめておくこと。
第18回交換と経済③クラ(Ⅱ)オーストラリアのスカイヴィジュアルズ作成によるクラ(1983年)の映像記録(45分)を見る。その内容を踏まえて,前週に見た1971年のクラの映像記録の内容との比較を行う。それをもとにクラ交換の現代的変容の方向性について考え,あわせてクラという儀礼交換の本質について考察し,レポートをまとめる。動画を見るときは見ながらメモを取ること。
【事前学習】2時間
前の週に見た映像記録の内容のまとめを読んで,内容を再確認しておくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,期限までにEcoLinkに提出する。
第19回交換と経済④ニューギニア社会における交換ニューギニアのイワム族を例として,社会における交換と人間関係の結びつきについて考える。わたしたち日本人の交換や人間関係のルールとの劇的な相違をカルチャーショックとともに受け止め,普段無意識に当たり前と思っている自分自身の考え方や価値観を考え直す機会としたい。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにEcoLinkに提出する。
第20回交換と経済⑤イヌイット社会の現代的変容現代化と貨幣経済の浸透によって引き起こされたイヌイット社会の激しい変容の中で,伝統的交換に基づく人間関係が,どのように生活を立て直すために応用されたかを学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてEcoLinkに提出する。
第21回宗教と儀礼①他界観念中国人の宗教における現世と他界観念のかかわりについて考えるため,「紙料」と呼ばれる紙製の供え物に焦点を当ててその意味について学習する。そして,文化によって異なる「他界」の意味や,中国文化におけるあの世とこの世の交換関係,祖先と子孫の利益交換について考える。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてEcoLinkに提出する。
第22回宗教と儀礼②アフリカの呪物崇拝人類文化の中でも中心的な価値観と結びつく宗教と儀礼について,文化人類学の基本的な考え方を理解する。宗教とは何かについて考えるにあたり,アフリカのタンベルマ族呪術崇拝を取り上げ,いわゆる三大宗教のようなスタイルの世界規模の宗教だけが宗教ではないことを学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてEcoLinkに提出する。
第23回民族とアイデンティティニュージーランドのマオリ族の文化復興運動に関する映像記録を参考に,彼らが歴史的にどのようにヨーロッパ文化に同化し,また,いかにして自分たちの言語と文化的アイデンティティを復興させてきたかについて学習する。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を交えてEcoLinkに提出する。
第24回技術文化の伝播マダガスカルのカヌーについての映像教材をもとに,オーストロネシア人の歴史的民族移動や技術文化の伝播について考える。
【事前学習】2時間
課題図書の下巻に書かれたオーストロネシア人の移動と拡散に関する内容を読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにEcoLinkに提出する。
第25回日本の先住民文化:アイヌの結婚式アイヌ民族の伝統文化の継承についての歴史的な映像記録を見て,アイヌの人々の置かれてきた状況と日本の先住民政策について考える。
【事前学習】2時間
EcoLinkから資料をダウンロードし,よく読んでおくこと。
【事後学習】2時間
授業中に作成したレポート原案をPC上で清書し,考察を加えて期限までにEcoLinkに提出する。
第26回課題図書確認テスト第3回課題図書の下巻の内容に関する確認テストを行う。読書ノートを作成し,それを参照しながら解答を記入する持ち込み式テストとする。
【事前学習】2時間
課題図書の上巻を読み,配布した設問プリントの設問⑦~⑨について各自が読書ノートを作成しておくこと。
【事後学習】2時間
確認テストで十分な解答ができなかったところについて,課題図書を読み直し,内容を再確認しておくこと。 
第27回課題図書確認テスト第4回課題図書の下巻の内容に関する確認テストを行う。各自読書ノートを作成し,それを参照しながら解答を記入する持ち込み式テストとする。
【事前学習】2時間
課題図書の上巻を読み,配布した設問プリントの設問⑩~⑫について各自が読書ノートを作成しておくこと。
【事後学習】2時間
確認テストで十分な解答ができなかった部分について,課題図書を読み直し,内容を再確認しておくこと。
第28回課題図書の補充課題図書下巻に関する補充学習を行う。課題図書の内容について十分な解答ができなかった個所について,再度,解答し直すための時間とする。読書ノート持ち込みとし,再テストを行う。
【事前学習】2時間
課題図書確認テストの問題で十分な解答ができなかったところについて,読書ノートを作成し直しておくこと。
【事後学習】2時間
課題図書の下巻を読み終えた感想を読書ノートにまとめてみよう。
第29回理解度の確認と総まとめ年間授業の要点の解説を行う。
【事前学習】2時間
これまでの授業時に配布した資料や,動画を見て書いたメモなどをよく読みなおしておくこと。
【事後学習】2時間
よく復習し,1年間の学習を通じて学んだことなどをまとめてみよう。                                                                                       
第30回総括:異文化の理解年間の授業の総括として,授業で学習した内容と各自が提出したレポートを振り返り,それぞれの受講生が「異文化の理解」をテーマとして自分の意見を文章にまとめ,最終レポートとする。総括で提出するレポートの内容が,本年度の学習の中で最も重要な位置づけとなる。
【事前学習】2時間
前期・後期に提出したレポートをよく読みなおしておくこと。
【事後学習】2時間
異文化への関心をさらに自主的に広げ,学習内容に関連するテーマや,自分の興味がある地域の文化について調べてみよう。
授業形式 ①講義形式の授業,②資料を読みながら解説する形式の授業,③映像資料を見て解説する形式の授業をローテーション形式で行いながら授業を進めます。講義の時以外は,文献や映像を教材として解説を行った後,その日の授業内容を文章に要約し,自分の考えを整理する時間をとる予定です。授業内容は,言語と文化,家族と親族,経済と交換,宗教と儀礼,文化変容などの文化人類学の主要なテーマごとに2~4回にまとめて進めていきます。テキストの購入は必要ありませんが,課題図書は各自購入して自習してください。
評価方法
定期試験 レポート 小テスト 授業への
参画度
その他 合計
0% 22% 20% 48% 10% 100%
評価の特記事項 授業レポートでは内容評価に加えて授業への参画度の評価をします。不適切なレポートは大幅減点します。確認テストは「小テスト」の扱いです。就活の4年生,運動部生には,欠席分について課題提出を求めます。
テキスト 授業時に資料を配布するか,EcoLinkを通じて配布します。
課題図書を自分で読み,設問に従って要点をまとめ,読書ノートを作成します。確認テストは読書ノートの持ち込み形式です。
参考文献 (課題図書)ジャレ・ド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄』上・下,2012年,草思社, (草思社文庫) 各900円(税抜き)
オフィスアワー(授業相談) 授業時に指示しますが,相談がある場合はまずアポイントを取ることが必要です。
事前学習の内容など,学生へのメッセージ 授業時間内に作成する手書きのレポートの原案はまとめて保管すること。提出用レポートは授業後にPC上で作成し,その日の期限の時間までにEcoLinkに提出すること。EcoLinkの操作ミスが原因でレポートがうまく送信されないこともあるので,提出用レポートの原文は,各自のPCに必ず保存しておくこと。課題図書は受講者が自主的に読み進めて読書ノートを作成することになっています。上巻を前期のテスト前に,下巻を後期の確認テスト前に,それぞれ読み終えて,読書ノートの準備が完了するよう自主的にスケジュールを組んで学習を進めてください。
授業用URL http://www.eco.nihon-u.ac.jp/